戸山家長男?   作:0やK

12 / 23
ババァーンと投稿(あこ風)


迷子の迷子のちーちゃん

 小学校最後の運動会が終わり、早一ヶ月。季節はもうすっかり秋となり、近いうちに冬服の出番になりそうな10月上旬。食欲の秋、読書の秋、スポーツの秋。秋は過ごしやすくて一番好きな季節だ。

 

 俺は現在、修学旅行で必要なものを買いに来ている。修学旅行は来週からで栃木県へ二泊三日の旅行だ。栃木県に旅行と言えば、日光東照宮や華厳の滝だろう。二泊三日もあれば、おやつもそこそこ必要だ。

 

 とはいえ、ただ持って行くおやつを買うだけではつまらない。おやつなんて近場の店で買えば済む話ではあるが、折角の機会だと思い、俺は一人で隣町へ電車に乗って行った。

 

 一人で?そう、一人でだ。母さんに隣町へ行きたいと言うと財布から千円札を2枚渡され

 

「んじゃ、これで。修学旅行のおやつもそこで買うんでしょ?残りはあげるから行ってらっしゃい」

 

 と送り出された。

 

 え?そこは一緒について行ってくれるんじゃないの?12歳とはいえ、いいのか?と思ったが違うらしい。母さんはただ単純に出かけたくないそうだ。車ならまだしも、態々歩いて駅まで行って電車に乗り、そこからショッピングモールまで行くのがだるいんだとか。

 

 

 おい、母親!

 

 その後、「まあ、あんたなら大丈夫でしょ」と謎の信頼を寄せられた。その信頼はどこから来るんだ?

 

 朝ご飯を食べた後、しばらくすると香澄と明日香が寝てしまったのでその間に家を出た。ちなみに折角の機会というのは、一人で出掛ける機会がそうそうないということだ。いつも出掛ける時は必ず香澄と明日香がいるからな。一緒に出掛けるのが嫌だと思うことは絶対にない。けど、時には俺だって一人で出掛けてみたくなることもあるさ。

 

 そんでもって俺はショッピングモールなうである。

 

 ショッピングモールに入り、2階へと移動する。1階は飲食店とスーパーなので目的のスーパーには帰りに行くことにする。2階へ上がるとプラチナブロンドの少女が目に入った。幼くとも人目を引く可愛らしい容姿をしている。その少女は先ほどから辺りをキョロキョロと何回も見回している。

 

 

 ふと、足を止めてどこか見覚えあるなと思っていると……。

 

 

 あっ!はぐれ剣客人情伝の!?ってそうじゃないそうじゃない。2年前にそれを見たからそっちのイメージが強い。

 

 

 やはり、彼女は白鷺千聖だ。最近はドラマを見ていないから気づくのに少し時間がかかった。しかし、どうして彼女がここに?

 

 

 白鷺千聖

 

 幼い頃から子役として活躍していた若手女優。また、Pastel*Palettesのベース担当でもある。芸能界に昔からいた為合理主義なリアリストで初期の彼女の態度はとても冷淡だった俺は記憶している。ストーリーが進んで行き、他のパスパレメンバーと打ち解けていくところはホッコリしたものだ。特に彼女の名言「お説教が必要かしら?」はゾクゾク来きたよ。決してドMではない。

 しかし、今俺の目の前にいる白鷺千聖は汚い世界を知らない、純真無垢な少女だろう。そんな彼女はこれから芸能界で生きていかねばならない。時には謂れもないことを言われ、ある時には陰口の対象され、またある時には理不尽な扱いを受けるだろう。いや、もしかしたら既にされているのかもしれない。

 

 これから自分の才能の限界と個性に卑下しなければいいんのが……。未来において彼女はそれを乗り越えた。乗り越えたと言うよりは吹っ切れた?そこまで行くのがどんなに辛いことか、俺には想像できない。それは芸能界に生きて行く以上仕方がないのかもしれない。

 

 

 (これから頑張れよ)

 

 

 そう心の中で思い、関わらず彼女の横を通り過ぎようとしたが、俺は足を止めてしまった。周りを見渡すと千聖の近くを通りかかった人たちはみな、気にせずに通り過ぎて行く。気にはなるが、近くに親がいるはずだ。そう思い、俺は関わらず通行人たちと同様に通り過ぎようとした。

 

「………」

「………」

 

 通り過ぎようとした時、その直前で彼女と目と目が合ってしまった。気づけば、その場で足が止まっており、彼女と見つめ合っていた。雑誌やテレビ越しでしか見たことのなかった彼女が今、目の前にいる。さすが、未来の若手女優。めちゃくちゃかわいい。ウチの姉妹も劣らず、めちゃくちゃ可愛いがな。数秒後、ハッとした俺は目線を彼女から逸らし、足を動かすことを再開したら……。

 

「ねぇ……」

「……ッ!?」

 

 彼女に左の脇腹あたりの服をくいっと引っ張られた。

 

「ねぇ……」

「俺のことかい?」

「うん、お兄さん」

 

 お兄さん。うん、いい響きだ。お兄ちゃんとは違った魅力がある。

 

「えっと……何かな?とりあえず、服を掴んでる手を離して欲しいな」

「うん、わかったお兄さん」

 

 わかってないじゃん。彼女の手は依然として俺の服を掴んだままで、それはまるで逃がすまいとしているような意思を感じた。

 

「キミは?」

「お母さんからなまえ言っちゃダメっていわれてるの」

 

 子役だから顔知られてる時点でアウトだと思うな。知ってる人は知っているし。

 

「じゃ、キミのことは何て呼べばいい?」

「ちーちゃん!」

 

 ちいちゃんのかげおk……おっと、これ以上はいかんな。最近、香澄と明日香に読み聞かせしたせいか頭から離れん。さて、ふざけた思考は止めよう。小さい頃は自分でちーちゃんって言ってたのか?気になるな。

 

「じゃあ、ちーちゃん。ちーちゃんはここで何をしてたんだい?」

「お母さんとみーちゃんがいないの」

 

 みーちゃん?誰だろう?

 

「はぐれちゃったの、そしたら、お兄さんが来たから……つい」

 

 ついで、俺は引き止められてしまったのか。このまま、さよならっていうのも気味が悪いしな。

 

「そっか、じゃあ一緒に探そうか?」

「うん!」

 

 香澄の1つ上だから小2か。身長は香澄より少し小さいかな。

 

「迷子センターや店員さんのところには行かなかったのかい?」

「うん、お母さんが騒ぎになるから行かないでねって」

 

 確かにな。迷子センターに行って、白鷺千聖ちゃんのお母さんはいませんか?なんて放送されたら大騒ぎになるよな。店員さんに言ってもたぶん、迷子センター直行コースだろうし。

 

 お母さんナイスです!今こうして、迷子になってるわけだが、ちーちゃんが迷子になったらどうするつもりだったんだろう?

 

「んじゃ、行こっか?」

「うん」

 

 このまま手を取らずに行くとまた服を掴まれそうなので、手を差し出すとちーちゃんは手を握ってくれた。こんな光景を香澄と明日香に見られたらある意味終わりで、想像するだけでゾッとする。

 

「それでちーちゃん。どこではぐれたのかな?」

「した!」

 

 え?

 

「下ってスーパーだよね?」

「そうだよ。気づいたらお母さんとみーちゃんがいなくなっちゃった。」

 

 

 あ、それ、ただ単にちーちゃんがフラフラしていなくなったパターンだな。ちーちゃんがいなくなった事に気づいたちーちゃんのお母さんは探そうとスーパーの中を必死に探すがちーちゃんも当然、動いてるから行き違いになる。それで、お母さんがスーパーから出たんだなと思ったちーちゃんは2階へと上がってきたわけだ。うん、これ絶対にちーちゃんのお母さんが下のスーパーで必死こいて探してるわ。

 

 俺も経験したことあるわ。もちろん、香澄がいなくなった。ここではないショピングモールで買い物に来た母さんと俺、香澄と明日香の4人。母さんから主婦の在り方の話を延々とされていたら、香澄がいなくなった。明日香は俺の後ろをトコトコついて来ていたから大丈夫だった,

 

 それより母さん、あなたは息子に何を語ってるんですかねぇ?

 

 自由奔放な香澄は我慢できずにどこかへ行く。香澄の性格からして、ここの店にいないと分かっていた俺は母さんにこの売り場にいてと言い残し、探しに行った。それはもう探した探した。全階探した。灯台下暗しとはよく言ったもので、香澄は1階のお店にいた。星がたくさんガラスについてるお店のね。ずっと眺めていたらしい。

 見つけた香澄を連れ帰ったら、時間は30分も経っていたらしく母さんに酷く心配をされたものだ。帰り、香澄は怒られてもニヘヘと笑ったままで全然反省してなかった。

 

 俺の苦労はいったいなんだったのだろうか?

 

 

 というわけでちーちゃんを下のスーパーへ連れて行く。やはりと言うべきか、スーパーの近くでちーちゃんのお母さんと思しきプラチナブロンドの髪の女性がワタワタと辺りを見回していた。その側には同じ髪色のちーちゃんを少し幼くしたような女の子がいた。みな、綺麗なプラチナブロンドの髪を持ち、マゼンダ色をした宝石のような瞳がさらに容姿を引き立たせおり、思わず見とれてしまう。

 

 この子がみーちゃんでちーちゃんの妹か。

 

 ちーちゃんと似ているがこの子の方がおっとりとした目をしている。歳は明日香と同じくらいだろうか?

 

「あっ!千聖!どこ行ってたの!?お母さん、探したんだよ」

 

 ちーちゃんのお母さんがこちらに気づき、みーちゃんを連れてやってくる。

 

「ごめんなさい」

「あら?そちらの人は?」

 

 俺に気づいたらしいちーちゃんのお母さん。

 

「うん、おにいさん!」

「お兄さん?あっ!ありがとうございます。ウチの千聖がご迷惑をおかけしました」

「いえいえ」

「ほら、千聖もお礼を言いなさい」

「ありがとう!おにいさん!」

「どういたしまして」

 

 と、そろそろお別れかなと思っていたら……。

 

「お兄さん?」

 

 ちーちゃんの妹であるみーちゃんが俺をキラキラした目で見つめてくる。

 

「お、おう!お兄さんだぞ?」

「おにいさん!」

 

 全く意味がわからないがみーちゃんは満足そうだ。

 

 

 誰カ説明求ム。

 

 

「こら、美聖!お兄さんに挨拶しなさい」

「しらさぎみさとろくさい」

 

 6歳?もう誕生日を迎えているなら明日香と同年代だな。

 

「俺は戸山光夜12歳だ」

「うん、おにいさん!」

 

 ダメだこりゃ、ウチの姉妹同様に相通ずるものがあるらしい。

 

「では、そろそろ」

「ええ」

「ほら、お兄さんにバイバイしなさい」

「お兄さん、バイバイ」

「バイバイ」

 

 母、姉、妹の順で言う。俺は手を振り返して白鷺親子とバイバイするのだった。

 しかし、ちーちゃんの妹みさとちゃんの「おにいさん」の意味はなんだったんだ?不思議な子だ。

 

 

 一言だけ言わせてくれ。

 

 

 ワケワカメ。

 

下の話でどれが好き? ※参考にさせていただきます。

  • 明日香の本音(6話)
  • はじめてのおつかい(7話)
  • 始まりのキラキラドキドキ(8話)
  • 戸山家の海水浴(9話)
  • はじめてのカラオケ(10話)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。