セラさんが蒼那を連れてきてから暫く時が経った。
今日セラさんは仕事が有るらしく、公園に蒼那を連れてきてから直ぐに帰ってしまった、まあ帰る前に私も一緒に遊びたいとごねていたが……
レイ「蒼那、何して遊ぼうか?」
ソーナ「あのね…今日はこれをレイ君とやりたいなって思って持ってきたの…」
俺がそう言うと、蒼那は鞄から何かを取りだし見せてきた。
ちなみに最初は蒼那ちゃんと呼んでいたが、遊び始めてから何回かした時に、蒼那から呼び捨てで良いよと言われて以来俺は蒼那を呼び捨てで呼んでいる。
蒼那の方が歳が一つ上だったのには正直驚いたけど…
レイ「それなに?」
ソーナ「これはね…チェスって言うの」
何か解らなかったが蒼那に聞いたら教えてくれた、チェスと言うらしく良く分からないけど面白そうだ。
レイ「そうなんだ…でも俺、やり方知らないよ?」
ソーナ「大丈夫!やり方は私が教えるから!」
俺は正直にそう言った、すると蒼那は可愛らしい笑みを浮かべながら答えてくれた。
レイ「そっか、じゃあ今日はそれで遊ぼうか」
ソーナ「うん!」
それから、俺は蒼那に遊び方を教わり夕方までチェスで遊んでいた。
レイ「楽しかったね!でも蒼那強いね、余り勝てなかったよ」
ソーナ「そんなこと…無いよ、お姉様の方が私より強いし」
俺は最後の対局の後にそう言うと、蒼那からはセラさんの方が強いと言われた…マジか…
そして俺達はチェスで時間を忘れて遊び続けて気付いたら夕方になっていた。
レイ「そろそろ帰らないと…」
ソーナ「そうだね…でも…」
俺がそう呟くと蒼那は少し悲しそうに言った…でも問題はそこじゃない…
レイ「うん…セラさん遅いね」
ソーナ「うん…」
そう、いつもならセラさんが迎えに来ている時間なのにまだ来ていない。
レイ「とりあえず、蒼那も一緒に院に行かないか?」
ソーナ「私が行っても良いの?」
俺がそう聞くと蒼那は不安そうに言ってきた。
レイ「大丈夫だろ、セラさん先生と仲良さげに話してたし」
ソーナ「そっか…うん、じゃあ行く」
俺は前にセラさんと先生が笑顔で喋っていたのを見ていたのでそれを伝えると、蒼那は安心したようにそう言った。
レイ「よし、じゃあ帰るか」
ソーナ「うん!」
俺達はそう言い手を繋ぎながら院に帰って行った。
―――――――――――――――――――
俺達が帰って来ると門が閉まっていた。
レイ「あれ?おかしいな…」
ソーナ「帰って来るのが遅かったからかな…」
そう、確かに今日はいつもより遅かった…しかし。
レイ「確かに、いつもよりは遅いけど…門限ギリギリの筈だ」
そうなのだ、まだ門限にはなっていない、なのに門が閉められてる。
ソーナ「そうなの?」
レイ「ああ…門限は六時で六時になったら近くの小学校の鐘がなるはずだから…」
俺はそう聞かれいつもの日常について答えた。
ソーナ「そうなんだ…じゃあ今日は早く閉めちゃったのかな?」
レイ「いや…先生はいつも鐘がなってから閉めに向かってるんだけど…やっぱりそうなのかな…」
蒼那がそう言うと、俺はいつもの光景を思い出し言ってみるが分からない…蒼那の言う通りなのかな…。
レイ「とりあえず、入って見よう…」
ソーナ「でも…」
俺の提案に不安なったのか、戸惑う蒼那…。
レイ「怒られるのは俺だけだから大丈夫だよ、もし蒼那が怒られそうになったら、その時は絶対に守ってやるから、な!」
ソーナ「うん…ありがとう…でも怒られる時は一緒だよ」
俺がそう言うと蒼那に笑顔が戻った、そしてお礼と共に蒼那はそう言った。
レイ「よい…しょっと…ほら蒼那、手伸ばして」
ソーナ「うん…よい…しょっ…と」
俺が最初に門に登り蒼那を引き上げる、蒼那も手を伸ばして門に登った。門は2メートル程度の高さだが、俺達には凄く大きいな…
レイ「じゃあ、俺が先に降りて蒼那を受け止めるから、少し待ってて?」
ソーナ「うん…分かった」
俺はそう言い下に降りて行った。
レイ「よし、良いぞ蒼那、俺に向かって飛び降りてきな」
ソーナ「でも…」
レイ「大丈夫!必ず受け止めるから、言ったろ?絶対に守ってやるって!!」
ソーナ「レイ君…うん、分かった行くよ?えいっ!」
最初俺が声をかけると怖かったのか戸惑っていたが、俺がさっきの約束の言葉を言ったら覚悟を決めて、飛んで来た。
レイ「よっ…と、ほらな?大丈夫だっただろ?」
ソーナ「うん!ありがとう、レイ君」
飛んで来た蒼那をしっかり受け止め、俺がそう聞くと、いつもの笑顔で蒼那は答えた。
レイ「よし!じゃあ中に入ろうか?」
ソーナ「そうだね…」
俺が言うと、やはり不安になってきたのか蒼那は俯きながら、そう言った…
俺達は中に入り誰か居ないか探していた。
だが中は電気もついておらず誰も居ない…
レイ「おかしいな…何で誰も居ないんだ?」
ソーナ「皆どこかにお出掛けしてるのかな?」
レイ「うーん、だとしても先生が一人は必ず残る筈なんだけど…」
俺のその言葉に蒼那が答える、それに俺はそう返しながら先に進む、もちろん蒼那と手を繋ぎながら…だって正直ちょっと怖いし。
まだ日が出てるお陰で電気をつけなくても大丈夫だ、と言うより小さい子達がつけたり消したりして遊ばない様に先生が管理してるからつけられない。
すると"ガタガタッ"と音がしたのに続いて何かが割れる音がした。
二人『うわっ!?』
レイ「ビックリした…今のは…食堂の方だ…行ってみよう…」
ソーナ「うん…手…離さないでね…?」
レイ「もちろん!」
いきなり響いた音に二人は驚いた、俺も少し怖いが確認の為に食堂に向かう事にした、蒼那も怖いらしくそう言った。
レイ「ここが食堂だ…」
ソーナ「そうなんだ…でも…ここも電気ついてないね…」
レイ「うん、停電にでもなったのかな…?」
そして俺達は普段この時間は皆が集まってる筈の食堂の前に来ていた。
だがやはり電気はついておらず、暗くて静かだった。
レイ「よし…開けるぞ?」
ソーナ「うん…」
俺がそう言うと、蒼那も頷いた、そして…俺はそっと扉を開いた。
レイ「なっ…!…なん…なんだよ…これ…」
ソーナ「ひっ…!なに…これ…」
扉を開いて俺達が見た光景…それは―――辺り一面全てが真っ赤に染まり、その中で死んでいる先生や子供達……そして―――それを食べてる…怪物の姿だった。
レイ「なんだ…あいつは…」
ソーナ「分からない…」
俺がそう呟くと、蒼那も震えながらそう答える、そんな中でも変わらず不愉快な音が響く、その正体は目の前の怪物が死体の肉や骨を食べてる音だ。
レイ「うっ……」
ソーナ「やだ……怖いよ…レイ君…」
俺は吐きそうになりながらも何とか耐えていた、今吐こう物なら絶対に気付かれる、蒼那も小さな声で俺にしがみついている…
レイ「来い、蒼那」
ソーナ「えっ!?…レイ君!?」
レイ「静かに…こっちだ…」
「アアッ…ナンダ…マダイタノカッ」
俺は何とか気力を振り絞って、蒼那の手を引いて逃げた―――怪物が…こちらを気付いてる事に気付かずに。
レイ「ハッ…ハア…ハアッ…見えたっ…出口だ」
ソーナ「ハア…ハア…あっ!…痛っ…」
俺は蒼那の手を引きながら、出口に向かって走っていた…なんとか外に出たのだが、俺が急ぎ過ぎたせいで蒼那が転んでしまった。
レイ「蒼那!ごめん、大丈夫か…?」
ソーナ「うん…大丈夫…ごめんね…」
レイ「本当にごめんな…」
俺は謝りそう聞くと、蒼那は少し涙目になりながらもそう言った、それに俺はもう一度謝った。
ソーナ「レイ君…それよりも…」
レイ「うん…早く逃げよう、待ってて…こっちからなら鍵が開けられる筈だ」
ソーナ「うん…」
蒼那の言葉に俺も動き出した、門の鍵は外からは開けられ無いが、中からは当然開けられる。
レイ「えっと…確か…こうして…良し、開いた!来い、そう…な…」
俺は門の鍵を開けてそう言いながら、蒼那の方を向いた、その瞬間俺は目を見開いて止まってしまった。
ソーナ「レイ…君?」
レイ「危ないっ!!グッ…ウゥッ」
そんな俺を不思議に思ったのか、蒼那が声を掛けて来た瞬間―――俺は考えるよりも早く体が動いて蒼那を庇った。
ソーナ「レイ君!?」
レイ「大丈夫…少し…掠った…だけだから…」
蒼那はなんとか無傷で済んだ様だ、心配されたが俺は掠っただけと言ったが、
実際は―――背中に激痛が走ってる、どうやらまともに喰らってしまったらしい。
レイ「ハアッ…ハッ…にげ…ろ…そう…な…」
ソーナ「レイ君…!?、何で…嫌だよ…」
レイ「はや…く…行けぇ!」
俺はもう自分が動けないと分かり、蒼那に逃げる様言った。
その言葉に蒼那は泣きながらそう言ってきた。
そんな蒼那に俺は最後の力を振り絞って叫んだ…しかし。
「ニガストオモッテイルノカ?」
ソーナ「きゃあ!?い…や……くっ……くる…し…い…」
怪物はそう言いながら、蒼那の首を掴み上げた、蒼那は悲鳴をあげ苦しみながらも暴れていた…
レイ「そ……う…な…」
ソーナ「あ…っ…カッ…は…っ…」
俺は薄れゆく意識の中で…蒼那の名を呼んだ、ソーナもまた抵抗が弱くなっていく。
レイ(やめろ…やめてくれ…)
ソーナ「………ウゥ…ッ……」
レイ(頼むから…その子を殺さないでくれ…)
俺は指先一つ動かせないまま、蒼那が殺されそうになってるのを涙を流しながら見ていた…
その時―――頭の中に声が聞こえた。
――――あの娘を、助けたいか?――――