ABOUT THE BLANK   作:ようぐそうとほうとふ

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悪魔を憐れむ歌

 ディアボロが来る!そう感じた瞬間、ブランクはポルナレフの肩を掴みとにかくこの場から逃げ出そうとアーチから“外”を目指した。

 

 だが気付いたときにはなぜか下の階に二人して落ちていた。

 

「こっちだ」

 

 ブランクが何が起きたか理解する前に、声の主はポルナレフのもう片方の肩を持ち上げ走り出す。ブランクは慌てて足並みをそろえて、自分たちを窮地から救った人物が誰か確認した。

 

「ブチャラティ…!」

 

 ポルナレフが先にその人物の名前を呼んだ。

「ボスは一直線にあんたを目指していたらしい。…ポルナレフ、と名乗っていたな。何か探知されているんじゃあないか?」

 

 ブチャラティは先程のブランクとポルナレフの話を聞いていたらしい。出てこなかったのはブランクの出方を窺うためだろう。

 ポルナレフは探知と聞いて苦々しい顔をした。

 

「……だとしたら、パソコンしかない…入念に出処は隠したつもりだったんだが…」

「僕もそれを逆探知してきたんだ」

「なるほど…知らない間にネットワークまでも組織の手の内に落ちていたとはな…ぬかっていた」

「情報技術チームは優秀なので!」

 

 ブチャラティはジッパーを使い巧みに先程の場所から距離をとっていく。

「そんな事はどうでもいい。約束通りオレはここにきた。ボスを倒す可能性とやらを教えてもらおう」

「僕のほうが先に着いたんですが?」

 

 ポルナレフを支えるブランクの手がたまたまブチャラティの手に触れた。紙に触れたような感覚にブランクは思わずブチャラティの顔を見てしまった。

 どこか大怪我でもしているのか?死んで何日か経ってる死体の皮膚みたいだ。

 ブランクは思わず心配して尋ねてしまう。

 

「ブチャラティ、あんたどこか…」

 

 だが割り込むようにジュニアが叫ぶ。

 

ブランクッ!やつが動き出した!さっきの階から時計回りでこちらに迫ってきている

 

「距離をとったところで…だな」

 それを聞いてブチャラティは思案する。ポルナレフは担がれながらブランクの方を向いた。

「…一つ聞きたい。ブランク、なぜオレを担いで逃げようとした」

「はあ?」

 ポルナレフは険しい声で尋ねる。ブランクはポルナレフの言いたいことがわからずにキョトンとしていた。

「なぜだ!答えろ!殺しかけといて何考えてやがるんだ」

「別に殺そうとなんてしてねーッつの!」

 

 ブランクは文句を言いながら頬から垂れる血を拭おうとした。だが袖にはすでに血がついていた。

 また時間が飛んだのだ。

 

 

 ジュニアの腕がディアボロのいる方向を指差す。だがキング・クリムゾンで時間を飛ばされているせいでこちらからすれば瞬間移動しているように見え、かなり混乱しているらしい。

 

「大まかな方向と距離だけでいいッ!半径…5メートル。それより入られたらヤバイぞ」

 

 ブチャラティとブランクは歩調を早める。ポルナレフは脚がない分軽くぎりぎり運べるが、成人男性は結構重い。

 全力疾走には程遠い。これではすぐに追いつかれる。

 

また飛んだ!あっちも走って接近してくる

 ジュニアは焦った声で告げる。

「クソッ!ジリ貧だ」

 

 ブランクはこのままじゃ逃げられないと悟った。どうにかしてここでボスを迎え撃ち倒さねばならない。

 

“捨てばちと覚悟は違う”

 

 ブランクの頭の中ではギアッチョの言葉がぐるぐるまわっていた。

 

 ブチャラティはブランクの方を向き、静かな覚悟を決めた目をして言った。

 

「ブランク、オレたちは目下のところピンチだ。協力する気でいるが構わないな」

 その冷静さにブランクは面食らいつつ頷いた。

「…しょうがないですね。いいでしょう」

「ジョルノたちはおそらくやられた。…ここにいる三人でボスを倒すしかない」

 

 ブチャラティは次にポルナレフを見た。ポルナレフもその目を見て、一瞬沈黙してからブランクに自分がなぜここで待っていたかを話し始める。

 

「……オレが持っているのは“矢”だ。やつを倒す、おそらくは唯一の手段になる」

「じゃあ出し惜しみしないで今すぐ使ってボスをやっつけてくださいよ!」

「ダメだ。オレには使えない。だからブチャラティたちとコンタクトをとったのだ」

 

ブランク!走り続けて…!距離、10メートル!

 

「“矢”がスタンド能力を目覚めさせることは知っているな?」

「ああ」

「相応しいものが自らのスタンドに“矢”を刺すと、スタンド能力のさらにその先の能力が目覚めるのだ。キング・クリムゾンは無敵だが、矢により進化し、レクイエム状態になれば可能性はある」

「そっ…そんな事あるかぁ?!」

「レクイエムはすべてのものの精神を支配するのだ!矢の力さえ制御できれば勝機はある。だが同時に、やつには絶対に渡してはならない」

 

 ブランクがいろいろと質問しようとすると、それを遮るようにジュニアが大声で叫んだ。

 

 

ブランク!真上だッ!来るぞ!

 

 

 

「スティッキィ・フィンガーズ!」

「キング・クリムゾン!」

 

 ブチャラティは上に向かってがむしゃらにラッシュを繰り出した。確かにブチャラティのスティッキィ・フィンガーズがこの中で最もパワーが強いだろう。だがそんなことをしたらまっさきにボスから攻撃される。

 

 それでもブチャラティは自分の体の状態を理解し的確に対処したのだ。自分以外時間を稼げる者はいないと。

 

 

 キング・クリムゾンはまずブチャラティを狙った。双方の目の前がブチャラティの飛び散った血で真っ赤に染まる。

 

「シルバーチャリオッツ!」

 

 ポルナレフはとっさにチャリオッツでブランクと自分を今空いたばかりの天井の穴にぶん投げた。着地したばかりのやつと入れ違いだ。若干の時間的猶予が生まれることになる。

 

 だがブランクもポルナレフもまた走って逃げようなどと考えていなかった。

 

 ブランクはポルナレフの肩を支えて立たせた。

 ポルナレフは時が飛ばされたと認識してからすぐにチャリオッツでやつの射程二メートルを薙ぐつもりでいた。ポルナレフの考えうる唯一のディアボロ対策だが、エピタフを持つやつに通じるかは分のない賭けだ。

 

 ブランクは小さな声で自分の腕になったベイビィ・フェイス・ジュニアへ話しかける。

 

「ジュニア…ギアッチョ待ってるときに話したこと覚えてる?」

うん。…でもうまくできるかわからない

「失敗しても怒らないよ。…やってくれ」

 

 

かつーん…

 

かつーん…

 

 また、足音だ。ディアボロが階段を使ってやってくる。

 

 

「ヴォート・ブランク。仲間のほとんどはブチャラティ達に殺された。メローネだったか?そいつの潜伏先もすでに組織の刺客が向かった。ギアッチョもすでに倒れた。たとえ生き延びても、お前に何が残る?」

 

 悠長にブランクに話しかけてくるのは一体何のつもりだろうか。それとも今更諦めるとでも思ってるのだろうか。

 

「…僕は…」

 

 何か言った気がする。

 だがまた時が飛んだ。ジュニアの指し示す方向が急に変わる。

 

「お前は空のままでいるべきだった。情に溺れた結果、お前は全てを失い、ここで死ぬ。お前に引導を渡すのはわたしだが、降り積もり、かたを付けなかった過去こそがお前の真の死因だ」

 

 ディアボロは慎重を期してエピタフで未来を見る。10秒後、ブランクは腹をぶち抜かれ血を吐き出している。

 

「キング・クリムゾン」

 

 ディアボロは時を飛ばし、ブランクの背後に回りこんで拳を振り上げた。

 

「時よ、再始動しろ!」

 

 そして気付いたときにはキング・クリムゾンの拳がブランクの胸郭を貫いていた。ぼちゃ、と音がして拳分の肉片が地面に飛び散った。支える力が消え、ポルナレフが肩からずり落ちる。

 

 シルバー・チャリオッツの斬撃もまたエピタフによって予知されていた。剣は空を切り、気づけばディアボロはポルナレフの目の前に立っていた。

 

 ポルナレフは息を呑む。

 

 だが、倒れたはずのブランクの方から血を吐き出す音がして、ディアボロは振り返った。ブランクは膝をついてはいるがまだ生きていた。それどころか、急に話しだした。

 

「1956年…ギロチンで処刑された首に意識があるか、調べた人がいる…それによると…斬首後15分は反応があったとか」

 

「…ブランク…何を…」

 ポルナレフは脈絡のない話を始めるブランクを見て困惑した。ディアボロもだ。

 

 確かに胸は貫いた。サン・ジョルジョ・マジョーレでのブチャラティのように、しばらくは動けるのかもしれない。だがそれにしては無駄話がすぎる。

 それでもブランクは話し続ける。

 

「それって要するに…重要な血管さえ押さえておけば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。…そんなの二年も前にチョコラータ先生が教えてくれたけどね」

 

 

 よくみると出血箇所を押さえるブランクの右腕には、先程まで義手となっていたジュニアが人型にもどっていた。

 

「ベイビィ・フェイス!身体を再変換しろ!」

「お前ッ…自分の胴体をあらかじめ切り離し、物質に替えていたのか!」

「一回全身やられたことがあったんでね!そしてもうあんたは僕の射程に一度入った。一度入ったなら意識も無意識も関係ない。あんたはもうおしまいだ」

 

 

チキ…

 

 聞き覚えのある音がする。皮膚の下で何かが蠢いた。

 

 

チキチキチキチキ…

 

「くらえ…メタリカ」

 

 そして一斉に、それが“芽”をだす。

 鉄分から生成された何本、何百本という無数の針が。肉の中で根を張るように。

 

 肉を掻き回す湿った音と皮を引き裂く乾いた音がほとんど同時に聞こえた。そしてチャラチャラチャラ…と針が地面に落ちる音も続いてする。

 ブランクは自分の足元の血溜まりが急に広がっているのをみて時が飛んだのだとわかった。

 

「クソッ!殺し損ねたッ!射程外に逃げたな」

 

 だが間違いなくやつの体はミンチ入りの革袋のようになっているはずだ。

 

ブランク、だめだ…パーツのいくつかは修復できないくらい飛び散ってしまった!

「構うもんか!四肢が動けば十分だッ…!」

 

 ベイビィ・フェイスは物質化したブランクの肉片を掻き集め、はめ直しながら泣きそうな声で叫ぶ。

 肉との接合は鉄分で針を作り出して縫い止めている。死ぬほど痛いが、薬物のおかげでなんとか動けている。

 

「ブランク、やつは腕から肩にかけて負傷した!今どこにいる!」

 

 ポルナレフは叫ぶ。ブランクは転びかけながら彼のもとへ近づき、ジュニアはボスの位置を探知し指差す。

あっちだ!血痕のある方向へ7メートル

 

「僕らは動く必要はない!僕の半径3メートルに近づいたら最後、体中をずたずたにしてやるッ…!かかってこい!」

いや、おかしい!ボスは離れていく!

「逃げるつもりかッ…」

 

 

 ブランクが立ち上がり、ボスを追うために走り出そうとしたとき、穴の空いた床。下のフロアから声が聞こえてきた。

 

「ブチャラティッ!そんな…!」

 

 聞いたことのある女の子の声だ。見て確かめるまでもない。トリッシュ・ウナがコロッセオにいる。

 

 いつの間にここにいたのか…まさかブチャラティが亀を持っていたのか。

 ボスが離れていくのはひょっとしてトリッシュの存在に気がついたからか?

 それともやっぱり逃げるつもりなのか?

 いや、全部罠で逃げるふりをして僕を殺す?

 

 ブランクの頭の中に様々な考えが浮かんでは消えた。貧血気味の頭じゃどれが一番あり得るのか考える余裕がない。

 

 ただ一つ確かなのは、自分がボスの3メートル圏内に入り、攻撃対象を“認識”しなければメタリカによるとどめはさせないということだ。このまま無差別に『ミザルー』のメタリカを発動させた場合、ポルナレフもトリッシュも殺してしまう。

 

 とにかく、ボスに近づかなければ。

 

 ジュニアの指し示す方向はトリッシュのいるフロアに続く階段だ。ブランクは穴へむかって大声で怒鳴った。

 

「トリーーッシュ!ボスが向かってるぞッ!今すぐ身を隠せ!」

 

 

 そして階段へ駆け出した。しかし

 

びちゃ

 

 と、なにか液体が落ちる音を聞いた。その刹那、ブランクの視界が真っ赤に染まった。

 ブランクは慌ててそれを拭う。そしてジュニアが鋭く警告を発した。

 

真後ろ…ッ!2メートル!

 

 

 びちゃ、と。音が聞こえた瞬間ブランクは背後の気配へとメタリカを発動させた。

 

 爆ぜるような音を立てて血中から作り出されたカミソリが肉をつぶし、皮膚を切り裂いた。

 

 殺った。

 

 確信を持ってブランクは振り向いた。だが、そこにあったのは“左腕”だった。

 

「ッ…!」

 

 そして再び世界でただ一人、ディアボロだけが認識できる“時間”がはじまる。

 

「腕一本はお前と、お前と暗殺チームのしぶとさへの称賛ということにしよう…ヴォート・ブランク」

 

 ディアボロはすでに柱を破壊し、その岩をブランクめがけ投擲した。圧倒的パワーを誇るキング・クリムゾンの岩石投げだ。脳髄をぶちまけて死ぬだろう。

「近づけなくても、お前を殺す手段などいくらでもある。貴様のような野ねずみがこのオレを…あろうことかここまで損耗させるとはな。身の程をしれ」

 

 

 時が再始動し、振り向いたブランクの顔に岩が命中した。骨の砕ける音と湿った何かが崩れる音がし、悲鳴を上げる間もなく、ブランクは仰け反って倒れた。

 

 ディアボロは自分の傷口から流れる血からメタリカのスタンド像が消えるのを見た。

 ブランクの死体を確認しようと目を細めた。だがすぐに違和感に気づく。自分を探知し続けるベイビィ・フェイスの右手が消えていた。

 

 ディアボロは鼻で笑った。

 

 

ベイビィ・フェイスッ…!

「この後に及んで不意打ちなど、このオレに成立するわけがないッ!」

 

 ジュニアの不意打ちは不発に終わった。キング・クリムゾンが腕を振り払うだけで事足りた。

 壁に叩きつけられたジュニアは全身が千千になる痛みを感じて、それっきりだった。

 キング・クリムゾンにより省略された過程は自らの死を認識することすら不可能だ。

 

 ポルナレフは突然吹っ飛んだブランクを見て今度こそ終わりだと確信した。自分の斬撃は見切られている。血の垂れ方で時が飛ばされたかどうかわかっても、タイミングをずらされれば意味がない。

 

 

「リゾット・ネエロの…死者のスタンドまで使えるとは…してやられた」

 

 

 トリッシュは体を硬直させた。全身が凍りつくような、あの気配。

 

 父が…ディアボロがいる。もうすぐ目の前に。

 ようやく辿り着いたというのに、全員やられてしまったのか。

 

 トリッシュは腹に穴の空いたブチャラティの体を抱く。こんなにひどい怪我なのに、出血がほとんどない。いや…それどころか死んでしばらくたったかのように体が冷たい。

 なにがなんだかわからなかった。ただ、前にもまして邪悪な気配に震えることしかできない。

 

 強くなったと思ったのに。

 だが今ディアボロを前にして、自分の心の中には恐れが満ちている。勇気を奮い立たせ、立ち向かいたい。でも…

 

 

 階段からは血が垂れてきていた。さっき叫んでいたブランクのものだろうか。

 トリッシュはブチャラティの頭を抱きしめる。

 

「ブチャラティ…」

「トリッシュ…」

 

 トリッシュの声を聞いて、ブチャラティのまぶたがぴくりと動いた。ブチャラティはそのまま手をゆっくりと上げて、トリッシュの腕に触れた。

「ブチャラティ…!あなた……生きて…いるの?」

 トリッシュの驚きにブチャラティは途切れ途切れになりながらも「逃げろ」と呟いた。

 

 

 

 

 

 

「死にぞこないどもが次から次へと鬱陶しい。まるで小蝿だな」

 

 

 ポルナレフは再びディアボロと対峙した。もはや希望は潰えたかのように思えた。ポルナレフは布越しに矢に触れる。自分がチャリオッツに矢を使うのとみすみすこいつに渡してしまうのと、どちらがマシか。

 ディアボロはきっと、いつか矢の本当の力に気づいてしまう。そしてやつならば自分のためだけにこの“すべての精神を支配する力”を使いこなすだろう。

 

 

 

 ポルナレフはディアボロの後ろで倒れているブランクを見た。ちょうど頭部に砕けた岩の欠片があり、顔は見えない。だが出血こそあるものの、頭部は潰れていない。

 ぴくりとその唇が動き、顔と岩の間からボロボロとブロック状の何かが崩れ落ちた。その色は、ブランクが“ジュニア”と呼んでいたスタンドの体と同じ色だった。

 

 それを見て、ディアボロが再度ブランクの死を確認しようとする前に、ポルナレフはシルバー・チャリオッツを抜いた。

 

「悪あがきを」

 

 キング・クリムゾンはチャリオッツを殴りぬいた。だが殴り抜けたのは甲冑のみだった。

 

「そんなの読めているぞ。狙いは本体のお前だッ!ジャン=ピエール・ポルナレフッ」

 

 スタンドでの防御無しでキング・クリムゾンの破壊力を防ぐなど不可能だ。慌ててスタンドを戻そうとしたところで間に合わない。だがポルナレフはそのまま、甲冑を脱いだチャリオッツを突っ込ませた。

 

 ポルナレフはキング・クリムゾンの攻撃を食らい、倒れた。

 

 

 

カラン

 

 乾いた音をたて、チャリオッツのレイピアが地面に落ちた。

 

 

 

 ディアボロはポルナレフの血を振り払い、トリッシュの気配を追おうとした。腕をなくしたとはいえ娘たった一人、どうとでもなる。

 まずはブランクの死体を確認しなければ。

 頭を潰した感触はあった。だが死んだふりをしてディアボロが近づいてくるのを待っている可能性もある。

 

 石の転がる音がした。

 

「…ジュニア…きみたちに、何度助けられたことか…」

 

 

 やはり、予感どおりヴォート・ブランクは立っていた。

 

「一体何度叩きのめせば死ぬんだ」

「僕も自分の打たれ強さに感服してます」

 

 では先程の攻撃をどうやって躱したのか?岩は確実に頭に入っていた。

 理由はその顔に付着した肉片を見ればわかった。

右腕に化けていたスタンド、ベイビィ・フェイスが体表を覆ってクッションの役割を果たしたのだ。

 自分が振り払い殺したジュニアはほとんど死にかけの残骸だったのだ。

 

 ディアボロは怒りで我を見失いそうになった。だが、見覚えのあるものが先程殴りぬいたブランクの胸部に刺さっているのを見て、怒りは動揺に変わる。

 

 ディアボロは立ち尽くした。なぜこうも想定外のことばかり起こる?どんな悪運が自分につきまとっているんだ。何もかも、二年前暗殺チームの愚か者が自分の正体なんか嗅ぎ回ったせいだ。

 

 

「その矢…ッ!なぜそれがここにある!」

「さあね。でもこれであんたを倒せるなら、体なんていくらでもくれてやる!僕は魂を殺せぬものなど恐れないぞ」

 

 

 

 

 

 




次回最終話です
最終話、エピローグで黄金の風は完結です

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