ポケットモンスター B&W another 〜隻腕の幻影 ゾロアーク〜   作:Mr.bot-8M6N

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2ー3 貴方の名前は何ですか?③ーNAMEー

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 トウコにアララギ博士は言った。

 

 ーーそのポケモンについて調べてあげる

 

 と。

 

 だというのに、だというのに………、

 

「何で!私が!一人で!調べてるのよぉ!!」

 

 アララギポケモン研究所の一室で、トウコの絶叫が響いた。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 段ボールの中を覗いて見たら、その中は大量の紙資料だった。それも綺麗に整頓されておらず、その場にあったのをそのまま詰め込んだかのように内容がバラバラだ。

 

「…………調べるの手伝います」

 

 これをアララギ博士一人に任せると日が暮れてしまう。……トウコが手伝いを申し出るのにそう時間を要しなかった。

 

「え?……あ、うん。よろしくね」

 

 そのおかしな言い澱みのあるアララギ博士の言葉にトウコは、

 

 ーー…………この人、手伝わせる気満々だったな。

 

 と、直ぐに思い至った。

 

 ………まぁ、そこまでは良い。そこまでは……まだ良い。問題はそこからだった。

 

 トウコは資料の整理をしながら、「キツネさん」と同種のポケモンを資料から探していた時、

 

「あー!そうだった!」

 

 急にアララギ博士が立ち上がった。何か思い至る事があったのかとトウコが期待の目を向ける。しかしーー

 

「村長さんへの挨拶っ!忘れてた、早くしとかないと!それにご近所さん達にも!」

 

 全く違う事だった。いや、確かに引っ越し先でお世話になる近隣住人や代表者への挨拶は常識である。しかしーー

 

「直ぐ行って直ぐ帰ってくるから!」

 

「はぁ……」

 

「トウコちゃん!暫く一人でよろしくね」

 

「…………………え?」

 

 そう言ってバタバタと出て行ってしまった。壁越しに「えーと、手土産のお菓子何処にいれたんだっけ?」とか「あったあった!」とか……あと、物が落ちてくる音がしたが、最後に「行ってきます」の言葉と共に何も聞こえなくなった。

 

「え、えー……」

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 そんなやり取りがあってから小一時間が経っている。

 

「……………帰って来ない」

 

 一体どこまで行ったのだろうか、アララギ博士が帰ってくる気配は無い。

 

「迷ったとか……ありそう」

 

 ーーその場合、私の案内は何だったのか……。

 

 仮定の話だが、そう考えるとフツフツと怒りが湧いてくる。

 

「何で!私が!一人で!調べてるのよぉ!!」

 

 この辺りで冒頭に戻る。

 持っていた紙資料の束を机に叩きつける。その衝撃が伝わったのか、まだ見ていない資料の山が崩れて床にぶちまけられる。

 

「あ……やっちゃったぁ………」

 

 トウコの声には反省の色はあるが、落ち着いている。

 

(ま、どうせ順番とかバラバラだったしね)

 

 崩れた紙の山は直ぐに建て直せば万事解決だ。

 

 座っていた椅子から降り、落ちた紙を手元で束ねていく。

 

「あれ?この写真……」

 

 その中の一枚には写真が印刷されていた。

 

「『キツネさん』……?」

 

 本当の意味で「キツネさん」では無いだろうが、「キツネさん」と同じ種類のポケモンの写真だ。

 それを見つけたトウコは、慌ててその紙を読む。

 

「ゾロ……アー……ク」

 

 その中で一際大きな文字がトウコの目に写る。

 

「ゾロアーク。そう……『キツネさん』は『ゾロアーク』って言うんだ」

 

 ーーやっと見つけた。やっと知れた。

 

 トウコはその一枚の紙をとても愛おしそうに抱える。

 

「……そうだ。もしかしたら、落ちた紙の中に『ゾロアーク』について書かれているヤツが残ってるかもーー」

 

 その時、玄関先の方から音がした。

 

「アララギさんが帰ってきたのかな?」

 

 足音がトウコがいる部屋に近付き……通り過ぎた。

 

「え?」

 

 部屋を間違えたのかとトウコは戸を開けて声をかける

 

「遅いですよ、アララギさん。もう見つけてしまい…………………誰ですか、貴方」

 

 玄関先から入ってきたのはアララギ博士ではなかった。

 

「ん?お、おう!?………コイツぁ驚きだ。まさか人が居るとはな……」

 

『……………………』

 

 そこには、一人の男と一匹のポケモンがいた。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

「………誰ですか、貴方」

 

「ん?オレか?オレは………まぁ、あれだ『ロブ』って事で」

 

 何とも気の抜けた喋り方の男は、全体的に覇気の無い30代半ばといった風体の男。

 そして、もう一人……いや、もう一匹というべきか。男の背後にーー。

 

『…………………』

 

 緑髪の少女のようなポケモンが付き従っている。

 ロブと名乗った男はトウコがそのポケモンを見ていた事に気付いたのかーー

 

『………ツッ!?』

 

「!?……な、何をッ」

 

 ーーおもむろに蹴り飛ばした。

 

「『何を』?……自分で碌に挨拶もしない役立たずを蹴り飛ばしただけだが?」

 

 驚くトウコを他所にロブはさも当然の事のように答える。その顔と言動には「間違った事はしていない」を通り越して「何をそんなに驚いているのか?」という困惑すら読み取れる。

 

「い、いや…….おかしいですよ!何も蹴る事は無い筈です。口で言えば済む話じゃないですか!?」

 

「……は?口で?オイオイ、変な事言うなよ。ポケモン……動物相手に人間の言葉が通じる訳ねぇだろ?………ん?じゃあ、ポケモンが挨拶なんて出来ねぇか。本当にグズだな、お前」

 

 途中から、ロブの言葉はトウコから蹴り飛ばしたポケモンへと移る。

 

 ーー気持ち悪い。同じ言語なのに話している意味が分からない。聞いていたくない。

 

 だというのに、ロブは勝手に話を進める。

 

「あー……で、何の話だっけ?ココに来た理由……違う?まぁ、気にすな、どうせ気になってたんだろ?………実はオレは仕事でここに来たばかりなんだわ。それでもって、ここまで歩き詰めで疲れたし、『スポンサー様』からの目付役とも逸れるしで、休めるトコ探してた。………んで、そこがココ」

 

 おわかり?とどこか気の抜けた口調で語る。男の言葉はどこか自己中心的で自己完結的な為か、側から聞くトウコとしては話半分にしか理解できない。

 

「……………ここは空き家じゃないんだけど」

 

「ぁあ、そうらしいな。庭が雑草だらけだったもんで、勘違いしちまった」

 

 何処か呆けたような喋り方。掴み所が無くてい態度。そして何よりあの目。こちらをを捉えているのに、まるでこちらを見ていない。霞んだガラス玉のような視線。それらがトウコを不快にさせる。

 

「あー……。お前さんはどうしてここにいるんだ?お前さんがここの家主って訳じゃあないんだろ?」

 

「……その家主さんに頼まれてここに居るだけです」

 

「……………あ、そう」

 

「いい加減、帰ってくれませんか?これ、立派な不法侵入ですよ」

 

「………しょーがねぇか。悪い事はあんまりしちゃいけねぇもんなぁ……おい、行くぞ」

 

『……………』

 

 自身の言った言葉の何が面白かったのか、皮肉げな笑みを浮かべた後、後ろのポケモンに呼びかけて男はトウコの背後にある玄関に向かって歩いていく。

 

 男の足音が、コツ、コツーーとやけに明瞭に屋敷内に響く。

 

 コツ、コツとーー。

 

 コツ、コツ、コツとーー。

 

 コツ、コツッーー。

 

「…………何ですか?」

 

 男はトウコの前で止まった。

 

「いンやぁ、大した事じゃない。……ただ。その紙が見えちまってな。それ、ポケモンの生態をまとめた資料だろ。なんでンなモンを持ってんだ?」

 

 トウコは反射的に紙を隠す。『ゾロアーク』について書かれた資料を。

 

「……………ここの家主さんがポケモン博士だからですが」

 

「あー……そうじゃないんだが……。なんでお前さんがソレを持っているか(・・・・・・・・・・・・・・・・・)を聞いたんだが……」

 

「?、私がここの家主に整理を頼まれたからですが」

 

「ん、んー………そうじゃねぇんだが…………コイツはハズレか?…………まぁ、良いか」

 

 そう言って男は玄関から姿を消していった。

 

「気持ち悪い……」

 

 誰も居ない屋敷に、脱力気味のその声は溶けていった。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

「いやー!ゴメンねぇー!トウコちゃんに全部任せちゃって」

 

 あれから更に30分程経ってやっとアララギ博士は帰ってきた。

 

「どうしたの?随分、疲れてる様子だけど……」

 

「………何でもないですよ」

 

ロブという男については話していない。怪しい事この上無かったが、物盗りという風でも無かった。そして、何より思い出したくない。

 

「それよりも知りたかったポケモンの資料一枚だけですけど見つけましたよ」

 

「え、そうなの?一体どんなポケモンかお姉さんに見せてくれない?」

 

 そう言われて、トウコはアララギ博士に『ゾロアーク』についてまとめられた資料を渡す。

 

「ふんふん、成る程………。これまた随分と珍しいポケモンと出会ったようね」

 

「珍しいんですか?」

 

「えぇ、確か一番最初に確認されたのがここイッシュ地方だったから、イッシュのポケモン図鑑に載っているけど、それ以降全く見つからないから幻のポケモン扱いされた事があったのよねぇ」

 

「幻の……」

 

「まぁ、結局アローラ地方って所に相当数居たらしいから幻でも何でもなかったんだけどねぇ」

 

「へぇ……じゃあ、『キツネさん』もアローラから来たのかな?」

 

「それは何とも言えないけど、ここイッシュではまず見られないポケモンなのは事実ね」

 

 ーーゾロアーク……アローラ……

 

「良かったわね。捕まえたいポケモンの名前が分かって」

 

「え………?」

 

 ーー捕まえる?

 

 その言葉が、トウコの耳に嫌に残り続けた。

 

 

ーto be continuedー




最近、トウコの乙女思考を描写するのが楽しくなり始めた今日この頃。あぁ、この思考(嗜好)がストーリーがドンドン捻れていく原因になっていくんだなぁ……って。
俺には『乙女機関』が搭載されてたのか?!(その時 作者に 電流走る)

しっかし、これ後で読み返すと無理矢理感といいますか、やっつけ感が凄いわ。この辺のエピソードを無理矢理考えて、碌に考察せずに投稿した感が作者的に凄い。今、一章の佳境を書いてるのだが、もう既に作者許容量を超える違和感が噴出中でヤバい。もしかしたら、閑話挟むかも……。



登場キャラクター

・トウコ……コイツは甘ぇー!口の中から砂糖が止まらねぇーぜッ!今回はそれ程では無かったが、乙女乙女し過ぎだよなぁ……。前に書いた?そうだっけ?

・アララギ博士……コイツはヤベェー!現在登場キャラ最年長(ゾロアーク君は年齢不詳なので集計外)のくせして、一番御転婆じゃねぇーかッ?!

・ロブ……こいつはくせぇー!ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッーーーッ!!ちょっと、あからさま過ぎたなぁ……とか思ったりしとります(お恥ずかしい)。人前でポケモンを蹴り飛ばしたりなど精神的にイカれた部分あり。控えめに言ってクズ。ただ、何だかんだ最初にモデルにしたキャラが作者的に大好きな悪役であり、過去話とかも考えてたりする、(作者の脳内でのみ)謎の優遇っぷりである。

・緑髪のポケモン……キルリア。ぶっちゃけ、野生だとbwで出現しないポケモン。見た目は素のビジュアルが少女風だが、実際の性別は男。男の娘である!!何かしらロブとの浅からぬ因縁がある?
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