ポケットモンスター B&W another 〜隻腕の幻影 ゾロアーク〜 作:Mr.bot-8M6N
13
ポツーーポツーーっという雨音が後頭部を打つ。その冷たい感覚がトウコの沈んでいた意識を呼び起こす。
「……う……うぅん」
『でんじは』によって失神していたトウコの意識が戻ったのだ。意識が戻り 最初に見たのは地面に生えた雑草。どうやら、トウコはチェインメイル風の制服を着た男に抱えられているようである。
「………こ、ここは」
吹き荒れる砂嵐で分かりにくいが、ここは間違いなくあの大木の空き地だ。
「私は……確か………キツネさんに会いに行って………」
誰かに襲われたのだ。確かポケモン……いや、近くで人の声がしたからトレーナーの扱うポケモンに、だ。意識を失う直前、そのトレーナーの男が何かを話していた。
ーー確か……キツネさんを捕まえるとか………ッ!?
その時、私のすぐ近くで轟音と共に衝撃が走る。派手な土煙を伴って何かが着弾したのだ。
「キャッ!?」
「グワッ!?」
私と私を抱えていた男がその衝撃によって吹き飛ばされる。
「グッ……痛い……」
地面に派手に打ち付けた痛みが身体を突き抜ける。それでも難なく立ち上がり、着弾した何かを確認する。
それはーー
「!?……き、キツネさんッ!?」
慌てて駆け寄るトウコ。
「キツネさんッ!キツネさんッ!しっかりし………て……」
そこまで言いかけて、キツネさん……いや、トウコが先程までキツネさんだと思っていた物に異変が起こる。
「な、何これ……」
トウコの目の前で倒れ、意識を失っているゾロアークは、『ズズ……」という不快な音と共に全身の色が黒一色へと染まり、空気に溶けて消えていく。そして、残ったのは……緑色の怪獣の人形?それさえ、空気に溶けて消える。
「あぁッ!クソッ!!そういう事かッ!クソッタレッ!!」
トウコは怒鳴り声のした方を向く。そこには、あの気持ちの悪い男がいる。アララギポケモン研究所に無断で入ってきた男。そして……トウコが意識を失う直前にその場に居た男。確か名前は『ロブ』。
そのロブがこちらを……いや、先程までトウコの目の前で転がっていたキツネさんらしき物があった場所を睨んで悪態を吐く。
「意味の分からん わざ 使ってくると思ってたが……。あの野郎!よりにもよって、こんな隠し玉を用意してやがったッ!?」
男ーーロブが何を言っているのか分からない。ただ、トウコの視線の先、ロブの更に向こう側で行われている「何か」のことだというのは分かる。
そのトウコの視線の先でさ、そこでは轟音を立ててポケモン同士が争っている。ポケモンバトルだ。
「…………………え?」
ポケモンバトルを初めて間近で見るトウコにさえ
その光景に、トウコは困惑の声を漏らす事しか出来なかった。
ーー((( ○ )))ーー
ナゲキとダゲキは かくとうタイプ 。対するゾロアークは あくタイプ 。相性はゾロアークにとって『悪い』と言わざるをえない。ただの一撃でも喰らえば、ゾロアークは致命傷となり得る。
しかし、ゾロアークはそれをーー
『………フン』
ーー歯牙にもかけないと言わんばかりに鼻で嗤う。
ダゲキの一撃も、ナゲキの掴みも全てが必中の距離にあったと二体のポケモンは確信していた。
ゾロアークの身体に当たったーー、身体に触れたーー。そういうふうに、
だから、その全てが空を切る。まるで、
それは、まさしく「狐につままれた」かのようだ。
そして、一撃。それぞれの
二体のポケモンは戦闘が始まってからずっとこのようにして、ゾロアークに弄ばれている。
ゾロアークは分類上『ばけぎつねポケモン』と呼ばれている。己の姿を偽り、相手を騙す。それがゾロアークの常套手段。
「他者の視界を騙す」ーーその事にかけては右に出る者はいないポケモン。それがゾロアークだ。
鳩尾に叩き込まれた衝撃に一歩二歩と後退するダゲキとナゲキ。
その目の前には、
ーー((( ○ )))ーー
時はロブが三体のポケモンを同時に繰り出した所にまで戻る。
ロブは過去数ヶ月に渡ってイッシュ地方中を駆け巡って逃げ続ける『赤髪』ーーゾロアークの後を追っていた。その間に幾度も……という程ではないが、それなりの回数争った。
『赤髪』はなかなか自身の情報をこちらに渡さない。そういう風に立ち回っているのは明白だ。
ロブ……いや、人間というのは弱い生き物だ。ポケモンのように火も雷も氷も発生させる事が出来なければ、超能力もない。単純な力比べでもほとんどのポケモンに負ける。そういうモノだと自身で理解している。
人間は弱い……だからこそ考える。自分よりも強い生物を相手に勝つ手段を。
人間がモンスターボールを開発し、ポケモンの力を間接的に扱えるようにしたようにーー。ロブは自分と自分の従える
それを知っている『赤髪』は執拗なまでに自身の情報をひた隠す。戦闘を行えば使う わざ を把握される。扱う わざ から自身の
ーーだが、それもこれまでだ。
『逃げる』ゾロアークと戦闘を行うために、まず逃げられない状況に追い込んだ。今回、この辺り一帯を『くものす』や『すなじごく』で囲ったのは良い例だ。
『逃げる』手段を奪えば、必然戦わざるをえなくなる。そこからヤツの情報を奪っていく。
ヤツは野生のポケモンのくせに大量の木の実やら何処ぞで拾った人間の道具を使う。ーーだから、特性『きんちょうかん』を保有するデンチュラによって睨みをきかせ、そんな物の使うタイミング自体を奪った。
ヤツの わざ から
今あげたのは分かりやすい例だが、これ以外にも少しづつ少しづつヤツから情報を奪っていった。
そして、今回で『勝てる』と確信し、ケリをつけると決めてロブはここにいる。
だが、ロブは失念していた。いや、甘く見積もっていたと言うべきか……。
今回の獲物が、人間よりも『強い』ポケモンのくせに人間以上に『考える』生き物だということをだ。
ロブがゾロアークから情報を奪ったように、ゾロアークも人間から情報を、知識を、道具を、奪っている。
自己の研鑽を怠らず、常に『人間』相手に『勝ち続ける』手段を模索している。
その事実を忘れていた。
そして、それが今、ロブの前で形となってーー異様な光景として、立ちはだかっている。
「クソがッ!ヤツの姿が増えたから かげぶんしん だとばかり思っていたが……テメェ、
ノーマルタイプ・変化技『かげぶんしん』
手段はポケモンによって変わってくるが、自身と同じ姿の分身を用意し、相手の目を眩ませる わざ 。この分身は、生成する手段こそポケモンによって変わるが、質量をほとんど持たない事は共通している。故に有効的な攻撃手段となりえず、専ら敵に的を絞らせない回避手段として扱われる。
ロブはこれを攻撃時に本体と突撃させれば、相手を翻弄することが出来ると考えだ。だから、今回連れて来たポケモンの一体にして今回の攻撃の要であるダゲキに覚えさせ、一番最初に使った。
六体の
『………………ケッ』
と『赤髪』が対抗するように、自身も かげぶんしん を使用し、ダゲキと同じ六体の
その後、これ見よがしに更に二体増やしたのには、「挑発のつもりかッ」と怒りを覚えた物だがーー
ーーそこまでで思考が止まってしまったのは悪手だった。
これまでに得た『情報』で、『赤髪』が より有効な手段 や より良好は結果 を優先し、挑発や煽りのような無駄を必要以上に行わない事は分かっていたというのに……。
……………………。
結果から言おう。後に出された幻影は 『かげぶんしん』では無かった。
翻弄されるダゲキとナゲキ。その中で奇跡的に入ったダゲキの『カウンター』で吹き飛ばされた幻影がその
「………あぁ、クソッ。そういう事か」
かげぶんしん だとばかり思っていた幻影は、緑色の怪獣を模したぬいぐるみ のような物。
「……『赤髪』。テメェ、『かげぶんしん』の中に『みがわり』を紛れ込ませやがったなッ!!」
ーーそして、特性『イリュージョン』で見た目もヤツ自身の姿に偽装していた、という訳かッ!
更に言えば、ゾロアークは『かげぶんしん』の扱いも上手い。質量の無い幻影が、入れ替わり立ち替わり、ダゲキとナゲキを翻弄している。そして、本体と『みがわり』の幻影は一撃を与えれば、他の幻影に紛れ 死角へと入りなかなか特定させない。
対して、ダゲキの『かげぶんしん』は本体が特定され、囲い込まれているせいで残っているのにまるで機能していない。 わざ 一つの扱いからして ロブよりも考え、練られている。
『赤髪』ーーゾロアークが、幻影に紛れ 鋭い爪から繰り出すV字の斬撃ーー『つばめがえし』によて、ダゲキが血飛沫を上げて倒れる姿を睨みながら、ロブは確信を持って叫んでいた。
これでダゲキは倒れた。残りは
ーーここまでか?今回はここで退くべきか?
勝てる見込みは皆無ではないが、小さいのではないか?
数の上では有利だが、状況は劣勢へと傾いているのではないか?
ーー相手の情報は得た。これを手土産として対策を練り、次の機会を待つ。いつも通りだ。
そこまで考えて、ピタリと思考が止まる。いや、切り替わる。
ーー
いや、違う。今回だけは、いつもと違う事が一つだけある。
ーーこれを利用しない手は無い、か。
仄暗く染まり始める思考は、ロブの背後ーーゾロアークを不安そうに見つめる少女へと向いていた。
ーto be continuedー
おうおう、黒い黒い。
まぁ、何となく何が起こるか予想がつくでしょうが。
次回!ロブのゲスにしてクズな一面……やったりましょう!(ゲス顔)
そして、今思うと今回の話、時系列が前後し過ぎかな?ちょっと分かりにくいと思います。その内修正しときます。
今回の登場キャラクター
・ゾロアーク……『みがわり』はゲーム中だとマジでぬいぐるみがポンと置かれるだけ、それを文章でやるのもなぁ……。できて「なんちゃって変り身の術」かなぁ……って思ってたが、ふと『みがわり』の姿が本体と同じで自由に動き回れば、それカッコよくね?という思考から、他の わざ やらを拡大解釈とか改変を行おうと思考錯誤した結果生まれた戦術。今回の能力拡大解釈の犠牲になったのは特性『イリュージョン』君である。
でも、分身が本体と同じ事出来たら本体の活躍の場面を奪っちゃいそうなので、『かわりみ幻影体は わざ を使えない。出来るのは殴る蹴るの物理攻撃のみ』としました。
あと、効果自体はそう変わってないけど、『かげぶんしん』はやり方を変えましたね。原作ゲームだと、なんか左右に反復横跳びしてるだけだったんだもん!せっかくの ばけぎつねポケモン による相手を化かせそうな技を反復横跳びにするのはちょっとアレだったんで、『イリュージョン』と同様に『ゾロアークから発生する黒靄が形となった幻影』的な描写にしました。こっちの幻影は攻撃どころかちょっとした接触で解ける仕様。ダゲキの『かげぶんしん』?アイツ、物理攻撃型だから反復横跳びで良くね?
あと、さらりと『つばめがえし』も使ってイクゥ!これで わざ 何個目だっけ?
・トウコ……イチャイチャシーンが無いからヒロインが活躍してねぇ!?まぁ、当時はポケモントレーナーでも何でもないしね。しょうがないね。
・ロブ……馬鹿で、クズで、ゲスで、馬鹿で、ボケで、卑劣で、愚劣、餓鬼で、馬鹿で、悪辣で、間抜けで、外道で、餓鬼で、馬鹿でアホで、阿保で、餓鬼なロブ君。頭の回転は割と速かった模様。(辛辣w)
※判明している手持ちのポケモンまとめ
①キルリア……Lv.23(役立たず)
・??? ・??? ・??? ・???
②ギガイアス……Lv.30(戦闘要員・初手有利取り)
・てっぺき ・だいばくはつ ・じしん ・ロックブラスト
③デンチュラ……Lv.36(牽制、捕獲or奇襲?)
・くものす ・でんじは ・???・???
④ナゲキ……Lv.35(戦闘要員・防御)
・??? ・??? ・??? ・???
⑤ダゲキ……Lv.35(戦闘要員・攻撃)
・かげぶんしん ・カウンター ・不明 ・不明
⑥???……Lv.??(牽制、捕獲or奇襲?)
・すなじごく? ・??? ・??? ・???