ポケットモンスター B&W another 〜隻腕の幻影 ゾロアーク〜   作:Mr.bot-8M6N

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1ー3 あの向こうに……③ーOVER THEREー

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 ーーおい、ガキ。もう安全だぞ。

 

 だからいい加減立てと軽く少女を蹴る。

 

 ーー……あ?

 

 反応が無い。先程まで意識があったようだが……。

 そう考え、ゾロアークは右足で器用に少女を転がす。

 

 少女の顔色は悪かった。息も荒く、意識があるか分からない。

 

 ーーまさかマヒ……いや、毒か?しかし、あのミネズミ(ドブネズミ)に毒系の技は無かったはずだが……。

 

『………チッ』

 

 ゾロアークは舌打ちを打った後、少女を三本の爪で器用に抱え上げてその場から姿を消した。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

「……………う、うぅん」

 

 いつの間にか意識を失ってしまっていたようだ。少女ーートウカは目を覚ます。

 

「フカフカぁ……」

 

 それでも、意識は完全には覚醒していないらしく今は背中の沈み込みそうな程に柔らかい何かに身を任せたまま動こうとしない。

 

(えーと、私……何してたんだっけ?たしかーー)

 

 ーーたしか、ネズミみたいなポケモンに追われて……途中で動けなくなって…………その後、見た事ないポケモンが……って私何で無事なの!?

 

 そこまで思考が回った所で意識が覚醒する。飛び上がるように起き上がり、辺りを確認する。

 

 そこは少し開けた森の中。近くに小さな川がながれている。

 

(多分、あの川は17番水道……?なら、この川の流れと反対方向に向かえば1番道路にもどれる?)

 

 何となくだが、帰れそうだという事が分かり安心感を覚え、もう一度あの柔らかい感覚に身を任せる。

 

(そう言えば、このフワフワなんだろ?)

 

 そう思い、その柔らかい感触の物体を確認しようとしたその先で少女ーートウコはコチラを見る視線と合った。

 

 それはミネズミに襲われた時に現れた謎のポケモン。狐のような細い顔つきと鋭い視線で「ジー」とコチラを見ている。

 

「……ヒッ」

 

 トウコは、反射的に距離を取る。しかし、そのポケモンはただコチラを見つめたまま動こうとしない。

 小さな静寂が一人と一匹の間に生まれる。

 

 ややあってーー、

 

『………ケッ』

 

 ーーという素っ気ない一声と共にそのポケモンは視線を逸らし眠り始めた。

 

「え、えー……」

 

 少女は困惑気味だ。何故あのポケモンは私を襲わないのだろう、という疑問が頭の中を支配している。というか、あの柔らかいのはあのポケモンの長く紅いタテガミだったのね。

 

「……ねぇ、あなたはどこかのトレーナーのポケモンさん?トレーナーさんは何処にいったの?」

 

『チッ……』

 

 その狐型のポケモンは目を閉じたままコチラを見ようとしない。ただ、今のトウコの言葉に不快さを隠さない舌打ちを打った。……どうやら、トレーナーは居ないようだ。

 

(という事は……もしかし、野生のポケモン?野生のポケモンが助けてくれたの?)

 

 トウカは今の今まで忘れていたが、自身の傷が綺麗に洗われている事に気付いた。痛みもそこまでではない。見れば、近くに潰れた木の実が一箇所にまとめられている。

 

(傷口からきのみの匂いがする)

 

 おそらく、あの潰れた木の実は傷薬の代わりになるエキスが詰まっている物だろう。聞いたことがある、傷口がない時に応急処置として、何かの木の実の果汁が使われる事を。

 

「……ねぇ、貴方が助けてくれたの?何で?」

 

 紅毛のポケモンは何も答えない。目を閉じまま、うつ伏せで寝ようとしている。

 

「ふふ……変なの」

 

 トウコは小さな笑みを浮かべ紅毛のポケモンに近付く。そして、おそるおそるそのポケモンに語りかける。

 

「……わたしはトウコって言うの。ねぇ、あなたは?」

 

『…………』

 

 やはり何も答えない。トウコも何となく答えてくれないだろうと思っていた。

 トウコは空を仰ぎ見る。随分と時間が経ったような気がしていたが、まだまだ太陽は登り切ったばかりのようだ。なかなかキツい日差しに目を細める。

 

「まだちょっとお昼を過ぎた位なんだ……。ねぇ、もう少しとなりにいても良い?」

 

 そう言って、トウコはゾロアークのタテガミに身を預けて「すーすー……」と寝息をたて始める。

 ゾロアークは困惑した目を向けるも溜息をついて少女同様に眠り始めた。

 

 イッシュ地方南東部の小さな村の近くの昼下がり、一人と一匹の寝息が森の中で小さく響いていた。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

「………ウコ……トウコってば!!」

 

 私を呼ぶ声がする。幼馴染の女の子の声だ。

 

「………あと、五分……」

 

 しかしすまぬ、幼馴染よ……。今はこの極上のフカフカを堪能するという使命が……。

 

「こんな所で寝てたら風邪引いちゃうよ!」

 

「………幼馴染ベルよ……私は……このフカフカを……たん…の…………ぐぅ……」

 

「何、変な寝言言ってるのぉ!?ここ、おもいっきり地面の上だよぉ!もう起きてぇ、トウコぉ〜……」

 

(地面の上?……そう言えば、あのフカフカの感覚が……無い!?)

 

「トウコぉ……って起きた」

 

 トウコは跳ね起き、辺りを見回す。いつの間にか日が傾いてしまっていたようだ。西の空が茜色に染まり始めている。そこは、1番道路とカノコタウンのほぼ境の草むらだ。遠くに自宅の光が見える。

 

「ふ………」

 

「ふ?」

 

「フカフカはッ!フカフカは何処に行ったぁ!!」

 

 トウコ、吠える。トウコは幼馴染の両肩を掴みガクガクと揺さぶる。

 

「何処だっ!言えっ!さもなくば、貴様の乳を将来的にデカくするゾ!」

 

 ついでにおかしな事も口走り始めた。

 

「そうだった……寝起きのトウコはヤバかったんだ………ふぇぇ、助けてぇ、チェレン〜トウヤ〜!」

 

 それにベルが小さな悲鳴をあげ、助けを求める。

 

「お、おい、トウヤ!この馬鹿を引き剥がせ!チェレンのやつが本気で泣きそうだ!」

 

「う、うん……。トウコ、取り敢えずフカフカは自宅に帰ってからね?今日、叔母さんが布団干してたの見たから。きっとフカフカだよ?」

 

 トウヤと呼ばれた少年が荒れ狂う害獣を引き剥がす。助けられたベルは半泣きだ。

 

「フカーッ!!フカーッ!!フカーッ!!」

 

「……いい加減にしろ!この馬鹿女ッ!」

 

 ゴツッという音が奇声を上げ始めたトウコの頭に叩き込まれる。

 

「いったぁ!何するのよッチェレ……………居たの、チェレン?それにトウヤも」

 

 ーートウコ は しょうき に もどった!

 

「居たよ!……というか、さっさとベルに謝れ!半泣きじゃないかッ」

 

「チェレン、私は良いから……」

 

「僕も謝った方が良いと思うよー。……まぁ、何時もの事だけどね」

 

 チェレンと呼ばれた少年は眉間に皺を寄せている。トウヤという少年も何処か困り顔で笑っている。

 

「ベル?……ってどうしたのよ、ベル!涙目じゃないっ!まさかチェレンの奴に何かされ………いったぁぁい!!」

 

「チェレン、そんなに女の子の頭はポカポカ殴る物では無いと思うよ」

 

「そうだそうだー。ぼうりょくはんたーい」

 

「…………おい、トウヤ。その馬鹿をそのまま捕まえておけ。あと何発か叩き込む必要があるらしい」

 

「……チェレン。……トウコもチェレンを弄らない。それより、ベルにちゃんと謝ろうか」

 

「うッ……ゴメンね、ベル」

 

「う、うん……大丈夫だよ。ちょっと、驚いただけだから」

 

「今度、チェレンが何かやったら私に言いなさい!ブン殴ってあげるから!」

 

「え、え?……えっと……………う、うん?」

 

「お前、いい加減にしろよ!」

 

「へーんだ。毎度毎度、私の頭を殴ってきてからに。偶には私にも殴らせなさい!」

 

 チェレン相手になら何処まで噛み付くと言わんばかりのトウコに全員がため息をつく。

 

「この馬鹿、人が心配したというのに……」

 

「え?チェレン、貴方、私を心配していたの?どうして?」

 

 チェレンが?私に?、何か心配させたっけ? という様々な疑問を込めた言葉にチェレンは黙り込む。

 

「…………………」(←チェレン の むごんパンチ)

 

「……ッ!……とうッ」(←トウコ の ききさっち からの ぜんりょくかいひ)

 

「………わっ」(トウヤ の ガード………成功)

 

 今まで散々殴られてきた経験がトウコの中で生きたようだ。(トウコ的に)理不尽な一撃を見事に回避してのける。

 

「な……なんか分からないけど、チェレンが急にキレたわッ……逃げるわよ、ベル。それにトウヤも」

 

「え、え……?」

 

「あれはトウコが悪いと思うよ。……まぁ、いきなり殴りかかってきたチェレンもどうかと思わないでもないけど……」

 

「………………」(←無言で殴りかかるチェレン)

 

 三人が逃げ(内、二人は巻き込まれ)、一人がそれを追う。その姿が1番道路から遠ざかっていく。

 

(全部、夢だったのかな……)

 

 両隣に幼馴染を引き連れて走るトウコの心に小さな寂しさが凪ぐ。そこに息を若干切らせたベルが話しかける。

 

「……と、トウコ。朝から全然見かけないから心配したんだよ?それに服は泥だらけで……怪我も一杯あるし」

 

「え……?」

 

 本当だ。服は泥だらけで膝や手のひらにも大きめの擦り傷が残っている。それにーー

 

「…………木の実の匂いがする」

 

「木の実?……本当だ、これってオレンの実かな?他にもいくつか……」

 

 トウヤが無遠慮にトウコの匂いを嗅ぐが、気にならない。それ以上に何かが満たされていくような感覚がトウコを支配する。

 

「フフ……そっかー、そっかそっかー。夢じゃ無かったかー!」

 

「……トウコ?」

 

 急に上機嫌になったトウコにベルまトウヤも困惑気味だ。

 

 トウコは振り返る。そこにはメガネに光が反射してイマイチ表情の分からないチェレンがいるだけだ。

 ……でも、その向こう。1番道路を北に進んだ17番水道との境にはきっとあのポケモンがいる。

 

「ふっふー!何でもないよー。二人とも、今から鬼ごっこだ!自分の家に早く帰り着いたヤツが1番ね!……鬼は後ろの鬼畜眼鏡がボランティアでやってくれるって!」

 

 

 西空の茜色が東空の藍色に染め返される春のある日、私はきっと運命に出会っていたのだと思います。

 

 

ーto be continuedー

    ーnext episodeー




という訳でトウコとゾロアークの出会いエピソードでしたー。
最後に主人公と幼馴染の絡みを入れたのは個人的に英断だと思うんだ!これによって幼馴染4人の関係が自分の中でもハッキリしました。「トウコ、やらかす→ベル、被害を受ける→チェレン、キレる→トウヤ、諌める」「トウコ、チェレンを挑発→チェレン、キレる→ベル、おどおど→トウヤ、諌める」というのがこの4人の漫才ですな!……トウヤ君、マジイケメン!
良いですなぁ〜。こんな関係の幼馴染、俺も欲しかった……。

次回でアララギ博士を出したい所。でも、そのあとの戦闘シーンを考えるばっかでその辺ほとんど手つかずなんだよねぇ……ははは、マジヤベェw

まぁ、その前に「幕間」を1つ挟ませていただこうと思います。自分、書いてて「馬鹿だろ」って思いました。誰得なんだろ?次回の幕間……。

という訳で、
・4/22 18:00 「幕間 彼は結構綺麗好き」
更新予定です。





今回の登場キャラクター

・トウコ……ぶっちゃけ、ロリ時代のキャラが固まってなかったりする。このまま行ってキャラがブレブレにならないかめっさ心配である。取り敢えず、寝起き直前と直後の思考はかなりヤヴァイ事は決定済み。

・ゾロアーク……ひねくれた性格。基本的に『……ケッ』とか『……チッ』としか言わない。非常に知能が高く、人間の言語を完全に理解している。戦闘時は雑魚をいなす時は足蹴。ガチの時は爪。奥の手は「ナイトバースト」を予定している。技の数はチートで複数覚えられる事にしよう!そうしよう!良いだろ、主人公補正という事で!

・ベル……トウコの幼馴染1。ほわほわ、おどおどの小動物系女子。将来的に素晴らしいことになる胸部の片鱗は既に見えている。

・トウヤ……ポケモンBWの男主人公。トウコの幼馴染2。若干天然の入った爽やか系イケメン。登場させたのは良いけど、ポケモントレーナーになった時の最初の三体をどうするかでガチで作者を悩ませる原因。

・チェレン……トウコの幼馴染3。…………男のツンデレっている?(自問)超いる、スゲーいる。ゾロアーク君もツンデレ要素ありそうだし(自答)


*本エピソードの裏話
 今回のエピソードであった潰れた木の実について

・オレンの実……青色の蜜柑のような見た目。途轍もなく固い。持たせると、HPが半分以下の時に一度だけHPを10回復

・グラボの実……鮮やかな赤色のサクランボのような見た目。辛い。見た目が甘そうなのに辛い。まひの回復効果がある。

・モモンの実……桃のような見た目。物凄く柔らかい。毒、猛毒への回復効果がある。

 これらは、野生のポケモンであるゾロアークが自身の回復の為に常備している木の実。

トウコが気絶中に17番水道で傷の汚れを洗い落とし、自身の腕力で握り潰した木の実から流れ出た果汁を傷口に塗り込んだり口から飲ませたりしていた。
しかし、実際に効果を示したのはオレンの実だけである。
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