レイ(…んっ……戻った…のか?ッ…痛ぇ…でも…確かに…動ける!)
時間が戻り、俺はさっきまで感じなかった痛みを感じ始め、全く動かせなかった身体も少しは動かせる様になっていた。
ソーナ「……ぁ……っ………」
レイ(くっ……蒼那…待ってろ…今…助ける…)
苦しそうな声が聞こえた、蒼那の方を見ると、今にも意識を失いそうだった。
レイ(確か…念じる様に…すれば……良し…来たっ…!)
俺は痛みを堪えながらゆっくりと身体を起こし、ギルに教わった通り《
ギル『良いか?まずは武器の出し方だが、解りやすく言えば…念の様なものだ』
レイ『念?』
ギル『そうだ、出したい武器と位置を頭に浮かべる、それだけだ』
ギルはまるで簡単な事の様に、そう言っていた。
レイ『えっと…こう?、…出た!出たよ!』
ギル『ほう…なかなかやるじゃないか、では次だ』
ギルに言われた通りに頭の中で《正宗》を思い浮かべ念じる…すると何も無い所から《正宗》が出てきた。
するとギルは口角を上げながら、そう言った。
レイ『次?』
ギル『そうだ、まずは確実に娘を掴んでるあいつの腕を切り落とす』
ギルは止まってる怪物を見ながら、そう言った。
レイ『どうやって?』
ギル『幸いな事に、お前はあいつの死角に倒れている、だから不意討ちで斬る』
俺がそう聞くとギルは目線を逸らす事なくそう言った。
レイ『後ろから突き刺せば殺せない?』
ギル『可能だろうが、娘が死ぬかもしれん、言っただろう?"助ける"と"勝つ"は違うと、お前はあの娘を助けたいのだろう?』
レイ『うん!』
俺はふと思った事を聞いてみた、すると予想してたのかすぐに答えてくれた。
ギル『良いか?早まるなよ?ゆっくりだ、音を立てずに立ち上がれ。
戻った時に身体も痛むだろうが決して声に出すな、気付かれたなら…二人共確実に死ぬぞ』
レイ『うん…分かった…』
ギルは俺に、蒼那を助けられる方法を丁寧に教えてくれた。
レイ(よし…気付かれて無いな…後は…)
俺はギルの教えを思い出す。
レイ『それで、どう斬れば良いの?』
ギル『ただ奴の腕に向かって振り下ろせば良い』
レイ『それだけ?』
ギル『言っただろう?それは何の力も持たないただの刀だが…名刀だとな、あいつの腕くらいならそれで簡単に切り落とせる』
ギルは俺の質問に淡々と答え続ける。
レイ『こう?』
ギル『そうだ…』
レイ&ギル(『しっかりと上段に構え…降り下ろす!!)』
俺はギルの教え通りに怪物の腕に向かって《正宗》を降り下ろした。
「ガァァァ、ウデガッ…オレサマノウデガァァ」
腕は紙の様に簡単に切れ、怪物は腕を抑えながら呻き声をあげた。
レイ「蒼那、大丈夫か!?」
ソーナ「がはっ…ケホッ…ケホッ…」
俺はすぐに蒼那の元に行った、蒼那は咳き込んでいるが何とか大丈夫そうだ。
レイ「蒼那!良かった…無事で…」
ソーナ「レイ…君?」
レイ「ああ、もう大丈夫だ…お前は俺が絶対守って見せる!」
蒼那の無事を確認した俺は、怪物の方に構え直し、ギルの教えてくれた次の手を思い出す。
ギル『あいつの腕を落としたら、次は《
俺は先程の様に《
「グゥッ…ナンダ…コノクサリハッ…」
レイ「良し…上手く出来た」
空に幾つもの空間が出現し、そこから《
「キサマッ…ナゼウゴケルッ」
怪物は俺に向かって叫ぶ。
ソーナ「レイ君!今の内に逃げよう?」
レイ「大丈夫だ!蒼那…良いか?絶対俺の後ろに居るんだぞ?」
ソーナ「レイ…君?どうしたの…?」
逃げようと言って来る蒼那、俺だって逃げたい…でも…ここで逃げたら、ギルに笑われちゃう。
ギル『良いか?レイ、いくら《
レイ『じゃあ…どうするの』
ギルの言葉に俺は、答えを理解しながらも、そう聞いた。
ギル『あいつを殺す、拘束出来たと言う事は、お前は娘を"助ける"事は出来たと言う事だ、なら次は"勝つ"ための選択を出来る訳だ』
ギルは迷わずそう言い、俺の一つ目の目的の達成と、それにより新たな選択肢を選べる事を教えてくれた。
レイ「良し…!ここまではギルの作戦通りに上手く行った、でも…ここからが本番だ…」
俺はそう呟き、自分を落ち着かせる様に一度深呼吸をして、気合いを入れる。
ギル『良いか?一撃で確実に殺せ、一撃で殺れなければ…お前の負けだ』
レイ「一撃で…確実に…」
ギルのその言葉に緊張しながらも、やるべき事を声に出しながら怪物の方へとに近づいて行く。
ギル『これで最後だ確実に…』
俺は怪物対し《正宗》を横薙ぎに構え―――そして。
レイ&ギル「『確実に…首を落とす!!』」
俺は力一杯に刀を振り抜いた―――怪物の首が音を立て落ちていく。
レイ「はぁ…はぁ…、終わっ…た?はぁ~…」
俺は怪物が動かなくなったを見て、その場にへたり込んでしまった、同時に《
「良くやったな…レイ」
レイ「ギル?」
聞き覚えの有る声が響き、俺はその名を呼んだ。
ギル「ああ、お前が我を認識し神器が覚醒したおかげで、話す事くらいは出来る様になったようだ、流石に姿は出せない様だがな」
声の主はやはりギルで、そう説明してくれた。
レイ「そっか…ギル…俺…出来たよ…蒼那を…助けられた…」
ギル「そうだな、初めてにしては大したものだ」
俺が泣きそうになりながらそう言うと、ギルもまた優しい声でそう言った。
レイ「これからも…よろしくね」
ギル「ふっ…そうだな」
俺のそんな言葉に、ギルは口角を少し上げ、そう言った。
ソーナ「レイ君!!」
レイ「蒼那…良かった…本当に…無事で良かった…」
蒼那が泣きながら俺に抱き付いて来る、俺はそんな蒼那の頭を優しく撫でる。
これで終わったそう思いながら―――しかし…。
「マ…ダ…ダッ…」
レイ「なっ…嘘…だろ…!?まだ…生きてるのか…?」
俺は怪物の声に振り向き絶句した、確かに首を落とした筈なのにまだ死んでいなかったのだ、そして。
「オマ…エ…タチ…モ…ミチ…ヅレ…ニ…シテ…ヤ…ル…」
そう言い終えたと同時に怪物の身体が膨らみ始めた。
ギル「不味い!?奴は自爆する気だ」
レイ「自爆…!?くっ…蒼那!!」
ソーナ「レイ君!?」
俺は蒼那を庇う様に覆い被さる。
瞬間―――悪魔の身体が弾け飛び爆音が響いた。
レイ「……あ………うっ……く……は…」
全身が痛む、身体を動かそうにも指一本動かせない。
「―い―ん―――か――て―れ――ん―」
微かに声が聞こえる…、俺は僅かに目を開いた、そこには泣き叫んでいる蒼那が居た。
レイ「―そ――な―――よ――た――」
声を出そうとするが、声が出ない。
でも、蒼那は無事の様だ。
ソーナ「―い――や――――ん―――だ――れ―く―」
蒼那が何か叫んでいるが殆ど聞き取れない、どうやら耳がおかしくなったらしい。
レイ(良かった…蒼那は無事…みたいだな…本当に…良かった…)
意識がはっきりしないなか、俺は蒼那の無事を確認し安堵した。
「――な――ん」
「―い――う―か――な―ん」
ソーナ「―ね――ま――い――が―れ――が―ん――う―」
ここ数ヵ月で聞き慣れた声が微かにだが聞こえた、でも…。
レイ「……………」
もう声をだす力も、目を開く力も無い。
レイ(俺は…死ぬ…のか…やっと…大切と…思える人に…そう…思ってくれる人に……出会えた…の…に…)
俺は何も見えない、聞こえない、徐々に意識も消えていくなか、そんな事を思っていた。
レイ(………………)
そこで俺の意識は完全に途切れた…その寸前。
レイ(ああ…死にたく…無い…なぁ…)
俺は生まれて初めて、そう思った。