ゼファーにとって海賊とは二つの存在であった。
一つは「悪の象徴」。
彼らは己が欲を満たすために、罪もない人々を苦しめ、奪い、殺し、破壊の限りを尽くす。
日々、多くの罪もない多くの市民が悪逆の限りを尽くす海賊に脅え、明日の平和を願っている。
そんな奴らを捕らえ、少しでも長い時間市民が安心できる時間を作るために、”正義の
一つは「自由の象徴」。
何物にも縛られず、風のように気ままに、己が信念のために力の限り生きる。
時に周囲も巻き込み、笑顔を振りまく、不自由という名の鎖に束縛されることなく、精一杯笑い続けるために”今”に生きる。
正義という名の鎖に束縛され、時に不条理に従わねばならない自分ではできない、決して憧れてはいけない者たち。
「じゃ、早速で悪いんだけど本題に入ろうかい」
目の前の男は、いや目の前の男が君臨するこの海賊団は後者に分類される。
ゼファー達海兵は組織という型枠に無理やりはめられ、守らねばならないはずのモノに目を背けることもある。
しかし彼らは、そんな身勝手により世界に生まれた”悪”をつぶし、人々から賞賛を受けるも、それは己が我儘のための結果だと言い切る。
だからこそ、ゼファーを含めた現三大将全員が彼を認めたのだろう。
「大将黒熊、用件は何だい」
彼の瞳にはいったい何が写っているのだろう。
こちらの意図を全て見透かしているような瞳は自分が見てきた中でも最も澄んでいるように見えた。
もしかしたら、こんな提案をすべきではないかもしれない。
この提案は、彼らから“自由”を奪うに等しいモノだ。
それでも、”彼ら”の力が必要なのだとゼファーは自分に言い聞かせるのだった。
「率直に言わせてもらおう、”緋影”アーベン・D・リヒター、お前には”王下七武海”に加盟してもらいたい」
意を決して放たれた言葉は彼にどう届いたのだろうか。
「”オウカシチブカイ”?何だいそいつは」
初めて聞く単語にリヒターを含めたアーベン海賊団の一行は不思議そうにしている。
それもそのはず、これは世界政府が苦渋の末に決議した平和維持のための処置なのだから。
「王下七武海とは、世界政府によって公認された七人の海賊たちの総称だ。海賊および未開の地に対する海賊行為が世界政府によって特別に許されている。
また、ありとあらゆる犯罪行為が合法化され、七武海に加盟した海賊は政府からの指名手配を取り下げられ、配下の海賊にも恩赦が与えられる」
「選定の基準は」
笑顔を崩さずゼファーと対峙し続けるリヒターの雰囲気にスモーカー、ヒナ、ドレイク、ロシナンテは飲まれそうになっている。
しかし、ゼファーに彼らを気遣う余裕は無かった。
「メンバーの選定には、他の海賊への抑止力となりうる“強さ”と“知名度”が重要視された。君は“強さ”・“知名度”ともに文句はないと判断されたのだ」
如何にゼファーが歴戦の戦士といっても、一言でも間違えれば自分たちは周囲の海賊たちによって排除されるだろう未来を幻視してしまいそうになる。
それほどの緊張感をもって勧誘は進められている。
「ただの若造にご苦労なこって、でも当然デメリットもあるんだろ」
そこらの
「無論だ。まず、収穫の何割かを政府に納めることが義務づけられる。これは世界貴族への上納金に充てられる。
次に、実施的に政府の監視・管理下に置かれる。如何に協力関係にあろうとも気を許す気はないという意思の表れととってくれて構わない。
あたりまえのことだが、七武海を脱退・もしくは世界政府に対し非協力的だと判断され除名されると再度懸賞金が懸けられる」
ゼファーは戦場で戦う以上の疲労を感じていた。
それは宛ら、目の前に銃を突き付けられ続ける感覚に似ていたのであった。
「てことはだ、あんたらは協定決裂を理由に七武海の称号剥奪を行うことができる、というかそういう脅しをかけてくることも考えられるという訳だ」
リヒターのつぶやきに周囲にいるクルーが殺気立つのが分かった。
ゼファーは咄嗟に戦闘態勢に移行しようとする自身の体を押さえつけることに成功した。
だからこそ、この一味の異常性に気が付いてしまった。
多くの海賊を見てきたゼファーだが多くの海賊に共通して言えることがあった。
それは”野心”であった。
船長という頭を失ってもなお多くの海賊が存続し続けられている理由。
それは、前船長を超える野心を持った者によって纏まってしまうからだった。
しかし、この一味は何か違った。
先ほどのリヒターの発言を理解したその瞬間、全員から濃密な殺意が放たれた。この一味は”リヒター”という男に付き従うことを選んだ者たちの集団であることを理解させられた。
「確かに、そういったこともあり得るだろう。その時はオレたちを見限ってくれて構わない。
お前たちには付き合う義理などないのだからな」
ゼファーのその発言をもってしても殺意が薄まることはなかった。
そんな時だった。
「フッ、クヒ」
リヒターが下を向いて何かを堪えている様な仕草をしたのは。
「ウ、クックククヒ、ックククフ]
「・・・・船長?」
「・・・・どうしたの」
リヒターの傍にいたロビンとペローナ。
二人は敬愛する男の異変に気が付くと顔を覗き込んだ。
「ウ、クックククヒ、あぁー無理。アハハハハハハハハハハハハハハ」
「・・・・・・何か可笑しいところでもあったか」
ゼファーほどの歴戦の戦士であっても何故ここで笑うのか理解できなかった。
それほどまでに、リヒターの行動は異常といえる。
「ブハ、あんた”馬鹿”なのか。そんな正直にいって”海賊”が承諾すると思ってんの」
嘲笑われている、と感じてしまいそうな態度だが、正面からリヒターの目を見てしまったゼファーは絶句してしまった。
それは、かつてこの海の頂点に立った男と同じ目をしていた。
「でもさ、大将さん」
後にゼファーはこの時のことをこう漏らしている。
「”世界政府”を信じる気は更々ないが」
”自分はあの時、歴史が動く音が聞こえた”と
「”あんた”を信じてやってもいいぜ」
世界が誰も知らないことだが。
「”王下七武海”その称号確かに受け取った」
後に「アヴラロッサの奇跡」と呼ばれることになる歴史の転換期と歴史上初となる「王下七武海」が生まれた瞬間だった。
キャラクターシート
ニコ・ロビン
異名:オハラの悪魔 所属:アーベン海賊団 立場:考古学者
懸賞金:3800万べりー
外見モデル:ニコ・ロビン(出典:ONE PIECE)
好きなもの:サンドウィッチ・甘すぎないケーキ・コーヒーに合う物 得意料理:煮物(船長に誉められたから)・パエリア
備考
原作に登場しているロビン本人。
リヒターヒロイン。
オハラの悲劇をリヒターによって乗り越えたことにより母と同等に依存しかけている。
現段階で後半の海に渡ったロビンと同等の技能を得ている。
最近の悩みは妹分のペローナの着せ替え人形状態になってしまうこと。