かなり憂鬱になりながら3人と共に左脇腹の激痛に耐えつつ帰還すると、IS学園から召集されたであろう後詰の打鉄とリヴァイヴが砂浜に並び、束と千冬さんが指示を出していて、それを見て気が緩んでしまったのか、急に意識が朦朧としてきて砂浜に不時着し気絶してしまった
どれぐらいの時間が経ったのか分からないが、目を開けると部屋は茜色に染まっていて、俺は布団に寝かされ左腕には点滴が刺さっていた
「・・・起きないと」
右腕を使い身体を起こそうとして左脇腹に激痛が走り身体が強張るが無理矢理身体を起こして左脇腹を見ると、明らかに怪我してます と主張する血の滲むガーゼが貼られていて間違いなく怒られる覚悟を決めて立ち上がって点滴の掛けられたポールみたいな奴を左手で持ち寝かされていた部屋を出る
「・・・急がないと、手遅れになるしな」
自覚している以上の血を流していた様で少し怠い身体に鞭打って数分歩き、臨時司令部へ行き
「ちふ・・・織斑先生 」
後処理の指示を出していた千冬さんに声をかけると、一瞬驚いた表情をした後、睨む様な目付きになり
「命、もう目を覚ましたのは驚いたが、何故ここへ来た? 片腹に穴空いてるのだぞ? 安静にしていろ、命令だ 」
この声色には、プライベートの時の優しさが含まれていて少し申し訳無くなるが引く訳にも行かないので
「急ぎの用件が有ったので・・・襲撃犯をサルベージしないと行けませんから」
まぁ別に襲撃犯が どうなろうと知らないが、コアは別だ
銀の福音のコアは束が造ったいわば娘の様な物だ、無人機に搭載されたレプリカコアとは違う
それに襲撃犯から情報を得る事も必要だろうし?
真っ直ぐ千冬さんの目を見て言うと
「はぁ・・・報告は受けている、束の予測だと最長2日らしいな? 無論生命維持を最優先し無駄を極限まで省いたら、だが・・・奴が まだ戦意が有る可能性もある、単機での出撃は許可できない、と言っても行くのだろうな、お前は」
千冬さんは、珍しく困った様な表情で苦笑して言い
「山田先生、ボーデヴィッヒと箒、織斑を召集してくれ」
千冬さんは山田先生に指示を出して
「お前がやる事は奴をサルベージする事だけだ、万が一戦闘になった場合、間違っても戦闘に参加するな、その傷は決して軽くない」
いつもの教師の顔から、昔から知るお姉さんの顔になり心配した様子で言われてしまう
正直、戦闘をするつもりはない、ないが絶対なんて無いのが この世界だ
「・・・善処します」
それだけ言い、司令部を出て砂浜に降り水平線に沈む太陽を眺める
俺の予測が正しければ、襲撃犯は行動不能状態にある筈だ
銀の福音は高機動型だから装甲が薄めだ、だからダメージが通りやすいし、強奪された直後なら装甲が換装されている可能性も低い
とはいえ予測だから、行って見なければ答えは分からない
しばらく海を眺めていると
「準備はいいか? 」
「あぁ、問題ない」
ボーデヴィッヒの言葉に答え点滴の針を抜き投げ捨て羽黒を纏うと、3人も自身の専用機を纏い
「それでは2回戦を始めよう」
ボーデヴィッヒの号令で隊列を組み襲撃犯を沈めた場所へ行く
数十分程度で現場に到着し
「それじゃサルベージしてくる、もしもの時は頼んだ」
それだけ伝え猛鷲戯画を発動させて次元潜行をし、襲撃犯を探すと直ぐに見つかり襲撃犯は死んだ様に浮かんでいたので、さっさと回収して浮上し一夏に渡すと、箒が何処からかロープを取り出してして襲撃犯を簀巻きにする
「あー・・・ひとまずは任務完了、か? 」
既に待機状態の銀の福音を回収して呟くと
「ご苦労様、さ早く帰っておいで? もうすぐ夕食の時間だよ? 」
タイミングを見計らったかの様に束から通信が入り、そう告げてくる
「了解、これより帰投する」
なんともパッとしない幕引きだったが、まぁ何もなくて良かった。何もないに越した事は無いしな、うん
再び隊列を組んで帰路を飛び、今度は普通に砂浜へ着地して羽黒を解除すると左脇腹が軽く痛む
本当なら安静にしていないと行けない怪我なのだから当たり前か、とか考えつつ宿に戻る
「改めてご苦労様、さぁさぁ夕食の時間だよ? ただし・・・命、君には話が有るから」
優しげな微笑みを浮かべていた束が出迎え労ってくれたが、終盤は笑んでいるのに目が笑って無い状態で、愛称では無く本名で俺を呼んだので、腹をくくる
そんな俺を見捨てる様に、そそくさと3人は去り
「ちょっと着いてきて? 」
有無を言わさないオーラを纏った束に言われ着いて行くと俺が寝かされていた部屋に辿り着き入室し、座る様に言われたので正座で座ると、案の定 お説教が始まった
全面的に俺が悪いので、ぐぅの音も出ないから黙って聞き素直に反省する
「怪我は仕方ない、でも もう無茶はしないで・・・ね? 命 」
そう言い泣きそうな表情で言った束を立ち上がって抱きしめ
「わかった、無茶はしない。無茶しないでも勝てる様に強くなる、せめて此の両手が届く範囲もモノは守れるくらいに」
「約束だよ? 」
俺の言葉に束は抱きしめ返してきて言う
しばらくして離れた束に待機状態の銀の福音を渡して
「束、少し此処で待っていてくれるか? 」
「ん? うん、構わないけど」
束に了承を貰い一度 部屋へ戻って自分の荷物から目的の物を取り出し再び束の元へ戻ると、束は部屋に備え付けられた露天風呂の有るテラスに出ていた
「お待たせ」
部屋の扉をしっかり閉めてから束へ声を掛けると
「みーくん、綺麗に星が見えるよ? 天の川だね」
そうニコニコとして束は言うので隣に立ち空を見上げると、視界いっぱいの星空が広がっていた
「束、俺と結婚してくれないか? 必ず、幸せにしてみせる」
片膝をついて指輪の入ったリングケースを束へ差し出す、ベタだがこうゆうのさベタぐらいがいい
「もちろん答えはYESだよ、みーくん」
ニコニコ笑み、左手を出して来たのでリングケースから指輪を取り出し束の薬指にはめると束は本当に嬉しそうに笑み、抱きついてきたので受け止める
「ありがとう、みーくん。待った甲斐があったよ」
「待たせてごめん、本当に結婚できるのは、まだ先だけどな」
束の言葉に答えると、なんか束の纏う雰囲気が変わったのを感じ
「束?どうかしたか? 」
身体を離して束を見ると、いつもの無邪気な表情ではなく約5年前の事件の時に見た表情をしていた
「た、束? ま、まさか? 」
さすがに早い気がしたので宥めようとした瞬間
「ふふふ、大丈夫だよ? もう何も心配はないからね、命」
そう見た目不相応な大人の笑みを浮かべて、俺を部屋へ引きずっていく
少し抵抗したり説得を試みたが、チカラでもクチでも束に勝てずに結局、抗うことが出来ず俺は卒業した。ついでに血はいっぱい出た、俺から
それが原因で完治までの日数が伸び、千冬さんに2人して怒られたのは言うまでもない
でもまぁ、これで言いと思う
そんな有り触れた日常でいいと思う
せめて、この両手が届く範囲で護ろう、そう改めて誓う
俺は、俺達はきっと夢を掴めるだろう、否 掴んでみせる
俺達はチカラの限り進むのだから
お待たせしました
正直、微妙で申し訳ない