無限の剣を持つゴブリン   作:超高校級の切望

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ゴブリンを滅ぼした後の世界なのでゴブリンスレイヤーとは名ばかりのキャラが登場する世界です。それでも良い、という人だけどうぞ


アフターストーリー
目覚め


 目を覚ます。まず最初に映ったのは、天井。

 知らない天井。何処だ、ここは? 窓の外を見る。草が生えた庭に、太い枝で作られた柵。その向こうも草原で少し向こうに森。

 随分と田舎だ。空を見上げる。白い月と赤い月が二つ、浮かんでいた。

 

「……ん?月が、二つ………や、あれ?当たり前、か?」

 

 空に浮かぶ月を見て疑問を覚え、しかし二つあるのは当たり前だと思い直す。ただ、やはり違和感がある。そう、月の色だ。確か月は緑と赤では?

 それで、緑の月は───

 

「───ッ!!」

 

 ズキン、と頭が痛む。

 だいぶ長い間眠っていた気がする。ひょっとしたら何かの病気? と、そこまで考え何時から寝てた、と記憶を探る。それ以前に、ここは何処で、自分は眠る前に誰と何処にいて、そもそも自分は誰だ?

 

「────記憶喪失、って奴か」

 

 一度納得するとストンと受け入れられる。何というか、知識として記憶を失ったら自分が何者か解らず苦しむ、何て言うのがあったような気もするがいざなってみるとそんな事はないらしい。

 起きあがる。少しふらつく。

 

「───?」

 

 目線の高さと、体の動きに何か違和感がある。

 何というか、自分の体ではないみたいだ。

 部屋の外に出て、廊下を歩く。外に出る。夜風に冷やされた土の冷たさと肌を撫でる草のくすぐったさが伝わる。

 

「─────」

 

 ザシ、ザシと歩く度に足下の土同士が擦れ音がなる。そのままふらふらと彼は森へ向かう。

 

 

 

 

 月明かりも遮れる闇の中。しかし彼は夜目も利かない人の身で何かに躓くこともなく歩く。時折地面に手を当て、葉をどかし、眼を閉じ、そして洞窟にたどり着く。入り口は、子供なら簡単に通れる。少年なら少し屈んで………中は広がっており歩きやすいが。

 と、何かが駆けてくる。小さい。が、跳ねてきた。その首を掴み壁に押さえつけると手に持っていた剣を押しつける。

 

「クウゥ!フゥ────!グルルルル」

「なんだ狼か」

 

 手を離す。バッ!と距離を取る狼。警戒している。当然か、巣に入られ襲いかかれば逆に殺されそうになったのだから。取り敢えず剣を捨て────

 

「──ん?」

 

 この剣、どっから出てきた?

 

「ッ!グオォ!」

「───と」

 

 意識がそちらに向くと狼が襲いかかってくる。大きく仰け反りながらかわして蹴りを放つ。

 

「あれ?」

「キャウゥ!」

 

 膝で顎を狙ったのだが膝は顎下をすり抜け爪先が顎に当たる。大したダメージではないな。直ぐに着地し睨んでくる狼。

 

「グゥルルル!ガルルルル」

 

 背を向ければ襲ってくるだろう。だから眼を逸らさない。狼の耳と尻尾が垂れ始めた。が、逃げない。恐らく向こうにある小さな気配と目の前のと同じぐらいの気配。妻と子か……。

 剣を地面に突き刺す。ビクリと震える狼。刺激しないようにそっと後ろ向きに歩く。

 

 

 

 

 取り敢えず先程寝ていた村の家に戻る。

 何やら騒がしい。恐らく自分が居なくなったからだろうと少し罪悪感が沸く。と、黒髪の少女と茶髪の少女が現れる。年は17程だろうか? 森のほうを散策しようとしたのだろう、慌てた顔から、驚愕。そして笑みを浮かべる──

 

「お兄ちゃん!」

「兄ちゃーん!」

「お──とと……」

 

 そのまま抱きついてくる2人。お兄ちゃん?たぶん自分のことなのだろうが、彼女達は妹なのだろうか?

 どうしてやるのが正解なのか解らず、取り敢えず抱き締めようとして、手が止まる。ギュッと抱きついてくる2人の、頭を撫でる。

 

「良かった。また、居なくなっちゃったのかと」

「心配したんだぞぉ……目ぇ、覚まさなくて……目を覚ましたら、居なくなっちゃうし」

 

 ()()………? 果たして前の自分は何をしていたのだろうか。少なくとも、彼女たちに心配かけたのは確かだろう。だが……

 

「すまん、俺はお前等のことを、何も覚えていないんだ」

「………そっか」

「うん。でも、今はお兄ちゃんが生きて、起きてくれた。それだけで良いよ」

 

 

 

 

「彼女は剣聖。君の妹弟子に当たる。そっちの年の割に小さい子は賢者、君の妹の友達で、彼女を通して知り合った。君の妹達で、あまり成長出来なかったのが勇者で色々立派になったのが導師」

「あまり成長出来なかったって何さ」

 

 確かに姉ちゃんは凄いけど、と己の慎ましい胸と姉の自己主張の激しい胸を見てむぅ、と膨れる勇者。

 

「それで、アンタは?」

「私? 私はそうだね……母親みたいなものさ」

「………若くないか?」

「ふふ。自覚はしてるが、見た目通りの年齢ではないよ」

 

 と、眼鏡をかけたくすんだ金髪の女性が笑う。何というか、紹介された全員が見目麗しい容姿をしているが本当に前の自分は何者だったのだろうか?

 

「君が目覚めたと聞けば、君の弟子達も喜ぶだろう、例え記憶を失っていたとしても、喜ぶよ」

 

 弟子が居るのか、と前の自分が余計気になる。

 

「取り敢えず彼女達には私から連絡しておこう」

「…………()()()

 

 また女か。

 

 

 

「二番から十六番一同、貴方の帰還と目覚めを心よりお喜びします」

 

 翌日の昼。14人の女と1人の男の弟子だという者達が現れた。本当に前の自分は何だったのだろう? 女好き……というわけでもなさそうだ。彼女達の顔からして……。

 ちなみに代表は十三番と名乗る獣人の少女。副リーダーは十六番と名乗る少年。一番は弟子兼妹の勇者らしい。勇者が弟子って………。

 

「けど、何か納得……だから俺、動けたのか……」

「ああ、狼と戦ったんだっけ」

「まあ、違和感はあったけど」

「………違和感? 調整ミスかな……」

 

 と、母親代わりと言っていた魔女が首を傾げる。

 

「いや、何というか反応が遅いというか、リーチが頭の中で思い描く感覚と違うというか」

「ああ、まあ……眠っていた期間が長いからとでも思ってくれ」

 

 そういうものなのだろうか? まあ記憶喪失故に長い間眠っていたなんて初めてだし、真偽など確かめようがないが。改めて体の感覚を確かめようと跳ねてみる。バランスを崩し、1人の少女が支えてくれる。

 

「大丈夫ですか?」

「あ、ああ……」

 

 確か十一番。

 半森人(ハーフエルフ)の少女だ。それも、森人(エルフ)闇人(ダークエルフ)のハーフ。

 健康的な日焼けのように見える小麦色の肌を持った可愛らしい少女だ。実年齢は知らないが。

 

「ありがとな………?」

「…………♪」

 

 なんか、離れない。

 

「十一番さん、あの……お兄ちゃんに肩貸すなら私が……」

「……………」

「……お!?」

 

 と、導師が近付いた瞬間少年を抱き上げ距離を取る十一番。少年の背中から顔を覗かせチラリと導師を見る。その間スンスンと鼻を鳴らしてぎゅ、と強く掴む。意外と力が強い。

 

「わ、私はよく師匠に迷惑かけてたので、その、お礼に私が面倒を………力、強いですし」

「む! 兄ちゃんを持ち上げるぐらい、ボクだって出来るんだからなぁ!」

「………何、この状況」

「はは。皆君が大好きで、君が心配だったという事さ。心配かけたのは君自身、甘んじて受けると良い」

 

 そう言って笑う魔女。

 少年は改めて彼女達を眺める。()()()()()()()では、恐らくない。そこに何故か安堵を覚え、家族としてみられていることに何となく胸が苦しい。

 

「………ま、慣れていきたまえ。私達皆、君が幸せに生きていることが願いなんだから」




弟子情報

弟子一番  只人 勇者ちゃん、最強
弟子二番  只人 クールビュティー
弟子三番  森人 恥ずかしがり屋
弟子四番  圃人 怖がり
弟子五番  森人 クーデレ
弟子六番  蜥蜴人 クール
弟子七番  闇人 しっかりもの、双子姉
弟子八番  闇人 ぼんやり、双子妹
弟子九番  只人 仕事人
弟子十番  獣人 人見知り、白犬
弟子十一番 半森人 甘えん坊
弟子十二番 鉱人 忠犬
弟子十三番 獣人 忠誠度MAX、黒猫
弟子十四番 只人 ツンデレ
弟子十五番 獣人 お調子者、兎
弟子十六番 只人 黒一点 

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