最後にあのセリフを言わせることができた、それだけの自己満小説です。
お目汚しとなりましょうが、よろしくお願いいたします。
「バレスト海域の悪夢」と呼ばれることになる事件から数日後。
アーベン海賊団一行は目的地にたどり着いていた。
「「「うぉ~、すっげ~、なんだココ」」」
海域を抜けてから船内から外に出ることが出来なかったため、どこを船が走っているのか解らず色々な意味でドキドキしていたルフィ、エース、ダダンだった。
しかし、現在三人の目の前には黄金で彩られた巨大な街しか見えていなかった。
入港するにあたりドレスコードを整えられた3人はアーベン海賊団と共に颯爽と港へと降り立ったのである。
その際、リヒターの隣をめぐり女性たちの壮絶なアミダクジが行われた。
その結果、ことリヒターが関わる事象に対して絶対的な幸運を見せるマキノが右側を会得した。
「ようこそ、”グラン・テソーロ”へ。皆様長旅大変お疲れさまでした」
港に上陸して直にリヒターたちの前に現れたピンクのスーツを身に纏った黄金の装飾が所々になされた大男だった。
しかし、よく見ると足が微妙に震えており、まるで生まれたての仔馬のようであった。
「・・・・・”テゾーロ”」
そんな男”ギルド・テゾーロ”にリヒターが声をかけると、彼は流れるような動作で土下座をしていた。
そんな彼の態度に周囲に見に来ていた者たちは驚愕の声を上げていた。
「申し訳ありません船長、オレが至らないばかりにステラとバカラを危険な目に合わせてしまった上に、大切な金蔓共を処分させるなんて手を煩わせてしまい、誠に申し訳ない」
テソーロが頭を上げる気配がないと解るとリヒターはマキノを腕から離させるとゆっくりとテゾーロに向けて歩み始めた。
眼鏡が逆光で反射してしまい、まともに彼の眼を見ることはできないが周囲に集まった者たちはこの後に起こる惨劇を予想してしまっていた。
テゾーロとリヒターの距離が0になり、リヒターがしゃがみ込み、その手を高く上げる。
テゾーロに心酔してる社員たちはテゾーロが殺されると、何とか止めようと声を荒げているがリヒターは一切を無視しその手を振り下げた。
あたりに悲鳴が木霊するがその次の瞬間だった。
「ポン」という軽い音を立ててリヒターがテゾーロの肩を叩いたのだ。
数回テソーロの肩をリヒターが叩き、ようやくテゾーロが顔を上げる。
そこには満面の笑みを浮かべるリヒターが立っていた。
「テゾーロ、最高にカッコよかったぜ」
そう言って笑うリヒターを見て目から大粒の涙を流し始めるテゾーロ。
とんでもない速度で変わっていく展開に周囲が困惑しているとテゾーロの傍に一人の女性が近づいてきた。
シックな黒いパーティードレスに映える明るい黄金の髪。
淡雪を思い起こさせる白磁の肌。
海の青色を写したと言われても納得してしまいそうなアクアマリンの瞳。
「テゾーロ」
女性に名を呼ばれて、涙で顔がぐちゃぐちゃになりながらも振り替えるテゾーロ。
「ズデラ゛~」
子供のように泣きじゃくる“この海”で“怪物”と呼ばれる男がいた。
「ぶお゛ぉぉぉぉ、船゛長゛に゛誉゛め゛ら゛れ゛た゛ぁぁぁぁ」
「よかったわね、リヒターさんに誉められて」
突如として立ち上がり、喜びの雄叫びをあげるテゾーロ。
そんな傍らで悠然と寄り添うステラと呼ばれた女性。
グラン・テソーロを取り仕切るギルド・テゾーロと、そんな彼を公私ともに支え続けているギルド・ステラ夫妻のそんな光景に周囲もほっこりとしていた。
「するるるるるるるる、皆様長旅ご苦労様でした」
そんな夫妻をか隠すように地面から面白い等身の男が現れた。
「久し振りだな、タナカさん。元気そうで何よりだ」
「するるるるるるる、えぇ全く。船長に拾って頂いてこの方、暇になることもなく毎日を楽しませていただいております」
「主催者があの調子だから、悪いんだけど“今日の主役”のところまで連れていってもらえるかな?」
「えぇ、勿論ですとも。それでは、お手をどうぞ」
タナカさんに促され彼の手を握るリヒター。
その後、馴れたように女性陣が我先にリヒターに群がり、次いで男性幹部が、最後にサウロに群がるように一般船員とエース、ルフィ、ダダンがよじ登った。
「テゾーロ、先行くぞ」
「う゛お゛ぉぉぉぉぉぉぉぉ」
「船長ごめんなさい、私達は後から行くわ」
未だに豪快に男泣き中のテゾーロを慰めているステラからの答えを聞き、リヒターは苦笑いと共にタナカさんに視線を移す。
「皆様、準備は宜しいですね、それでは参りますよ」
そう、タナカさんが喋った次の瞬間だった。
突如としてアーベン海賊団全員が地面に落ちていったのであった。
「おい、おいルフィ。確りしろ」
エースの声に起こされたルフィ。
「んぁ、エース・・・・・・オレ達、落ちたぁぁぁぁ!!」
「落ち着け、ルフィ。オレ達は無事だ。それより周りを見てみろ」
エースに促され、現状に目を向けるルフィ。
そこには想像を越える光景があった。
「お前ら、腹が弾けるまで食べてもええで。ただし、残したらブッ飛ばっしたるからな」
「ブランチさん、エンペラーサーモンのお握りお代わり」
アーベン海賊団料理長ブランチが見たこともない食材と己の持てる技巧を駆使して様々な料理を作り上げており、その側で黙々と大量のお握りを消化しているロー。
「んがぁーっはっはー、止まらない、コインが止まらないよ」
「まだまだ、こんなもんじゃないでしょ」
「“接待スロット”じゃないんで負けても知りませんよ」
「ダメだ、聞こえてねぇでよ」
周囲に置かれたスロットを回しまくり、コインの山を何個も築いているクザンとダダン。
そんな、典型的なダメな大人と化している二人に注意を促すロシナンテと呆れているサウロ。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
その最奥では困ったような笑顔を浮かべたリヒターを中心に
その時初めてルフィは女性の怖さを知ったような気がした。
「お、ルフィ。やっと気が付いたか」
周囲の殺気から逃げ出してきたリヒターがいつもより速足で歩いて来るのをエースと共にルフィは眺めていた。
そこには数日前、たった一人で数隻の海賊船を沈めた男には見えない優しそうなお兄さんにしか見えない男がいた。
「どうだ、エースにルフィ。ここはさっき会ったテゾーロが経営するうちの一味の金庫も兼ねている世界有数のエンターテイメントシティの”うちの一味専用”ホールだ」
そこには、この世のありとあらゆる楽しみを凝縮したような世界が存在していた。
子供の二人でもここが楽しい場所だと理解できてしまえるほどに、周囲は笑顔であふれていた(一部を見ないようにして)。
「エース、ルフィ。この航海が終わったらお前たちはオレの船から降りるだろう」
そう言って自分たちの目線に合わせて屈んでくれるリヒターにいつの間にか二人はくぎ付けになっていた。
周囲の喧騒が一切耳に入ってこない。
自分たちのすべての感覚が目の前の男からそらすことはできなかった。
「だから、いつかお前たちが一人前の海賊になった時、その時にはまた遊ぼうぜ。”王の椅子”を賭けてな」
そう、いたずらっ子のように笑うリヒターは、まずエースに向き直った。
「エース、お前は色々考えているようで、それでいてこうと決めたらそれ以外の選択肢がなくなっちまう。そんな時は”こいつ”を思い出してくれ」
そういうと自分の左中指につけていた赤い宝玉が際立つ黄金の指輪をエースに渡した。
「約束だ、お前は”ルフィの兄貴”だろうけど”オレの弟”なんだ。兄貴より先にいなくなるんじゃねえぞ」
そう言うと乱暴にエースの頭を撫でまわすリヒター。
ルフィからは見えないがエースは嬉しさのあまり笑顔になりそうな顔を必死でこらえていた。
「ルフィ、一人で何でもやることは不可能だろう」
そう言いながらルフィに向き直るリヒター。
その目はいつも以上に温かくシャンクスと同じ目をしていた。
「だから、自分に何ができるか考えろ」
そう一区切りつけるとおもむろに立ち上がり周囲を見渡すリヒター。
「船長になったら”針路”さえ決めちまえ。後は仲間に任せとけ。自分が選んだ仲間なら、そいつらを信じていればいい。それさえできれば”この海”は進んでいける」
そういうと左耳にしていた紅い石が煌めくイヤーカフをルフィに手渡した。
「それは、友達の証だ。ルフィ、でっかい男になれよ」
そう言うと宴の行われている場所に歩を進めるリヒター。
二人は置いて行かれないように小走りでその後姿を追いかけるのであった。
「お前ら、派手に騒げよ。今日はバカラの誕生日だからな」
「「「「「おう、船長」」」」」」
「バレスト海域の悪夢」の真実を告げたルフィは仲間たちが絶句している様子をしり目に自分の特等席へと歩いて行った。
あの後、リヒターに言われた通り自分が出来ることを考えて、考えて、考えて今の自分になれた。
まだ未完成だが”新しい戦法”も形になりつつある今、そんな”今”だからこそ胸を張ってこの言葉を言える。
「リヒタ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――」
突如、メリーの頭の上で叫ぶルフィに仲間達も再起動をはたし、目を向けている。
「オレは、オレはやるぞ」
”
「海賊王に、オレは、なる」
- Luffy of ORIGINS END -
最後にルフィに言わせられて満足です。
それでは皆さん、暑い日が続きますが熱中症や夏バテなどに気を付けてお過ごしください。