Summer Pockets 小説集   作:京四郎

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鳴瀬しろは誕生日記念のSSです。
ネタはあるけれど割と即興で書いてるので粗が多いかもしれませんが、お楽しみいただければ幸いです。


赤と緑の祭り

「しろは、誕生日おめでとう」

「ありがとう、おじいちゃん」

そんな挨拶を交わす朝。

今日は六月八日、私鳴瀬しろはの誕生日だ。

とは言っても誕生日でもやる事は変わらない。

学校に行き、帰ってきたらいつもの釣り場に出かけて釣りをして、ほどよく釣れたら帰る、そんな普通の日常……今日もそんな日になるはず。

 

「……」

私は釣り場で釣り糸をたらして海をじっと見つめる。

こうしてると去年の夏の事が思い出されてくる。

鷹原羽依里、去年知り合ってなんだかんだ一緒に遊んで、仲良く……なって、好き……になった、恋び……と?

「でも……」

羽依里は島から離れた場所に住んでいる。

前に少年団の代表として手紙を送ってから、時々手紙でのやり取りや、電話もたまにしたりするけど、会うのは……

「寂しいな……」

「どうかしたのか、しろは?」

「ひゃぁ!?……の、のみき……驚かせないで」

「す、すまない……そんなに釣りに集中していたとは思わなくてな」

「あ……ううん、違うよ。大丈夫」

……そ、そんなに私、羽依里の事、集中して考えてたかな?

「なら、いいんだが……それより今日、これから少し時間が空いてないか?」

「え?……うん、特に予定はない、けど」

なんだろう、悪い事じゃないとは思うんだけど、幼馴染と言っても去年まではかなり疎遠になってたからちょっとまだ身構えてしまう。

おじいちゃんに知られたら、まだぼっちが……とか言われちゃうんだろうなぁ。

「そうか、それなら良かった。じゃあ、これから一緒に秘密基地に来てくれないか」

「うん。解った」

 

 

秘密基地に来たのもだいぶ懐かしい気がする。

去年の夏休みから先は、あんまりここには来てなかったからかな?

「あ、来たわね」

「主役の登場だな」

「よぉ、しろは」

「こんにちは、しろぱさん」

秘密基地には、蒼に天善君に良一君に、何故か水織先輩も居た。

それだけじゃない、他にも二人。

「お久しぶり、鴎だよー!」

「わたしも久しぶりです、シロハさん」

「な、なんで久島さんとワタアメさんも?」

びっくりして目を丸くする私の肩を、後ろにいたのみきがポンっと叩いて笑った。うぅ?

「それだけじゃないぞ……おーい」

「もう出ていいのか?……あ、えっと……こ、こんにちは」

「えっ……は……はは……は、羽依里ぃ!?何で居る!」

な、なにこれ……なに?

まって、何がどうなってるの?

なんであなたがここに居るの!?

「なんて声出すんだよ、しろは」

「だ、だって羽依里……え、本物?」

「俺が他に何人も居てたまるか。いや、その……しろはに会いにな?」

「そ、それはうれしい、けど……」

「へぇ、やっぱり嬉しいのね、しろは?」

「う、うぅ……うれしく、ない」

蒼がにやけてこっち見てる!

蒼だけじゃない、みんななんか必要以上に笑顔がやさしいよ!?

「あー……俺はすっごく嬉しい」

「わ、私はうれしくない……」

ううん、本当は嬉しい。

「そっか……でも俺は嬉しいんだ」

私も嬉しいよ、羽依里。

「そ、それは羽依里の勝手……うれしく、なんて……」

なのになんか素直に上手く言えない。

「じゃあ、俺が勝手に喜んどく、嬉しいから」

「うぅぅ……どーすーこーいーっ!」

久々にどすこいって言った気がする。

でも、みんなその言葉が結構きつい言葉だって解ってるのに、みんな笑顔のまま私達を見てる。

羽依里も笑ってる……うぅぅ、きっと本当は嬉しいってばれちゃってるよ。

「……ごめん、きつく言い過ぎた」

「大丈夫、しろはから言われるのは慣れてるから」

色々頭の中がぐるぐる回ってもう謝るしかなくなった私をフォローしてくれる羽依里。

……でも、フォローになってるのかな?これ。

「二人はやっぱり仲が良いんだねぇ」

「はい、タカハラさんは灯台の掃除も時々手伝ってくれたりした良い人ですから。シロハさんは、改めて言わなくてもです!」

「そうね、離れてる月日を感じさせない見事の夫婦漫才だったわ」

「う、うるさいな!あと、夫婦じゃない!」

「え、蝶番の儀式したじゃない?」

「あ、ぅ……そ、それは……」

あれは仮初だったから……仮初、うん。

「おい、お前達。それ以上主役をいじめるな。話をすすめるぞ?」

「……話?」

笑いながら私達の仲をはやし立てるみんなを制してのみきが奥にいって何かを持ってきた。

これは……ケーキ?

「せーの……」

「「「誕生日、おめでとう!」」」

いきなりな展開にぽかんとしてる私を笑顔と拍手でみんなが祝福してくれる。

そっか、みんな覚えててくれたんだ。

「あ、えっと、その……あ、ありがと」

こんなの照れる!すっごく照れる!……でも、それと同じくらい嬉しい。

「さて、じゃあ次はあれだな、誕生日と言えば」

「プレゼントだな」

「そですね」

「まずはもちろん羽依里からね?」

「俺からかよ!?」

蒼に背中を押されて羽依里が私の方へ二・三歩前へ出てきた。

一瞬、去年の夏の終わりの事が思い出されて私の心臓が少し早く脈打ってるのが自分でも解る。

「え、ええと……誕生日おめでとう、しろは」

「うん……ありがと、羽依里」

羽依里がくれたのは、綺麗に透き通る石が連なって出来たブレスレットだった。

 

その後はみんな、かわるがわる、思い思いのプレゼントをしてくれた。

ワタアメさんは可愛いぬいぐるみを。久島さんは外国の綺麗なキーホルダー。

のみきと水織先輩からは、ビーチサンダルと日焼け止め、釣りの時使えって事かな?

すごく実用的だった。

良一君と天善君のは……うん、どっちかっていうと自分達の趣味に走った感じかな?

蒼からは蝶をモチーフにした髪留め、これも可愛かった。

こんなにいっぱい人に誕生日を祝われたのはいつ以来だろう……とても嬉しい。

 

「それとさ、しろは。実はもう一つあってさ」

「え、な、なに!?」

身構える私にみんながちょっと困ったような笑顔で並んで一斉に何かを差し出した

「これ、は……スイカバー!?しかもこんなに沢山!?」

「うん、さっき渡したプレゼントとは別に、やっぱしろはが喜ぶのはこれかなと思ってさ」

「あたしも、そう思って持ってきたんだけどね?」

「皆、考える事は同じだったようだな」

「スイカお姉さんでしたから、シロハさんは」

「こう重なってしまって思わず笑ってしまったがな」

「まぁ、俺らがしろはのスイカバー好きを知ってるのはともかく、まさか水織先輩や久島が知ってるのは意外だったがな」

「あら、私は紬に聞いたのよ」

「私も羽依里にスイカバーが好きな子が居るって前に聞いてたからね。まさか恋人さんだったとは思わなかったけど」

「私のスイカバー好きどれだけ広がってるの!」

思わず言った私を見てみんな笑った。

なんかちょっと恥ずかしいけど、悪い気はしない、かな?

だから、私もみんなと一緒に笑ってしまった。

 

「ふふふ……みんな、ありがとう」

 

今年の誕生日は、とっても素敵な、眩いくらいに素敵な誕生日だった。

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