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ザッ、ザッ、ザッ────
暗闇に響く土を踏む音。先程まで幻想郷を覆い尽くしていた夜の支配者たちの音は無くなり、ただ一人の闇が歩く。
背後に広がるは無残な死に方をした支配者達。首から上がないものもあれば、首から下がないものもあり、また心臓を穿たれ、中には原型をとどめず肉塊と化した者まであった。
グチャリ…ズズズ……ベチャッ…────
生々しい音を発するのは、屍にへばりつくドロドロと実体化した赤黒い闇。ソレは屍から血、魔力──含まれた栄養全てを吸い取り、灰になった身体さえも吸い取ろうと生々しい音を立てる。そしてその闇は屍から栄養を吸い取り着ると、ニチャリと音を立てながら、歩く主へとへばりつき、吸い取ったそれを与えていく。
「あー不味い不味い。吸血鬼ってこんなに不味かったっけ」
月の明かりを背に、面影に真紅の瞳が映る。その姿はその幼い容姿からは想像出来ないほど妖々しく、最も妖怪らしい畏れを醸し出している。
原初の妖怪である人食い妖怪
深淵に在り、常闇を喰らい、魔を統べ、邪悪を呼び起こす闇の主。それこそがかつて最強と謳われた一族──人食い妖怪の本性。
その身体は子供のそのものであったが、間違いなく彼女、ルーミアは人食い妖怪として存在していた。
「ゆかりんもそこらの吸血鬼は全滅させたみたいだし…手際がはやいなぁ」
少なくとも、私よりはいい───。
ルーミアにとって八雲 紫という存在は、心の友であり、愛弟子であり、娘のようなものだった。紫の目指す世界は、ルーミアにとって理想のものであり、己がかつて友達と夢見た理想郷だったのだ。
ルーミアもルーミアなりに、紫の力になろうとそばに居続けた。そしてそうしている内に──幻想郷は完成し、心の友となった。今の紫を語る上でルーミアの存在が欠かせないだろう。
だからこそ、紫を信じているのだ。
誰よりも紫の成長を見守っていたルーミアが、紫の力量を見違える筈がない。この程度の敵ならば、瞬殺出来るだろうと、確信できていた。
この異変でルーミアが手助けをしてしまったのは、単なる親心だろう。もっとも紫を理解していたルーミアは、そういう面で紫は脆いということも知っている。だからこそ、それが原因で最悪の事態にならないように身を乗り出したのだ。
もとより、紫は才能も頭脳も己以上であるということは知っている。経験不足さえあれど、その超人的頭脳から導き出す最良の答えと神に等しい能力の二つはまさに妖怪の賢者の名に恥じない実力者。ルーミアと総合的に比べてしまうとかなり見劣りしてしまうが、それはルーミアが規格外すぎる存在であるが故。本来ならば紛れもなく最強の妖怪だ。
「……ほんとに真っ赤っかなんだ。紅魔館って」
前世の己の知識からこの建物がこの異変の首謀者であるという確信はあった。ただ本当に存在するかどうかについては半信半疑ではあったが。
血のような赤い塗装が塗られた貴族式の館。4mは優に超える巨大な門に、中に広がるのは丁寧な手入れが施された美しい芸術のような庭。その様子から見て、
少し壊すのは勿体ないなと思いつつ前に進むと、霧の先に人影が目に映った。
吸血鬼とは違う穢れ。吸血鬼の放つ気持ちの悪い瘴気とは別の、純粋な戦いの意思とも取れる穢れだ。
カッ、カッ、カッ───
幻想郷には存在しない煉瓦模様の地面に靴底が触れ、靴音が響く。静寂が幻想郷を包み、誰も戦を拒む者などいないこの世界に、戦いの鐘にも近い警笛は幻想郷に戦いを知らせた。
そして霧が視界の範囲から消えた時──敵は、現れた。
「なんの御用です?生憎ですが今は貴女をもてなす余裕などないのですが」
「もてなす用意なんて必要ないわ。無理矢理にでも通るから」
「物騒なお客様ですね…困りました」
幻想郷にはない服装──中華を連想させる龍を描かれた服に身を包む赤髪の女は、静かにその闘志をルーミアへと向ける。
「敵を前に言葉はいらないですよね───では」
「来なさい。その両手足───綺麗にへし折って上げる」
場を占めるのは戦いの意思。華麗な戦いなどではない。御託もいらない。今ここに始まるのは妖怪同士の最も単純で最も残酷な生存戦争。勝者が生き、敗者は無様に血肉をぶちまけるだけ。
女はゆっくりとその拳を引き、その意思を戦いへと切り替えた。それに応えてルーミアは己の影からグツグツと形作られる闇の物体を己を守るように纏わせる。
そして、地面を蹴る粉砕音が響いた。
「───ハッ!!」
先に動いたのは女。足に気を纏わせた己が出せる最大限の速度でルーミアへと接近する。
「(速い)」
その最大の速度はルーミアにでさえ速いと言わせる程であった。その速度から放たれる拳を喰らえば確実に体は砕け散るだろうと安易に想像出来るほどの洗練された武の動きに、ルーミアは目を見開いた。
だが、ルーミアが躱せないという訳では無い。
ルーミアはそれを女の懐に潜るようにして拳を回避し、身に纏わせている闇を針のように鋭く、迅速に女の顔へと放った。
「!」
女はそれをいち早く感知すると顔に闇御手が穿たんとされる刹那に、初撃に加速した時と同じように身体を屈ませ、その加速の威力を殺さぬよう流れるように右手をルーミアの顔へと放った。
「(躱せないか)」
初撃と同じ速度で、なおかつそれを零距離で放たれたそれに、流石のルーミアと躱すことは不可能と判断し、闇御手を防御するように展開し、その打撃を守った───
「ッ!?」
「───ハッ!!」
が、その刹那。
ルーミアの代わりに闇御手と接触したその右手から、膨大な量の魔力とは違うなにかが放たれ、ルーミアはあまりの衝撃に耐えきれず闇御手ごと大きく空に打ち上げられた。
ルーミア本人にダメージは無かったものの、身を守っていた闇御手はバラバラに砕け散り、再生も遅くなっている。
「(発勁……その完成系があれか)」
打ち上げられたこと自体、予想外で驚いていたが、ルーミアはその力については冷静に解析出来ていた。
中国には発勁と呼ばれる中国拳法が存在し、それは己の体に眠る闘志──気を拳や足に纏わせ、相手の外傷ではなく内傷を負わせるというもの。
その発勁の完成系があれだというのならば──あれを生身で喰らえば内傷所ではない。肉体は弾け飛び、血肉と化すだろう。何せ闇御手が粉々に破壊され、再生が遅くなるほどのダメージを追っているのだから、生身で受けた時の傷など想像も容易い。
「(直撃は避けた方がいい──なら)」
ルーミアは空中で体制を整え、背中から闇御手を何十本も出現させ女に放った。
闇御手は形を持たない闇が実体化したもの。ルーミアの意思で自由自在に変形、創造することが出来る。針のような触手にも、翼にも、剣にもなる。
そして研ぎ澄まされた闇が攻撃へ転じた時──それはあらゆるものを破壊する最強の矛となるのだ。
変形した闇御手は恐るべき速度で女の身体を穿たんと群れになって襲い掛かる。
「くっ……!!」
女は襲い掛かる闇御手を人間の形をとどめる者とは思えないほど柔軟で三次元にも近い動きでそれを避けていくが、雨のように襲い掛かる闇御手に顔を歪ませ、ところどころ避け切れず肌が掠る。
そしてそれら全てを躱しきると地面に突き刺さった闇御手に飛び乗り、ルーミアへ向けて最短距離かつ最大速度で駆け抜けてくる。
その姿を見たルーミアは地面に突き刺り己に繋がる闇御手を切り離し、近寄られないようにさらに高く空を飛ぶ。
「はあぁ───ッ!!」
そして女がルーミアに近づかんと柱となった闇御手を蹴り、ルーミアに接近する。
ルーミアはそれを見ると静かに───
「───囲め」
振りかざした手をグッと握り、静かに嘆いた。
ゾ ゾ ゾ ゾ ゾ ゾ ゾ ゾ ゾ ゾ ───
「な──」
女は自分の背後に迫る邪悪な気配を感じとり、すぐさま振り向いた。
──【獄牢】。
そこには、先程放った針のように放ち地面に突き刺さっていた無数の闇御手が生々しく音を立て、闇の津波となって女に襲いかかろうとしていた。
女は躱そうにも空中で身動きが取れない。それどころか闇御手が放つその禍々しい邪悪な力は、女の戦意を削ぐには充分すぎるものであった。
そして1秒もかかることなく、女はその闇に呑まれ、闇は女を逃がさぬよう徹底的に呑み込み、奥へ奥へと押し込んでいく。そして津波となって襲いかかってきた闇は、やがて綺麗な球体の形へと変わっていた。
「終わりね」
するとルーミアはもう片方の手の平を開いた。
ルーミアの操る闇は自由自在だ。やろうと思えばあの球体の中の女を焼き殺すことも、圧死させることも、精神崩壊を起こさせることも出来る。闇はルーミアの思い描いたモノを形作り、再現する。
「さて、どんなふうに殺そう───」
ルーミアが女の処分に悩んでいると、その球体から亀裂音が鳴いた。
ピシッ、ピシッ───
異変を感じたルーミアが球体を凝視すると、内部から激しい気の流れが感じられた。その龍にも似た激しい気の流れは球体を内部から確実に破壊し、亀裂を与えていく。
パリンッ───!!
そしてその激しい気の流れは球体に余すことなく亀裂を与え、爆発のような気の流れが球体を破壊した。
そしてその球体から現れた女は、息切れで血まみれになりながらもルーミアをじっと睨む。
「よく出てこれたね。まぁ、出てきたところで身体に毒が回ってるでしょうし勝ち目はないだろうけど」
「はぁ…はぁ…」
ルーミアの操る闇は、ルーミアのみしか操ることは出来ない。本人が認めた相手にしか闇は許さず、溶かし、一度身体に入り込めば肉体を破壊し尽くし更には魔力や栄誉、亡骸さえ吸い取る猛毒となる。
女の切り傷を見る限り、放った闇御手と獄牢の中で激しい傷を負ったのだろう。切り傷から闇が入り込み、確実に女の身体を蝕んでいるのは目に見えて明らかである。
「助けて欲しいなら助けるけど?」
「…殺さ、ないのです、か」
「単に気まぐれ。それと気になっただけ」
ルーミアは女にそう問いかけた。
すると女は、更にキッとルーミアを睨みつけながら言った。
「そりゃ…生きたいです…すぐにでも逃げだしたいし…助けてもらいたい…」
「……」
「ですが…!それは私の誇りを捨てる行為です……!この館の門番であるということは……私は、誰一人通してはならない……!」
「……それは、使命感から来るもの?」
ルーミアは理解できないといった顔で、女に問いかけた。
すると女は───
「それもあるでしょう……ですがそれ以前に……私は、
「…守る……」
「だから…私は、諦めない……!!例え貴女という存在がどれ程化物であろうと、私は絶対に………ッ」
守りたいものがある。守らなければならないものがある。
女はただ、それだけの意思で戦っていた。ルーミアというどう足掻いても勝てるはずのない闇そのものを相手に、皆を絶対に守りきるという鋼の意思が、女に力を与えるのだ。
だから、諦めない。どんなに格上であろうとも、決して。
「──」
ルーミアは女の決意を聞き、しばらく考えたあと、女に歩み始めた。
「はぁ…はぁ…」
そして女との距離が零となった時──
「…貴女は、強いね」
「え……?」
ルーミアは、女の頬に触れ、そう言った。
何故そう言ったのか理解できない女は、気の抜けたような顔をしてしまう。ルーミアはそれでも、続けた。
「大切な人達を守る。簡単な事のようで、最も難しい。それを今までこなしたきた貴女は強い。だって、守るべき人達が貴女に力をくれるから」
「!」
「貴女のような心優しい妖怪を殺すほど、私も無慈悲じゃない」
それを聞いた女は、ふと自分の身体から激しい痛みがなくなっていることに気がついた。だがそれと同時に、その頬に触れた時に、自分の身体を蝕んでいた闇を取り除いてくれたのだ、と理解した。
ルーミアは女の顔色が元に戻ったことを確認すると、さらに問う。
「貴女、名は?」
「…紅 美鈴……です」
「素敵な名前ね。あなたにピッタリよ」
「ありがとう…ござ……いま…す………」
美鈴という女は、自分の名前を素敵だと言ってくれたルーミアに感謝しつつ、痛みから解放された疲れからか、意識を失い倒れてしまった。
◆
【ルーミア】
なんかこいつめちゃんこ強いなと思ったらあの紅 美鈴だった件について。
そこらの吸血鬼を蹴散らしつつエネルギー補給と言うなの捕食を行って進んでたら、森をぬけて紅魔館に出たんだけど、なんか面構えとかが原作とは比べ物にならないくらいすごくて強者のそれでビビった。なんか何処ぞの中華アサシンみたいでした。気配遮断とか気を使って来そうでほんとに凄かったよ。まぁ実際使ってきたけど()
なんか私の闇御手を発勁使って粉々にしたりなんかこいつ人間やめてね?ってなったね。まぁ実際妖怪だったけどさ。だって気を纏った拳で私の闇御手砕くとかなんなの?山育ちなの?マジカル☆八極拳の使い手なの?
だからつい殺す気で闇御手使っちゃった☆٩(๑><๑)てへぺろ☆
獄牢とか使っちゃったし、本気で殺す気でやってしまったけど生きてたのでOKです。えぇ、殺してないのでセーフです。はい(なお満身創痍)。
けどこれで仕留めたかなーと思ったら、獄牢破壊してきて生きてるんだもん。なにあれ。化け物なの?私の闇くらってピンピンしてられるのって地獄の女神様とか月の連中くらいよ?
でも私の闇は濃すぎるので、私以外には毒として作用する能力がある。それは身体に馴染むことなく細胞を破壊し尽くす死の毒のそれで、美鈴の身体もそれに蝕まれてた。でもあれだって普通の人がくらったら数秒であの世逝きだからね?ねぇ、なんで生きてるの?(再確認)
でも結構苦しそうだったから気まぐれとして助けてあげようかなぁーって思ってたら、美鈴が『守りたいものがあるから退けない!』って少年漫画の主人公みたいなこと本気で言い出したもんだから、なんかグッときちゃってさ。
あと、美鈴の言葉聞いてたら、少年漫画の馬鹿力理論って本当にあるんだなーと思いました。それで私と張り合えてた美鈴はすごいなと思いました(小並感)
とりあえず名を聞いてそうだったじゃんと今まで気が付かなかった自分を殴りたい。ばか。あほ。まぬけ。むんむん。
とりあえず応急処置はしておいて、門の壁に寝かせておいた。こう見ると美人だなぁ美鈴って。美しい鈴と書くだけあるな。
美鈴が無事なことを確認した私は、その重苦しい門を開けた。するとギィィ─……って音が静寂に響いた。てかうっせえ。絶対錆びてんだろコレ。油くらい差せよ。
「───ようこそ、我が庭へ。闇妖怪」
────えっ何このイケメン(驚愕)
私を待っていたかのように、白髪の美しい吸血鬼は現れた。
何だこのイケメン!?(驚愕)
次回、憑依ルーミアは腐る!バトルスタンバイ!