即席…じゃなかった即興小説トレーニングで書いたものを少し手直しして投稿。荒唐無稽な異世界おバカショートショート。

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即席…じゃなかった即興小説トレーニングで書いたものを少し手直しして投稿。荒唐無稽な異世界おバカショートショート。


ラーメンの国

「何だか盛り上がっているが、この国は何か催しをしているのかい?」

「おお、旅人の方ですかな? 今、この国では”最強ラーメン決定戦”の大会を行っていますのじゃ」

「ははは」

 旅人は笑い飛ばした後に言った。

 

 

 

「今、何て?」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 剣と魔法の支配するこの世界に於いて、東方から伝わって来た逸品がラーメンと呼ばれる料理であったらしい。

 見れば、どんぶりに手足が生えた怪物が取っ組み合いをしているのが見える。 どんぶりに手足が生えている事以外は旅人の知っているラーメンそのものだった。 

 あれが、この国に於ける”ラーメン”と呼ばれる怪物らしい。それを如何に強く育てるかが、この国のラーメン職人の仕事なのだという。

 しかし、それは料理人ではなくモンスターマスターかモンスタートレーナーなのでは無かろうか。

「あのラーメン、弱いな……麺にコシが入っていない」

「ああ。そうだな。完全に力負けしている。あ、逃げ出したぞ」

 どうしてドンブリの化け物の取っ組み合いから、麺のコシを判断せねばならないのか旅人には理解出来なかった。

 隣の観客に思わずこの催しの意義を問うた。

「すみません、強いラーメンってどうなるんですか?」

「え? そりゃあ、この年のキング・オブ・ラーメンに選ばれるんだろう」

「キング・オブ・ラーメン」

 そんな称号があったのか。

「それでは、弱いラーメンってどうなるんですか?」

「え? そりゃあ、この年のワースト・オブ・ラーメンに選ばれるんだろう」

「ワースト・オブ・ラーメン」

 旅人は口の中で、よく分からないフレーズを繰り返した。

 一体何が彼らをそこまで熱狂に駆り立てるのか、旅人には理解出来なかった。

「私にはよく分かりませんね。旨いラーメンこそが良いラーメンなのではないですか?」

「……!!」

「いや何で驚いてるんですか」

「いや……そういう見方をしたことが無かったものでな……」

 それ以外にどういう見方があるのだろう。

 旅人の方が驚きを隠せなかった。

 

 

 

 ※※※

 

 

  

 この国を出る際、旅人は一冊の本を手に取った。

 そこには、「強いラーメン、弱いラーメン、それは人の勝手」などと書かれていた。

「……いや、食い物で良いでしょラーメンなんか」

 旅人は本を元の場所に戻した。

 振り返ると──そこには、手足の生えたラーメンが夕暮れに佇んでいた。

 あの会場で逃げ出した弱いラーメンだった。

「……元は唯のラーメンのはずなのに訳の分からない催しに出されて、強いだの弱いだので評価されて、不憫だよな」

 彼は中身を少し啜った。

 それがラーメンに対する敬意のつもりだった。

 

「……まっず」

 

 彼は真相を知った。

 この国に於いて、弱いラーメンはまずいのだった。




「あの日食ったラーメンの味を俺はまだ知らない」──名も無き旅人

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