頼むよ、ホントに頼む。
ラフタリアは謎の存在だ。
今も隣でニコニコと笑う彼女は、見た目だけなら可愛らしい獣人の少女である。盾しか装備出来ず、ろくに攻撃の出来ない俺にも優しい出来た少女だ。ことある毎に俺のことを【主】と呼ぶことは困ったとこだが、些細な事である…彼女の非常識な行動の数々に比べれば。
召喚されたあの日、王に用意された部屋で寛いでいると、扉を突き破って彼女はダイナミックに現れた。突然の事態に呆然としている俺に向かって、天使のように微笑むと「さあ、冒険を始めましょう!」と言い放った。
悪い意味でドキドキが始まったし、冷静になった後部屋の大穴を見て、ハートが熱くなりやる気になったもんだ。
彼女曰く、「貴方の正義の心が私を呼んだ」らしい…謎だ。
更に言えばその圧倒的な戦闘力も謎だ。
背丈の何倍もある巨大な魔物を、どこからともなく取り出した謎の剣やら弓やらで潰していく様は、明らかに普通ではない。
ほら、今も…
「グレェェェトアァァァチェリィィィィ!!」
ラフタリアが叫びながら腕を天に伸ばすと、巨大な黄金の弓が現れた。さらに何故か快晴だったはずの空に暗雲がかかり雷鳴が轟く。そのまま彼女は弓を持ち決めポーズを取ると、弓から光の弦が伸びる。黄金の弓と相まってとても神秘的な光景だ。そして黄金の矢をつがえれば、既に終わりは近い。
「ゴールデンアロー!ファイナルシュゥゥゥト!!」
眩い光と共に矢が放たれた。
矢が通るだけで魔物が次々に消えていく。
最後に一際巨大な魔物に刺さり爆発!それを背にラフタリアが決め!…ここまでがいつもの流れだ。
ちなみにこの間、謎のBGMが頭の中に流れてたりする…謎だ。
他にも剣でぶった切ったり、黄金の翼が生えたりする。一番謎だったのは「今こそ我らの力を合わせるとき!」とか叫んだと思えば、ラフタリアそっくりの少女たちが集結し、黒髪のラフタリアを担いだかと思うと、黒髪ラフタリアの口から巨大なビームを発射するというウルトラCを成し遂げた。
その光景は、時たま夢に出てくる程度にはおれにトラウマを残したが…些細な事だと思う。
ビーム放ったあとも、時々銀髪や青髪のラフタリアが闘いに加わっていることがあるが、触れたことは一度もない…なんか、怖いから。
ちなみに登場するとき、「ゴッドラフタリア!」とか、「キャプテンラフタリア!」とか叫んでるが決して気になったりしない…決して。
しかしながら、謎なのはラフタリアだけじゃない。
「ハンマァァァァコネクトッ!!」
…この鳥の話はまた今度にしようと思う。