飼育、皮剥、飼料作成の三プラントを見終わる頃にはフラミーは悪魔としての何かを刺激されたようだった。
「はー面白かったですね!皆私が助けに来たと思ってましたね!んふふふ。」
楽しげに話すその姿にデミウルゴスは満足げに頷く。
「はい。誠哀れで愚かな愛らしい羊達でございます。」
「お前達は本当に…。私はナザリックに歯向かっていない者達を痛ぶるのは好かん。」
アインズは悪魔達のワクワク皮剥体験に少し辟易していた。
これでフラミーがナザリックで拷問官をしたいと言い出したら嫌だなと思いながら。
「ねぇアインズさん、可愛い子羊いたら連れて帰るって言ってたじゃ――」
「却下です。」
嫌な想像は当たるものだとフラミーを見る。
「良いですかフラミーさん。あんまりそんな事ばっかり言ってるとお嫁の貰い手本当になくなりますよ。」
フラミーはぽかんと口を開けて顔を青くした。
「そ、それはマズイです。私の子供の頃からの夢は可愛いお嫁さんなので…。」
男子は心のメモに書き留めた。
後ろの
「じゃあ自重して下さい。」
「ところで、アインズ様、フラミー様。次は繁殖プラントですので羊達は皆裸体のままでございます。今日は繁殖日ですので、あと五時間程は魅了に掛かっている為止めることもできません。如何なさいますか?」
アインズとフラミーは顔を見合わせた。
「わ、私はやめておきます。向こうでエントマと待ってるんで男性二人で楽しんできてください。」
そう言うとフラミーはエントマの手を取った。
「フラミーさまぁ、デミウルゴス様は次のお部屋が大好きなのでとってもおススメですぅ!」
アインズとフラミーは黙ったまま叡智の悪魔を振り返った。
「………。」
デミウルゴスはエントマに誤解を呼ぶような言い方はやめろと視線で訴えると、エントマは心得たとばかりにぴょんと頭の二本の触覚を立てた。
「フラミー様是非どうぞぉ!私もたまに蟲を出してお手伝いしてますぅ!」
「む…むし…?」
「はぁい!蟲種と人間種の間に子供が出来たら、それはとっても進歩なんですよぉ!」
「ははは、わかったからエントマ行こうね。」
「あやっ!」
エントマはフラミーに引っ張られて出て行った。
そう言う趣味があったのかと言わんばかりのアインズの視線にデミウルゴスは冷静に応えた。
「アインズ様。我々ナザリックの僕は皆種族が十人十色。異種間で子供をもうけられるか、と言うのは戦力増強と言う意味では大変重要なキーワードかと。特にあの番外席次が邪王の力を強く受け継いでいる点を見ても、我々の子供というのはかなり期待ができます。」
「なるほど。それもそうだな。ん、そう言えばセバスはあの人間の女とどうなったか。」
アインズは進み始めたデミウルゴスに続いて歩き出した。
「まだうまく手も握れないなどと腑抜けた事を言っております。アインズ様とフラミー様を見習って自然に手を繋げば良いと言っているのですが。」
「…ん?それは、んん。私達はな。うん、その…アレだな。」
「はぁ…そのアレ、でございますか…?」
段々目のやり場に困るような周りの状況にアインズはデミウルゴスから視線を外すことができなくなっていく。
「あーまぁ良い。男なら手ぐらい早く握れと言っておけ。触れ合いは人の心を動かす。」
「おぉ、流石アインズ様。何にでも精通していらっしゃる。」
こいつは嫌味で言っているのかと
「では、セバスにはアインズ様も子を心待ちにしていると伝えておきます。」
「そうだな。しかしその前に結婚式か?ナザリックはじめての結婚だ。神都で盛大に祝ってやるか。」
アインズはこういう時たっち・みーがいたら詳しそうだなと思う。
「なんと慈悲深い。では式ではアインズ様が仲人としてお出になられるのですね。」
「え、うわ――いや、本人たちの希望によるな。」
一瞬想像して鎮静された。
そんな事を話していると繁殖プラントをすっかり一周し、フラミーの待つと思われる職員食堂に向かった。
しかし、職員食堂にフラミーはおらず、
「これはアインズ様。よくぞお出で下さいました。」
「
「畏れ入ります。フラミー様はあちらの外のデッキでエントマ様とお休み中にございます。」
指し示した方に確かにフラミーがわずかに見えていた。
アインズはその豊満な後ろ姿を見送ると、隣のデミウルゴスに振った。
「ふむ。お前はああいうのはどうなんだ?」
「は?ああいうの、とは?」
「悪魔種同士だ。お前達がその気になれば
「そう、でございますね。アインズ様がお望みとあらば。」
デミウルゴスは素直に頭を下げた。
「いや。望みと言うほどでもない。忘れてくれ。」
アインズはさっと手を振るが、デミウルゴスは何かを言いたそうにし、意を決したように口を開いた。
「悪魔種…という事でしたら――」
「うん?」
「悪魔種の繁殖という事でしたら、
「……それは…そう…だが…。」
デミウルゴスの提案は尤もだ。
アインズがデミウルゴスに向いたまま
「二人で私の繁殖実験の話ですか…。」
二人はハッと振り返った。
「流石デミウルゴスさまぁ!それでしたらお世継ぎも御生れになりますし、何よりですぅ!」
きゃっきゃと喜ぶ愛らしいエントマと対照的に、アインズとデミウルゴスは自分たちの間の悪さに物が言えなかった。
フラミーは何も言わないアインズとデミウルゴスを交互に睨んだ。
「アインズさんもデミウルゴスさんも…私のことそんな風に見てたんですか…。」
静かにそう言うと無詠唱化した
「…軽率にデリケートな話を振った私が悪かった…。」
「いえ、私も軽率でした…。」
二人はしばらくごにょごにょと言い訳と反省を口にしてから、エントマに軽く挨拶をするとフラミーの部屋の前に向かった。
後ろからは「お世継ぎ楽しみにしてますぅ!」と楽しげな声が響いた。
目的の部屋の扉をノックをするとそこからはアルベドが顔を出し、フラミーに確認することもなく告げた。
「畏れながら、フラミー様はアインズ様にもデミウルゴスにも会いたくないと仰っております。」
女子として共感しているのか冷たい視線を感じる。
「アルベド…。我々も反省しているのだ。」
「アインズ様の仰ることは解ります。でもデミウルゴス。貴方繁殖実験の為にフラミー様に近付くなんて不敬にも程があるわ。反省しなさい。」
そして扉は閉められた。
この世の終わりのような顔をするデミウルゴスの頭をアインズはくしゃりと撫でた。
「…今は少し時間を置こう。」
そう言うと二人はアインズの部屋へ向かった。
アルベドは扉が開いたままの寝室へ戻った。
「フラミー様、不敬なあの男は去りました。ご安心ください。」
「アルベドさん…。私が子供を作ったら、皆は嬉しいんでしょうか…。」
膝を抱えるフラミーの瞳からは涙が溢れそうだった。
「…確かにそれは嬉しく思います。ですが、御身がお望みにならないのならば、私達も望むところではございません。」
「ありがとうございます…。アルベドさんは悪魔ですよね。」
「はい。悪魔でございます。」
「…もしアルベドさんに、私が子供を作ろうって言ったらどうします?」
「え?」
「デミウルゴス、本当に済まなかった。お前を陥れたようで私も辛い。」
「いえ…御身は何も…。私も何故あんな事を言ってしまったのか…。」
大反省会が部屋で行われていると、俄かに廊下が騒がしくなる。
何事だろうと二人が音の方に目を向けていると扉がものすごい勢いでバンと開かれた。
「あっ、あいんずさん!!」
ローブを止める背のリボンが解かれているのか今にも服が肩からずり落ちるような状態でフラミーが部屋に駆け込むと、足がもつれたのかワッと部屋の真ん中で転んだ。髪もお団子頭から下され、妙に乱れている。
アインズとデミウルゴスは慌ててフラミーの下に寄った。
「フラミーさん!?どうしたんですか!?」
「フラミー様!!」
「あ、あ、あるべどさんが!!」
扉に向けて指をさすフラミーの後ろに、その悪魔は立っていた。
「デミウルゴス。貴方の気持ちはよく分かったわ。さぁ、フラミー様。ご安心下さい。女同士この私が手取り足取りお教え致します。その可愛らしい勲章をどうぞ私に。きっとご満足いただけるようご奉仕いたします。」
そう言うとアルベドはフラミーを後ろから抱きしめ持ち上げようとした。
「ひゃっ!!や、やめて!やめて下さい!!」
その手を止めようと握りしめるが、四十一人最弱に近いフラミーは止められない。
「――まさか!!やめろ、やめなさい!!アルベド!!」
「な!アルベドやめるんです!!守護者統括として恥ずべき行為は慎みなさい!!」
「デミウルゴス!あなたには言われたくないわ!!」
「アルベド様!御乱心!」「アルベド様!御乱心!」
腕力最弱支配者と守護者最弱悪魔、アサシンズで無理やり引き離しても、それでもなお縋ろうとするその悪魔は表に控えていた配下の者より連絡を受けたコキュートスによって漸くお縄についた。
アインズはアサシンズに引き摺られて行くアルベドを見送った。
「…よくやったコキュートス……。」
「イエ…ソレヨリモ……。」
コキュートスが目を向ける先でフラミーは床で崩れたままその翼で自分の身を包んでいた。
それを見たデミウルゴスは自分の中に生まれてしまった衝動と、昼にアインズに言われた言葉に突き動かされた。
(――触れ合いは人の心を動かす……。)
床で小さくなるフラミーをデミウルゴスは抱きしめた。翼を避けて回した腕と、髪の中にくしゃりと入った手は悪魔の王の体を感じた。
「申し訳ございませんでした…。全てはこのデミウルゴスの責任です…。お許し下さい…とはとても言えません…。」
フラミーは前で閉じていた翼を開くと、許すと言うかのようにデミウルゴスを包み静かに縋った。
「美味しいところは全部あれだ。なぁ、コキュートス…。」
「全クデゴザイマス。」
アインズは二人に近付いて行き、フラミーの背で解けたままのリボンを結んだ。
「フラミーさん、行きましょう。」
アインズはデミウルゴスからフラミーを引き離すと優しく横抱きにした。
フラミーもアインズの肩に顔を埋めて首に手を回した。
「アインズ様。」
後ろからデミウルゴスの声がかかる。
「よろしくお願いいたします。」
頭を深く下げた悪魔にアインズは頷いてみせ、フラミーを自分の寝室に連れて行った。
空気のように控えていたアインズ当番により扉が開かれ、くぐると音もなく閉められる。
フラミーをベッドに腰掛けさせるとアインズは立ち上がった。
「さぁ、しばらくここにいて下さい。俺はアルベドの記憶を消しに行かなきゃいけないんで。」
すると裾を引っ張られる感触に目を落とした。
「あいんずさん…ごめんなさい…。」
「そんな、俺こそ…。」
「でも、アルベドさんの記憶は…私が悪いんで…消さないであげてください…。」
「いいんですか…?」
「はい…。きっと、
アインズは暗闇の中で一度フラミーを抱き締めて背中をぽんぽんと叩くとその場を後にした。
骨の体に産まれた衝動に負けないように。
アインズがアルベドを叱って戻って来て、しばらく経つとフラミーは照れ臭そうに寝室から出てきた。
「へへへ、こいつぁーどうも皆さんお騒がせしました。」
精一杯いつも通りを装うその姿にアインズとデミウルゴスは痛みを感じた。
「いえいえ、全部我々の責任ですから…。本当すみませんでした。」
アインズが座ったまま頭を下げると、デミウルゴスも立ち上がりそれに続き頭を下げた。
「申し訳ございませんでした。フラミー様。」
「ねぇ、アインズさん。デミウルゴスさん。」
二人は顔を上げる。
「いつか、子供は作るかもしれないけど、ナザリックの為でも…今はまだ…。その…。」
言葉を濁すフラミーにアインズは続きを押し留めた。
「そんな事いいんです。忘れてください。」
少し考えてからアインズは立ち上がり、困ったような顔をするフラミーの側に行った。
「全部忘れさせてあげましょうか。」
真剣な眼差しでフラミーを見つめてその頬を優しく撫でると、デミウルゴスは目を伏せた。
「
「じゃあ――……いえ、なんでもありません。そうですよね。」
頭にのるお団子をポフポフと叩くとアインズはソファに戻った。
すると、ノックが響きセバスが入室許可を求めてきた。
「アインズ様。エ・ランテルにツァインドルクス=ヴァイシオンを名乗る鎧が。」
ラッキーラッキーラッキーすけべ☆
はぁ、早く結婚しろよもう。
次回 #60 世界の敵
12:00に更新します!
ストーリーが佳境に入ってきたのですけべが加速しています。
まぁまだ攻略先はまだまだありますけどね!
おフラさんがアインズ様とおデミとどっちとくっつくのが良いか、近々皆様にお聞きするかもしれません!
今のところデミしか応援されてないので何も聞かずにデミとくっつけちゃう可能性もありにけりです!
いや、もちろん結論を出さずにのらりくらりのラッキーすけべを無限に行う可能性もありますが…。(絶句)
2019.05.31 21:04 アンケートを開始しました!よろしくお願いします!
フラミーさんの運命やいかに…!!
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アインズ様とプレイヤー同士愛し合え!!
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デミデミの恋を成就してくれ!!
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二人の間をのらりくらりで決着つけるな!
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ハーレムこそ正義!二人をくっつけ!