戦闘描写難しい。
ルフィとエースがアーベン海賊団に預けられてから1週間が経とうとしていた。
その間、エースは驚くほどに成長を遂げており、今では訓練にて一般船員相手に互角に戦えるようになり、航海に必要な知識も貪欲に取り込んでいた。
また、一番の違いと言えば乗船早々は警戒心を露にしていたリヒターを兄のように慕っている点であろう。
二人きりで何を話したかは誰も知らないが、ダダンが驚愕してしまう程にリヒターを慕うようになった。
一方でルフィはというと、勉強には興味を示そうとせず、隙あらば逃走を計りロビンに捕まり、エースもマキノも果てはダダンも自分に構ってくれなくなりショボくれてイタズラをし始めてはロビンにクラッチされ、盗み食いのために食料庫に忍び込んだのがバレてしまいブランチにおやつ抜きを言い渡され、ロビンにスラップされてを繰り返すようになった。
訓練は特に酷い有り様であり、体が出来上がっていないことも関係してか能力に振り回されてしまい、まともに訓練を行えたことが少なかった。
また、そこに拍車をかけるかのように同年代のペローナとローの子供とは思えないレベルの自身の能力に対する理解度とその習熟度により完全に自信喪失していた。
そして、今日も・・・・・・。
「いくぞ、ロー。ん~パーンチ」
そう言って先制攻撃とばかりにローへと右ストレートを繰り出すルフィ。
最近繰り返し行われるようになったルフィとローの一騎討ちである。
「・・・・・・」
僅かに半身を反らしただけで容易くルフィの攻撃を避けているロー。
もう何回目か解らないこのやり取りは数分後にルフィのスタミナが切れるまで行われるのであった。
「くっそー、何でオレのパンチが当たらねぇんだ」
訓練室の隅で不貞腐れているルフィ。
当初は一般船員やエースたちも声をかけていたが、リヒターからルフィに考えさせるように厳命されてしまい、誰も声をかけれなくなっていた。
「
そんなルフィの目の前では、ペローナと先程まで自分と戦っていたローの戦闘訓練が行われていた。
ペローナの掛け声と共に床に散らばっていた複数の“木刀”が意思を持つかのように浮かび上がった。
「ペローナ、てめぇそれ全部“船長の使い古し”だろうが。汚ぇぞ」
「ホロホロホロホロホロ、うっせぇぞロー。今回の目的地が“あそこ”なら、あたしは何がなんでもお前に勝たなきゃいけねぇだよ」
「てめぇ、今回の賭け対象は“オレへの借金の帳消し”だな」
「そう言う、お前だって“あたしへの借金拒否権”を対象にするつもりだろう」
左手に重なるように円を作り上げ、迎撃体制を整えるローと、複数の木刀を意のままに操り、ローを警戒しているペローナ。
周囲の大人たちは二人の言い争いに大声で笑っているが、ルフィはとてもそんな気分になれなかった。
ルフィにとって今まで“同世代”と言えばエースと“彼”だけだった。そして、同世代といっても年上の二人には負けても仕方がない、すぐに勝てるようになる、と楽観視していた。
しかし、現実は違っていた。
自分とほぼ同じ年齢のローとペローナに出会ってしまった。
二人は自分と違い、自分の能力に振り回されること無く、寧ろ使い方を熟知しているようだった。
今、目の前で起きている剣劇乱舞の最中に自分が突っ込んでいったところで数秒とたたずに気絶させられて終わりになる未来しか見えなかった。
この時、ルフィは自分が気が付いていないだけで大きく成長していたのである。
ルフィは“考えた”のである。
どうすれば自分と彼らの間にある差は埋められるのか、自分に足りないものは一体何なのか。
その様子を二人の男が見ていたことを知らぬままに。
「まぁ~、あれだな。お前も中々に鬼教官だよな、リヒター」
そう言って船長室に備え付けられたバーカウンターの棚から“世界一カッコイイ酒”を取り出し勝手に呑み始めるクザン。
この数週間で海軍服からアロハシャツに着替えて存分にだらけきっている彼は先程の光景から目の前の男が何を考えているのかを察してしまった。
「ルフィに今必要なのは闇雲に強くなることじゃない。自分に何が出来て、何が出来ないか自覚して割りきることだ。
酷な話だけど、何もかも出来るなら仲間なんか必要じゃないだろ。
オレだって仲間がいなきゃ、“この海”を航海なんか出来ねぇよ」
そう言ってマキノ手製グレープジュースを飲むリヒター。
ただし、グラスがワイングラスなのは愛嬌と取ってもらいたい。
「これからの世代に求められるのは“一本の槍”だ。自分の腹のなかにただ一本、決して折れない槍を作ることが出来れば、どんな波だって越えていける。オレはエースとルフィにもその素質を魅せてもらった。だから、嫌われようと何しようとあいつらを強くしてやりたいんだよ」
そう、遠い目をしながら語るリヒターにキュンキュンしているマキノと、実は酔っているのではとグラスに残った滴をなめてジュースであることを確認するクザンがいた。
そんなことがあった数日後、ルフィの変化は案外分かりやすく周知されていた。
今まで、興味がないといって逃げていた勉強に頑張って参加し(途中知恵熱出して気絶するまでがお決まり)、自分にできることを模索して周囲に自分から話しかけるようになり(何回か冗談を真に受けて海に飛び込み溺れたが)、食事の後片付けを率先して行うようになった(初回で皿を割りすぎて出禁を食らったが)。
その結果かどうか知らないが、訓練においてルフィはまず相手を見ることが多くなった。
自分がパンチを打つ時、相手はどう行動しているか。
相手が攻撃に転じる時、どのように仕掛けてくるか。
自分の間合いがどれくらいなのか。
相手の間合いはどれくらいなのか。
そして、ルフィが更に上へと駆け上がる、そんな出来事が起きた。
『あ、あ、あぁ~、マイクテスト、マイクテスト本日もクソみたいに晴天なり』
昼食を終えて各々に休憩をとっているアーベン海賊団。
そんな一味の静寂をかき消すようなアホな声が聞こえてきた。
「船長、針路方向に二個師団級の海賊群を確認。垂れ幕のようなモノが夫々に掛かってるでよ」
本日の見張り番であるサウロが針路上に複数の奇妙な海賊団を発見したのである。
「・・・おい、そろそろ”あそこ”に着くころだけど、まさか”いつもの”じゃないよな」
リヒターのやる気が目に見えて落ち込んでいくのがわかるようで、周囲も「あぁ~、またか」といってため息をついていた。
「どうやら、そうみたいよリヒター。電伝虫も鳴ってるし」
そう言ってオルビアが差し出した金の装飾がなされた電伝虫を嫌々取るリヒター。
『はっはー、御機嫌よう船長。今日もエンタテイメントしてるか』
かなりの声量が食堂に響き渡るがそこにいた面々は呆れたような顔をしている。
「おい、”大番頭”。お前またか、またなのか。この”不良債権”共はそういうことなのか”テゾーロ”」
珍しく声が大きいリヒターに驚くエースとルフィだが他のメンツは笑いをこらえているようだった。
『いや、すまないリヒター船長。そいつら調子に乗ってステラとバカラまで賭けの対象にしてセクハラかまそうとしたからさ、その・・・あれだ』
「”タナカさん”と変われ、あと二人は無事なんだろうな」
『つかまれた腕に痣が出来てしまったが、無事と言われると無事だ』
「・・・カワレ」
二人の安否を確認した瞬間、リヒターから僅かながら怒気が漏れた。
『するるるる、お疲れ様です船長』
電伝虫越しに新たに聞こえてきた声は先ほどの男性と違いどこか道化じみた声だった。
「簡潔に答えろ」
『オヤオヤ、これは相当お怒りのようで。では、テゾーロ様も船長の怒気でトラウマ穿り返されて使い物になりませんから私がご説明を』
簡単に言うと
①来場(この時から既に問題行動を起こしていた)
②カジノにてステラとバカラに手を出す(タナカさんが未然に防いだ)
③キレたテゾーロに有り金全部巻き上げられた
④いつもの調子で同じ海賊旗を掲げるリヒターの船を襲おうとしている ←今ココ
という流れらしい。
『というわけですので船長、・・・・?あの船長、御応えを返していただけますか』
返答がないことに不思議がるタナカさん。
すると、別人から返答が返ってきた。
「あぁ~、タナカさんお久しぶりです。ローです」
『これはこれは、ローさんお久しぶりです。ところで船長は如何されましたか?』
突然のローの返答に驚くも、直にいつもの調子を戻すタナカさん。
方やローはと言うと、船内に訪れた静寂に耐えかねて誰でもいいからしゃべって欲しいと受話器を取った次第である。
「申し訳ないんだけど、当分船長と話しできないと思うよ」
『おや、私何かしましたかな?』
心当たりのないタナカさんだが、彼はまったくもって正しかった。
「タナカさん、船長の”逆鱗”に触れた奴らの末路ですよ」
『ほっほ~、なるほど。つまり我らが船長は』
「『完全にキレた」ということですな』
ところ変わって甲板上に無表情で佇むリヒター。
リヒターが出て来たのを確認して、代表を名乗る海賊が長ったらしく宣戦布告を行っているが、リヒターの耳には一切入ってきていなかった。
「オイ、クズドモ」
久しぶりにキレているためか、発せられる言葉がカタコトに聞こえてくる。
そんな彼の姿は映像電伝虫にて艦内と”G・T”幹部室に流されていた。
『なんだ、詫びるなら今のうちだぞ。金目の物と後”女”を寄こせば命だけは助けてやるよ』
そう言ってそこらかしこから笑い声がこだましている。
バレスト海域は普段は穏やかな海で知られているが、この日は違っていた。
リヒターの怒りに呼応するかのように空は曇り海は荒れていたのである。
「オレノ”宝”ニ手ダシテンジャネェゾ」
その声を切っ掛けにサウザンド・シンフォニー号へと雨のように砲弾が降り注ぐ。
外のあまりの景色にルフィは気絶しかけていた。
その時、リヒターの声が静かに聞こえてきた。
「
その声が響くと共に腰に帯刀されていた刀を引き抜く。
「
そして、刀を揺らし、その揺れが全身へと伝播していく。
「
その声が響くのと同時にサウザンド・シンフォニー号へと雨のように降り注いできた砲弾は全て爆散した。
「おうおう、最初っから飛ばしてるねリヒターの野郎」
海軍最高戦力と呼ばれる”青雉”と畏怖されるクザンも久方ぶりにみるリヒターの戦闘。
「おい、クザン。リヒターは大丈夫なのか?」
初めて見る海賊の戦闘にルフィは心配そうにしていた。
しかし、アーベン海賊団の面々は映像に映し出されるリヒターをどこか誇らしげに見ている。
「クザン”さん”な。いいかルフィ、オレを含め多くの海兵があいつを信頼している理由があいつの戦う理由にあるんだ」
そういうと心配そうに映像と自分を交互に見つめるルフィの目線に顔を合わせるクザン。
「”仲間”っていう”タカラ”のために戦うんだあいつは」
そういうと視線を映像に移すクザン。
ルフィもつられて目を移す。
全ての砲弾が一瞬で爆散したことに驚いているG・T被害者の会一同。
そんな代表を務めている男は驚きおののいた一瞬に自分が巨大な何か得体のしれないモノに睨まれているような殺気を感じた。
その方向に目を向けると爆風で棚引く緋色の髪から感情を消失したかのような翡翠の色をした瞳がこちらを見ていた。
「
再び、男が刀を構える姿が目に入ってきた。
先ほどの技だって能力者なら簡単にやってのけれると判断し、男との間に空いた1㎞近い距離も手伝い安全圏にいると確信していた。
「
そのはずなのに汗が止まらない。
そして、自分ののど元に常に切先が突き付けられている、そんな感覚に襲われていた。
「
左手を眼前に置き刀を持つ右腕を引く独特の構えをとった男が刀を突いた瞬間。
”ガオン”という銃撃にも獣の咆哮ともとれる音が耳を貫いた。
その瞬間、代表を務める男の被っていた帽子が銃で撃たれたかのように弾き飛ばされたのであった。
「次ハ外サナイ」
そう男が呟いたように思えた。
「
そして、再び刀を揺らし、その揺れが全身へと伝播していく。
「
しかし今度は、自分の周りにいた部下たちまで撃ち抜かれていく。
周囲を見回すと同盟を組んでいたほかの船からも悲鳴が聞こえてきている。
彼らは”この海”にたどり着けるだけの力を持った海賊だった。
ただ、彼らは疎かにしてしまっていたのである。
”情報”という”この海”で生きていくうえで最も大切なモノを収集することを。
その結果、一人の男の”逆鱗”に触れてしまったのである。
「面倒ダ」
声が聞こえた。
すでにその声は”死神の声”に聞こえていた。
-消エロ-
「
気が付くと立っているのは自分だけになっていた。
「
刀が鞘に納められる光景のはずなのに、なぜだか恐怖で動けなかった。
それなりに力を持っており、いつかこの海を制するのだと部下たちと語り合った。
しかし、自分たちはとんだ勘違い野郎だった。
そして、今気が付いてしまった。
自分たちが対峙している男の正体を。
「
迫りくる無形の砲弾を感じながら代表を名乗っていた男は呟いてしまった。
「”
と。
その後、「バレスト海域の悪夢」と呼ばれることになるこの事件。
政府公式発表によると死傷者700人、戦闘時間1分となっている。
しかし、真実を知る者たちはいる。
死傷者7000人、戦闘時間50秒、”緋影”アーベン・D・リヒター無傷。
キャラクターシート
ハグワール・D・サウロ
異名:大戦鬼 所属:アーベン海賊団 立場:操舵士長
懸賞金:2億9800万ベリー
外見モデル:ハグワール・D・サウロ(出典:ONE PIECE)
好きなもの:大皿料理 得意料理:火山パエリア
備考
原作に登場しているサウロ本人。
色々あってアーベン海賊団に入団する。
基本的に非常に温厚な性格で子供に好かれやすい。
身体的に一般的な巨人族ほど大きくないがただ小さいというわけでなく濃縮されているとのこと。