ポケットモンスター B&W another 〜隻腕の幻影 ゾロアーク〜   作:Mr.bot-8M6N

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ここが、途中に挟み込まれた閑話です。
読者の皆様には大変ご迷惑をおかけしました。

それと、本日はご迷惑をおかけしたお詫びとして閑話の2話分を放出したいとおもいます。
後編は、本日27日の18:00を予定しております。


閑話②ー1 病床の小娘を探して・上

5

 

 

 最近、娘の様子がおかしい。

 

 朝早くに何処かに出かけて行き、空が夕焼けで紅く染まる頃まで帰ってこない。

 

 娘の友人達に尋ねても、最近、会う機会が減っているそうだ。娘は何処で何をしているのだろう?危ない事をしていないかとても心配だ。…………も、もしかしたら悪い男に引っかかっていたりして!?

 

『ウニャー……』

 

「レパル……。どうしたの?貴方も心配なの?」

 

 憂鬱な顔をしていたのを心配したのか、レパルと呼ばれた大型の猫ポケモンが私の頬を舐める。彼女は私が若い頃ーーポケモントレーナーだった頃からのパートナーにして、私たちの家族……まるで豹のようなしなやかな躯体の猫型ポケモンーーレパルダスだ。

 

「……そうね。ここは母親として、一度キッチリ話を聞かないとね」

 

 フンスッーーと勢いよく鼻息を鳴らす私。

 

 そのタイミングを見計らったかのように階段から聞き慣れた足音を立てて階段から娘ーートウコが降りてくる。

 そんな愛娘に母親は声をかける。

 

「あはよう、トウコ。……早速なんだけど、少し話があるからーー」

 

 そこまで言いかけてから娘の顔を見て言い淀む。

 

「………あ、おかあさん。……おはよー……」

 

 その声に何時もの快活な雰囲気は無かった。寧ろ、覇気が無くどこか舌足らずに聞こえる。

 更に、目が半分寝ているかのようにトロンとしており、顔も赤い。

 

「……………………」

 

「……なに?おかあさん…………」

 

 そんな娘に顔に手が伸び、お互いの額同士を合わせる。

 

 ーーむむ、これは……。

 

「トウコ。貴方、熱ね」

 

「………ねつー…………?」

 

 どうやら、娘は風邪を引いたようである。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 その日、ゾロアークは「もしもの時の為に」と常備している数々の木の実の中から腐ったりカビが生え始めた物の処分をおこなっていた。

 

 そこで、

 

 ーー最近、あの小娘が顔を出さない。

 

 ふと、そんな思考が頭によぎった。

 

 …………………。

 

 いや………だからどうしたという事なのだが。

 心配とかそういうのではないのだ。寂しいとかそういうものでは断じてないのだ………が、

 

 ーー全く、小煩いだけの小娘も居ないとなると……どうにも気にくわない。

 

 それに最近、あの小娘にタテガミの手入れを任せるようになってから毛並みが良いのだ。小娘が来ない間は自力で手入れを行なっているが、どうも納得がいかない。

 

 ーーこれは、俺のタテガミのためだ。断じて俺があの小娘を心配しているわけではない。

 

 おもむろに立ち上がったゾロアーク。その周りに黒い靄が発生する。それが、大きさと密度を増し、ゾロアークの腕を包む。

 黒靄が霧散し、そこにある腕は、明らかに本来のゾロアークの物とは全く違う物だった。黒と灰色の体毛が消えて失せ、代わりに白い肌と五本の指を持った腕がある。間違いなく人間の腕だ。

 それを確認したゾロアークは更に力を込る。それに呼応するように黒い靄が大きさを増し、ゾロアークを包み込む。

 

 そして、黒靄から一歩進み出たゾロアークの姿は間違いなく人間だった。若干、紅のメッシュが入った黒の長髪。ポケモンとしての姿の時程ではないが、男としては十分に長い髪を後頭部で結んだ、まだ20歳に満たないであろう青年といった風態。

 

 ーーゾロアークの特性『イリュージョン』。自身の外見を自由に変える事のできる ばけぎつねポケモン というゾロアークの分類そのものを体現した能力である。

 ゾロアークは普段この能力を使って人の中に溶け込み、生活をすることもある。……まぁ、それも今の逃亡生活を余儀無くされるまでの間だったが。ゾロアークを追っている連中はどうも彼のイリュージョンを見破る手段を得ているようで何度かそれで見つかっている。

 

「久しぶりに人間の姿になったが、おかしな所は無さそうだな」

 

 頭部に耳は残っていない。爪も人間のものだ。ーーただ、どうしても目付きの悪さがポケモンの姿同様に人間の姿に色濃く影響を受けている。

 

「あとは……」

 

 と言って、また黒い靄から衣類といった身に付ける物も生成していく。これは、『イリュージョン』の応用だ。流石に裸で人里に降りるのは憚られる。

 生成した物はどれも黒と赤を基調としている。その服の袖に腕を通し、スボンを履き、身支度を整える。

 

「これで問題無いだろう」

 

 あぁ、その通りだ。問題無い………そのお面が無ければの話が。

 顔の上半分を隠すように被られたのは黒の狐面。ゾロアーク自身を模したのか、目尻に隈取のような模様が入っている。これは、何度試しても治らなかった鋭い目付きへの対策。こちらの方が目立つのだが、逆に周りが警戒して近付いてこず初対面でいきなり人間の子供に泣かれるという事態が減った為にゾロアークが採用している。

 

「する必要はないが、様子を見に行くか」

 

 全くもって必要はないがーーと誰もいないのというのに誰かへ……あるいは自分自身に言い聞かせるように呟くと、彼の姿は森の中に消えていった。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 カノコタウンの南部ーー海を臨むことができる高台に見知らぬ青年がいるのをトウコの幼馴染ーーベルは見つけた。

 

 イッシュ地方の端にあるこのカノコタウンに外からの来訪はほとんど無い。だからこそ、彼女はその男の事が気になっていた。

 こんな辺鄙な村に来ている以上、何かしらの理由があるのだろうが、あそこから動く気配がない。……というか、見るからに怪しい。

 

「どうしてここにいるんだろう……」

 

「何がだ?」

 

「?!ーーッ」

 

 突然、背後から声をかけられて、心臓が跳ね上がる。驚きすぎて、唾液が気道に入ったのかむせ上がる。

 

「お、おい!大丈夫か!?」

 

 ゴホッゴホッーーと咳き込むベルに、背後から声をかけた男は心配げに声をかける。

 

「も、もう!カルカお兄ちゃん、突然声をかけないでよ、心臓が止まるかと思ったよぅ!」

 

「お、おう……。なんかスマンな。……んで、どうしたよ?ベルちゃん」

 

 「カルカお兄ちゃん」と呼ばれた男はベルの血の繋がった兄というわけではない。カノコタウンの若年層の中で比較的年が高く、面倒見が良い為か多くの年下の子供たちから「お兄ちゃん」と呼ばれ、慕われている。

 カルカはこのカノコタウンで数少ないポケモントレーナーの一人で、野生ポケモンが出没する森に囲われたカノコタウン内の防衛を担っているこの村の青年だ。おそらく、彼は相棒のハーデリアとカノコタウン内の見回りをしていた時に物陰に隠れていたベルを訝しんで声をかけたのだろう。

 

 息を整えたベルは改めて高台の青年に視線を向ける。

 

「え、えっとね……あそこにね。知らない人がいるだよ。それでどうしたのかなぁ?って」

 

「んあ?お、本当じゃねぇか。……どれ、ちょいと声をかけてくるか」

 

 カルカはベルに言われた男を見つける。あのお面が見るからに怪しいが、カルカはあまり気にならないようだ。

 

「え?」

 

 カルカはベルの腕を掴み、グイグイと男の下へ引っ張っていく。

 

「なんだ?声かけたいんだろ?」

 

「え?……ちょ、違ッ?!……ふえぇぇぇぇ!!」

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 ーーふむ、これは困った。

 

 人に化けたゾロアークは一人、カノコタウンの中で偶然見つけた高台で海を眺めながら今後の行動を考えあぐねていた。

 

 ーー村に入れば、何だかんだ会えるものだとばかり思っていたが……。

 

 全くそんな事は無かった。村に入ってからしばらくの間徘徊していたが、歩けど歩けど知らぬ顔ばかり、小娘には全く会えないでいる。というより、行き当たりばったりにも程がある。

 

 ーー今後どうするか……。

 

 この村からゾロアークのいる空き地までの道程で何かしらの問題に見舞われたのかとも心配したが、村ではそのような騒ぎが起こっていない以上杞憂だろう。

 

 ーー………………!……い、いや誰もあの小娘の事など心配していないからな!

 

 自分の中で沸き起こった「安心した」という感情を全力で否定するゾロアーク。

 

 そんな事をしているとゾロアークに声がかけられた。

 

「よお、兄さん。こんな辺鄙な村に用でもあんのか?」

 

 ゾロアークは声をした方を見る。犬のようなポケモンを連れた男とそれに半ば引きづられるようにして歩いて来た少女だ。男の方は今のゾロアークと同年代、少女の方は"あの小娘"と同年代といった所か。

 

 流石に、話しかけられた相手にいつまでも仮面を被ったままなのは失礼だと分かっているゾロアークは振り返ると同時に面を取る。

 

 少女は、ゾロアークと視線が合うと、酷く狼狽する。解せぬ。

 

「おうおう、兄さん。そんなに睨みなさんなや。……ベルってんだが……この娘が怖がっちまてるじゃねぇかよ」

 

 ーー睨んどらんわ、失敬な。

 

 そこで初めて人間体ゾロアークの三白眼が不快気に細められる。

 

「……目付きの悪さは生まれつきだ」

 

「ん?あぁ、そうかい。そいつは悪かった。……ベル、そこの兄さんは怒ってないってよ」

 

「う、うん……」

 

 そんなやりとりを黙って見ていたゾロアークはおもむろに要件を聞く。

 

「……で、何の用だ?」

 

 何かしら用事があったから、話かけてきたんだろう?、とゾロアークはたずねる。

 

「用って程の事じゃあねぇんだがな……。どうも、俺たちには兄さんがお困りのように見えてね。ここは村の者として何か助けになれないかな、と思ってね」

 

 青年の言葉にゾロアークは多少の迷いを覚えた。しかし、結局それを「渡りに船」と考え直し、言葉短かに話す。

 

「………人を探している」

 

「へぇ、人を……か。なら安心だ。ここは世間が狭いからな。村の連中なら皆知り合いだ」

 

 で、探してる奴っての誰なんだ?と聞かれ、ゾロアークは口を開きかけるも、そこで止まる。

 

 ーー名前……。そういえば、あの小娘の名前は何だったか……。

 

 「小娘」としてしか覚えていなかったから名前なんぞ記憶していない。

 ………いや、言っていた気がする。初めて会った時に勝手に自分の名前を言っていた筈なのだ。

 

 ーーたしか、「小娘」の名前は……

 

「……トウ……コ、だ」

 

 ほとんど記憶の片隅に埋まっていたその名前を引っ張り出す。

 

 その名前に少女はピクリと反応するが、それだけ。

 

「トウコちゃんか。ははーん、さては兄さん。兄さんはトウコちゃんのお見舞いに来たんだな。……ん?わざわざ外から?」

 

 青年は自分の言った内容に違和感を覚えたようだが、それが疑問になるより早く、ゾロアークの質問が耳に届く。

 

「……お見舞い?」

 

「なんだ、兄さんは知らなかったか。どうもトウコちゃん、数日前から風邪で寝込んでいるそうなんだわ」

 

 ーーあの小娘が風邪。

 

 ゾロアークは小さな驚きを覚えるが、逆に納得もした。どうりで来ない訳だ、と。

 

「成る程、大体分かった。情報感謝する」

 

 「あの小娘が来ない理由が分かればそれで良い」とばかりに、青年に礼を言って、空き地に帰ろうとする。しかしーー、

 

「待とうや、兄さん」

 

 と、呼び止められた。

 

「……何だ?」

 

「いやぁ、兄さん。兄さんはトウコちゃんの家分からんだろう。良かったら案内してやんよ!」

 

 そういう提案をされた。しかし、ゾロアークとしてはそこまでするつもりは無い。

 

「……いや。だが、あの小むーートウコは風邪なのだろう?ならば邪魔をして、風邪を悪化させる訳にもいかないだろう」

 

 やんわりと「お断り」しようとするも、青年の親切心はそれを理解しなかったようだ。

 

「いやいや、わざわざ外から訪ねに来たんだろ?なら、お見舞いくらい行っても文句なんてねぇだろうさ。さ、とっとと行くぞー」

 

 親切の押売りと言うのだろうか、これは……。

 

 余計なお世話だと切って捨てる事もできるが………いつも楽しそうに何かを話している小娘が風邪で寝込んでいる。それを見てみるのも一興、と考え付いて行く事にした。

 

「あ、そう言えばさぁ……。オレ、兄さんの名前聞いてなかったわ。コイツはさっきも言ったが、『ベル』。オレは『カルカ』。兄さんは?」

 

 狐面を被り直したゾロアークはそれに喉を詰まらせる。

 

 ーーそういえば、名前を考えてなかった…….。

 

 自分の考えの至らなさに苛立ちを覚え「……チッ」と舌打ちを打つ。

 

「………………ラーク、だ」

 

 「ゾロアークだ」などとポケモンの名称を名乗る訳にもいかい。

 安直だが咄嗟に思いついた名前をゾロアーク……いや、ラークは名乗った。

 

 

ーto be continuedー




というわけで、急遽挟み込まれた閑話。
ぶっちゃけ、本作オリジナルのカノコタウンの住人、カルカ君のお披露目回ですな。そこまで重要なキャラじゃないけど、彼いないと後々面倒になってしまってな。読者の皆様にはご迷惑をおかけしました。
しかし、ただで転ばないのが私ーーMr.bot!
この際だから、「ゾロアーク君、人間に化ける」とか前々から何となく問題視してた「トウコ。お前、エピソード外でゾロアーク君への好感度爆上がり問題」にもある程度手を加えてやりましたよ。
まぁ、後者の方はトウコとゾロアークのイチャイチャエピソードを打っ込むだけの簡単なお仕事ですけどねw

因みに、本エピソードは前後編です。思った以上長くなってしもうたわ。本日中に更新予定です!


今回の登場キャラクター
・ラーク……今後、ゾロアーク君が人間に化けて登場する際は基本これでいく所存。あと、人間体だと人間社会で波風をたてないようにする為か舌打ちが極端に減り、結構喋るようになる。
見た目の年齢は18、19といった所。あと目付きの悪い「三白眼イケメン」です。
服や髪などの色はゾロアーク君のイメージカラーである黒と赤を採用。しかし、それだけだとちょっと芸が無いので、髪の色の赤と黒の比率を逆転。ポケモン体では「紅」が基本で枝毛っぽい外に跳ねた部分だけ「黒」。しかし、人間体では「黒」を基本に「赤」の部分はメッシュでアクセント程度としました。あと、あのタテガミのボリュームの髪量の人間は大変浮きそうだったので、完全に下ろしても肩甲骨の半分まで程度に抑えて、後頭部で結わえる事に。目付きの悪さもポケモン時譲りです。
そこまでは、結構以前から作者の頭の存在したが、狐面に関しては別。執筆中に「ふたつのスピカ」というアニメのライオンさんというキャラを思い出して、「あ、いいかも〜」という事で急遽採用されましたw偶然だが、「キツネさん」と「ライオンさん」……名前に通じる物を感じるしね!

・トウコ……今回、風邪を引き寝込んでいる主人公にしてヒロイン。まだ、ガチでゾロアーク君に拗らせてる前だが、既に好感度高めな模様。

・ベル……ちょっと今回影が薄かった主人公の幼馴染。むー、やっぱり原作キャラはキャラが安定しない。
どうやら、アニメ版とゲーム版で若干の違いがあるらしく、それを確認せずpixiv辞典などの字面からの解釈でキャラ付けしているから、これがマジで安定しない。もう、「ふえぇぇえ」しか記憶に無い。

・カルカ……本来登場させるとしても、2章だけになるかなー?と思っていたオリジナルキャラクター。
作者が「カノコタウンって森に囲われてるけど、野生ポケモンの被害とかどうしてるんだろ?」というゲーム制作会社的にあまり触れて欲しくないであろうガチ考察から生まれました。
彼の役割は、(作中でも語っているが)カノコタウンの見回りと野生ポケモンからの防衛。相棒の犬型ポケモンのハーデリアと村中を歩き回っている。まぁ、それだけだと日がな一日歩き回ってるだけの放蕩坊やなので、村人の頼み事を聞く「何でも屋」的な事も行なっている。
陽気な性格で、カノコタウン若年層からは「兄」と慕われている。
トウコの母ーートウカには頭が上がらないらしく口調が変わる。

・トウカ……トウコの母。若い頃は、相棒のレパルダスと共にポケモントレーナーをやっていた模様。
一児の母となってからある程度落ち着きを持ったらしいが、色々と早とちりして暴走する事が偶にあるとかないとか。
レパルダスのレパルは、そんなトウカのお目付け役でもある。
因みに、今回の暴走思考は「トウコが、悪い(あくタイプ)の男(尚、オスのポケモン)に引っかかる(というか、近い未来で拗らせる)」てある。………あながち間違いじゃないんだよなぁ……。
トウコを生むまではカルカの前任者としてカノコタウンの防衛を行なっていた為、レパルダス含めポケモントレーナーとしての実力は相当な物と考えられる。

・レパル……トウカの手持ちポケモン。豹のような細身の躯体と巨体の紫色の猫型ポケモンーーレパルダス。体長が1.1mと猫と言い張るにはデカ過ぎる。
トウカの事は信頼しているが、若干暴走気味な思考のブレーキ役でもある。
トウコの事は我が子のように思って可愛がっている。

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