俺は魔王の女王で魔王の妹は俺の女王で婚約者   作:黒幻

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もう一つの出会い

――――あの娘を、助けたいか?――――

 

頭の中に声が響いた…すると突然―――世界が止まった。

 

レイ「なん…だ…なにが起こった…」

 

「ようやく繋がったか…何度も呼び掛けていたのだがな」

 

俺は何が起きたのか解らなかった、しかし先程まで薄れていた意識が今ははっきりしている。

すると、後ろから誰かが話し掛けて来た。

 

レイ「お前は…誰だ…味方…なのか?」

 

(おれ)はお前だ、嫌…違うな、正確にはお前の中に存在する力だ」

 

レイ「俺の…力…?中に…存在する?」

 

俺は振り向いた、すると目の前には白くモヤモヤした人の様な形をした何かが現れた。

そして、俺がそう問うと目の前の存在はそう答えた。

 

「そうだ、まさかこの我がお前の様な小僧に宿るとはな」

 

目の前の存在は、俺を見ながら少し自嘲気味に呟いた。

すると白く靄がかかった様な姿が、徐々に鮮明になり、現れたのは金髪の若い男だった。

 

レイ「もしかして…たまに聞こえた声って…」

 

(おれ)だ、どうだ?驚いたか?」

 

昔から時々頭の中で声が聞こえたり、映像で見えたりしたのはこの人だったのか。

 

レイ「驚いたけど……でも、今はそんな事、どうでも良い!!」

 

確かに驚きはした…だが、今の俺にとってそんな事はどうでも良かった、だから俺はつい叫んでしまった。

 

「どうでも良い…だと」

 

すると、それが気に入らなかったのか目の前の男は眉を潜め低い声で聞いてきた。

 

レイ「っ…そうだ!!お前の力を使えば、蒼那を助けられるのか、答えろ!!」

 

それに俺は一瞬怯んだ物の、男に対しそう叫び続けた。

 

「ああ、助けられるだろうな」

 

レイ「だったら早「ただし」……ただし…?」

 

「貴様はほぼ間違いなく死ぬだろうがな」

 

レイ「っ…!?」

 

男がそう言ったのを聞き、すぐに助けに行こうとしたが男の先程よりも低く冷たい声に止められた、その声色に少し恐怖しながらも聞いてみた。

 

すると男はまるで宣告する様にそう言った、その言葉に俺は息を呑んだ。

 

「当然だろう、我が戦うのならまだしも、お前の様な小僧ではまともな戦いにすらならんだろう」

 

レイ「でも…今、助けられるって!」

 

男は淡々と口にする、確かにそれは正しい、だがこの男は確かに言った筈だ。

 

「ああ、娘は助けられるだろう」

 

レイ「なら…」

 

「だが…分かっているのか?"()()()"事と"()()"事、この二つは別物だ…奴を倒せない以上、娘が逃げる時間をお前が稼ぐ事になるのだぞ」

 

男はもう一度そう言った、だったら何で…そう思い口にすると、男は更に続けて言う。

 

レイ(確かにそうだ…そんな事…考えても無かった…)

 

「どうやら、気付いていなかった様だな」

 

俺がそう思って俯いたら、男がそう言ってきた…

 

「だが逆に言えば、娘を見捨てればお前は助かるぞ」

 

レイ「っ……!?そんな事…!」

 

「ならばお前が死ぬか?」

 

すると、男は続けてそんな事を言ってきた。俺はそれに反論しようとしたが、その前に男は反論を許さないように言葉を続けた。

 

レイ「………」

 

「死ぬのが怖いなら逃げろ、誰もお前を責めは「それでも…」…それでも…何だ?」

 

俺が黙っていると男は更に続ける…でも、俺が言葉を遮ると男は少し不愉快そうに、俺に聞いてきた。

 

レイ「それでも!俺は蒼那を助けたい!!」

 

「………」

 

レイ「俺はずっと孤独だった…誰も俺を必要とはしてくれなかった…。

でも…でも!!二人は…蒼那とセラさんは俺と居てくれた…必要としてくれた!!

だから…俺は…蒼那を助けられるなら死んでも良い!!」

 

「………」

 

俺はそう叫んだ、男は俺の言葉を遮る事なく黙って聞いている、俺は男に対して更に続ける。

そんな俺の慟哭(どうこく)を男はなおも黙って聞いていた。

 

レイ「だから…頼む…力を貸してくれ……いや…貸してください…お願いします」

 

そうして全てを言い終えた俺は、膝を折って男にそう懇願した。

 

「言いたい事はそれだけか?」

 

レイ「っ……はい…」

 

「そうか……解った、良いだろう…(おれ)の力を貸してやろう」

 

男は口を開き低い声でそう言った、俺はそれに少し怯えながらも返事を返した。

すると、男は口角を少しだけ上げながらそう言った。

 

レイ「本当に…?」

 

「ああ」

 

レイ「ありがとう!」

 

「…それに…お前が孤独になったのは、我のせいでもあるからな…」

 

俺がそう聞くと男は強く返してくれた、俺はそれにお礼を言った。

すると、男は少しだけ不愉快そうにそう言った…しかし、そう言う男の声には先程までの様な冷たさは感じられ無かった。

 

レイ「それで!俺は何をすれば良い?」

 

「焦るな、時はまだ少しの間なら止まっている」

 

レイ「分かった…」

 

俺は何時動き出すかわからないこの状況でそう聞いた、すると男はまるでお見通しとばかりに言ってきた、だから俺はそれ以外何も言えなかった。

 

「まずはお前の神器について説明しよう」

 

レイ「神器?」

 

「そうだ、我の力でありお前の中に存在する力の事だ、今の世界では神器と呼ばれてるらしい」

 

男はそう言ったのだが…神器って?そう聞くと説明してくれた。

 

レイ「何でそんな事知ってるの?」

 

「まあ、色々と有ってな…お前は気にしなくて良い」

 

レイ「そうなんだ…分かった…」

 

気になったので、聞いてみたらそう言われた。

 

「とにかくだ、神器の名は《王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)》だ」

 

レイ「《王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)》…?」

 

「そうだ」

 

男は神器の名を教えてくれた、それを俺が呟くと満足そうに頷いた。

 

レイ「どんな力が有るの?」

 

「一言で言えば馬鹿デカイ倉庫だな」

 

俺が聞くと、男はそう答えた。

 

レイ「倉庫って…使えるの?」

 

俺は少し不安になり、そう聞いた。

 

「それは本来なら宝物庫に空間をつなげ、そこにある道具を自由に取り出せる力だ。

だが神器となり、宝物庫自体はどうやら別空間にお前専用の物が存在している様なのだが…お前はまだ武器など持っていないだろう?だからハッキリ言って、まだ使えんのだ」

 

俺の質問に男は神器の能力を丁寧説明してくれた、しかし結果使えないらしい。

 

レイ「じゃあ、意味ないじゃん!?」

 

俺はつい取り乱し、叫んでしまった。

 

「慌てるな、確かに今はまだ使えんが、安心しろ我が昔所有していた武器を幾つかお前にくれてやる」

 

すると、男は取り乱してる俺に対してそう言った。

 

レイ「本当に?」

 

「ああ、だからよく覚えておけ、それは所有者に"財があればある程"に強力な物になると言う事をな」

 

俺がそう聞くと男は頷き、そして最後にこの神器がどれだけ強力なのかを語った。

 

レイ「分かった、覚えておくよ」

 

「まあ…お前が生き残れればの話しなのだがな…」

 

それに俺がそう返すと、男がそう呟いた。

 

レイ「うん…分かってるよ…」

 

当たり前だ俺は必ず蒼那を助けるんだ。

 

「ならば良い…っと、悠長にしてる場合では無いな」

 

そう言うと共に、男の前に三つの光が現れた。

 

レイ「それは?」

 

「さっき、言っただろう?お前にくれてやる武器だ」

 

レイ「どんな武器なの?」

 

俺が男に聞くと、そう答えてくれたので、どんな物なのかを聞いた。

 

「今から説明してやるから良く聞け…左から

《長刀・正宗》

天の鎖(エルキドゥ)

原罪(メロダック)》だ、これらの物をお前にくれてやろう。

本当なら他にもあったのだがな…我が所有していたのは昔の事、今ではその殆どが別の者の手に渡ってしまっている」

 

レイ「そうなんだ…」

 

男は武器の名前を言った後に不愉快そうに説明してくれた。

良く分からなかったが、俺は男に対してそれしか言え無かった…

 

「それじゃあ、これらの使い方を説明するぞ」

 

レイ「うん」

 

俺は、男の言葉に頷いた。

 

「まず、こいつは《長刀・正宗》」

 

それは、男の身の丈以上に長い刀だったのだが。

 

「ただの刀だな」

 

レイ「それだけ?」

 

男の説明に、俺はついそんな事を聞いてしまった。

 

「それだけだ、まあ名刀と呼ばれてるくらいだからな、普通の物より切れ味はあるぞ」

 

レイ「そう…」

 

名刀と言うだけで、どうやら本当にただの刀の様だ。

 

「次に…これは《天の鎖(エルキドゥ)》だ」

 

次に見せて来たのは金色に光る鎖だった。

 

「数少ない対神兵装だ、神性を持つ相手には強力な拘束力を発揮する。

目の前の敵には神性など無さそうだが、まあ…問題く使えるだろう」

 

レイ「………神様を拘束出来るなんて…凄いね…」

 

俺は驚きの余り最初何も言えなかったが、少し落ち着いた後にそう言った

 

「そうだろう、これで神共とだって戦えるぞ?」

 

レイ「うん…」

 

男は自慢気に言うが、俺はそれに頷く事しか出来なかった。

 

「そして最後にこいつは、《原罪(メロダック)》」

 

最後に出したのは一本の剣だった、しかしまるで封印されてるかの様に、それには鎖が幾重にも巻かれていた。

 

「"伝説の剣カリバーン"や"最強の魔剣グラム"の原典だ。ついでに言えば担い手を選ぶ"聖剣"の原点でもある、故にこいつに所有者と認めさせなければ抜く事すら不可能だ。ちなみにビームも出せるぞ」

 

レイ「………」

 

「んっ…?どうかしたか?」

 

先程以上に自慢気に話す男に、俺はもはや何も言えなかった。

 

レイ「……それで…俺はどう戦えば良いの?」

 

「ああ…それはな…」

 

それから、俺は男に戦い方を教わった。

 

「良し、これである程度やれるだろう、ただし決して無茶はするなよ?

特に、最初の流れは必ず教えた通りにやるんだ、しくじればお前も娘も死ぬぞ…良いな?

それと、体の方は多少は治してやったが、完全とはいえない状態だ…気を付けることだな」

 

レイ「うん!」

 

俺は最後にそう言われた、それに俺は力強く頷いた。

 

「そろそろ時が動きだすぞ」

 

そして、いよいよ時が動き出す、その直前に俺は大事な事を思い出した。

 

レイ「そうだ…俺はレイって言うんだけど、貴方の名前は?聞いてなかった」

 

俺は自己紹介をしてから、男に名前を聞いた。

 

「ん?ああ、そう言えばそうだったな…(おれ)の名前は―――ギルガメッシュだ、お前には特別に"ギル"と呼ぶ事を許してやる」

 

男…ギルは笑いながら、上から目線でそう言った。




なんかギルが親戚のお兄ちゃんっぽくなってしまった…

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