タイムスリップ令和ジャパン   作:◆QgkJwfXtqk

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096 チャイナ動乱-15

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【挿絵表示】

 

戦況図面情報*1

 

 

 アメリカは、本土から増援として送る2個師団及び、戦車などの装備輸送に関して、日本に対して支援を要請する事となった。

 第501機械化師団の輸送で活躍したさつま型輸送艦(31,000t級多機能輸送艦)やRO-RO船などの重量級装備を簡単に輸送できる艦船に着目した為であった。

 日本は要請に対し、軍艦による支援は難しい(面倒くさい)として、内閣府外郭団体と民間企業で管理している民間籍(チャーター)船団*2を、民間軍事企業(SMS社)へと特別に貸し出し、そこがアメリカからの業務を請け負う形とした。

 これによってアメリカ本土師団の輸送は、予定よりも2ヶ月早まる事となる。

 後には、国際連盟加盟国で派遣を宣言した国家の部隊輸送も依頼された。

 SMS社による輸送 ―― 日本船への乗船が、多くの国々が実際に日本を知る機会となる。

 船内での生活の快適さもあって、SMS社輸送船団はその船名などからマル・フリートと言う愛称で親しまれる事となる。

 又、この結果を受けてアメリカもグアム特別州(在日米軍)を介して日本造船会社にRO-RO船の建造を依頼する事と成る。*3

 

 

――烏拉会戦(D-Day+60~61)

 増強された第501増強偵察旅団戦闘団(Gs 501th)*4は、第5015特科大隊の戦闘準備が完了すると同時に、全力で第1歩兵師団(Cc 1st)に殴り掛かった。

 目標は第1歩兵師団の殲滅。

 撃破では無く、可能な限りの被害を与える事であった。*5

 対する第1歩兵師団。

 こちらも周辺偵察は行っていた為、第2騎兵師団(Cn 2nd)と第501増強偵察旅団戦闘団が近傍で戦闘を行っているのは認識していた。

 偵察に出している部隊が襲われる事の警戒はしていたが、戦闘の可能性に関して余り考えては居なかった。

 まさか増強連隊(2,000名にも満たない)規模の部隊が、20,000人を超える自部隊(第1歩兵師団)に積極的に殴り掛かってくるなど、想定出来なかったのだ。

 この油断が、第501増強偵察旅団戦闘団に戦闘のイニシアティブを渡す事となる理由であった。

 そして戦闘が始まる。

 払暁から行われた第5015特科大隊(野砲)の砲撃は、第1歩兵師団にとって最悪の目覚まし音(モーニング・ベル)となった。

 偵察衛星とUAVによる徹底して第1歩兵師団の展開状況を収集し行われたソレは、瞬く間に第1歩兵師団が持っていた野砲などの重装備を粉砕した。

 第5015特科大隊は、2個射撃中隊からなる小規模部隊であったが、19式装輪自走155㎜榴弾砲Ⅲ型は数の不利を補うだけの射撃の正確さと発砲速度を見せていた。

 弾薬給弾車まで展開しての猛射撃は、第1歩兵師団側に複数師団規模砲兵からの射撃と誤認させる程であった。

 そこに第501偵察大隊の装甲車群が突撃する。

 105㎜戦車砲を筆頭に様々な砲弾、機関砲、機関銃、小銃が叩き込まれた第1歩兵師団の戦意は粉砕されていた。

 何より、初弾で師団司令部が物理的に粉砕されている為、抗戦するどころの話では無かった。

 生き残った各級指揮官たちが撤退を指示するが、起伏と植生が乏しい見晴らしの良い場所で逃げる事は簡単では無かった。

 何より機動力の差が大きかった。

 又、第1歩兵師団が潰走段階に達して対空機材の有無が確認された為、大々的に投入する事となった制圧用攻撃機の群れが、大地に赤い染みを広げ続けた。

 第1歩兵師団の8割が、チャイナ共産党軍へ帰る事は出来なかった。

 戦闘が発生した地名から烏拉会戦と命名された第501増強偵察旅団戦闘団と第1歩兵師団の戦いは、都合2日と続いたが、ついぞ戦いと呼べるものにならなかった。

 尚、第2騎兵師団は戦いの余波 ―― 第501増強偵察旅団戦闘団を誘導する為に固まって動いていた所を制圧攻撃機に襲撃され、全滅していた。

 

 

――会戦準備(D-Day+60~67)

 最終的に、チャイナ政府軍がこの戦いまでにかき集めた戦力は5個軍に達していた。

 歩兵師団28個、自動化歩兵師団4個、機械化歩兵師団5個、戦車師団2個の都合39個師団、800,000名に迫ろうかと言う大軍団であった。*6

 しかも兵卒の多くはドイツ軍事顧問団の教育を受けており、高い練度を誇っていた。

 装備も、Ⅳ号戦車を筆頭に300両近く保有している。

 チャイナ政府軍参謀団が、今ならば勝てると信じるに足る戦力であった。

 対するアメリカが用意出来たのは2個軍、約14個師団であった。

 装備の質自体は高く、全ての部隊が最低でも自動車化された高い機動力を誇っていた、

 機械化師団6個、自動化師団2個、機甲師団1個、義勇師団3個、予備師団1個の13個師団、200,000名を超えない程度であった。

 しかも第一次河北会戦の被害を癒しきれていない3個の義勇師団の様に、少なからぬ部隊が万全とは言い難い状態にあった。

 地理的な面から言えば攻勢を掛けているのはアメリカであったが、戦争の主導権はチャイナの手にある事が、この第二次河北会戦に表れていた。

 アメリカは日本の偵察衛星情報で、チャイナの軍事力の集積を把握すると同時に防衛計画を練った。

 彼我兵力差から勝利は望めない事を理解した上で、如何にして被害を限定するかと言う視点での防衛計画であった。

 この為、一時的な放棄の許される領域を計算し、南モンゴル独立派へと一般住民の避難を指示する事となった。

 その際、東ユーラシア総軍司令官は、最低でも来年末までには南モンゴル全域を奪還する事(アイ・シャル・リターン)を約束し、戦場となる南モンゴル領域からの避難を飲ませていた。

 これによって作戦の自由(フリーハンド)を得た東ユーラシア総軍は具体的な戦争準備を進めていく事となる。

 最大の問題は、圧倒的な火力 ―― 野砲の不足であった。

 東ユーラシア総軍の柔らかな下腹部とも呼べる第2軍の中核を成す4個師団に野砲は殆ど配備されていなかった。

 精々が迫撃砲でしかなかった。

 アメリカは航空支援で何とか対応する積りではあったが、それでも対応しきれるとは限らない為、徹底して塹壕を作ると共に、大胆な戦線の整理を予定した。

 対して第1軍に関しては不安を抱いては居なかった。

 2~3倍程度の戦力差であればひっくり返せると確信すらしていた。

 第501増強偵察旅団戦闘団が挙げた戦果は、それ程の自信を東ユーラシア総軍司令部に与えていた。

 南モンゴルの少なからぬ領域を()()()に手放す事を考えていた東ユーラシア総軍であったが、第1軍へ出された基本方針は、現所在地の可能な限りの維持であった。

 これは、南モンゴル全域からの撤退と言う選択肢は取れないと言うアメリカの政治的な立場と、最西端の前線で戦う第501増強偵察旅団戦闘団を見捨てる事が出来ないと言う2つの事情からであった。

 東ユーラシア総軍参謀の1人が、第1軍が敵中に孤立する危険性もあるので後退させるべきだと主張した際、司令官は一言だけ答えた。

 アメリカは戦友を見捨てない、と。

 とは言え、政治的なアプローチからの問題解決を司令官は検討し、そのまま総司令部(ホワイトハウス)へと上げてもいた。

 

 

――渤海海戦(D-Day+68)

 両軍共に決戦の機運を高めている状況で、戦いの口火を切ったのは用意の整いつつある陸では無く、戦意に不足の無い(戦闘を待ちわびた)空でも無く、開戦以来敗北を続けた海であった。

 仕掛けたのはチャイナ。

 先の渤海攻防戦を生き延びていた魚雷艇2隻と、青島にあるドイツの工場から納入された4隻の高速武装艇で渤海臨時戦隊を作り、ここを通るアメリカの船を襲おうとしたのだ。

 狙ったのは()()()()

 河北での大攻勢を前にした側面支援、アメリカの燃料事情に少しでも打撃を与えようとしての事であった。

 最良の選択肢としては無差別な機雷(浮遊機雷)散布による渤海全域の封鎖であったのだが、チャイナの渤海部隊が保有している機雷が少なかった為、次善の策として水上部隊による襲撃が考えられたのだ。*7

 とは言え、機雷戦をしない訳では無く、水上襲撃と前後して偽装漁船による機雷散布を実施する予定であった。

 当然、アメリカは苛烈な反撃を行うであろう事が予想される為、チャイナ渤海部隊はこの作戦の終了と共に渤海海域を脱出する事とされた。

 脱出に際しては、魚雷艇高速武装艇の放棄も認める事とされた。

 とは言え、アメリカは渤海で軽巡洋艦や駆逐艦による哨戒作戦を行っており、襲撃の成功は兎も角として、帰還は絶望的であった。

 その事を理解しつつ、襲撃部隊の将兵は旺盛な戦意を見せていた。

 作戦決行の前夜の壮行会では、歴史あるチャイナの水軍部隊の精華を蛮夷(アメリカ)に教育してやらん、とまで盛り上がるほどであった。

 そして壮行会の翌日、東シナ海に展開していた偽装漁船の情報収集船が、西へ向かうタンカーを発見したとの一報を上げた。

 戦闘艇たちはそれぞれ漁船などの民間船舶に偽装して出撃、分散してタンカーの襲撃を図った。

 対して、アメリカ海軍はタンカーの護衛に2隻の駆逐艦を直衛に充てていた。

 その他に、渤海を巡回(パトロール)している軽巡洋艦を旗艦とした戦隊が存在していた。

 既に渤海はアメリカのコントロール下にある、そんな認識もあって海洋交易路での直衛は駆逐艦2隻となっていたのだ。

 尚、守られているのはタンカーだけではなく、医療物資、或はアメリカ本土からの様々な軍事物資などを満載した貨物船も含まれて居た。

 10隻を超える船団は、ゆっくりと進んでいた。

 そこを襲撃する6隻の戦闘艇。

 高速武装艇が撹乱し、魚雷艇が魚雷でタンカーを仕留めると言う段取りであった。

 国際法上で要求される軍艦旗の掲揚も行わぬまま襲撃を開始した漁船(高速武装艇)に慌てたアメリカ海軍駆逐艦は、翻弄される事になる。

 100tにも満たない高速武装艇は、艦砲どころか機銃が当たっても粉砕されかねない貧弱な存在であったが、撹乱に徹する(回避を優先した)運動を取っていれば、簡単に駆逐艦から排除される事は無いのだ。

 その隙を突いて魚雷艇がタンカーに突撃した。

 魚雷は各艇2発、計4発しかない為、魚雷艇部隊指揮官は少しでも命中精度を上げようと肉薄雷撃を下命した。

 この命令に各将兵は良く従い、魚雷の発射は距離2,000まで我慢した。

 魚雷艇の動きに気付いた駆逐艦が必死に阻止しようとするが、今度は高速武装艇が邪魔をする。

 次々と撃破される高速武装艇。

 魚雷艇も1隻、身を挺して沈んだ。

 だが、それらの献身あればこそ、旗艦の魚雷艇は絶好の魚雷発射位置に到着した。

 人の執念の結実であった。

 放たれた魚雷は、狙い誤る事無くタンカーの横っ腹に命中した。

 上がる水柱、魚雷艇には歓声が充満した。

 だが()()はそこまでだった。

 水柱が消えた後、そこにあったのは何事も無く進む中型タンカー(15万t級スエズMAX)の姿だった。

 命中はしたが火災も発生せず、威風堂々と進んでいる。

 二重船殻や不活性ガスシステムなどの安全性もだが、そもそも、下手な戦艦よりも巨大な船体が高い防御力を与えているのだった。

 魚雷艇の乗組員たちは、その様に驚愕したまま水底へと沈むのだった。

 

 

 

 

 

 

*1

 US:アメリカ

 Gs:グアム共和国(特別自治州)

 kr:朝鮮(コリア)共和国

 Fr:フロンティア共和国

 Bc:バルデス国

 Sr:シベリア共和国

 

 Cn:チャイナ

 Cc:チャイナ共産党

 

*2
 

 タイムスリップした直後の不況時、造船会社倒産の危機を乗り切る為に日本政府は造船各社が建造中だった様々な貨客船や客船を買い取っていた。

 それから20年近くが経過した現在、日本連邦統合軍の裏方を支える戦力となっている。

 当初は時機を見て海上自衛隊に吸収させる予定であったのだが、定年退職した海上自衛官の再就職先として便利であった為、内閣府の外郭団体が一元管理する現体制へとなっていた。

 現在、人員輸送艦(100,000総t級客船)なでしこ型を中心とした軍事規格船8隻と15隻の高速貨客船(高速フェリー)、3隻の大型客船(人員輸送/病院船)と5隻の自動車運搬船(重量物運搬船)が在籍している。

 以前はタンカーも在籍していたが、日本経済の活動活発化に伴い、民間へと売却されている。

 

 

*3
 

 尚、このRO-RO船を手本として、アメリカ国内でも独自に類似船舶の建造に取り掛かる事となる。

 

 

*4
 

第501増強偵察旅団(臨時集成部隊)

 第501偵察大隊

 第1021自動車化歩兵連隊

 第5011集成自動車化歩兵連隊

 第5015特科大隊

 

*5
 

 尚、捕虜に関しては認められないとされた。

 投降してきた場合、武装解除後に()()()()()()()()()()()()()とされた。

 寒い南モンゴルの地で、乱暴狼藉の限りを尽くした人間が、武器も無く解放された場合にどうなるか。

 その点に関してアメリカ軍の法務が議論する事になったが、余剰人員を抱えるだけの物資的な余裕が無い事と、南モンゴル人の()()()()()()が重視された為、投降者の保護は行われない事が決定された。

 東ユーラシア総軍参謀団の一部には、南モンゴル人のストレス発散によってチャイナと南モンゴルの間で根深い民族的対立が発生し、将来的な国家の再統合を妨げる事に繋がる事を期待する人間も居た。

 

 

*6
 

 チャイナ政府軍に於いて、機械化歩兵師団と自動化歩兵師団の違いは、戦車部隊を最低でも大隊規模で持っているか否かという点であった。

 又、歩兵部隊の移動に自動車/トラックを装備すると言う意味での分類もあった。

 10台以上の車両があれば自動化歩兵師団であり、装備率が50%を越えれば機械化歩兵師団として扱われるという。

 ある意味で大変におおらか()な分類が成されていた。

 

 

*7
 

 本来チャイナは4桁を超える機雷を用意していたのだが、開戦劈頭のアメリカ海軍の攻撃によって失われていたのだ。

 現在、急いで量産を進めているが、備蓄されているのは100基に満たない数であった。

 

 




2020/04/19 文章修正
2020/04/20 文章修正
2020/04/22 文章修正
2020/04/26 文章修正
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