ウボォーが殺されたらしい。
旅団が出した答えは、原作と寸分違わない物だった。
当然と言えば、当然だ。
この世界が、あの世界を模していて、起こるべき事象を消化していくとして。おおよそ、これから起こりうる展開は全て一緒になる。
この世界で、現状大きく変化している部分は、旅団に私がいること。
条件競売の賞金首に、私が乗っていること。
そして、ヤヤを除く仲間に、私が旅団と行動していると知られていること。
「まあ、だからって、どうなる訳でもないのだけれど」
私はゴンたちの元に向かいながら、一人呟いた。
現在、九月三日十三時。
マチにちょっかいを出し続けていると、早くも数日が経っていた。
危うく、本来の目的……は、女の子だけど。そんな私にも、それ以外の目的があるため、泣く泣くマチの元を離れている。
「えーと、ここね」
キルアからの連絡で指定された飲食店に入ると、三人がどこにいるか直ぐに判明した。
「いらっしゃいませ」
「あそこ三人の連れです」
姿は見えずとも、ひっきりなしに料理が運び運ばれるテーブルを指さし、足を進める。
「ちょっとは、店の人の苦労も考えなさい」
「あ、リナさん!!」
「遅かったじゃねえか」
「うるさい」
「あでっ」
皿の上に残っていた肉の骨を、高速でキルアの額に投げつけた。
「なんだなんだ、この綺麗な嬢ちゃんは? 知り合いか?」
ゼ、ゼットル? には、そこまで嫌悪感は感じないわね。
「ええ、そこの生意気なクソガキの保護者です」
タオルで額を拭いているキルアを指差して、にっこり笑っておく。
「誰が保護者なんだよ!?」
「主に、こうやって直ぐ吠える犬の」
「て、てめぇ……後で覚えとけよ。絶対に仕返ししてやる」
むしろ、私がいつもやられている側なのだけれど。
「女の子に手を出すとか、最低ね。人間として……あ、ごめんなさい。犬だったわね」
なので、もっとやってみる。
「よーし、今すぐやろ──うごっ」
大きく開いた口に、今度はパンを投げつけた。
「とりあえず分かったのは……嬢ちゃんが、一番クレイジーって事だな」
「うん、そうだよ」
「……ゴン?」
「ひっ」
「私だって、好き好んでこんな性格になった訳じゃないわ」
そもそも私は、性欲を持て余していた、ただの青少年だったし。
神の悪戯さえ回避できたら、今頃はもっと普通な性格だったはず……よね。
「ちょっとだけ、Sっ気が強いだけよ」
だから私は、少し弁解しておいた。
◆ ◆ ◆
「全部で三億はするんじゃねーかな」
「「おお!!」」
中身は、原作と変わりなし……やっぱり、大筋はそうそう変化しないってわけね。
「ただし、業者市だと──」
さて、これからどうしましょうか。
二人と合流したのは、中身を確認する為がメインで、旅団に協力している事の誤解を解くのがサブ。
サブに至っては、まだ話すタイミングじゃないし……そもそも、この様子だと気にしてもいないわね。
クラピカから、何か聞いたのかしら。
もっとも、クラピカに伝えた言葉は一言だけれど。
『貴方が仲間だと信じるなら、私は貴方の仲間よ』
自分で言っといて今更だけど、薄情な言葉よね。
言い換えると、いつでも敵になるわよって意味だし。
まあ、そんな馬鹿な選択肢を取るクラピカじゃないし、何も問題は無かったけど。
「……って、どこに行ったのかしら。あの、三人」
携帯を確認すると、ゴンからのメールが来ていたので、内容を確認する。
「無視するほど、思考していたのね、私」
確かに、声を掛けられた記憶があった。
「ま、気にしても無駄……ん?」
ホルダーに仕舞ったタイミングで携帯が振動し、取り出して要件を確認する。
「そう言えば、今日だったわね。いいわ、協力しましょう」
クロロからの、メールだった。
◆ ◆ ◆
「ふひっ」
おっと、いけないわね。危ない声が出てしまったわ。
でも、そうも言ってられない物が目の前にあると、我を忘れてしまいそうなのも事実なのよね。
日は既に落ち、夜。
私は、ベッドで熟睡しているネオンに跨っていた。
残された時間は三十分あるか、ないか。
素早く、丁寧かつ、的確に。
そして、大いに楽しむ。
「とても、難しいわ。これは、レルートの時やメンチの時とはレベルが違う!! そう、例えるなら……いや、時間がないわね。さっさと堪能しましょう」
やっぱりまずは……肌質からね。
え? 胸? 何の話よ。
「こ、これは」
やはり、超ワガママお嬢様だけあってか、肌質のレベルが違う。
恐らく、私が触れてきた中で…………三十本位の指には入るわね、うん。
「まあ、こんな所はどうでもいいのよ。私が選ぶ女の子は、大抵素晴らしい物を持っていて普通なのだから」
次は、服の上から胸を触る。
え? 早くないかって?
気のせいよ。形や大きさは、ぶっちゃけ服の上から分かるし、触っちゃえばいいわ。
「ふむ……」
「ん、んん」
感度、良好。質感、良好。総合、良好。
ネオンって、ぶっちゃけ頭逝ってるタイプの女の子だから、性とか興味あるか不明だったけど……ある意味、こっちにも興味あったのね。
「んっ」
間違いなく、手馴れているわ。もう、甘い水の臭いがするし。
「うーん……薄々は気づいていたけど、もっと純粋な女の子がいいわね」
もちろん、手を止めるなんて選択は存在しないのだけれど。
「という訳で、キャストオフ!!」
そこそこの数の武術に精通する私が編み出した、お得意の脱衣殺法にて一瞬で全裸にさせてもらう。
これが純粋な女の子とか、恥ずかしがり屋なら、当然一枚ずつ剥ぎ取る。
そもそも寝ている時には、反応が面白くないのであまり触れないし。
え? 誰も触れないとは言ってないわよ。
「ネオンは起きていると面倒な感じがするのよね」
そう、適当に理由を呟いて、優しく触っていく。
「ぅん」
「感度は本当にいいわね」
寝ていても声が出るのは、感度が相当いい証拠。
身体が触れられていると、寝ている脳で感じている。つまりは、身体が反応している状態だから。
「これだけ馴染んでいるのに、処女って所を考えると……恋愛感は持っているのかしら。クロロにときめいているシーンが無かったから、価値観はずれていそうだけど」
クロロって、やっぱり恐ろしいほどイケメンなのよね。
ぶっちゃけ、私が女じゃなかったら抱かれても良いレベル。
「まあ、この身体は、男ノーセンキューだからあくまでも想像だけれど」
「んんっ」
「先っぽを刺激しすぎると、流石に起きるかしら」
ずっと、先端に触れないように揉んでいたから、身体が焦れちゃったみたいね。
それに加えて、どうやらいつもこの感じで触っていると見た。
「全く、焦らし上手なんだから」
「……ん」
ただ、ふと気がつく。
「寝ている相手にするの……こんなに面白くなかったかしら」
合意の上でやっていない、その背徳感はある。
その代わり、合意の上でやる相手の反応がない。
「んー」
そう言えば、最近はヤヤの最高レベルしか触ってないから、その差を考えてしまっているのね。
ヤヤの前も、一番強いのでメンチだし。
「中々、贅沢な性活してるわね」
二人とも、本番まで行ってないけど。
「それでも、手を止める事はないのだけれど」
まあ、色々と考えたけど、これはこれでアリね。
時間制限がなければ、もっと楽しめたはずなのが、少し残念だわ。
「さてさて、そろそろ下を責め…………あ、タイムアウトね」
素早くネオンの衣服を元に戻し、ベッドの乱れも修正する。
時間にして、十分弱しかなかった。
「もっと遅く来なさいよ……あの優等生」
欲を出せば、まだ数分だけ触る時間はある。
だけど、ここで下手なリスクを取るぐらいなら、後日に手を出しても問題はない。
「そうと決まれば、さっさとおさらばね」
窓を開けて外に出て、クロロがいる最上階の部屋まで、壁を駆けて登っていく。
そして、クロロを目視したので、窓ガラスを叩き割り部屋に入った。
「お前は一体、どこから入って来るんだ」
「窓ね」
「いや……まあ、その通りだな。お陰で、順序が狂ったよ」
クロロは本を閉じながら、右親指で背後を指さした。
そこには、椅子に縛られて死んでいる男と、元人間だったらしい肉の破片がある。
きっと、なんたらフィッシュの能力だろう。
「細かい事は気にしないでいいわ」
「むしろ、気にしてくれ……と、そうだ。リナは、歌は得意か?」
歌……なるほど、私に歌えと言うのね。
「いいえ、全然」
なので、そのまま拒否しておく。
実際には、下手でもないのだけれど……その道のプロからすれば、当然、下手くそ扱いされるだろうし。
「そうか……なら、頼むよ」
「聞いてなかったの? 歌は全然よ」
「だからお願いしたんだ。彼には、それが丁度いい」
私は肩を竦め、眼下の街並みを眺めているクロロの横に立つ。
「指揮は、適当に合わせなさいよ」
「もとより、曲はない」
「そう……なら、いくわよ」
私は旅団員ではないけれど、今だけは貴方の為に歌いましょう。
◆ ◆ ◆
「さてと、彼らから逃げますか」
一曲が終わり、クロロがそう宣言した。
「とか言って、地下で待ち構えるのよね?」
「まあ、出来れば能力を盗みたい。リナもいるし、もしかしたら可能だろう」
もしかせずとも、相手の無力化は余裕なのだけれど……信用を買う為にも、少し力を見せるべきかしら。
「もしじゃなくても、可能よ」
「ただ、それはリナがしっかりと戦ってくれた場合だ。どうせ、それなりの援護しかしてくれないのだろう?」
当たらずとも……遠からずね。
「ふむ。当たらずとも遠からずか」
「……時々、キモいって言われるでしょ?」
「そんなお前も、同じタイプの人間じゃないか」
私とクロロは、無言で地下へと足を進めた。
これ以上は互いに無駄、無意味と悟ったからだ。
地下で一番広いホールに到着し、舞台に上がって待機する。
「で、実際の所……あの化け物二匹に勝てるのか?」
「そうねえ……」
ぶっちゃけ、楽勝だ。
あの二人は念能力者としてトップレベルだけど、それでもトップではない。
明確な能力は分かっていない。けど、それでもネテロの能力には勝らないと思う。こと近接戦闘に置いて、あの能力に負けはないはずだ。
だからこそ、私の強さの証明になる。
私は逆に、あの能力にさえ勝っている能力だから。
戦いには様々な要素が絡み、その中で能力相性は高い割合を占めている。
例えば、ネテロの能力。
あれは近接においては最強だとしても、遠距離からの狙撃や、真正面から打ち破ってくる相手には不利だ。
だからこそ、王様に負ける事になった。
もっともその対処として、零の能力や、狙撃に対しての感覚を伸ばしているはずだけど。
それに、念能力での狙撃等はあんまり強くない能力だ。
おおよそ、人体が念を放出してある程度の威力を保てるのは、せいぜい数キロだけ。
それならぶっちゃけ、狙撃銃を使えばいい。
まあ、それも並の念能力者しか殺せないけど。
「手こずるわ」
「ダウト」
「即答はやめなさいよ」
「リナも、嘘はやめるといい」
本当にこいつ、食えないわね。
「なら、どうして訊いたのよ」
「反応を見たかっただけだ。それに、今ので理解した」
……こいつ、すり潰しても食えないわ。
「って、私の反応が、よくあるクーデレ系のヒロインのようじゃない」
「なるほど。三人目くらいのポジションだな」
「……」
な、なんでわかってるのかしら。
「そんな目で見るな。知的好奇心だったんだ」
知的好奇心でギャルゲを嗜む、犯罪者グループのリーダー。ありか、なしかで言えば。
「なしね」
「お前はそもそも、男がなしなだけだろう」
「そうとも言うわ……それと」
この部屋に入る三つの扉のうち、一つを残してシルバとゼノが入って来た。
なので、私はスカート部分を掴み。
「いらっしゃい」
二人に挨拶をする。
「こりゃ、たまげたわ。えらいべっぴんさんじゃの」
「お褒め頂き光栄よ。それじゃ、早速で悪いけれど……その一、入って来た扉から帰る。その二、世間話で時間を潰す。その三、無駄死にする。どれがいいかしら?」
クロロを残して舞台から降りて、三つの選択肢を伝えた。
もちろん、意味はない。
「四番の、やれるだけやってみる……かの」
それが、戦闘の合図になった。
私はバックステップでクロロの正面に立ち、能力を発動して剣を取り出す。
ぴたりと、二人の足が止まった。懸命な判断だ。
「流石、ゾルディック家の二人ね。この剣に込められた"何か"を良く感じ取ったわ」
「得体が知れない物に恐怖を感じるのは、人間としての本能じゃろう?」
「その通りね」
本来ならこの能力を使わずしても、二人を相手に出来る。
ただし、これは防衛戦。クロロからの報酬を貰うためには、クロロに戦ってもらうなんて持っての他であり、無防備なクロロというハンデを背負う。
そうなると、万が一を起こさないように戦う事が必須条件。そうなると、必然的に余裕が欲しくなる。
「ふむ……それなりに長く生きてきたつもりだか、ここまでの明確な死の気配は初めてじゃ。どうみる、シルバよ」
「具現化系としては稀な選択だ。ただ、彼女ほどの念能力者がシンプルな剣を選択したのなら、それなりの能力がある。または、切れ味が相当高いのだろう」
「つまり、未知じゃの。とんだお嬢ちゃんじゃ」
会話していても、一瞬足りとも私への警戒が薄まらない。いや、むしろ濃くなっていく。
想像の評価は訂正ね。
この二人、本物だわ。
「褒められると照れるわね」
「心にも思ってない言葉を口に出しても、意味はないな」
クロロの発言は聞かなかった事にした。
「なら、そのついでに能力をぽろっと呟いてくれんか?」
「そうね……使ったら、相手は死ぬわ!!」
要望に答えて、簡潔に叫んでみる。
二人とも、なんとも言えない顔だ。
「それは困った。使わずして戦ってくれはせぬか?」
返答は、ノー。
「ふっ!!」
短く気合を発して、二人を切る。
私の初動にアンテナを向けていたらしく、それなりの速度で振ったが空振った。
「やるわね」
「そりゃこちらのセリフじゃ。避けるので精一杯とはな」
当たると思っていたのだけれど、やっぱり舐めすぎかしら。
まあ、当たっても腹筋が更に割れる程度の怪我だけど。
「それじゃ、これはどうかしら?」
描く軌道は二本。それぞれを狙った斬撃。
もちろん、躱される。
なら、次は二倍の線を引く。また、躱された。
「なるほど。今ので、限界ね」
「……お嬢ちゃん。それだけの腕を、どこで手に入れた」
「どこと言われても、分からないわ。幾つもの修羅場を乗り越えただけだし」
肩をすくめて、適当に答える。
私がこれだけの力を持っているのは、ぶっちゃけると神様のお陰だ。
確かに、修羅場は何度もあったけど、果たして本当の修羅場かと言われれば怪しい所。
せいぜい、必殺技を出すレベルが数回あった程度だ。
しかも、私がただ経験不足だっただけ。今思うと、この状況の半分にも満たない難易度だった。
「……ふむ。シルバよ、全力で行くぞ。後ろの目標は一旦無視じゃ」
「了解した」
シルバの短い言葉の後、二人のオーラ量、質が跳ね上がる。
「へぇ」
その様子に、私は驚いた。
初めて見たからだ。これほどの念能力者を。
「どうじゃ?」
「慢心していたと、言わざるを得ないわ…………まあ、撤回はしないのだけれど」
二人に向かって踏み込み、足を払う様に回転斬り。
「っ!?」
そして、飛び上がって回避したシルバを剣で叩きつけ、直ぐゼノに突撃する。
「はぁぁぁ!!」
読まれていたらしく、龍が牙を向いて迫っていた。
ただ、それはこちらも想定済みだったので、龍を巻き込む様に剣を叩きつける。
ゼノが勢い良く壁に跳んだ事を目端で捉えて、振り返りと共に、シルバを叩く。
「私相手に能力を使わないのは、愚かな選択よ?」
もっとも、使った所で何かが変わる訳でもないけど。
せいぜい、私も能力を使って対抗するぐらいだ。
「そうは言うがの……どうして、儂らを斬らんのじゃ? 少なくとも、一回づつは殺されておる」
ま、そりゃそう考えるわよね。
「気まぐれとでも言っておこうかしら」
ただ、私が殺したくないってだけ。それに、もうそろそろイルミが暗殺の成功を伝える頃だろうし。
「嘘だな」
「アンタは黙ってなさい」
相変わらず、後ろの野郎がうるさい。見当違いじゃないから、更にムカつく。
「いっそ、切り落とそうかしら」
「……お前、今までで一番強い殺気になってるぞ」
誰に向けたかも分かっているくせに、そこに踏み込んで来るコイツは、やっぱり頭がどこかイカれている。間違いない。
私はクロロを相手にしないと決め、改めて二人と対峙する。
この短い間でも、一切の警戒を怠っていなかったのは、流石といった所だ。素直に凄いと思う。
もっとも、それで何かが変わる事もない。
「ふぅ…………ふっ!!」
大きく息を吐いてから、二人に踏み込んだ。
ただ、飛び出しが読まれていた様で、ゼノの竜がタイミングよく迫ってくる。その左後ろにはシルバが控えており、二段攻撃が目的らしい。
私は剣を突き出し、能力を発動した。
その瞬間、見えない"何か"を感じたのか、二人が体制を崩しながら左右に散る。
「答え合わせは、無しで行くわよ。全力で、逃げなさい」
目標をゼノに定めて踏み込み、右から袈裟斬り。左に剣を引いて横払い。同時に、両手から右手に切り替え、空いた左手でオーラを飛ばす。
そして、その隙にクロロに迫っていたシルバに対し、バックステップで迫り回転斬り。後ろに飛んで回避した所に、もう一度回転して、剣でオーラを放出。
威力が少ない事は読まれていたらしく、腕を交差した上で"凝"でガードされる。
ただし、それはこちらも予想済みなので、着地と同時に地面を蹴って左拳を追加した。
シルバが壁に大きく激突した音を背で受け、ゼノに駆ける。
右下から逆袈裟斬り、短く弧を描いて右上に切り払い。右腰の辺りに剣を引き、そのまま三段突きを繰り出す。全ての攻撃動作でオーラを飛ばしながら。
オーラの直撃を受けたゼノを視界から外し、またクロロに迫っていたシルバに、左肩から振り向いた状態で剣を投擲する。
「何っ!?」
シルバが驚き体制を崩しただろうタイミングで、体制を戻しながらゼノを左拳にて壁に埋める。そして、シルバに迫って手刀を繰り出す。
「我、星帝なり。塵と化せ、愚者よ…………『
隙が出来た瞬間、ウボォーからインスピレーションを受けて生み出した能力を、シルバにぶつけた。
効果は、ただのストレート強化。前口上のみで発動する、ちょっとお手頃の能力だ。
「ふぅ……こんなものかしら。もちろん、傷はないわね、クロロ?」
「いや、大きな傷が出来た」
「……心の傷とか言ったら、ぶつわよ」
「…………報酬は、弾もう」
段々、コイツの反応が読める様になってきた気がする。物凄く、癪だけど。
「それじゃ、さっさと計画を進めなさい。色々と頃合いでしょう」
「何も伝えてないはずだが……なるほど、本当に未来を知っているらしいな」
今やっと、本当の意味で理解したらしい。
笑顔で頷きながら、クロロは電話を取り出した。
「それは何より……で、いつまで寝たフリをしているの?」
少し声を張り、二人に呼びかける。
"世界"の能力を使わずとも、打ちどころが悪ければ気絶程度の攻撃で、二人がへばってない事は分かっていた。
「寝たフリじゃなく、休憩と言ってくれんかの」
「全くだ」
服を叩いて土埃などを落としながら、二人が立ち上がる。
「それは失礼したわ。それと、そろそろ連絡が来る頃よね?」
「……嬢ちゃんには敵わんの。今日の仕事は辞めじゃな。帰るぞ、シルバ」
「ああ……」
二人を見送り、電話を終えたクロロに視線を向け──
「選択肢は、一番だったらしいわ」
何となく、笑顔で言ってみた。
「……一つ、いいか?」
「何かしら」
「キモい」
「うん、殺す」
クロロの返事を聞く前に、私は無防備なその腹に拳をめり込ませた。
お久しぶりです、死んでました。
モチベと、モチベと、モチベが。
これからは、しっかり更新出来ると思いますので、お待ちになられた皆さん。また読んで下さい!!
戦闘シーン、難しいよね、うん。