暇つぶし程度でも良いので見てやってください。
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「オレの財宝か?欲しけりゃくれてやる」
その声を待っていたかのように曇天の空から雨が降り始めた。
「探せ!!」
そして、雨は強さを増していく。
それでもなお、男の声は全世界へ響き渡る。
「この世の全てを“そこ”に置いてきた」
海賊王『ゴールド・ロジャー』、彼の死に際に放たれた言葉は世界を揺るがした。
そして。
「悪いが、オレはオレの一味を作る。声かけてくれてありがとな“シャンクス”、“バギー”」
大雨の中、共に過ごし育った兄弟分からの誘いを断る青年。
その顔には二人への申し訳ないという感情がありありと映し出されていた。
「なんでだよ、お前もオレの誘い断るのかよ」
「おい、このハデバカ野郎。なんでオレからの誘いも断るんだよ」
「だってよ」
青年はその時、船長『ゴール・D・ロジャー』の駆け抜けた生き様を思い出し苦笑いをしていた。
「この海で、最も自由な男に育てられたオレ達が連んじまったら面白くないだろ」
小舟に揺られた男が目を覚ます。
「懐かしい夢を見たな。あいつら元気にやってるかな」
歴史の転換期、大海賊時代の幕開けを共に目にした仲間と別れて数年。
青年は大人の男へとなっていた。
男は起き上がり辺りを見回すと一隻の船を襲う海賊船を見つけた。
「んー、あれでいいか今回の“貯金箱”」
何もない筈の場所に男の手が沈み込む。
そして、その何もないはずの場所から一振りの真紅の巨大な鎌が姿を現す。
次の瞬間、男の姿は空にあった。
鎌の刃が水平になるように空中で構えると鎌を後に引き着け、間合いに入るなり鎌を振りきる男。
鎌は真紅の斬撃を放つとなり襲われている船と海賊船の間へと着弾した。
巨大な水しぶきを上げて2隻の船の間に渓谷のような海の切れ目が出来上がった。
「紳士淑女の皆様」
欄干に音もなく現れる男。
長く伸ばした緋色の髪が風でたなびき、左手を自身の胸に添えるその姿は絵になるも右手に握られた巨大な真紅の鎌が男が一般人でないことを物語っている。
「さしあたりまして、目の前の無法者。私が排除させていただきましょう」
そして、右手の鎌を海賊船へと向け優雅な笑みを浮かべる男。
「だから、金と食料少しくれ」
「「「確保ーーーーーーーーー!!」」」
「あれぇ?」
グランドラインとある海軍支部
「いやぁー、参った。まさかオレを誘い出す罠だったなんて」
「おどれアホ過ぎちゃうん」
料理を運んできた料理人に話しかけられて檻から顔だけ出す男。
「にしても旨いなお前のメシ、お前オレの船のコックになれ」
「アホ抜かせ、なんで海軍におる人間が好んで海賊になろうとすんねん」
料理人の男はトレイを回収するとそのまま立ち去ろうとした。
「だってお前、オレのトレー回収する時スゲー嬉しそうじゃん。ここで料理は作りがいがないんじゃないの?」
「・・・・・・、だぁとれボケが。明日も楽しみにしときや」
料理人ブランチは皿を洗いながら先程下げてきたトレーに置かれた皿を見つめた。
思えば喧嘩と料理ばかりの人生だった。
年老いた両親のために海軍に調理兵として入隊したが、配属されたこの支部では食事を粗末にされ続けた。
幼い頃、両親が自分たちの分の食事を削ってまで食べさえてくれたブランチは恵まれた体格と能力者ということから予備役として戦うこともあった。
それでも、根底にある料理人としてのプライドが常に怒りを覚えさせ続けた。
この海軍支部で日常的に料理は無駄にされ続けた。
元貴族の支部長の舌に合わないと言う理由からブランチ渾身の料理はろくに食べられず捨てられ続けた。
そんな最中、偶々入った情報により捉えた海賊。
何気なしに出した賄いにも劣る料理を笑顔で完食し礼を言われた。
ブランチは久しぶりに充実した日々を過ごしていた。
そんな日は唐突に終わりを告げることになる。
「お、メシの時間か」
「おう、ワシがお前に食わせる最後のメシや」
いつもの覇気を感じさせる豪快ぷりはなりを潜め、しかし一切の妥協と手抜きがなされていないと一目でわかるクオリティの料理を前に男はいつものように完食するのだった。
「ワシがオドレにメシ食わせるんも今日で最後や」
「何かあったん?」
いつもならトレーを下げて終わるそんないつも通りは今日は無かった。
「オトンとオカンが死んだ。流行病やったらしい、葬式も親戚連中が終わらせてもうて帰ったらワシの家も何もかも無くなっとった」
裕福であったとは言えない料理人の両親、その最たる理由が親族の借金の保証人だった。
それも、ブランチの働く支部の支部長が小遣い稼ぎで街のチンピラを擁護した腐った金貸しだった。
両親のために働き、いけ好かない奴に頭を下げ続けたのも両親のためだった。
しかし、その理由であった両親が居なくなった途端、ブランチの中にあった何かが音を立てて切れたのだった。
「せやから、今日で最後や。オドレいつでもここから逃げれるのになんで居ったか知らんけど元気でな」
料理人が話し終え顔を上げると牢の中でストレッチをしている男がいた。
「よっし、ぶっ飛ばすか支部長」
「は?」
いつものように軽い口調で言われたのは海軍への反逆の意思。
ブランチの口から思わず漏れた声もどこかアホっぽかった。
「ワ、ワレ何言うてんや!!ココはグランドラインの海軍支部やで!!どんなに弱く見積もっても昨日今日海賊になった小僧が勝てる訳ないやろ!!」
「えぇー、オレこう見えても結構歳いってるよ?」
「ほぉ年下やと思っとったわ、童顔なんやなぁ。てちゃうわ!!それにワレ、自分の得物は倉庫に「よいしょっと」
男は何のこともなく空間に手を突っ込むと真紅の大鎌を取り出した。
「お、刃研いでくれたみたいだなキレイキレイ」
「そ、それにあのボンボンは元貴族や。いくらあいつ自身が弱くても親の七光りが」
「なぁ」
ブランチの言葉を遮り男がブランチへと顔を向ける。
「いつまで
ブランチは初めて男から真剣な眼差しを向けられた。
その瞳はブランチを真っ直ぐ射貫くように強い意志が感じ取れた。
「両親のことは残念だった、オレにはそれしか言えねえ。だけど、今のお前はその両親を
「な、なにをゆうて」
「お前の両親は、息子にそんなこと望むような、そんな親だったのか」
そう言うと男は無造作に鎌を振った。
男が収監されていたのは監獄塔の天辺に位置する牢。
無造作に振られた鎌は強固に作られた筈の壁を綺麗に切り裂いていた。
「じゃ、オレ行くわ」
そう言うと男は自分の切り裂いた壁から外へと飛び降りていってしまった。
ブランチは自身の調理器具が入ったリュックを背負い門の前に立っていた。
自分の背後では爆発音が鳴り響き、建物の倒壊する音が木霊する。
しかし、ブランチの中では別の声が鳴り響き続けていた。
『いつまで諦める理由を探し続けるつもりだ』
男に言われた言葉。
それが常にブランチに語りかけていた。
海軍に入る前、ブランチはチンピラ同然に喧嘩もした。
それでも、両親のためにと真面になったつもりだった。
「おい、ブランチなにしてやがる。てめえもあの海賊捕まえるの手伝えや」
しかし、ブランチにはその声は一切届いていなかった。
倒壊する支部の建物、しかしただ一つ無事な建物があった。
最上階にしか部屋はなく、全ての建物を見下すように建つその建物は支部長である男がいる建物だった。
「は、おもろい男やないの」
「おい、ブランチ」
直後、上官だった男の頬にブランチの拳が突き刺さる。
上官だった男は後に控えていた部下達を巻き込み盛大に吹き飛んでいく。
「仕舞いや、我慢すんのも。それを親のせいにするんも」
ズカズカとまるでチンピラだった頃のように歩き始めるブランチ。
その視線の先には土煙で見え隠れするあの男の姿があった。
大鎌を、棒きれを扱うように軽々と振るい向かってくる佐官クラスを笑顔でぶっ飛ばす。
その姿を目標にブランチは走り出した。
「おらぁ、いつまで遊んどんねん。ワシも混ぜんかいボケ!!」
全身から放電に似た音を滾らせながら大軍に突っ込んでいくブランチ。
ある者は鎌の棒部分で吹き飛ばされ、ある者は電撃を纏った拳でぶん殴られ、数分ともたずその場にはブランチと鎌を持った男しか立つ者は居なかった。
「かぁ、久しぶりに暴れたわ」
「ふふ、すっきりした顔しやがって」
男の言葉にブランチは男と同時に支部の敷地で無傷の一棟の塔を見上げる。
「それじゃ、いくか」
「おうよ!!」
支部長を務める海兵は急ぎ部屋中の金品と島民に無理やり書かせた借用書をバックに詰め込んでいた。
「ぱ、パパ。何なんだよあいつ、僕殺されちゃうよ助けて」
傍らに置かれた電々虫に向かって叫ぶその様は大変哀れだった。
『バカ者が!!だから“奴”に手を出すのは止めろといったのだ!!貴様の小遣い稼ぎもバレているだろうから全て処分してさっさと逃げ出せ』
「もちろん、パパが迎えに来てくれるんだよね。そうだよね」
『行けるわけ無かろうが、そもそも盗聴の危険性がある一般回線なんぞ使いおって。そこからの脱出は自分でなんとかしろ』
その言葉を最後に電々虫の交信が途絶える。
「ちょ、パパ」
「あらら、見捨てられてやんの」
「おうコラ、落とし前つけに来てやったで!!」
支部長が意識をそらしていた僅かな時間、その間に件の男とブランチがドアを開け中に入っていた。
「ひ、ち近寄るなゴロツキ共!!ボクに手を出せばどうなると思っているんだ」
地位と後ろ盾のみで生きてきた支部長にこの場を切り抜ける力は無かった。
「知るか、オレお前のこと知らないし」
「ワシも、オドレの事なんぞ興味ないわ」
男とブランチはその言葉と共に動いた。
男は飛び上がり鎌を振るう。
すると男の周囲、塔の頂上部は綺麗に細切れになり、男はより高く空へと駆け上がった。
ブランチもまた、右腕を引き体を捻る。
同時に溜め込んだエネルギーを右腕に集めていった。
「
「
支部長の耳に刑を執行する執行人2人の声が聞こえた。
上空には昼間にもかかわらず赤い三日月を背負う狐が。
自分の眼前には雷を放出する天狗の幻想が見えていた。
「
「エレキパンチ」
支部には多くの住民が集まりその堅牢な扉を前に困惑していた。
数時間前、突如轟音が鳴り響き遠くから見ていても支部の建物が砂塵に塗れて見えづらくなっていく。
そんな異常事態に多くの住民が集まっていた。
すると突然、“シャラン”という音と共に片方の扉が粉々になりもう片方の扉も“ドゴン”という音と共に遠方に飛んでいった。
「ほんで、この後どないすんや」
「とにかく東西南北の4つの海を旅しようかなと思ってる。大きめの船も色々な装備も手に入ったし」
男はそう言うと海軍船を見上げる。
海軍を象徴するカモメのマークが付いた帆も付け替えられて白い帆が付けられていた。
「んで“船長”。あんた名前は?」
「あぁ、言ってなかったな」
すると1枚の手配書が風にふかれて空へと舞っていった。
そこには不敵に笑う緋色の長い髪を靡かす男が写されていた。
賞金額 900万ベリー