リヒターとブランチが新世界の海軍支部を潰して2ヶ月が経った。
彼らは今何をしているのかというと。
「「ぶはぁ~、食った食った」」
潰した支部の金庫から拝借した金を文字通り食い潰していた。
「いやぁ、ブランチのメシの方が旨いけどよ、偶には外食もいいもんだな。あ、そこのお姉さん悪いんだけどデザートココからココまでお願い」
「まだ食うんかい!?ワシはもう腹一杯や。あっとお嬢ちゃんココからココまでの酒頼むわ」
とある島にて豪勢に宴を開いていた。
「うふふふ、面白い人を仲間にしたわねリヒター」
同席する1人の女性を含めて。
「しかし、人魚っちゅうんわ奇っ怪なイキモンおったんやな」
「あら、私もここまで鼻が長くて真っ赤な珍生物初めてよ?」
ピキという音が聞こえたような気がした。
「しかも、よりにもよってタコかいな。夢なくすわぁ」
「あらあら、その長い鼻の何処まで骨が入っているのか解剖しても良いかしら」
徐に立ち上がり両手から放電音を鳴らすブランチ。
蛸脚を巧みに扱い、全ての脚と両手に手術器具を持つ女性。
「2人とも落ち着いてよ。取り敢えず“スキュル”は
「むぅ、わかったわ」
「しゃぁないのう」
リヒターを挟んでいがみ合うブランチとタコの人魚の女性。
リヒターとブランチは現在『魚人島』に来ていた。
そして、最近出来たばかりの『マーメイドカフェ』にて食事を楽しんでいた。
「それで、何をしに来たのリヒター?」
「ん?あぁ、船長との約束を守りに来た」
そう言うとリヒターは会計を近くを泳いでいた人魚へと手渡し、店の扉へと進んでいく。
「シャーリーはいつものとこかスキュル」
「えぇ、貴方が来ると知ってたみたいね」
「ほんでどこに行こうとしてんねんリヒ」
「付いてくれば解る」
魚人島のはずれ、海の上からの日が当たる深海の森に少女はいた。
「・・・・・、遅かったねリヒター」
「悪いなシャーリー、こう見えてもやっと立ち直ったんだぜ」
「うん、知ってるよ。“見た”から」
アオザメの人魚“シャーリー”、彼女には不思議な力があった。
水晶玉を使うことで、高確率で的中する未来予知をする事が可能であった。
「ほい、コレお土産。マーメイドカフェのシュークリームとエクレアだ」
「ありがとう、それじゃ“何”を知りたい」
笑顔で報酬を受け取ったシャーリーはリヒターの目を見つめ尋ねる。
「“
「“
「あぁ、ウチの船長からの最後の指令を聞きに行く」
「わかった」
リヒターとシャーリー、その姿を遠くから見守るブランチとスキュルと呼ばれた女性。
「うちの船長は、海賊王を狙ってへんようやな」
「昔からそうさ。あいつは本当に大事なモノのためにしか戦わないからね」
「おまん、ウチに来ないんか?」
「はっ、あたしゃ“生物学者”が本業だよ。でも、リヒが心配だからついてってあげるよ」
「おう、そうしてくれや。リヒターも守るもんがあった方が自分を大事にするしの」
数日後、「凪の帯(カームベルト)」に存在する無人島。
その洞窟の中にリヒターはいた。
そこには、不自然に置かれた音貝があった。
もっとも、リヒターにとってそれは見慣れた音貝だったが。
音貝の置かれていた岩を椅子代わりにし、音貝を再生し始めるリヒター。
『よう、どうせコレ聞いてるのはリヒターだろ。いつも面倒くさいこと頼んで悪いな』
「そう、お思いでしたらこんな方法で遺言を残さないでくださいよロジャー船長」
普段のひょうひょうとした周囲を傾く雰囲気はなりを潜めたいた。
そこに居たのは思慮深く、それでいて様々の物事を理知的に捉えようとする男の姿だった。
『まぁ、お前にはとんだ貧乏くじになるだろうが引き受けてくれるだろうとオレは信じているぜ。
オレの子供のことはガープニ頼んだ。だから、お前にはこれからの時代を頼みたい。
オレ達は“早すぎた”、だからこれからの時代をお前のやり方で進んでくれ』
そう言うとロジャーの音声は切れた。
困ったように顔をゆがめるリヒターであったが、音貝からノイズのような音が漏れ続けていることに気が付いた。
『もう、流石に聞いてねえよな。クッソ恥ずかしいが最後に入れとくか。
リヒター、お前は本当に可愛げが無くてレイリーと一緒になってオレに説教してくれたな。
シャンクス、お前を拾ってからずっとハラハラしっぱなしで気が休まる日は少なかったぜ。
バギー、お調子者で大事な時に限って大ポカかますお前には説教しっぱなしだったよな。
それでも、お前達がいたからオレはラフテルまでたどり着けた気がする。
お前達、次代の奴らを見てこれたから航海し続けてこれたと思っている。
悔いは無いオレの海賊人生、お前達と航海出来たことこそが何よりも誉れだ。
じゃあな、愛してるぜ馬鹿息子ども。
オレの居なくなった海を思うがままに走り抜け』
それは、かつて敬愛した男から彼が可愛がった3人の見習いに向けた手向けの言葉。
松明が消えるその瞬間、笑みを浮かべていたリヒターの頬を一筋の涙が落ちていった。
「ほんで、何処に行くんやリヒター」
「西の海」
「あら?新世界に行かないのね」
どこかスッキリとした顔の、雰囲気も変わったリヒターの後ろからブランチとスキュルが笑顔で立っていた。
3人を乗せて船は進む。