ポケットモンスター B&W another 〜隻腕の幻影 ゾロアーク〜 作:Mr.bot-8M6N
4
あのポケモンと出会ってからしばらく経ったある日の事。私は
そこは、森の中でポッカリと開いている。真ん中に生えた一際大きな木が辺りの栄養と光を独り占めしたからこそ出来た空き地だ。その近くに、下流に行けば17番水道となる小川が流れており、その水も中心の大木が奪っているのだろう。
そんな空き地に最近現れたポケモンが我が物顔で陣取っている。
私はそのポケモンを「キツネさん」と呼ぶようになった。
別にキツネさんはあの大木のようにここを独り占めしようとしている訳ではない。実際、私がここをほぼ毎日のように訪れても何も言わない。………というか、いつも『……ケッ』とか『……チッ』としか言わない。
では、何故ここを陣取るような状態になっているかというと、他の野生のポケモンがキツネさんを怖がって近づこうとしないのだ。この辺りの野生ポケモンと比べ一線を画する強さを持っているキツネさん。野生に生きる彼らには近づこうとすら思えない存在なのだろう。
だからといって他のポケモンの事を考えて場所を譲るという思考は持ち合わせていないキツネさん。
まぁ、そのおかげかどうか知らないが、キツネさんと出会って以来一度として他の野生ポケモンから襲われた事は無い。出会う事はあっても何故か遠巻きに見られるだけである。
「キツネさーん、来たよー。キツネさーん!」
…………………………。
返事が無い。………あ、何時もの事だコレ。
しかし、いつもは大木の木陰で涼んでいる筈だが、そこにも居ない。
珍しい。私が来る時はいつもこの辺りにいる。というか、ここに居なかった事そのものが初の事。
この辺りを探して居なかったら、少し待ってみますか。
ーー((( ○ )))ーー
結果から言うと、見つかりました。それはもうあっさりと。因みに、見つけた場所は例の小川です。
しかし、私はキツネさんに声をかけていません。というか、木陰に隠れています。
何故ならーー
「キツネさんが水浴びしていらっしゃる……」
ーーからです。
水浴びしてたら何か悪い?いやいや、そんな事ありません。しかし、キツネさんの水浴び。結構レアです。
そう言えば、キツネさんのタテガミを背中に預けて寝る事がある。野生のポケモンなのだから多少小汚いイメージがあったが、それで服が汚れたという事は無かった。
何となく、声をかけずらかったのでこのまま観察しておきましょう。
……何故かイケナイ事をしている気がする。相手、ポケモンだよ?大丈夫か、私。
ーー((( ○ )))ーー
と言っても、私が覗いたのは殆ど身体を洗い終わった後のようで、キツネさんは浅瀬に近づいてきました。
いたたまれなさが半端ないので声をかけちゃいますか。
「キツネさ……」
と言いかけた所でキツネさんは此方に背を向けて座り込んだ。浅瀬なので上半身が水面から見えている。
え?出ないの?と困惑する私を他所にキツネさんは後頭部に手を伸ばした。
鋭い爪しかない三本の指で頭皮を傷付けないように細心の注意を払いながら触れる。
頭頂部はジグザグを描くように撫でる。
首の後ろの辺りからは円を描くように撫でる。
ついつい洗った気になって忘れがちになってしまう生え際や耳の周り、後頭部は入念に。
鋭い爪のせいでやりにくいそうだが、ベッドスパまでしてらっしゃる?!
「………………………………………」
ポケモンだよ?それも半二足歩行とはいえ獣型のポケモンだよ?なのに、何でポケモンがそこまで入念に髪洗いしてんの?!
しかも仕草が一々色っぽい!!耳元の生え際をかき上げるんじゃない!毛先の一本一本まで気をくばって洗うんじゃない!!うわ、シャンプーもリンスも使ってないのに髪の毛の引っかかりが無い!!
「…………………………………………………………………………」
悶絶ものである。何故悶絶しているか私自身分からない。取り敢えず、絵面がシュール過ぎて悶絶していたという事にしておこう。
しかし、ポケモンも毛並みを綺麗にする為に努力してるんだなぁ……。
私もこの栗毛にはお母さんから褒められていて自信があったが………あるからこそ、これからはもう少し丹念に洗おう。
私は木陰で一人、そう決意していた。
キツネさんが川から上がってくる。こだわり抜いた洗髪も終わったようだ。
川から上がったキツネさんは………身体をブルブルと降って体毛が吸った水気を飛ばす。
…………………そこは、野生ポケモンぽいのね。
少し、ガクリとなる。何がどうかと言われたら分からないが、何かが萎えた。
そんな事をしていると、私はキツネさんに見られていることに気づいた。
ーーあ、ヤバイ。何がかは分からないが、何かがヤバイ。
キツネさんが近付いてくる。
「え、えっとね。何時もの場所にキツネさんがいなくてね?何処行ったのかなーって探してたらね?水浴びしてるのを見つけちゃってね?」
私、タジタジである。
キツネさんはいつもの無表情で近付いてくるからマジで怖い。
「えっとね?だからね?その……ね?………………………ごめんなさい!!」
土下座を敢行しそう程の勢いの全力の謝罪。キツネさんが私の前で止まったのが気配で分かる。数秒間の静寂が本当に痛ましく、辛い。
ややあってから、
『…………ハァ』
というため息と共に『ゲシッ』と軽く足を蹴られた。
ーー見てんじゃねーよ。
そう言われた気がする。
キツネさんは、そのままいつもの大木の下まで歩いていく。
「……ゆ、許してもらえた?」
おそらく、そうらしい。しかし、もしもの事はある。
ーー取り敢えず、明日はシャンプーとかリンスとかを持って行こう。
そう心に誓ってから私はキツネさんの後を追った。
更に暫くの時が経つと、いつの間にか私はキツネさんのタテガミの洗髪とブラッシングを任されるようになっていたが、それはまた別のお話。
ーinterlude endー
ーnext episodeー
今回の閑話は第1章の構成を見ていると、「なんかトウコとゾロアークの絡みが少なくね」と思い至ったのが原因で急遽突っ込まれたエピソードです。簡単に言うと、「オラ、お前らもっとイチャイチャしろw」ってことですかねw
急ぎだった事もあり、トウコちゃんの一人称視点となりました。書きやすいな、一人称。多少無理矢理でもどうにかこうにか読めるようになるぞコレ!?
それはそうと、
…………………………。
何をやっとるだ、俺は……。この閑話を書いている間、一体何度この疑問を自分に投げかけ続けただろうか……。
ポケモンの濡れ場とか誰得だよ!!馬鹿じゃねぇーの?!
↓数秒後
あ、俺ってば……馬鹿だったわ……。
この思考に至ってから指が止める事なく書ききりました。
改めて思う………うん、馬鹿だわ。
トウコちゃんが変な性癖に目覚めなければ良いのだが(あくまでも、タグの異種族恋愛は予定です。それも物凄く曖昧な。取り敢えず、今の時点では本気にしないで下さい。お願いします)
今回の登場キャラクター
・トウコ……本作の主人公(幼少期)。寝起きがヤバイ事以外は快活な女の子という設定…………です。本当ですよ?少なくとも変態キャラにするつもりは無いです。本当です……信用……………出来ねぇわ。俺が一番自分の事信用出来ねぇわw
ビジュアルの変化はあまり無いです。取り敢えず、ゲーム本編開始の14歳時の衣装に多少手を加えてヘソ出しシャツを着せたいなぁと思う程度です。はい………これだけで、いかに私が信用出来ないヤバイ人か分かったと思いますw
・ゾロアーク……今回の件で綺麗好きという事実が発覚しました。洗髪が妙に人間臭い事が発覚しました。その辺は伏線(?)という事にしよう。そうしよう。
ゾロアークが使用する「わざ」の候補を選出する過程で結構な数のタイプ技を覚える事が発覚。流石「イリュージョン」持ち。ゾロアークの「わざ」保有数はバグらせる事は確定しているが、原作でしっかり使える「わざ」しか使わない事をここに誓います。まぁ、「わざ」の効果を変えたりとかはするかもしれない。というか、もう若干やってたりする。
実は、本エピソードの後、「にほんばれ」で天候を快晴にして身体を乾かしたり、「つめをとぐ」で爪の手入れをしていたりします。もう、「わざ」の保有数が4つどころか6つでも効かなくなってまいりました………。