ABOUT THE BLANK   作:ようぐそうとほうとふ

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ホワイト・アルバム&ベイビィ・フェイス・ジュニア

 ギアッチョは起きてすぐにメローネと運転を代わった。ベイビィ・フェイスは詳細な情報を送り続けている。ドッピオは街でタクシーを拾い、どこかを目指しているとのことだった。

 すでに一キロ圏内に入ったということで二人は緊張していた。だというのにブランクは後部座席でまだ寝ている。

 

「こいつマジ起きねーな」

「まあ地味に一番負傷しているからな」

「…運のいいやつ。よく生きてこられたな、クソよえーのに」

「確かに強運だな。おっと」

 道があまり良くないせいで車体がひどく揺れ、フロントガラスに飾ってあったアロハ人形が倒れてしまった。それを見てギアッチョがハンドルをぶん殴った。

「チッ。てめーらがちゃんとオレの車回収してりゃーこんなファミリーカーパクらずに行けたのによォ〜!」

「忘れているようだが、お前もオレのバイクオシャカにしてるんだぞ」

「チッ…」

 

 しばらく沈黙した後、ギアッチョが口を開いた。

「メローネ、ソルベとジェラートのことだが、お前はブランクを許してんのか?」

「許すも何も…こいつを責めても何にもならないからな」

「ずいぶん冷てーじゃあねーか。メローネ、ソルベとジェラートよりブランクに情がうつったのか?」

「そういうわけではない。……こいつが来なけりゃこうはならなかったって言うなら話は違うぜ?だが…現実的に考えて、あの二人が殺されるのは必然だった」

「オレだってそれくらいはわかる。だがこいつはスパイしてたんだぞ?オレたちをずっと監視していた。ムーロロの手駒になってな」

「ああ。つーか別にオレは怒ってないわけじゃあない。だけど2年付き合ってりゃこいつがどんなやつかくらいわかる。ブランクはただ自分のことが全然わかってないバカだった。それがわかったら殺す気も失せた。何が悪いかわかってないやつを罰しても無駄だ。償いは死だけじゃあないと思う。少なくともブランクにとっちゃな」

 

 メローネの言葉にギアッチョはしばし黙った。そしてサン・ジョルジョ・マッジーレ教会の地下で、リゾットから受け取った血液サンプルを握ったブランクの姿を思い出した。

 

 

「僕はリゾットに、みんなにとてもひどいことをした。それを償うまでは殺さないでほしい」

 

 

「…オレはリゾットの死体を見るまでは、ブランクを殺すつもりでいた」

「そうだと思った。だからブランク連れてきたときはビビったぞ」

「あいつは自分で償うと言った。…お前が言ったとおり、償いは死だけじゃないってことなんだろーな。…なんで揃いも揃ってクドい言い回しするんだ?流行ってんのかよそういうの」

「ああ…もしかしたらオレが置いといた本を読んだのかもしれないな。情操教育がてら、本部に置く本は選んでたからな」

「マジかよ。あそこに本棚なんてあったのか」

「あるだろーが、デスクトップの下に。ホルマジオとかが結構雑誌を持ち込んでたぞ」

「あいつの事だから古本処分のついでだったんじゃね」

「かもな。なんかグラフィックノベルとかも知らない間に入れられてたし」

「あぁ…?そりゃ誰の趣味だ?」

「さーな」

 

 二人は少しだけ笑って、前を見た。美しい海岸線が広がっている。コスタ・スメラルダの近くだからか、海はエメラルド色に見える。岩場の白がやけに眩しい。

 

「…ギアッチョ、お前もブランクを一度は許してみようって気になったんだろ。だったら最後まで信じてやれよ」

「メローネ、てめーオレに説教してんのかよ。別に疑ってもねーし許してもねー。処分保留にしてるだけだっつーの」

「…やれやれ。やっぱプロシュートと違ってオレたちに後輩育成は向いていないな」

 

 ギアッチョはふん、と鼻で笑ってから後ろを振り返りグースカ寝てるブランクに怒鳴った。

 

「オイ!いい加減起きろよブランクッ!」

 ブランクは目をこすりながら起き上がり、キョロキョロ周りを見てから不機嫌そうに言った。

「………なんか僕の悪口言ってませんでした?今」

「メローネがボロクソに言ってた」

「クソォ〜…!」

「目ぇ醒ませよ。これからが本番だ」

「そうだ。今オレたちはドッピオの乗っているタクシーを追ってる。どこに向かってんだろうな?丘登ったところで何もねーだろうに」

「丘?こちらが高ければそれでいいんですが。…なんで丘?」

「…普通に考えて突っ込むのはオレの役割だ。ジュニアと連携して気を引き、ドッピオを物質へ変換する。で、お前らは上の方で援護」

「ジュニアはなんに化けてるんですか?」

「やつの乗るタクシーに張り付いている。ちょうどトランクのあたりだな」

 

 ギアッチョは無線にイヤフォンマイクを差して耳にしっかりテープで貼り付けた。

「…よし、感度良好」

 メローネ、ブランクも同じように無線を繋ぎ、常時連携できるように調整した。

 

「それにしても丘ですか」

「マップをみてもあの道の先は特に何もないな…お、停まったらしい」

「じゃあオレは降りる。しっかり援護しろよ」

 ギアッチョは車が完全に止まる前にとっとと出ていってしまった。メローネはすぐ地図を確認し、丘の上へ登れそうなルートを見繕ってから車を出た。ブランクもそれに従い、ライフルケースを抱えて岩場を登った。

 

「…お前、何メートルくらいなら撃てる?」

「当てるだけなら100…」

「近ッ」

「すみません…」

「しょォーがねーなぁ…」

「うう…ホルマジオ先輩ぃ…」

「いや、無意識だ。振ってないから。悪かったよ」

 

 

 二人は一段上の遊歩道に出ると、慎重にドッピオの姿を探した。彼はタクシー運転手とひと悶着した後、路肩から海を眺めているらしい。

 ジュニアはどさくさに紛れてタクシーから分離し岩場の石の一つに化けてスタンバイ中だ。

 

ー見てるのは海じゃない。…封筒から写真を取り出して参照しているようだ。空港でも持っていたものだ

 

 ジュニアのチャットを見てメローネはもう一度あたりを見回した。ここは観光マップに出てくるような完璧なコスタ・スメラルダを見下ろすにはやや外れている。

 

「ここから見えるのはビーチと建物、石碑だな」

「何かよくわかんないけど気を取られてるならチャンスですね」

 

 ブランクは組み立て終えたライフルを構え、左目でスコープを覗き込んだ。スコープの目盛りを調整し、風を感じる。幸い微風だ。

 感覚は鈍っていない。マンハッタン・トランスファーは襲撃を悟らせないために初撃では出せないがなんとかなりそうだ。

 

「ギアッチョ…聞こえるか?」

ああ。ドッピオは見えている。すぐにでもやれる

「わかった。ジュニアもスタンバイ完了だ」

「ブランクです。こちらもいつでもいけます」

『わかった。オレに合わせろよ』

「了解」

 

 

 

 

 ドッピオはボスに言われた通りの場所についてひとまず安心した。これから渡された写真の場所を監視しなくっちゃならない。

 

「それにしても…本当にブチャラティたちは来るんだろうか」

 

 ブチャラティが裏切るのは予想外だった。カルネは飛行機を墜落させたが、それでも奴らは生きているという“予感”がするとボスは言っている。ノトーリアスB.I.Gから逃れられるとは到底思えなかったが、ドッピオはボスの命令に従うだけだ。

 ボスがやれというのならばたとえ無駄足だろうが完遂する。

 

 アバッキオが生きていたとしたら、あの石碑の場所に必ず現れる。そしてボスの正体につながる手がかりをみつける。

 ドッピオにはそれが何なのか知らされていないが、ボスの正体に迫るものは何人たりとも生かしておけない。

 

 ブチャラティ達以外にも懸案事項は山ほどあった。

 暗殺チームはブランク含めまだ三人残っている。そのうちのメローネは能力不明だが、サン・ジョルジョ・マッジョーレ島で表立って動かなかったあたり、サポート系の能力なのだろう。

 

 “知らない”というのは何よりも恐ろしい。

 

 さらにリゾットが情報分析チームを壊滅させたおかげで、暗号化されたネットワークが一時的にクラッシュされていた。誰の仕業かわからないが、どうやら暗殺チームの裏切りに乗っかってる連中がいるらしい。

 いまは各地に分散した生き残りがネットワークを再構築しているが、完全復旧には時間がかかる。

 暗殺チームはチョコラータがおっているとはいえ安心はできない。

 

『いいかドッピオ…チョコラータを決して信用するな』

 

 ボスが教えてくれたチョコラータの経歴は吐き気を催すほどのものだった。奴ほどのゲス野郎が暴れる機会を逃すとは思えない。

 

 情報分析チームの殺害現場の痕跡を見るに、チョコラータはリゾットをほとんど追い詰めていた。なのにやつは仕留め損ね、さらには見逃した。

 

 やつはブランクに執心するあまりボスの安全を軽んじている。いや、むしろやつのことだ。裏切りまで考えているのかもしれない。

 ボスはティッツァーノとスクアーロを唆し死に追いやったのもチョコラータだと言っていた。

 

 

ー最終的にこの事態を収拾するのはボスの右腕である自分の役目なのだ…ー

 

 

 

とぅるるるるるるん……

 

 

「もしもし?ドッピオです」

『何をしているのだドッピオ』

「ボス!すでに目的地に着きましたよ。ブチャラティたちはまだ来ていません」

『違う、お前はすでに監視されている』

 ボスの声色はかなり尖っている。ドッピオは思わず体をこわばらせ周囲を見回そうとしたが、電話の向こうから険しい声で止められた。

 

『妙な動きをするな。そのまま、何でもないって風を装え』

 

 だが、もうドッピオは異変を感じ取っていた。急に鳥肌が立ち、背筋に悪寒が走った。

 

「な、なんだ…寒気…?」

 

 日は照っている。風もない。4月にしては暖かい今日この日に寒気がするなんて…。

 ドッピオが無意識に腕を擦ろうとしたとき、背後から声がした。

 

 

 

「百聞は一見に如かずって諺があるがよォ〜」

 

 

 刺々しい声だった。ドッピオはゆっくり振り向く。全身を白いスーツが覆っている。いや、あれはスタンドだ。

 

 

「オレはことわざに一家言ある性格なんだが…この諺に対しては特に言うことはねぇぜ。今、まさにオレはてめーの正体を見て確かめようとしてんだからなア」

 

 そしてこの冷気。暗殺チームのギアッチョだ。

 

「だっ…誰ですか?!」

 

 ドッピオは後ろに飛びのいて、すっ転んだ。臀を強く打ち、痛たと呻く。大抵のやつはそんなどんくさいドッピオを見て、おや?と攻撃を思いとどまる。

 だがギアッチョは違った。

 

「なるほど確かにてめーがボスだと言われても到底信じられねぇーな。だが万が一人違いだろうとどうでもいい。即、やらせてもらう!」

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()”だと?!

 

 

 ドッピオはギアッチョがいった言葉を正常に処理できなかった。

 考える間もなく、地面が即座に凍りついた。ドッピオの靴底を覆うように氷が広がっていく。

 ドッピオは既のところで凍りつくのを飛び退いて避けたが靴は持っていかれた。靴下越しに触れる地面は異様なほどに冷たい。

 

凍傷になっちまいそうなくらい…いや、もうなっているか…それくらい冷たいぞ!これがやつのスタンドなのか

 

とぅるるるるるるん……

 

 手に持ったままの電話がまたなった。ドッピオはすぐに取る。

『ドッピオ、エピタフを使うのだ。やつはお前を殺すとすでに“決めて”いる!誤魔化しの時間はない…私もすぐに向かうが、時間がかかる。それまでお前はやつの攻撃を避けなければならない』

 

「なんだ…電話か?気味悪いなオイ。だがよォーてめーはもう逃げられないぜ!」

 

 ギアッチョが手を振りかぶると、ギャリギャリギャリという不快な、固いものがこすれる嫌な音が空中に響いた。

 

 ドッピオは、ほんのすこし体を左へ傾けた。

 バスッと言う音がして地面が破裂した。

 

 狙撃されている。おそらくはブランクから。

 

 どこからかはわからないが、ドッピオはエピタフでしっかり目撃していた。銃弾が空中で乱反射している様子を、そしてその反射でキラキラと何かが舞っているのを。

 

「避けるか。てめー、やはり予知のような能力を持ってんな?まあいい。お喋りはもう終いだ」

 

『ドッピオ、予知するのだ!次はどこを狙っているのだ』

「く…エピタフ!!」

 ドッピオが見た光景は、光だった。十秒後の自分はキラキラとした光の中にいる。一体どういうことなのか全くわからなかった。

『何が見えた!』

「光だ!この光…まさか」

 

 ギアッチョの周囲には氷の壁が作られている。さっき見えた光はそれだ。

 途端、銃弾が降り注ぎ、氷の破片が舞った。

 弾丸は破片をさらに細かく砕き、ドッピオのまわりに飛散する。

 

「ッ…!」

 

 10秒にも及ばない時間でドッピオの周囲に細かい氷の檻ができていた。

「一歩でも動けば氷が…皮膚に…」

 

『まさか…ドッピオの正体に気づいているのか?』

 

 電話から聞こえるボスの声は初めて聞くくらい焦っていた。言っていることはよくわからない。だが、今自分に何ができるっていうんだ…?!

 情報によればギアッチョのホワイト・アルバムに隙はない。すべてを凍らせる能力なんて予知ができてどうこうなるもんじゃあない!

 

『氷の檻から抜け出せドッピオ!2メートル以内に近づき、キング・クリムゾンで即座に殺すッ!』

 

 はい、ボス

 

 と返事をする前に手に持っていた携帯電話が弾け飛んだ。今度は氷の壁を反射させたものじゃない。はっきり捉えた。

 ここから30メートルは上の岩場にスコープの反射光が見える。

 

「ブランク、てめェーチクショーッ!」

 

 だが岩場の上には“3つ”人影がある。

 

 ドッピオはその意味を即座に理解した。

 二三歩悪あがきのように横へ逃れる。すると

 

「バラバラになりな!」

 

 足元にいつの間にか転がっていた岩が人型に変化した。

 

「ベイビィ・フェイス!」

 

 

 

 

 


 

 サルディニアに無事上陸したブチャラティ一行は写真の石碑へと急いだ。当然目立つ手段は使えないため小さなボートで沿岸をいき、近場で降りて歩いた。

 その建物は地元の人にはよく知られており、観光客はあまり来ないらしい。ボスはこの島の出身だというから穴場を知っているのは当然だ。

 15年前の、青年だったボスが暮らしていた地。トリッシュはどんな気分なのだろう。亀の中から出してやれないのは些か気の毒だが、用心に越したことはない。

 

 石碑で15年分の過去を巻き戻さなければならない。アバッキオいわく、7〜8分はかかるそうだ。なるべく急いでリプレイしすぐに立ち去らねばならない。

 

 

「ブチャラティ、周辺20メートルには観光客以外に不審な呼吸の点はない」

 いま外に出ているのはブチャラティとナランチャのみだ。ナランチャはエアロ・スミスで索敵をし、安全を確認した後に別の場所で待機しているアバッキオが合流する流れだ。

 

「よし…もう少し範囲を広げてみてくれ」

「わかった」

 

 建物はとても目立たない岩場の影にある。海岸からも離れていて足場も悪いが、観光スポットになっているところよりも静かで落ち着いているいい場所だ。

 すぐ上の道はすでに敵がいないことを確認している。あとは20メートルほど上に車道がある。その斜面は岩ばかりで、敵が潜むにはうってつけだった。

 

「あの車道の方まで見れるか?」

「いや…もうちょっと移動しないと射程範囲外だ」

「そうか…念の為少し索敵範囲を…」

 

 そこで、浜辺の方から悲鳴が上がった。

 

「なんだ?!」

 

 二人はすぐさま駆け出した。そしてビーチに向かうなだらかな下り道ですぐ異変に気づいた。

「止まれ…ッブチャラティ!」

 先を行くナランチャが急に鋭い声をあげ静止した。

「ブ、ブチャラティ…変なこというけどよォー…これ以上来ちゃだめだ…!」

「何?何があったナランチャ」

「お、オレの…手に、急に湧いてきやがった!」

「湧く?何がだ、見せろッ!」

 ナランチャはゆっくり振り向いた。

 

「…これは…!」

 

 ヤニのような色をした“何か”がナランチャの手にこびりついている。

「坂を下った途端だ…!突然、オレの手にッ…」

「これは…スタンド攻撃か。エアロ・スミスは無事か?」

「あ、ああ。エアロは無傷だぜ!」

「では亀の中のジョルノたちに緊急事態の合図を送れ」

「了解!」

 

 ブチャラティは浜辺に目を凝らした。何人か、死体らしきものが海に浮いている。

 

「どこかにスタンド本体がいるはずだが…いや、まずはこのスタンドの正体を確かめねばならないか」

 

 浜辺のすぐ上の車道で車が止まる音がした。

 

「な、なんだ?!人が溺れてるぞ!!」

 

 善良な市民が浜辺の異変に気づいたらしい。車から降り、浜辺につながる階段を降りようとした。

 そこでブチャラティたちはこのスタンドの正体を目の当たりにした。

 

「ぎ、ぃやぁーーーっ!!!」

 

 階段を下ったはしから、男の腰からナランチャについていたものと同じ“なにか”が一斉に生えてきてそのまま粉々になった。

 

「これは……まさか“下る”と攻撃を受けるのか」

「そ、そうだ。ここは坂道だ…!」

「この気味の悪いのは…カビか。微生物が肉を食い散らかしているんだ」

「嘘だろ?とれねーのかよこれ!」

「ああ。とにかくナランチャ、お前はこれ以上下っちゃあだめだ。そして…敵はおそらく近くにいる!追手だろうがなんだろうが、確実に始末しなくっちゃあならない…!」

 


 

 ギアッチョは黒電話に“変換”されたドッピオを見て一息ついた。

 

「ずいぶん…あっけなかったなジュニア…本当にこれがてめーの父親か?」

「Exactement!そのとおりです…でもまずい。メローネから応答が途絶えました。何かあったに違いない!」

「もしもし、メローネ?ブランク?オイッ!応答しろ」

 

『…まさ……ぁ……は……』

 

 無線からはざらついたブランクの声しか聞こえてこない。

 

「アクシデントらしいぜ。ジュニア、メローネのところへ急げ」

 

 ギアッチョは黒電話を拾い上げ、ジュニアに続く。だが岩場に足をかけた途端、“どぷん”と音を立てて手足が沈んだ。

 いや、沈んだという言い方は奇妙だった。触れた岩の感覚は硬い。なのに“めり込む”。まるで泥にでも突っ込んだみたいに。

 

「これは……」

 

 

 

「て、てめーが……よお。ギ、ギ………ギアッチョ…かぁ?」

「…………よくよくオレには邪魔がはいるみてぇーだなぁオイ…」

 

 声がした方を振り向くと、自分と同じように全身にスタンドをまとった男が立っていた。

「てめーは誰だよ。見たことねー面だな」

「お、オレの、名前はぁ……これから、これから死ぬ…お前が知る必要は、ね、ねェーーんだよぉ!」

 


 

 

 ブランクは自分の肩に突然走った痛みに目を白黒させた。引き金にかけていた指を外し、おそるおそる肩を確認する。

 肩だけじゃない、背中に何本かメスが刺さっている。

 

「え……ぁ……」

 

 腱を切られた。銃を支える腕に急に力がはいらなくなり、ライフルが音を立てて地面に落ちた。

 

 

「ぶ…らんく」

 

 メローネの声がした。ブランクは振り返る。

 

 

「ボスを……殺せ」

 

 

 そういうメローネの腹に、土色の手袋をはめた腕が刺さってるのが見えた。

 

「ッ………!ま、さか…あなたは…」

 

 

「ああ…ひさしぶりだな、ブランク。いい面構えになったじゃあないか…!」

 

 

 崩れ落ちるメローネの背後に立っていたのは、オアシスを纒ったセッコと、いつもどおりの白衣をまとったチョコラータだった。

 

 

 

 

 




おまけです
ブランクくんが流した暗殺チームマル秘情報を乗っけておきます
というのは嘘でツイッターにあるマル秘情報ネタです。深夜に自分で言って自分で受けてたのでのっけときます。

メローネ ㊙️情報
ファミリー層がいる時間やイベントなど、大衆が集まる場ではマナーのために肌色のストッキングを身につけている
ギアッチョ㊙️情報
魚の骨を取り除くのは面倒なので骨ごと噛み砕いている
プロシュート㊙️情報
一度だけ後頭部の結び目を5つにして過ごしてみたことがあるが、ペッシに気づいてもらえなかったのでそれ以降やっていない
ペッシ㊙️情報
ヘアスタイルと観葉植物と間違われ、目に栄養剤を刺されたことがある
リゾット㊙️情報
メタリカの磁力でコンパスが狂うのでトレッキングからハブられている
イルーゾォ㊙️情報
鏡の中か外かわからなくなった時、お箸を持つ手を参照する
ミスタ㊙️情報
四輪駆動車に乗ってバグったことがある
ドッピオ㊙️情報
事あるごとに電話を壊すため、ネアポリス中の携帯ショップから出禁を食らっている

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