ポケットモンスター B&W another 〜隻腕の幻影 ゾロアーク〜   作:Mr.bot-8M6N

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3ー4 降る雨は暗示する④ーHOSTAGEー

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 事態はゾロアークの有利に進んでいるように見える。しかし、それは「否」と言わざるを得ない。

 

『…………………』

 

 それを理解しているゾロアークは誰にも悟られないようにしながらも苦い顔をする。

 

 ノーマルタイプ・変化技『みがわり』。

 それは、自身の総体力から1/4を消費し、ダメージや状態異常を肩替りしてくれる人形を生成する わざ である。

 

 そう。『みがわり』は体力を消費するのである。

 避けたとはいえ ギガイアスの『だいばくはつ』で多少なりとも減った体力で一度に二回の『みがわり』を使い、ゾロアークの体力は既に四割を切っている。

 

 勿論体力の回復手段はある。しかし、男が ダゲキ、ナゲキの二体を同時に駆り出された黄色の蜘蛛(デンチュラ)がいる。デンチャラは、この空き地の中心ーー大木の中からゾロアークの隙を伺うように睨みを効かせている。この状態では体力の回復もままならない。

 

 更に状況を悪くさせているのはこの辺り一帯で発生している砂嵐だ。それが残りのゾロアークの体力を確実にすり減らし続けている。この砂嵐は、十中八九ポケモンの仕業だろうが、その姿が一切見えない為、今すぐ止める事も出来ない。

 

 つまり、時間は完全に敵方の味方についてしまった、という事だ。

 

 この状況でどうするか。……そんなものは決まっている。

 

 ーー余計な時間を弄さずにナゲキを倒せなければ、この状況から生還する事が出来ない。

 

 そこまで考え、足に力を入れる。その時ーー、

 

「おい!『赤髪』ィイッ!!」

 

 男の声がした。その声には下卑た音が乗っている。

 

 ゾロアークはそちらを向く。同時に8体の幻影の内4体を赤色の格闘家のポケモン(ナゲキ)に睨みを効かせたまま、残りの4体も男の方を見る。

 

 そこにいたのは、(ロブ)とキルリアとーー

 

『ツーーーッ!?』

 

 ーー男に髪の毛を掴まれた小娘(トウコ)だった。

 

「い、痛いッ、離してッ!」

 

 トウコの悲鳴をゾロアークの耳が捉える。

 

「うるせぇ……。ちょっと黙ってろ。………さて、『赤髪』ィ、この状況だ。お前なら 言うまでもないだろうが……分かっているよな?」

 

 ーー……下種がッ!

 

 ゾロアークの歯が湧き上がる怒りに軋む。あぁ、そうだ。あの男が小娘を人質に取る事くらい予想できた事態だ。だが、今まで一匹狼として孤独に生きていたゾロアークには、その問題について 思い付きもしなかった。

 

 ーーいいや、まだだ。まだどうにかなる。

 

 小娘の側にいるのは、あの男とキルリアのみ。ならば、幻影を全てナゲキの足留めに使い、助けに行けばどうにかなる。

 

 それは、ゾロアークの脚力を持ってすれば十分どうとでもなる。ロブの側にキルリアという不確定要素が存在するが……そんな事を言っている場合ではない。

 

 危険(リスク)とは回避すべき物。しかし、必要な時に危険(リスク)を被る覚悟が無ければ、ゾロアークは一歩も進めなくなる。

 

 ゾロアーク自身の半生が小娘(トウコ)へと向かう脚に力を込める。

 

 その時、その瞬間……ゾロアークの意識は完全に小娘(トウコ)へと向いていた。

 それはつまり、他への意識が完全に絶たれたという事。

 

『…………………』

 

 ーーエスパータイプ・変化技『こうそくいーー

 

「やれ、デンチャラ。エレキネット」

 

 ゾロアークが動くよりほんの少し速く。ロブの命令がデンチャラへととんだ。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 その瞬間、大木で命令をーー絶好の機会を伺っていたデンチャラは動く。

 指示された命令は、デンチャラ自身が考えていたモノ(・・・・・・・)とは違っていたが……命令は命令だ。デンチャラは自身の体内のタンパク質で生成した繊維組織に電気を織り込んだ『エレキネット』を一気に吐き出した。

 

 

 吐き出された網は、ゾロアークを、ゾロアークの幻影を、味方であるナゲキさえもーー。全てを巻き込むように展開され、雷撃を伴いながら空を覆った。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

『ツッ!?』

 

 ゾロアークの全身に痛みが走る。身体が マヒ を起こす程では無いが、身体が痺れて動かし辛い。

 更に不味い事に、この『エレキネット』によって 衝撃に弱い『かげぶんしん』の幻影が全て解除された。残るのは、本体であるゾロアーク自身と『みがわり』で作った幻影一体の………ッ!?

 

 ーー轟音

 

 音のした方向を見れば、ナゲキがその巨腕を地面に叩きつけた音だった。ただ、それはただ地面に腕を振り下ろしただけめはないようた。ナゲキの叩き付けた指同士の間から黒い靄が漏れ出ている。

 

 それだけでゾロアークは察する。

 

 ーー最後の幻影が壊されたのだと。

 

 ゾロアークと同じく『エレキネット』に捕まっているナゲキが電撃を物ともせず残った最後の幻影を掴み上げ、そのまま地面に叩きつけたのだろう。

 

 これで残ったのは、ゾロアーク本体のみ。

 

 ーー舐めるなッ!

 

  わざ を使うまでもなく、自身の爪と腕力で『エレキネット』を引き千切る。

 

「まぁ、破られるだろうさ……だが、そんなに簡単には逃がさんよ。デンチュラ、『でんじは』」

 

『ーーカッ!?』

 

 瞬間、身体に言いようのない衝撃が走る。その衝撃に心臓が驚嘆の悲鳴を上げ呼吸が一瞬止まる。足に上手く力が入らない。ブルブルと震える膝は今にも崩れ落ちそうだ。

 

 ーー マヒ か!?

 

 ゾロアークの神経が機能不全を起こし、脳の命令が筋肉にまで上手く行き渡っていない。

 それでも、と。あるいは、それがどうした、と強引に力を込め一歩を踏み出す。

 

 その瞬間、赤の巨腕がゾロアークの胴体を捉えた。

 

『!?ーーッ』

 

「いよぅし、良くやった。ナゲキ、そのまま『しめつける』だ。ついでに『ばかぢから』も併用させろ」

 

 ロブの命令にナゲキは無言で答える。ゾロアークを『ばかぢから』で強化された両腕と胴体で完全に固定し、締め上げる。

 

 ゾロアークの骨から悲鳴のような軋みが生じる。

 

 両腕と両足が満足に動かさないゾロアークは、それでもナゲキの喉元に喰らいつく。

 

『………グッ……ヌウッ』

 

 だが、ナゲキの万力のような締め付けは一切緩まない。

 

「さぁてさて……『赤髪』。お前はギガイアスの『だいばくはつ』を難なく回避したようだが……今度は流石に逃げられないよなぁ?」

 

 ロブの声を聞き、ゾロアークに焦りが生じる。

 

 この状況であの男が何もしない訳がないのだから。

 

 そして、それはその通り。ロブはゾロアークのトドメ用にデンチャラに あるわざマシン を与えていた。

 それはーー、

 

「デンチュラ、『はかいこうせん』ーーッ」

 

 ノーマルタイプ・特殊技『はかいこうせん』

 ポケモンの扱う わざ の中でも最高クラスの攻撃性能を持つ特殊攻撃。

 反動でその後の行動が一時的に制限されるがその威力は折り紙つき。

 

 瞬間、大木に居座るデンチュラの口から極光が(ほとばし)る。

 

 極光はゾロアークとナゲキの近くの地面を抉りーー大爆発を起こした。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

「ウゲェ……。目と口に土が入りやがったッ!前が見えねえ」

 

 『はかいこうせん』の爆風が止み、ロブはその二次被害に苦しんでいた。

 

「『はかいこうせん』。流石の威力だ。ちょっとしたクレーターが出来ちまうとはな……」

 

 至近距離で撃つモンじゃねぇな、とひとりごちる。

 

 未だに上がる黒煙のせいでクレーターの中心がどうなっているか確認が取れない。

 

「き、キツネさんッ!!キツネさんッ!!」

 

 手元が煩い。

 

「キツネさーーあうッ!?」

 

 見れば、髪を掴み上げられたガキが悲鳴のような声を上げている。

 

「……うるさいって、ちょっと黙ろうか」

 

 ロブはトウコの掴んだ髪を持ち上げコチラを向かせ、黙らせようと試みる。

 トウコは逆にロブを睨みつける。

 

「このーーッ」

 

「『ーー卑怯者』か?カハハ、結構な事じゃねぇか!そうだ、オレは卑怯者さ。言い訳はしねぇ」

 

 だからーー、

 

「人質役どうもありがとう。ここまで上手くいったのは間違いなくお前さんのおかげだ」

 

 ーーと、ロブはクツクツと嗤う。

 

「………ゆーー」

 

 トウコが何かを言おうとするが、ロブはその口を左手で掴み持ち上げる。

 

「んー?『許さない』か?……まぁ、どうでも良いんがな。オレはお前さんをゲラゲラと嗤いたいだけで、お前さんの話なんて聞く気はねぇんだ。後は一人でやってくれや」

 

 それだけ言って、ロブはトウコを投げ捨てるように転がす。

 小さな悲鳴が聞こえた気がするが、もう耳を傾ける気もしない。

 

「……随分と派手にやらかしてくれたようだな」

 

 男の声がする。見れば、後方で待機していたチェインメイルの男女の二人の姿がある。…………二人?

 

「おう、お目付役様か。見ろよ……あの『赤髪』が。散々、オレたちの手を焼かせた あの『赤髪』がッ!こんな間抜けな手に引っかかりやがったよ!!あぁーあ、滑稽滑稽!」

 

 ロブは嗤う。ゲラゲラと嗤う。嗤って、嗤ってーー

 

「…………滑稽……か……」

 

 そう小さく呟いた。

 

 それは一体誰に言ったモノなのか。

 

『……………………』

 

 その後ろ姿を、『役立たず』と罵られ続けているポケモンーーキルリアがとても痛ましそうに見つめていた。

 

 

「雨、強くなり始めたか……。とっとと終わらせるか」

 

 

ーto be continuedー

     ーnext episodeー




ロブが悪役しつつも……何かしら含みのある発言をする今話。

なんだかんだ、ゾロアーク優位に進んでいた戦況も一点し、次回から不利な展開を余儀なくされます。

というか、ついに話のストックが切れた。こっから自転車操業か……ヒエッ

今回の登場キャラクター
・ゾロアーク……今まで使ったわざって、①とんぼがえり②にらみつける③にほんばれ④つめをとぐ⑤ローキック⑥かげぶんしん⑦みがわり⑧つばめがえし……まだ増えていくんだけど、流石にヤバくね?一章済んだら削るかな。取り敢えず、戦闘に使ってないやつとかを。

・トウコ…… そ、そろそろ出番ですよ?(汗

・ロブ……何がしか含みのある言い方をするロブ君。この伏線を回収できるまでこの作品は続くのか?

・チェインメイルのーー……うわぁ、この人達トウコ以上に影が薄い……。作者が本気で何でいるんだろうと思い始めたら、もう色々と終わりな気がしてきた。
「そういや、三人なのに今話二人しか出てないけど、どうしたの?」
みがわり幻影で吹っ飛んで気絶退場。
「えぇ……」
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