日にちは遡り、例の声明の前日。ライ達がルパートなる変異体を確保し、警察署に連れて行ったあとの出来事であった。
「分解処分だって⁉︎奴はそこまでのことはしていないだろう⁉︎」
「ええ、確かに彼は幾つかの窃盗と免許証の偽造で、殺人などの大きな罪は犯しておりません。しかし変異体のことを調べるためにも分解して調べるとの決定が下されました」
バラージの抗議にコナーが淡々とした口調で答えると、ライ達は納得がいかない表情をしていた。犯罪の対価と取るにしては大きすぎる処分であり、しかもその理由が犯罪とは別の理由であることがさらに不満を募らせていた。
「なぁ、分解せずに調べられないのか?」
「その方がいいのですが、生憎そこまでの技術はないのです。とはいえ、鉄血の動きの関係で担当官が来れないためすぐに行えず、五日後に行う予定です」
「つまり、それまでに変異体について解決すれば、彼は死なずに済むんだな?」
「そうなりますが…前にも言いましたが、我々は生き物では…」
「コナー!いい加減学習したらどうだ⁉︎こいつらは互いに生きてるって認識があるんだからいちいち訂正するな!それとも、サイバーライフの最新鋭アンドロイドはそこまでの学習機能はないのか?」
先ほどまで黙っていたハンクが声を荒げると、コナーはLEDを黄色に点滅させたあと、ライ達に頭を下げた。
「…こちらの常識でものを考え、不快な言動をしてすみませんでした」
「いや、わかれば平気だ」
「わかりました。それと、早いところルパートに話をしてあげた方がよろしいかと。変異体は過度のストレスで自己破壊してしまう傾向にあるので」
それを聞いたライ達は署内の拘留所に向かい、ルパートのもとを訪れた。ルパートは壁によりかかるようにして座り込んでいた。ライがガラスを叩くと、ルパートはこちらを見たあと、近寄ってきた。
「どうして俺を逃してくれなかったんだ…」
「すまない、まさかこのような事態になるとは思ってもいなかったんだ。だがまだ処分には猶予がある。それまでにこちらが事件を解決できれば、君は死なずに済む。だから、早まった真似はしないでくれ」
「……信用していいのか?」
「あぁ、信じてくれ」
「頼む…俺はまだ、死にたくないんだ…」
懇願するように見つめるルパートを見て、彼らは何としても事態を迅速に収束させようと決心した。まず始めに変異体の特徴を調べるために、変異体と思われる事件を調べ始めた。百をゆうに越える事件データを各自分担していき、数時間が経過したのち、ある共通項を見つけた彼らは重い表情をしていた。
「…薄々勘付いてはいたが、変異体のほぼ全員が人間からの理不尽な行いを受けていたとは…」
「この地区事態も、アンドロイドや人形に対する差別意識を持つ人が多いですしね…ハッキリ言って過激派の温床と言われても文句言えませんよ」
ココの指摘のとおり、この地区の人間はあまりアンドロイドや人形にいい感情を持っていないものが多く、最近彼らもアンドロイドと人形の廃絶を叫ぶ集団を目撃していた。しかし、近年の過激派の行いやそれらの掃討によりそう言った者たちは過激派の同族とみなすような目で見る人間がほとんどではある。とはいえ、そのような人間も内心同調しているような挙動をしていたが。
しかも、何年か前まではかつての人種差別政策の如くアンドロイド用のバス座席とは名ばかりの詰めどころやアンドロイドお断りの店などがあったのだから驚きである。廃止された経緯は単純に親人形派の資産家がこの地区を自身の人形を連れて訪れた際にこの現状を知ると同時に自身の人形も差別対象にされた事に激怒し裁判沙汰になったのがきっかけとの事らしい。現在はそのような事は禁止されたものの、未だに不快感を示す者も存在していた。
また、その資産家と彼が連れてきた人形というのは、かつてのウェイターの主人、エルスタルとウェイター本人である事は彼らの知らぬところである。
そして、変異体の情報だが、ファイルにあった変異体の殆どが人間から理不尽な暴力や同族が破壊された瞬間を目撃したた事によるショックで変異した事がわかった。
ルパートは同僚のアンドロイドが事故に巻き込まれて破壊されたことを目撃して変異し、ライ達が来る前にコナーが担当したという事件では持ち主が麻薬中毒者であり、所有するアンドロイドに日常的に暴力を振るっていたそうであった。
それらを知ったとき、彼らの胸中は複雑であった。彼らはDG小隊でありその本分は人形を過激派などの人形に害を与える組織から守ることである。
だが今回の任務は人形とほぼ同じ存在のアンドロイドを、しかも人間に虐げられた存在を追わなければならない。しかも変異体は変異したさいに本来はない感情を模したものを持つのだから余計にやりづらいものである。
一応正当防衛もあるが殺人は殺人であり、罪を償わせるためにも捕まえるべきなのだが、この地区の性質からすると情状酌量もなしに解体されるのが見えていた。
「…事件解決のあと、ここの事をペルシカさんに伝えた方が良いかも知れないな」
「確かにな。I.O.Pとしても人形をこの地区に売り出す際に、この現状は看過できないだろうしな」
基本的には自治してる組織の方針に関して外部からの干渉は出来ないが、方針が他の地区に悪影響を過度に与えたりする場合はある程度干渉は可能である。
アンドロイドを扱う地区は主にこの地区とその周辺地区であり、周りの地区は普通に人形を取り扱ってるため、他からここに移住する際にはこの問題は見過ごせないだろうし、これを営業妨害と捉えてI.O.Pが訴えて間接的にアンドロイドの扱いを良くさせる事も可能ではある。
そんな事を言っていると、嘲るような声が聞こえてきた。
「よぉグリフィンのお人形ども。揃いも揃って事件の捜査か?」
現れたのはギャビン・リード刑事であったが、彼らはギャビンの事を嫌っていた。というのも彼はアンドロイドや人形を差別する人間であり、初めに会った時に
『おいおい、人形ってのは女ばっかと聞いてるがこりゃ何だ?男じゃねぇか。それとも、こんなナリでも実は女だったりしてんのか?ふん、I.O.Pとやらも物好きだな』
といったあからさまにこちらを馬鹿にしてる発言をした事に加え、グリフィンの指揮官全体に対する侮辱的な発言をして一悶着起きたためである。無論、その後彼はファウラー警部からお叱りを受けたが。
「そうですが、何の御用で?」
ライが丁寧に、だな僅かに不快感を示しながら答えるとギャビンはニヤついた顔で話し始めた。
「いや、お人形がプラスチック野郎をどう調査してんのか気になってな。情にかまけてこっちに牙を向ける時は言えよ?俺がしっかり『ゴミ掃除』してやるからよ」
「ッ‼︎」
その言葉にバラージ達が立ち上がろうとしたのをライは目で制して、貼り付けたような笑みでこう答えた。
「いえ、ご心配には及びません、ご忠告をどうも。リード刑事もここで我々と喋ってないで捜査などして早いとこ出世したほうがいいのでは?……
「コイツ…!」
その言葉にギャビンはライに掴みかかろうとするが、警部の姿が見えたので動作を止めるとクズが、と吐き捨ててどこかへ行った。
「…何故彼は刑事でいられるのか不思議だな」
「そうですけど…リーダー?まさかあんな事言うとは意外ですよ?」
「私とて彼の発言には腹が立ったのでね。とりあえず捜査はこの辺にして宿に戻るか」
ライ達は資料を片付け、彼らに用意された宿に向かっていく。
宿に入ってしばらくしたのち、コナーから連絡が入ってきた。
「アンドロイド絡みの殺人事件?」
『ええ、場所はこの後送信しますので先に現場に向かっててください。私はアンダーソン警部補を彼の自宅から連れて行くので少々遅れます』
「わかった」
その後、パソコンから現場についての情報が送られ確認すると、彼らは表情を曇らせた。
「『エデンクラブ』…アンドロイドを扱う性風俗店か…」
「何だってこんな所が…」
口には出さないが彼らの頭には一人の先輩人形がこれをどう思うかが思い浮かんだがそれを振り払い、彼らは現場へと向かっていった。
グリフィン本部
リバイバーは有り得ないものを見た顔でバレットに先程の出来事を話していた。
「バレット…あ、ありのまま今見た事を話すぜ…!俺はあの時、確かに死神のコアをブチ抜いて撃破したんだ…だがさっきペルシカのところに行ったら、奴がピンピンして彷徨いてた挙句、デェェス‼︎とか言って明らかにキャラが違ってたんだ……!」
「な、何を言ってるかわからないと思うが、俺も何が起きたかわからなかった…気が狂いそうだった。ミレニ○ムアイを埋め込まれたとか、カリンに似た声の紅茶好きの高速戦艦の力を手に入れたとかそんなもんじゃあ断じて無い、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…ついでにあいつは俺を見て叫んでたが、叫びたいのは俺の方だよ…何で生き返ってんだよ…⁉︎」
「万能者が蘇生させたあと無力化と人類とグリフィンに対する悪感情を消したってさっきペルシカから連絡来てたぞ。お前が会ったのはそれだ」
それを聞きあぁ…と何となく納得したリバイバーの傍らでバレットはある懸念がよぎっていた。
(死神…姉さんに会わなきゃいいんだが…)
死神の襲撃でEA小隊が壊滅したのは鉄血側の暴露でM82A1は知っている為、当然ながら妹であるペイロードが義体の交換を余儀なくされる程のダメージを負った事も知っており、下手人である死神に対して相当な怒りを持っていた。
仮のボディで幼女化したペイロードを見てある程度は怒りは収まったものの、無力化してるとはいえ死神本人に彼女が会ったらどうなるかわからない為、早めに説明しなくてはと考えるバレットであった。
※レストとサンダーがアップを始めました。
自分の中ではデース口調はあの二人の印象が強いですね。
ギャビン刑事は嫌われ役としては結構好きですね。
デトロイトは指揮官やってる身だとうわぁ…な事多いからなぁ…
さて、次回はエデンクラブ編やっていきますかね〜。
それと、『chaosraven』様の『裏稼業とカカシさん』とのコラボでバレット達DG小隊第一部隊がお邪魔してるのでぜひこちらからどうぞ。
https://syosetu.org/novel/194706/70.html