俺は魔王の女王で魔王の妹は俺の女王で婚約者   作:黒幻

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なんか書いてると、どんどん新しい設定やらを思い付いて、足していったら長くなる(^_^;)

文才や語彙力がある人ならもっと的確に短く出来るんだろうけど⋯

そういうのがある人は本当に羨ましいです。
 

アンケートは次の話しが書き終わり次第終わりと決めていて、それまで殆んど途中経過を見てなかったのですが。
ようやく書き終わって見てみたら同率だった為、次の1票が入った時点で終了と決めて、ちょくちょく見てたら最後の1票はレイナーレに入りました。
という事で一誠のヒロインは天野夕麻ことレイナーレに、アーシアは主人公のヒロインになります。

そして、アンケートに書いた通り、原作入りは旧校舎のディアボロスからとなります。


もう少し先の話しなんですけどね⋯(すいません)

まさかここまで接戦?になるとは思いませんでした。

ご協力ありがとうございました。

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【12歳】家族

シトリー家、現レヴィアタンを輩出した名門であり。

元72柱12位にして、水の魔力の扱いに長ける一族。

その領地は上級悪魔の中でも有数の自然保護区の数を誇り、多くの美しい景観に恵まれている。

医療機関が充実していることでも有名で、冥界でも名だたる病院がある事で知られている。

俺は今、そんなシトリー領の森の中深くに来ていた。

 

レイ「それで、どうだった?」

 

俺は木にもたれ掛かりながらそう言うと。

 

「完璧に黒ね⋯今すぐにでも殺したくなる位に不愉快な内容だったわ」

 

すると反対側から少女の声が不愉快そうに返して来た。

この声の持ち主は半年程前に出会った眷属候補の一人、そして今はある仕事を任せている少女。

 

レイ「そうか⋯それは良かった、これで漸く黒歌を無罪に出来るだけの材料が揃った訳だな」

 

少女の報告を聞き、俺は反対に口角を上げそう言った。

何故ならその仕事とは黒歌に関する事だったからだ。

 

「そうね、けど⋯調べて解ったけど、その男⋯はっきり言ってただの馬鹿よ?調べれば調べる程に馬鹿さが顕になっていったもの」

 

レイ「だろうな、俺も最初はお前の報告を聞いた時には驚いたよ、本人はああ言う行いを全く恥ずかしいとも思っていない、周りはあんなにも火消しに躍起になってると言うのにな」

 

そんな俺の言葉に、少女は同意してから今度は心底呆れた様に言った。

だが、それも当然の事だろう、黒歌の元主は余りにも愚かで、また馬鹿だったのだから。

 

「ええ、でも⋯だからこそ、本来ならもう捕まってなきゃおかしいんだけどね⋯」

 

そう、そんな愚か者なのに今までそれらの行いが一切露見していないと言う事、それがどういう事なのか⋯そんなのは少し考えれば馬鹿でも解る事だ。

つまり⋯。

 

レイ「本来ならな、だがそのお陰で確定しただろ?確実に後ろに誰かが居た⋯」

 

「そうね、それも⋯かなりの権力者、あれだけ恥ずかしげもなく行われていた非道な行いを揉み消せる程の⋯」

 

その馬鹿を飼っていた奴が居たと言う事、そしてその誰かが、馬鹿の行った悪行の全てを揉み消したと言う事だ。

 

レイ「ああ、取り敢えず黒歌の無実を証明は出来るとして⋯」

 

「今度はそっちね?」

 

だから、次の目標はその飼い主なのだが⋯。

 

レイ「ああ、一体何処の馬鹿なのか知らんが、だが⋯恐らくはかなり警戒されてる筈だ、本当ならまだ転生前のただの人間のお前にこれ以上は「レイ君」⋯何だ?」

 

正直に言ってやらせたくは無い⋯そう言おうとして、少女に遮られた。

 

「私なら大丈夫よ、元々そういう裏の物を専門に調べたりする、暗部の家に産まれたのだもの。

それに、なによりも貴方には恩がある、妹を連れて逃げていた私を助けてくれた。

そして、あの家と違って私にもあの子にもこう言う仕事を強要しなかった。

今回の件だってそう、貴方はまず私に知識を聞いて来た、それはつまり⋯自分自身でやるつもりだったのでしょう?」

 

レイ「⋯⋯⋯」

 

そんな少女の言葉に俺は何も言えずにいた。

そう、全て彼女の言う通りだった、俺は黒歌の件を一人で片付けようとしていた。

だが、俺は派手にやる事には慣れているが、秘密裏に何かをやるには明らかに経験不足だった。

その時にこの少女の家が所謂暗部の家系だった事もあり、色々と教えて貰おうとした所、理由を聞かれ全てを話した所、自分がやると言って来た。

当然、最初は駄目だと言ったが、その時に「貴方がしくじれば黒歌ちゃんとその妹は更に窮地に立たされる事になる、それに貴方は私を眷属にするのでしょ?王様ならどっしりと座ってれば良いのよ、そして私自身も、神器以外にも使える所があるって貴方に見せておかないとね」とウインクしながら言った。

黒歌の事に対してのそれは正論だった、当然しくじるつもりは無いが、それも100%では無い、俺も流石に慣れてない事までは完璧に出来ないと、そう思ったからだ。

 

「沈黙は肯定と取るわ、私達はまだ貴方に助けられて半年と少し位だけど⋯貴方は敵対する者にはどこまでも冷酷で残酷だけど、逆に身内には何処までも甘いのを知ってるわ。

私達姉妹にだってそう、私を眷属にするのだって強制しなかった、私を⋯ううん、あの子を助ける代わりにって言えば、私は従わざるを得なかった。

でも貴方は決してそんな事を言わなかった、しかも「望むのならば別人として暮らせる様にして、人間界に戻してやる」なんて言うのだから。

あの時、助けられる代わりに一体何を要求されるのだろうか?なんて悩んでた自分が心底馬鹿らしくなったもの」

 

そんな俺に少女は続けて助けた時の事を持ち出しそう言った。

()()】それは他の人達にも最近特に良く言われる事だった、俺はそんなつもりは無いのだが、どうやら俺は身内には滅法甘いらしい。

セラフォルー様からも「レイ君は他人には一切の容赦が無いのに、私やソーナちゃんにはもちろんだけど、ヴァーリ君や眷属候補の子達にもとことん甘いよね~☆あ、後リアスちゃんとかにも☆」と言われた。

甘いと言われるならばそれは。

父上の騎士で戦いの基本や眷属としてのあり方を教えてくれた、教育係りの上級悪魔。

修行中に出会い、俺に剣と刀、抜刀術を教えてくれた二人の剣術の師匠。

素手での戦い方を教えてくれた武の師匠。

俺が3つの属性を持っていると知り、その内の一つの魔力の使い方、そしてそれでの戦い方を教えてくれた魔の師匠。

そして、ギル⋯は無いか。

とにかく、この中の誰かが原因だろう。

だが⋯

 

レイ「当然だ、俺は何のメリットも無いのに人助けをするようなお人好しじゃ無い、お前の神器に眼を付けたのも事実だ、だが⋯助けるからとか恩を返せだとかそんな下らない理由で、なにかを強制するつもりは端から無い。

それは、俺が悪魔になってから見てきた中で一番、二番に嫌ってる糞共と同じだからな」

 

例えそう言われようとも、俺は決して自分に、そしてセラフォルー様やシトリーにメリットがなければ、例え目の前で関係無い誰かがどうなろうと決して動く事は無い。

そしてそれは、この少女も例外ではなかった。

だが、だからと言って嫌がる奴に強要なんて決してしない、それをすれば俺は黒歌の元主となんら変わらないのだから、そんな奴と同じなど⋯考えただけで吐き気がする。

 

「でも、それじゃあ私達を助けるメリットは何だったの?無理矢理眷属にする訳でも無い、それどころか新しい人生をくれるなんて⋯貴方にはメリットなんて無いどころかデメリットしか無い様にしか聞こえないのだけれど?それに、本当に悪い人なら自らそんな事は言わないわよ?そういう連中は皆自分を良く見せようとする物なんだから」

 

俺の言葉に少女は納得出来ないとでも言いたげにそんな事を言う。

だが、なんと言われようと、どう思われようとも俺の考えは変わらない。

これまでも、そしてこれからも興味が無ければ、メリットが無ければ助けない。

俺が守りたいと思う者達を除いてはだが⋯。

 

レイ「買い被りすぎだよ、俺がお前達姉妹を助けるメリットならちゃんとあったさ」

 

「それは?」

 

俺がそういうと少女は本当に分からないと言う様な口調だった。

 

レイ「強力な神器を持っているお前との眷属交渉が出来ただろ?そして、結果的にお前は俺の眷属になってくれるんだろ?」

 

「それだけ?そんなのは私が断ったらその時点で終わりじゃないのよ」

 

レイ「それで良いんだよ、お前にはその程度の事でも、俺にとってそれは⋯セラフォルー様を、そしてソーナやシトリーを守る為に力を求めてる俺にとっては喉から手が出る程に重要な物だ」

 

俺の言葉に驚きを隠せずにいる少女に、俺は正直に答えた。

 

「そう⋯でも、だったら余計に私を使うべきよ、貴方は私の力を求めて私はそれを受け入れた、なら⋯何も迷う必要なんて無いじゃない。

私は貴方の為ならば何だってすると決めた、だから貴方は私を信じて命令してくれれば良いの。

さっきも言ったけれど、私は元々それらの類いの物を専門に調べて粛正する為の家に産まれたのだから、仕える相手が国から貴方に変わっただけで、私のやる事は変わらない。

貴方が私の力を求めてくれるのならば、私は全身全霊で貴方の期待に応えて見せるわ!必ずね」

 

それを聞いた少女は姿を表して俺の正面にまわり、さっき以上に力強くそう言った。

 

レイ「そうか⋯分かった、ならこの件もお前に調査を任せる」

 

「ええ、任せておいて」

 

本当なら未だやらせたくはない、だがここまで言われてやらせなければ、それは俺がこの少女を信頼しないと言ってるのも同義だ。

俺は出会った者の9割以上は信頼していない、むしろ信頼出来る者の名を上げた方が早く済むだろう。

だからこそ、本当に信頼出来る者には誠実で無ければいけないと思っている。

だから、俺はこの仕事をこの少女に任せる事にした。

俺の答えを聞いて、満足したように笑顔で頷いた後、少女は真剣な顔で力強く言った。

 

レイ「その件が終わり次第、黒歌の無罪をサーゼクスさんに訴えに行く」

 

「分かったわ、出来るだけ早く終わらせるわ」

 

レイ「ああ、だが⋯」

 

「決して無理はするな、慢心するな、ヤバくなったら逃げろ、でしょ?大丈夫よ、ちゃんと分かってるから」

 

そう言うと、少女は当たり前の様にそう言った。

そんな少女に俺はいつも言ってる事を言おうとするが、少女はもう聞き飽きたとでも言いたげに先に言った。

俺が何時も危険な仕事を任せる奴に言う言葉、この間はヴァーリにも同じ様に言われたっけな。

 

レイ「分かってるなら良い、この仕事は任せたぞ?」

 

「ええ、必ず貴方の期待に応えて見せる!―――あっ!」

 

そう言って少女は立ち去ろうとして、何かを思い出したのかの様に声を上げた。

 

レイ「どうした?」

 

「そう言えばレイ君、もうすぐ駒を貰えるのよね?」

 

何かと思えば駒の話しだった。

まあ、気になるのも当然か、大して変わらないとは言え人間を辞める訳だからな。

 

レイ「ああ、準備が整い次第渡すってセラフォルー様伝にサーゼクスさんから言われたよ」

 

「そう、じゃあいよいよなのね!」

 

レイ「そうなるな」

 

セラフォルー様から言われた事を伝えると、少女は嬉しそうに言った。

そんな少女の姿に、俺も笑みを浮かべながら返した。

 

「だったら、余計にこの仕事は完璧に、そして早く終わらせ無いとね」

 

レイ「そうだな、急かすつもりは無いが出来れば駒を貰う前に終えてくれると助かる」

 

更にやる気を出した少女に、俺はいつも通りの口調で言うと。

 

「黒歌ちゃんの為にも、よね?」

 

レイ「ああ、だが⋯何度も言うが絶対に無理だけはするなよ?」

 

からかう様な感じで言う少女に、俺は表情を変えずにそう言うと。

 

「もちろん、貴方を失望させる様な事も、顔に泥を塗る様なヘマもしないわ、じゃあねレイ君」

 

少女は笑顔で、だけども真剣な顔でそう言って、手を振りながら今度こそ俺の前から去って行った。

 

レイ「はぁ⋯そういうことじゃないんだがな⋯成功すればそれで良し、失敗しても俺がどうにかするから、その辺は良いんだがな⋯頼むから無事に帰って来てくれよ―――刀奈」

 

俺はその背を見送りながら一人そう呟いた。

 

――――――――――――――――――――――――

 

一ヶ月後

 

俺は刀奈から例の件の報告を聞き、自分の家に戻って来た。

 

レイ「黒歌居るか?」

 

黒歌「どうしたにゃ?レイ」

 

俺はリビングの扉を開けてそう言うと、ソファに寝そべっていた黒歌が顔を上げた。

 

レイ「喜べ!全て解決したぞ」

 

黒歌「解決って⋯まさか!」

 

俺がそう言うと、最初こそ何が?とでも言う様に不思議そうな表情を浮かべるが、すぐに言葉の意味を理解したのか、徐々に驚きの表情に変わった。

 

レイ「ああ、お前の元主だった奴とそれに荷担してた奴等の罪の証拠、そして⋯それらの罪を握り潰してた奴の事も全て調べがついた」

 

黒歌「本当⋯にゃ?」

 

俺はその報告と共に、刀奈から受け取った資料に書かれてた事を説明すると、黒歌は言葉を詰まらせながら言った。

 

レイ「ああ、これでお前は自由だ」

 

黒歌「レイ⋯本当に⋯本当にありがとうにゃ」

 

そんな黒歌に俺は笑顔で言うと、黒歌は目に涙を浮かべながらそう言い、俺に抱き付いて来た。

今日の黒歌は随分と表情が豊かだな。

 

レイ「気にするな、そういう約束だったからな。

それに、礼なら俺じゃ無くて刀奈に言ってやれ」

 

黒歌「刀奈に?」

 

俺がそう言うと、黒歌は首を傾げた。

 

レイ「俺は大っぴらに動けないからな、あいつに頼んだんだ、だから実際に調べたのはあいつで俺じゃない」

 

そう、俺は今回何もしてないに等しい、だからそのお礼も称賛も言われるべきは刀奈だ、俺はあくまでも万が一に失敗した時の為の準備をしていただけなのだから。

 

黒歌「そうなんだ⋯分かったにゃ、刀奈にもちゃんとお礼を言っとくにゃ。

でも⋯それでもレイが動いてくれなきゃこうはならなかったにゃ、だから⋯ね?本当にありがとう⋯レイ」

 

レイ「⋯ああ、取り敢えずこれからセラフォルー様とサーゼクスさんに駒の件で呼ばれてるからお前も来い、そこでお前の無罪も証明する」

 

黒歌「分かったにゃ⋯」

 

レイ「安心しろよ、何かあったら必ず俺が守ってやるから」

 

黒歌「うん!」

 

レイ「そう言えばヴァーリの奴は何処に行った?彼奴も一緒に連れて行こうと思ったんだが⋯」

 

黒歌「ヴァーリ?ヴァーリなら確か⋯」

 

ヴァーリ「俺ならここに居るよ兄さん、話しも聞いてた、やっと貰えるんだな」

 

後ろからヴァーリがそう言いながら出て来た。

 

レイ「なんだ、居たのか、それに話しを聞いてたならちょうど良い、一番最初に俺の駒を渡すのはお前って決めてたからな」

 

ヴァーリ「!そっか⋯嬉しいよ、ありがとう兄さん」

 

レイ「それじゃあ行くぞ、二人共」

 

ヴァーリ&黒歌『ああ/分かったにゃ』

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

コンコンッ

 

サーゼクス「どうぞ」

 

レイ「失礼します」

 

サーゼクス「やあ、待っていたよレイ君」

 

ノックをしてから中に入ると、サーゼクスさんが座っていた。

 

レイ「すみません、待たせてしまったみたいで」

 

サーゼクス「なに、構わないさ、それにセラフォルーがまだ来ていないからね」

 

俺が謝るとサーゼクスさんは笑顔でそう言った、確かにいつもなら入ると同時に抱き付いてくる筈のセラフォルー様の姿が見当たらない。

だが今はそれよりも大切な事がある。

 

レイ「そうですか、なら⋯俺の用件を聞いてもらっても良いですかね?」

 

俺はサーゼクスさんの目を真っ直ぐに見ながらそう言った。

 

サーゼクス「ん?ああ、構わないよ?何だい?」

 

レイ「ありがとうございます、じゃあまず⋯これを読んで下さい」

 

俺はそう言って刀奈から受け取った資料を手渡した。

 

サーゼクス「これは?」

 

レイ「俺の眷属候補に調べて貰った、不愉快な者達の資料です、取り敢えず読んで貰えれば解って貰えるかと」

 

サーゼクスさんの質問に、俺は敢えて中身を言わずにそう言った。

 

サーゼクス「分かった、では読ませて貰うよ」

 

サーゼクスさんは俺の言葉に頷いて資料を読み始めた。

 

数分後⋯

 

サーゼクス「これは⋯酷いな⋯」

 

資料を読み終えたサーゼクスさんは顔をしかめながらそう言った。

 

レイ「そこに書いてある事は全て事実です、それ以外にも証拠足り得る物は数多くあります」

 

サーゼクス「⋯そうか、ちなみに⋯これを僕に見せた、一番の理由を教えてくれるかな?

こう言っては何だが、いくら相手が悪事を行ってるからって、君は正義感だけで動く事は無いだろう?」

 

俺は資料を読み終わったサーゼクスさんにそう言うと、サーゼクスさんは真剣な顔でそう言った。

 

レイ「そうですね」

 

俺は苦笑しながら言った。

流石サーゼクスさん、付き合いが長いだけあって、俺の事を良く知っている。

 

サーゼクス「そんな君がこの様な危険を犯してまで行った理由⋯それは?」

 

レイ「貴方なら解っているでしょう?」

 

サーゼクス「ああ⋯もちろん解っているよ、でも⋯立場上直接君の口から聞く必要があってね」

 

レイ「そうですか、じゃあ改めて⋯それらは全て、黒歌を無罪にする為に調べ、集めました。

あいつは⋯黒歌は決して力に溺れてなんかいませんでした、全ての非は黒歌の元主とそこに書いてある連中にあります」

 

まあそうだろう、魔王である以上自分の憶測で何かを決め、進める事は出来ない、当然と言えば当然だ。

サーゼクスさんの言葉に、俺はそう答え、そして断言した。

 

サーゼクス「そうか、やはり僕の想像通りに動いてくれていたんだね。

彼女の件、君に任せて本当に良かった」

 

俺の言葉を聞き、サーゼクスさんは笑顔でそう言った。

 

レイ「それはどうも⋯やっぱり知ってて黙ってたんですね⋯。

でも⋯それなら、もう一つの事も⋯理解して頂けてますよね?」

 

俺は皮肉を込めて言った、知られている事は知っていたしな。

そして、もう一つの事⋯それはさっき言った『()()()()()()()()()()()』と言う言葉。

それが意味する事、それは⋯

 

サーゼクス「ああ、もちろんだ⋯どんな理由にせよ、彼らの処分に手心を加えれば⋯」

 

レイ「はい、どんな手を使ってでも、その結果俺はどんな罰を受けようと⋯」

 

サーゼクスさんの言葉を引き継ぐ様に俺は言った、それでも最後の言葉は口には出さず呑み込んだ。

圧力、金銭、その他にも色々な手を使ってでも、連中は自分達の罪を無かった事にしようとするだろう。

だから、もしもそんな事を許すのならば『()()()()』その言葉を⋯。

 

サーゼクス「もちろんだ、決して一切の譲歩はしないと約束するよ、魔王の⋯いや、リアスに誓ってね」

 

レイ「そうですか、それなら安心ですね」

 

サーゼクスさんの宣言に、俺はそう返した。

前にグレイフィアさんから聞いた事がある、サーゼクスさんはリーシアさんやセラフォルー様などの身近な人に何かを約束する時、希に魔王では無くリアスに誓うとの事だった。

だが、それは決してふざけてる訳では無い、サーゼクスさんはリアスを溺愛している為、リアスに誓ってした約束だけは例え何があろうと【必ず】守るらしい。

その理由としては、もしも出来なければ、それはリアスの耳に入り⋯嫌われるからだとか。

 

サーゼクス「ああ、任せておいてくれ、それと⋯少し早いが⋯現時点を持って、黒歌君のはぐれ認定を取り消す」

 

レイ「そうですか、ありがとうございます」

 

サーゼクスさんは笑顔でそう言った、俺は少し驚きながらもお礼を言った。

 

サーゼクス「なに、当たり前の事だよ、それと⋯そろそろ外の子達を呼んであげたらどうだい?」

 

レイ「⋯まあ、気付きますよね⋯」

 

サーゼクス「まあね、これでも一応魔王だからね」

 

サーゼクスさんは扉を見ながら言った、俺は二人にそこで気配を消して待ってろと言っておいた、万が一どころか億が一程にもしもの事だったが、サーゼクスさんが報告した連中の肩を持った場合、最悪戦闘になってでも黒歌を逃がす必要があった為だ。

 

レイ「ですよね⋯気配もだだ漏れですし、はぁ⋯入って良いぞ二人共」

 

俺はため息をつきながら、扉に向かってそう言うと。

 

ヴァーリ「ああ⋯悪い兄さん⋯でも、俺じゃないぞ!黒歌が気配を消さないからだ」

 

黒歌「私のせいにするのかにゃ!?ヴァーリだっていざとなったらって殺気出しまくりだったにゃ!!」

 

ヴァーリ「何だと!!」

 

黒歌「やるかにゃ!!」

 

二人共に入ってくるなり言い合いを始めた。

 

レイ「お前ら⋯その辺にしとけよ?」

 

ヴァーリ&黒歌『ッ⋯ごめん⋯/ごめんにゃ⋯』

 

そんな二人に俺は少し殺気を出しながら言うと、二人は素直に謝り静かになった。

 

黒歌「でも⋯正直関係無いと思うにゃよ?」

 

レイ「?どういう意味だ?」

 

ヴァーリ「だって⋯」

 

黒歌の言葉に俺がそう言うと、ヴァーリが入って来た方を見ながら何かを言おうとした時―――

 

セラ「レイく~ん☆」

 

レイ「セラフォルー様!?」

 

セラフォルー様が俺に向かって飛び付いて来た。

 

セラ「そうだよ☆遅れちゃってごめんね~」

 

レイ「えっと⋯一体いつから⋯」

 

俺に抱き付き、頬擦りをするセラフォルー様にそう聞くと。

 

セラ「ん?レイ君が黒歌ちゃんの名前を出した辺りからかな?」

 

レイ「ほぼ最初からじゃ無いですか⋯」

 

それを聞き俺は唖然とした、何故なら―――

 

セラ「うん、それにしても私の気配に気付かないなんて、レイ君落ち着いてた様に見えて、意外にも気を張ってたんだね~☆

でも、そんな風に黒歌ちゃんの為に頑張るレイ君も格好良かったよ☆」

 

そう、普段の俺がセラフォルー様の気配に気付かないなんて事はあり得ない。

でも今回は全く気付いていなかった、セラフォルー様の言う通り、自分でも知らない内に緊張してた様だ⋯。

 

レイ「すみません⋯」

 

セラ「気にしなくて良いのよ☆それだけ大変な事をしたって事なんだから☆

それに、これで全部解決でしょ☆ね?サーゼクスちゃん?」

 

俺は気付けなかった事が地味にショックだった、いくら緊張してたとは言え、俺にとって最も大切で敬愛してる人に気付けなかったのだから。

落ち込みながら謝ると、セラフォルー様は笑顔でそう言い、サーゼクスさんにもそう言った。

 

サーゼクス「もちろん、後は僕達の仕事だ、前にも言った通り⋯僕が責任をもって、必ず相応の罰を与える」

 

セラ「なら、この話しはこれで終わり☆早く本題に入ろう?」

 

サーゼクスさんがそう断言すると、セラフォルー様はそう言った。

 

レイ「セラフォルー様⋯少し軽すぎませんか⋯?仮にも自分の女王がはぐれ悪魔を匿ってたんですよ?」

 

俺はセラフォルー様もこの件を知ってる事は知っていたが、それでもそう言わずにいられなかった。

 

セラ「だって~、漸くレイ君に駒を渡せるんだよ?本当ならもっと早くあげても良かったのに~、皆煩いんだもん。

それに、例えその子がどんな事情を持ってる子でも、レイ君は絶対に私を裏切らないし、迷惑を掛けようとはしないでしょ?」

 

レイ「それは、もちろんです!」

 

すると、セラフォルー様はそれを意にも介さずにそう言った。

俺はセラフォルー様のそんな言葉に、当然っと力強く返した。

 

セラ「だったら、何も問題無いでしょ?私はレイ君を信じてるもん☆

あっ、もちろん迷惑を掛けても良いんだけどね?」

 

レイ「セラフォルー様⋯」

 

セラフォルー様は続けてそう言ってくれた、その言葉は正直今までで一番嬉しかった、俺にとって何よりも大切な人の一人であり、主でもあるセラフォルー様からそんな風に言われたのだ、嬉しくない訳がない。

 

セラ「だ・か・ら、な~んにも問題無し☆ね?」

 

レイ「はい⋯ありがとうございます⋯セラフォルー様」

 

満面の笑みのそう言うセラフォルー様に、少しドキドキしたが、俺は出来る限り平常心を保ちながら笑顔でそう言った。

 

グレイフィア「お疲れ様でした、レイ様」

 

レイ「グレイフィアさんまで⋯」

 

グレイフィアさんもまた、セラフォルー様と共に入って来ていたのだが。

 

グレイフィア「はい、申し訳ありません、セラフォルー様が「レイ君の格好良い所見たいから静かにね☆」と仰った物ですから」

 

レイ「そうでしたか⋯なんかすみません」

 

だから、二人して一緒だったんだ⋯。

 

グレイフィア「いいえ、確かにレイ様は格好良かったですよ?

例え知り合いとは言え、魔王様を相手に対等に言い合える者を私は知りませんから」

 

レイ「⋯ありがとうございます」

 

グレイフィア「いえ」

 

グレイフィアさんまで笑顔でそんな事を言ってくれた。

 

レイ「あれ?そう言えば⋯なんでグレイフィアさんが?」

 

グレイフィア「今日はレイ様が駒を貰うと言う事でしたので、サーゼクス様に言って、同行させて貰う事にして頂きました」

 

レイ「⋯?なんでグレイフィアさんが?」

 

俺は素直に疑問を口にすると。

 

グレイフィア「何故でしょうね?申し訳ありませんが、ここから先はレイ様自身に気付いて頂きたいので、私の口からは言えません」

 

レイ「?そうですか⋯」

 

グレイフィアさんは俺の耳元でそう言った、気付いてって何をだろう⋯。

そうして話していると。

 

セラ「それじゃあ、さっそくだけど⋯サーゼクスちゃん?」

 

サーゼクス「ああ、行くとしようか」

 

セラフォルー様の言葉にサーゼクスさんはそう言って立ち上がった。

 

ヴァーリ「行くって何処に?二人のどっちかが駒を持ってるんじゃ無いのか?」

 

黒歌「私に聞かれても知らないにゃ、私だって駒を貰う所何て初めて見るんだから」

 

ヴァーリが黒歌に小声でそう聞くと、黒歌も同じく小声でそう言った。

 

サーゼクス「そう言えば説明がまだだったね、駒はただ渡すだけじゃ駄目なんだ」

 

ヴァーリ「そうなのか?」

 

二人の会話はサーゼクスさんに聞こえてた様で、そんな二人にサーゼクスさんは歩きながら説明してくれた。

 

サーゼクス「ああ、何の制限も掛けずに渡してしまえば悪用する者が出かねないからね。

そうなれば、身勝手な者達が権力を振りかざしたり、お金を積んだりして、幾つもの駒を所有しかねないからね。

それに最悪⋯駒を巡って争いが起こるかも知れない⋯そうなれば本末転倒だからね。

だから渡す時は皆、例え貴族や魔王だろうと例外無く登録が必要なんだ。

そうする事で、登録した本人以外には決して使えない様になるんだ。

だから、例え相手を殺して駒を奪ったとしても、奪い取った者はその駒をどうすることも出来ない」

 

黒歌「成程ね⋯だからこんな便利な物なのに裏に出回ったりしないのね」

 

ヴァーリ「確かに、そうでもしておかなきゃ、いつも兄さんを不愉快にさせてる馬鹿共がとっくに占有してるだろうな」

 

レイ「そうだな」

 

黒歌「最近、私関連の資料を見る度に純血悪魔は馬鹿ばかりだと思ってたけど、魔王達はまともで本当に良かったにゃ。

これで魔王まで同類だったら、もう本当に救いようが無かったにゃ」

 

サーゼクス「ははは⋯流石はレイ君の眷属になる子達だね⋯レイ君同様にズバッと言うね、言葉に迷いが無い。

だが⋯残念な事にその通りだね⋯わざわざこんな手間を掛けてまで、ここまでしなければならなかったのが事実だ」

 

セラ「そうだね⋯」

 

レイ「ヴァーリ、黒歌」

 

ヴァーリ「うっ⋯ごめん」

 

黒歌「つい⋯」

 

二人の名前を呼ぶと、二人は気まずそうに謝るが⋯。

 

レイ「例え事実だとしても、もう少しオブラートに包め」

 

ヴァーリ「⋯そうだな、例え事実だったとしても、もっと言葉を選ばなきゃな」

 

黒歌「そうね、例え事実でも、ね」

 

俺も全く同じ気持ちだった為、怒ることなどしない。

 

サーゼクス「⋯⋯⋯三人共⋯その辺にしてもらえないかな?流石に傷付きそうだ⋯」

 

セラ「うん、私にも地味に来るから⋯そうしてくれると助かるかな⋯」

 

レイ「すいません⋯最近は連中のやってた事が毎日の様に出て来たせいでストレスが溜まってまして、つい⋯」

 

三人の口撃に流石のサーゼクスさんも止めに入って来た。

何時もなら俺が止めるのだけれど、今回ばかりは俺も一緒になって言ってしまった。

 

ヴァーリ「全くだ!そのせいで日に日に兄さんの機嫌が悪くなっていったんだ、これ位は言わないと気が済まない」

 

黒歌「その通りにゃ!私の事で怒ってくれてるのは嬉しいけど⋯物凄く怖かったんだからにゃ?」

 

サーゼクス「そうだったのか⋯それは⋯災難だったね⋯」

 

二人のそんな言葉にサーゼクスさんは苦笑いしながらそう言った。

 

レイ「お前ら?それは俺に対しての苦情って事で良いんだな?」

 

ヴァーリ「だ、断じて違う!兄さんは何も悪く無い!」(兄さんに苦情なんてあるものか!そんな事を言えば1日の扱き量が増える)

 

黒歌「そ、そうにゃ!悪いのは全部あの馬鹿共だにゃ!」(レイに苦情なんて言ったら⋯ご飯抜きにされるにゃ)

 

俺が軽く睨みながらそう聞くと、二人は焦った様に直ぐに否定した。

 

レイ「そうか」

 

そんな二人に俺は苦笑しながらそう言った。

 

ヴァーリ&黒歌(はぁ~良かった⋯)

 

自分達の失言に気付いた二人は慌てて否定した。

だが、それにレイが笑っているのを見て、心から安心していたのは二人の秘密だ。

 

セラ「そんなに機嫌悪かったの?私やソーナちゃん前ではいつもと変わらず優しかったよ?」

 

ヴァーリ「そりゃあな⋯」

 

黒歌「二人に対してだけはどんな時でも優しいレイにゃ⋯むしろ機嫌が悪くなってる所を見たこと無いにゃよ」

 

セラフォルー様の言葉に、二人は俺の方を振り向いて少し羨ましそうに言った。

 

セラ「そうだねぇ⋯そう言えばレイ君が私やソーナちゃんに対して、怒ったり機嫌悪くなったりした事は一度も無いよね?」

 

それを聞いたセラフォルー様も俺の方を向いて首を傾げそう言った。

 

レイ「まあ⋯セラフォルー様やソーナに対して怒りの感情を持った事なんて一度もありませんからね。

それに、二人は俺にとって何よりも大切な存在ですし持つ事も、必要もないですよ」

 

当然だ、セラフォルー様やソーナ相手にそんな感情になることなんてあり得ないだろう。

俺としても何があれば二人に対してそんな感情になるのか知りたい位だ。

 

セラ「レイ君⋯」

 

レイ「はい?」

 

足を止めたセラフォルー様に呼ばれ、同じく足を止めると。

 

セラ「やっぱり大好き~!!」

 

セラフォルー様はいつも以上に思いっきり抱き付いてきた。

 

レイ「どうしたんですか⋯?いきなり」

 

セラ「だって~今のレイ君の言葉⋯すっごく嬉かったんだもん☆」

 

レイ「そう⋯ですか⋯」

 

俺がそう聞くと、セラフォルー様は満面の笑みで俺を抱き締めた。

 

サーゼクス「さて⋯いつの間にか着いたようだね」

 

セラ「あっ!本当だ☆」

 

そんなこんなでいつの間にか目的の場所に着いた様だ。

 

サーゼクス「さて、ヴァーリ君、黒歌君、済まないが二人はここで待っていてくれるかな?」

 

ヴァーリ「まあ、そうだろうな」

 

黒歌「分かったにゃ、待ってるからさっさと済ませて来るにゃ」

 

サーゼクスさんが二人にそう言うと、二人は仕方無いとでも言う様な感じで階段に座り、そう言った。

 

アジュカ「待っていたぞ」

 

中に入ると、もう一人の魔王であるアジュカさんが居た。

 

サーゼクス「すまない、アジュカ」

 

セラ「ごめんね?アジュカちゃん」

 

アジュカ「構わない、早速だが始めよう、良いか?レイ」

 

レイ「はい、お願いします」

 

アジュカさんの言葉にセラフォルー様とサーゼクスさんは軽い感じでそう言った。

現魔王であるこの三人と、ここには居ないもう一人の四人は、かなり長い付き合いがあるらしく、公の場で無い限りはこんな感じで魔王というよりも友達と言った様な感じで接している。

 

 

 

 

 

アジュカ「これで必要な手続きは⋯次で最後だ」

 

サーゼクス「後は登録だけだね、だが⋯それには家名⋯つまり、名字が必要になるね、どうする?レイ君」

 

レイ「そうですね⋯」

 

駒の登録に必要な手順も9割方終わり、後は登録名前の入力だけとなった所で、二人にそう聞かれ、俺はどうしようかと考えていると。

 

セラ「シトリーじゃ駄目かな?」

 

セラフォルー様がそう言ってくれたが⋯。

 

アジュカ「それは止めておいた方が良い、俺達は何の異論も無いし、二人が良いなら構わないが。

まず間違いなく、煩く言ってくる物が出て来るだろうからな」

 

サーゼクス「そうだね、それはレイ君がシトリーの一族に名を連ねると言う事だ。

もちろんセラフォルーやシトリー家にとって、レイ君は息子や姉弟の様な存在なのは分かってる。

だが、周りの⋯特にレイ君を嫌ってる者達はここぞとばかりに何か言ってくるだろうね」

 

二人は俺の周囲の環境を良く知っている為、そう言った。

正直俺もそう思う、現時点で父上と母上は俺を息子の様に扱ってる事に対し、周りの貴族に嫌味を言われているのを俺は知っている。

だからこそ、俺を息子として扱ってくれてる二人に対して、これ以上の面倒は掛けたくない。

 

セラ「そっか⋯」

 

セラフォルー様は残念そうに呟いた。

 

レイ「あっ⋯そうだ、サーゼクスさん」

 

サーゼクス「なんだい?」

 

レイ「文字を貰うだけなら、問題無いですよね?」

 

サーゼクス「それはもしかして、シトリー家が人間界で使ってる、支取の事かな」

 

レイ「はい、俺には⋯感謝すべき場所が2つあります。

一つ目は当然シトリー家です、セラフォルー様に助けられて女王となって。

こんな⋯何も無かった俺を、セラフォルー様とソーナ、そして父上と母上は俺を家族と言って、愛してくれました。

そして、二つ目は⋯俺を拾って生かしてくれた、【黒王(くろおう)孤児院】です」

 

正直に言って、孤児院に居た頃は辛かったし苦しかった、何で自分が嫌われてるのかも分からず、隠れて泣いていた事もあった。

それでも⋯孤児院が無ければ、俺はとっくに死に、セラフォルー様やソーナには会えなかったのだから。

感謝こそあれど、恨みや怒りなど、そんなものは決して無い。

 

三人「⋯⋯⋯」

 

黒王(くろおう)孤児院】その名に、セラフォルー様もサーゼクスさんもアジュカさんも悔しそうに俯いた。

 

レイ「正直⋯孤児院に居た時は、周りからは気味悪がられて、いつも一人でした。

けど⋯それでも、俺の命を救ってくれた⋯決して見捨てたりしないでくれた。

だから⋯名乗るのなら、俺にとって大切な2つの名を⋯名乗りたい」

 

そんな三人に俺は自分の思いを伝えた。

 

サーゼクス「そうか」

 

サーゼクスは俺の言葉に嬉しそうに言った。

 

アジュカ「良いんじゃ無いか?シトリーの文字が入ってるだけと言うだけで何かを言うなど、相当の馬鹿者だけだろう」

 

サーゼクス「でも、そういう者達が出てくるのも事実だ」

 

アジュカ「ならば、俺達がその名を与えれば良い、これまでの活躍に対する褒美として我々がレイをシトリー家の守護者(ガーディアン)として、そして孤児院の生き残りとして名を与えた、と」

 

サーゼクス「そうだな⋯確かにそれならば誰も文句は言えない。

事実、レイ君にはそれだけの実力と功績がある。

褒美と言う事にすれば、確かに文句は言えないね」

 

サーゼクスさんとアジュカさんは俺の言葉を真剣に考えてくれた。

最終的には魔王からの褒美などと言う、周りが何か言いたくても言えない状況を作る事まで考えてくれた。

この人達は本当に⋯。

 

セラ「じゃあ!」

 

サーゼクス「ああ、問題ないだろう、これで行こう」

 

セラフォルー様が顔を上げ言うと、サーゼクスさんは笑顔でそう言った。

 

アジュカ「そうだな、それで?その二つの名を、お前はどう使う」

 

レイ「もう決めてます、今日から俺は―――」

 

俺の方を向いて言うアジュカさんに、俺はそう言って名を告げた。

 

 

 

 

 

セラ「これでレイ君も王様だね☆」

 

グレイフィア「おめでとうございます」

 

サーゼクス「ああ、ようやく渡せて良かったよ、レイ君の実力と今までの実績からすれば、本来ならもっと早く渡しても良かった⋯と言うより、渡すべきだったんだけどね」

 

セラ「本当そうだよね、おじいちゃん達が煩いから」

 

アジュカ「全くだ、戦争が終わってからもうだいぶ経つと言うのに⋯いつまでも純血至上主義などと言う、時代遅れな言い分を通して来るからな」

 

ようやく登録を終えて、アジュカさんから駒を受け取り、俺達は出口にまでの道を歩いていた。

 

レイ「仕方無いですよ、人間だって同じです⋯立場は違っても、自分よりも下の存在が、それも見下してた相手が圧倒的優位に立っていた自分達と同じ土俵に立つ事を好まない、人間にだってそういう奴は数多くいる。

そういう意味では、人間も悪魔も⋯違いはあれど、どちらも根っこの部分は同じなんでしょう」

 

俺はセラフォルー様の外交について行き、人間や他の種族を数多く見て来た。

どの種族にも、そういう奴は例外無くいた、何かしら違いはあれど、結局はどの種族も大した変わりなど無いのだと。

色々な人達を見るほどに俺はそう思った。

 

サーゼクス「そうだね、だからこそ⋯我々は人間と言う種を転生させる者の筆頭に出した」

 

セラ「悪魔の中にはそんな人間よりも身勝手で傲慢な人が多く居るのも事実だけどね⋯」

 

サーゼクスさんの言葉にセラフォルー様はため息混じりに言った

 

サーゼクス「そうだね⋯ここに来る前に、レイ君から報告された、黒歌君の元主とそれに連なる者達が良い例だ」

 

アジュカ「他にも裏ではオークションや人身売買をしているとの噂もあるし。

一部の者はまるでコレクションの様に使っている。」

 

サーゼクス「それらをどうにかしようにも、なかなか尻尾が捕まらないからね⋯」

 

セラ「そうだね⋯」

 

俺のそんな言葉から、なぜかその様な話しになった。

そんな話しをしてると⋯。

 

アジュカ「そもそも、悪魔の駒とは悪魔の総数を増やすと共に個人の戦力を整える為の物であってだな⋯」

 

やっぱり⋯アジュカさんが愚痴り始めた⋯。

 

サーゼクス「分かってるよアジュカ、その愚痴はまた今度聞くから、今は押さえて」

 

アジュカさんがいつもの愚痴モードに入る前にサーゼクスさんが止めてくれた。

良かった、そうなったアジュカさんは正直面倒臭い。

 

セラ「そうそう、サーゼクスちゃんが聞いてくれるから☆」

 

サーゼクス「えっ⋯?僕だけでかい?セラフォルーは?」

 

セラ「えっ?嫌だよ☆長くなるし☆」

 

サーゼクス「グ、グレイフィア⋯」

 

グレイフィア「私はお嬢様の教育がありますので」

 

サーゼクス「ああ⋯そう」

 

セラフォルー様の何を当然な事を言ってるの?とでも言う様な言葉に、肩を落としてそう言った。

だが、セラフォルー様もサーゼクスさんも、そんなアジュカさんの怒りを理解している、当然俺だってそうだ。

悪魔の駒を使う理由は幾つかある、例え戦力にならない者を転生させようと、アジュカさんも大半の使い方には何も言わないし思わないのだが。

先の話の様な使い方に対してだけは、怒りを示す。

アジュカさんのこの話しも、もう何度も聞いた覚えがある。

 

ヴァーリ「兄さん!」

 

黒歌「レイ!」

 

いつの間にか外に出ていた、俺はその事に二人に声を掛けられて気付いた。

 

レイ「待たせたな、二人共」

 

黒歌「全くだにゃ!」

 

ヴァーリ「退屈過ぎて黒歌と一戦やろうかと話してた所だよ」

 

二人はそうは言いながらも笑っていた。

 

レイ「止めてくれ、お前らがやり合ったら軽い組手でもかなりの被害がでる」

 

ヴァーリ「俺達をそんな風に鍛えたのは兄さんだけどな」

 

黒歌「そうにゃ、前に居た場所じゃあ、トレーニングなんて太らない為の運動位しかしなかったのに、レイはスパルタだにゃ」

 

俺の言葉に二人してそんな事を言って来た。

 

レイ「ほう?二人共⋯鍛練に対して随分と軽口を叩ける様になったんだな?」

 

ヴァーリ&黒歌「えっ⋯」

 

俺が嗤いながらそう言うと、一瞬でさっきまでの威勢が消えた。

 

レイ「そうかそうか、なら⋯明日からの鍛練量は2倍⋯は流石に無理だろうから、1.5倍に増やしてやろう」

 

ヴァーリ「嘘⋯だろ⋯」

 

黒歌「地獄にゃ⋯」

 

そう宣言すると共に、二人は絶望した様な表情を浮かべた。

 

――――――――――――――――――――――

 

セラside

 

レイ「ヴァーリ⋯」

 

ヴァーリ「ああ⋯」

 

レイ「これが、お前の駒だ」

 

レイ君がそう言って戦車の駒を取り出したのだが。

 

ヴァーリ「兄さん⋯これ⋯」

 

レイ「⋯なんで光ってるんだ?」

 

ヴァーリ君に言われ、レイ君がそう呟いた。

 

セラ「えっ!!?」

 

レイ「セラフォルー様?」

 

その言葉に私はビックリして思わず声を上げたると、レイ君は不思議そうにこっちを向いた。

 

セラ「レイ君の駒⋯光ってるの⋯?」

 

レイ「はい、それも()()()光ってますね」

 

セラ「嘘⋯サーゼクスちゃん!アジュカちゃん!」

 

私がそう聞くと、レイ君は良く分からない様な感じで言った。

「幾つか」その言葉に更に驚いて、私は二人の方を向いた。

 

サーゼクス「これは⋯間違いないね⋯」

 

アジュカ「ああ⋯《変異の駒(ミューテーション・ピース)》だ、それも⋯複数の駒が変異している」

 

二人は確認すると、驚きながらそう言った。

 

セラ「《変異の駒(ミューテーション・ピース)》に⋯それって、レイ君がそれだけ強くて凄いって事だよね?」

 

私がアジュカちゃんにそう聞くと。

 

アジュカ「そうだな、そもそも駒の価値は固定では無い、同じ駒でも持ち主の力量によって、その価値は変わる。

弱い者が持った場合、その価値は1となるとするだろう?

だが、強い者が持てば、その価値は50にも100にもなる。

つまり、レイの駒の価値は⋯少なく見積もっても、俺達よりも高いだろうな⋯下手したら、兵士が我々の戦車⋯最悪女王に匹敵するだろう」

 

セラ「そんなに!?」

 

サーゼクス「それはまた⋯」

 

アジュカちゃんの言葉に私はもちろん、サーゼクスちゃんも珍しく驚いていた。

 

アジュカ「悪魔の駒は俺が作ったものだが、まだ未知の部分が多い。

とりあえず、今回分かった事は、さっきも言った様に、持ち主の力量に応じて駒の価値は変わる。

だが⋯駒にも価値のいわゆる限界値があると言う事。

そして、その限界を越えた場合、駒は自ら成長し《変異の駒(ミューテーション・ピース)》へと変わると言う事だ。

それなら、レイの駒が幾つも変異した事にも説明が付く」

 

サーゼクス「アジュカ?」

 

セラ「アジュカちゃん?」

 

アジュカちゃんはそう呟いている、そんなアジュカちゃんに私達は完全に置いてかれている。

というより⋯アジュカちゃんに私達の声が届いて無いし、完全に技術者の顔になってるよ⋯。

 

アジュカ「ついでだレイ、少し良いか?お前の中の⋯セラフォルーの女王の駒を調べたい」

 

レイ「良いですよ」

 

すると、アジュカちゃんはレイ君にそう言って、許可を取ると、レイ君の体を魔方陣が包み込み⋯。

 

アジュカ「⋯これは、やはりな⋯」

 

セラ「どうしたの?」

 

調べ始めて少しすると、アジュカちゃんがそう呟いた。

私はなにがあったのか聞くと。

 

アジュカ「セラフォルー、お前の女王の駒もまた《変異の駒(ミューテーション・ピース)》になっている」

 

セラ「えっ!?」

 

アジュカちゃんにそう言われ、私はまた驚いた。

 

アジュカ「セラフォルー、はっきり言おう⋯もしも今のレイを転生させるとしたら⋯例え女王の駒だろうとお前でも眷属にする事は⋯無理だろう」

 

セラ「嘘!?本当に?!」

 

アジュカ「ああ、だがそれはお前だけじゃない、俺やサーゼクスでも無理かもしれない。

それ程までに、レイは強くなっている、しかも⋯これから先、もっと強くなるだろう。

レイがお前の眷属になった経緯は知っているが、敢えて言わせてもらう、お前は凄く運が良い」

 

セラ「そうなんだ⋯」

 

それを聞いた私は、あまりの衝撃に絶句した。

 

アジュカ「そしてそれは⋯レイ、お前もだ」

 

レイ「俺も?」

 

アジュカちゃんはレイ君の方を向き、そう言った。

 

アジュカ「ああ、お前に秘められた潜在能力、そして、俺は全てを知りはしないが、お前のその神器の力。

確実に普通の人生は送れなかっただろう⋯」

 

レイ「そうですか」

 

普通ならそんなのは理不尽だと怒っても良い事なのに、レイ君は全く興味無さそうだった。

 

アジュカ「随分と興味無さそうな反応だな⋯」

 

レイ「まあ⋯もしもの話しに興味なんて無いですからね。

今の俺がセラフォルー様に助けられて、セラフォルー様の為に生きてる、それだけで充分じゃ無いですか?

例え⋯もしもの世界で普通に暮らして幸せになれるって言われても、俺は今の、この人生を選びます」

 

セラ「レイ君⋯」(ああ⋯折角今日は嬉しい一日なのに⋯そんな事言われたら⋯泣いちゃうよ)

 

レイ君の言葉に、私は泣きそうになるもなんとか堪えた。

 

サーゼクス「セラフォルー」

 

セラ「サーゼクスちゃん?」

 

泣くのを我慢していると、サーゼクスちゃんに声を掛けられた。

 

サーゼクス「君は誇るべきだ、レイ君がここまでになったのは、()()()()()なのだから」

 

サーゼクスちゃんは私の肩に手を置いてそう言った。

 

セラ「うん⋯そうだよね」

 

私はあの日、レイ君が言った「俺はこれから魔王セラフォルー・レヴィアタン様の女王としてセラフォルー様の為に命を懸けて働き、忠誠を尽くします。

そして、どんなことがあってもセラフォルー様とソーナを必ず守っていきます⋯」という言葉を改めて思い出した。

全部私の⋯そしてソーナちゃんの為に⋯ありがとう、レイ君。

 

アジュカ「そうだな、これまでのレイの成長が女王の駒の価値を上回ったと言う事だからな。

つまり、駒がレイに合わせて変異したと言う事だからな。」

 

セラ「そっかぁ⋯そうだよね!」

 

二人の言葉に、私は今まで無い程に嬉しかった。

だって⋯それはつまり、レイ君の今までの努力が報われたって事だもんね☆

 

セラsideout

 

――――――――――――――――――――――

 

駒やらなんやらについて色々と話した後、俺はヴァーリには戦車、黒歌には僧侶の駒をそれぞれ渡した。

その後、セラフォルー様達は仕事があるからと戻って行った。

俺達は転移で家に帰った。

 

その夜

 

レイ「そうだ、ヴァーリ」

 

ヴァーリ「なに?兄さん」

 

俺はヴァーリと二人になった時、駒と同じ位大事な事を言おうと話しかけた。

 

レイ「あの場所で言っても良かったんだが、どうしても二人の時に伝えたくてな。

駒を貰った時、俺の家名と言うか名字か、まあとにかく姓が決まった」

 

ヴァーリ「!それって!!」

 

俺がそう言うと、ヴァーリは勢い良く立ち上がった。

 

レイ「⋯ああ、俺とお前の⋯名前だな」

 

ヴァーリ「そっか⋯これでやっと⋯俺は本当の意味で兄さんの弟になれるんだな」

 

そんなヴァーリに、俺はさっき淹れたばかりの紅茶を一口飲み、そう言うと。

ヴァーリは笑顔でそう言った。

 

レイ「ああ、家名は【支黒(シクロ)】だ、今日から俺は⋯レイ・シクロだ、人間界では支黒レイと名乗るけどな」

 

ヴァーリ「支黒(シクロ)⋯」

 

俺はヴァーリに名を告げた。

ヴァーリは何度もその名を復唱していた。

 

レイ「ヴァーリ、貰ってくれるか?」

 

ヴァーリ「なに言ってんだよ兄さん、そんなの当然だろ?あの日から俺は兄さんの弟で家族なんだから。

そしてそれは俺だけじゃない、皆だってそう思ってる筈だ!

だから⋯今日から俺はヴァーリ・シクロだ!改めて宜しくな、兄さん」

 

レイ「ああ、そうだな、ありがとう⋯ヴァーリ」

 

これで俺達は本当の家族になれた。

もちろん、ヴァーリだけじゃない、二人の他にも眷属にした者達も、そして執事やメイドなどの家に居る者達、そしてあいつらも⋯皆、ヴァーリが言った様に俺は家族だと思っている。

【家族】それは俺にとって⋯生まれてから、持たず、そして知らずにいた5年間、そしてセラフォルー様とソーナ、父上と母上からそれを貰い、知った7年間、これからは俺自身も作って、守って行く。

でも⋯それでも、その中でもヴァーリだけは特別だった。

俺達に血の繋がりなんて無い、でも⋯俺達はそんな物よりも余程強い何かで繋がっている。

同じ境遇だから?兄弟になったから?絆があるから?その何かの部分を口にすればきりがないだろう。

だから、今のままで良い、わざわざ口に出して表現する必要なんて無い。

だって、確かに分かってる事が一つだけあるんだから。

 

俺達は家族だって。




原作外の眷属も一人だけ出しました。
これから書いていく原作外の眷属の過去やらは捏造ですので悪しからず。


そして、もう一つアンケートお願いします。

五等分の花嫁のアニメ見てから、五つ子にやばいくらいはまり。
ずっと、どうしようか迷ってたんですが、二次創作だし、弟が居るなら妹が居ても良いよね?的なノリで五つ子を妹にする事にしました。
登場は原作開始してからの何処かで、経緯も含めて書くつもりです。

そのアンケートも良かったら投票お願いします。

五つ子の設定。人間の場合は人間界のみでの登場。ハーフの場合は三勢力会談以降、冥界に居る時も登場(予定)

  • 普通の人間
  • 天使と人間のハーフ

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