3、4月ぐらいには原作に入りたいですね……。
白鷺親子と別れた後、俺は1階のスーパーでおやつを800円分買った。飴、ガムは駄目らしいからチョコ、クッキーとかだ。でも、持ってくるの禁止と言うと誰かしら持って来るんだよな。他の階へ行こうとしたら、お腹がギュルルと鳴る。そっか、もうお昼の時間か。
ここのレストランで食事してもいいけど一人はなんか寂しいし、待つのも嫌だな。それに小学生が一人で入ると変な目で見られそうだ。他の階を見るのはまた別の機会にしよう。何より今の俺の口の中はパンの味だ。先ほど、パンコーナーでパンを眺めていたせいだろう。できれば焼きたてのパンが食べたい。せっかくここまで来たんだ、パン屋に行こう。
しかし、場所を知らない。スマホがあれば、GPSで一発なのにな。父さんにスマホ欲しいと言ったら、スマホは中学生からと言われた。いつ買ってくれるかまで教えてくれなかった。そうするとスマホは早くてあと一年、遅くて三年か。あればいろいろ便利なのにね。駅に着いてから駅員さんに近くに商店街ありませんか?と尋ねたところ、ここから一駅先に地蔵通り商店街ってとこあるよと親切に教えてくれた。
その後、電車に乗って一駅先、商店街のある駅に着いた。改札口を出て、駅の入り口付近にある地図の看板を見る。意外と遠いな。まあ、徒歩10分ってとこか?10分ぐらい歩くと商店街が見えてきた。自分が想像していた商店街よりも大きい。まあ、ガルパのマップでは一部分だけだったからな。商店街名は地蔵通り商店街。へぇ、この商店街、地蔵通り商店街って言うのか、初めて知ったわ。ここに『羽沢珈琲店』『北沢精肉店』『やまぶきベーカリー』があるのか。
商店街にて歩くこと数分、気づけば羽沢珈琲店の前だ。ほぉ、ここが羽沢珈琲店ですか。いつか入ってみよう。今、入らないのか?と思うだろう。入ってもバイトの人と彼女の父親しかいないし、何よりお金をたくさん持っていない。喫茶店は小中学生が気軽に入れる場所でもない。それに値段も安くはないのだ。まぁ、当然にそれに見合ったものが出てくるのは確かであろう。
でも、珈琲の味がすごく気になる。ゴクリ……。やっぱりやめておこう。お金がなくなる。さて近くにやまぶきベーカリーがあるはずなんだが。ん?あった!向い側にあると思いきや、少し離れた数メートル先にやまぶきベーカリーはあった。ガルパのマップだと3人の家は近いはずなんだが、ここではそれぞれ少し離れているらしい。沙綾とはぐみとつぐみ、人とも同じく地区のはずなのに幼馴染ではなく、知り合い程度でしかない。うーん、分からん。
もうガルパの記憶が大まかなストーリーと人物名ぐらいしか覚えていない。年々、薄れて行く前世の記憶。それもそのはず、戸山光夜として生きて、10年以上だ。前世の記憶が曖昧になっていくのは至極当然のことだ。とりあえず、『羽沢珈琲店』『北沢精肉店』『やまぶきベーカリー』の場所は把握した。うん、問題なし。北沢精肉店には原作が始まるまでは行くことはないだろう。行ったらはぐみの母親に絶対、はぐみ呼ばれるわ。香澄より先に再会しても意味ないしな。
ではでは、やまぶきベーカリーへレッツゴー!
扉を開くとパンの甘い甘〜い香りが俺の鼻孔をくすぐる。すごくいい匂いだ。唾が止まらない。おぉ、これが伝説のチョココロネか!何にしようか。パンをじっと眺めて悩んでいると、視界の隅から視線を感じた。レジの方からか?視線が気になった俺はバッと素早くレジの方に首を向ける。しかし、レジの方には誰もいない。気のせいか?と思い、またパン選びに戻る。
ジーーー
やはり気のせいではないようだ。もう一度、バッとレジの方に振り向くが誰もいない。そして、また視線をパンに戻す。
ジーーー
三度目の正直。今度こそと思い、素早く視線のする方へ向ける。だが、いない。視線が気になる俺はトングとトレイを持ったままレジに近づく。
すると……
「あっ!?」
ひょこりとレジの下から少女が出てきた。シャンパンピンクもとい薄柿色のポニーテールをした少女だ。うん。まあ、来れば会うとは思ってたよ。今日会うとは思いもしなかったが。彼女はもうこの年からお手伝いしてたのだろうか?
山吹沙綾
Poppin'Partyのドラム担当だ。ポピパのまとめ役でもある。面倒見が良く、皆から頼りにされている。オカンレベルで。後に香澄のよき相談相手となる。ある事情によりバンドを止めてしまったが、香澄により自ら蓋をしていた『バンドの情熱』、本当に自分がやりたいことを思い出す。
ところで、なんでこの
ジーーー
俺は負けじと彼女、山吹沙綾をジーと見つめ返す。
ジーーー
ジーーー
山吹沙綾VS戸山光夜、ここに開幕!
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
見つめ合うこと数分。ついに彼女は視線を逸らした。俺の勝ち!近くに人がいたら間違いなく怪しい人だ。彼女の顔は真っ赤かで、話しかけようとした時、レジの奥から天板を持った男の人が来た。天板には焼きたてのパンが乗っている。焼き立てなのかとてもいい匂いがする。
「ん?どうした?沙綾?さっきからそこにいて何を……ほぉ」
「おとーさん!」
出てきたのはやまぶりベーカリーの店主であり、山吹沙綾の父親である山吹亘史だろう。そんな彼、亘史さんは焼きたてのパンをさっさと陳列させて、レジに戻ってきた。
「べ、別になんでもないよ」
「隠さなくてもいいっていいって、さっきからレジの方で何をじっと見つめているのかと思ったが········」
亘史さんは俺を一瞥すると、納得したかのように何度もうんうんと頷いている。
「このカッコイイお兄さんを見てたんだな。お父さん、納得納得。沙綾はおませさんだなぁ」
「お、おませさん?」
「あ、わからないよな。気にしないでくれ」
「う〜、おとーさんのバカ!?」
彼女は俺をチラッと見ると、店の奥へと走り去って行った。
「あー、すまんな。あそこまで沙綾が男の人をじーっと見るなんて初めてでな。凄い事なんだぞ?」
「は、はぁ」
いきなりのことで返事が吃る。
「それで君は?せっかくだから名前聞いてもいいかな?」
「え?あ、はい。戸山光夜です」
「おお、ありがとう。戸山光夜くんね。君はうちの店に来たの初めてかい?」
「ええ、そうです」
「そうかそうか、うちのパンは美味しいから是非これからも買いに来てくれ」
「はい、また来ます」
その後、5分ぐらい言葉を交わし、俺はパン6つを買ってやまぶきベーカリーを出た。メロンパンとあの伝説のチョココロネを5つ。途中、メロンパンとチョココロネ1つは美味しくいただいた。残りは家族の分だ。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
そろそろ帰ろうと思い、最寄りの駅へと向かう。時刻は既に午後3時を回っている。朝9時に家を出たとはいえ、流石に6時間近く歩くのは疲れた。体力的にも限界だ。用も済んだことだし、香澄と明日香が母さんを困らせてないか心配だ。家に着き、空を見ると夕焼けが暗闇に包まれるところだった。行く前、母さんが鍵持って行かなくていいわよと言っていたからそのままガチャッと玄関のドアを開けると……。
ガチャン
即行で玄関を閉めた。え?見間違いかな?玄関で香澄と明日香が正座していたんだけど。見間違いだろうと信じて、もう一度玄関を開ける。
開けたら……
「あっ!お兄ちゃん!おかえり!」
「おかえり」
正座している香澄、明日香がお帰りと飼い主を待っていたかのように擦り寄ってくる。
「あ、ああ。ただいま」
忠犬かよ!あっ、でも香澄は猫だよな。自由奔放だし、いずれ猫耳つけるし。明日香は、うーん……明日香も猫だな。猫耳カチューシャ絶対似合う(確信)きっと、尻尾があったらブンブンと左右に揺らしていただろう。
そんな事を考えていると……
「お兄ちゃん早く!早く!」
香澄が俺の腕をリビングへと引っ張って行く。リビングに入ると床で母さんが倒れていた。
「キャハハ、お母さん死んでる」
「お母さん、大丈夫?」
へんじがない。ただのしかばねのようだ。
「勝手に殺すんじゃないわよ。誰のせいで……」
あ、動いた。言いかけた言葉から察するにこの二人がやらかしたのだろう。香澄は言わずもがな。しかし、明日香この
今回は明日香もやらかしたのだろう。
「とりあえず、光夜お帰り」
「ただいま母さん。なんか二人がやらかした?」
「カレーを一緒に作っただけよ。詳しくは聞かないでちょうだい」
本当に何があったんだ?
「それはいいとして、あと1時間くらいしたらお夕飯にするわよ」
「わかった」
俺はやまぶきベーカリーと書かれた紙袋を母さんに渡すと俺以外の家族分と言う。紙袋を渡した瞬間に母さんは中身が気になるのか確認するとチョココロネを1つ取り出し、パクッと食べた。そして、「おいひぃ」とどこぞのチョココロネ大好き少女を彷彿させるような事を言う。
おいおい、もう食うんかい!?
俺が自分の部屋に行こうとすると当然の如く、その後を香澄と明日香がついてくる。戸山家に鍵付きのドアはトイレしかないため、俺のプライベートなんてお構いなしに香澄と明日香が部屋に毎日やってくるのだ。
本当に猫みたいだなぁ……。
今はまだ俺が朝、起こしているが近いうちに彼女たちが俺を起こしてくれるのだろうか?妹といえば、理想のシチュエーション一つに妹が「お兄ちゃん、朝だよ?起きて」というものがある。その中で特にしてもらいたいのは、妹が上に跨ってユサユサと揺らして起こしてもらうというものだ。
ん?でも、これって最初はエ○ゲのテンプレシチュエーションじゃなかったっけ?それがいつのまにかアニメや漫画、ラノベのテンプレになってたけど。ま、こんなことどうでもいいわ。夕飯のカレーはとても美味しかったです。香澄と明日香は何手伝ったの?と聞けば、「皮、切った!」というではないか。え''と吃りそうになった。よくよく考えてみれば小学1年生と幼稚園年長の少女に包丁なんて持たせられない。せいぜいピーラーを使わせられるぐらいではないか?ピーラーも十分危ないけどね。
やらかしたことはだいたい察せた気がする。まあ、何にせよ怪我がなくてよかったわ。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
その日の夜、白鷺家では。
「またお兄さんと会いたいな·······」
ぼそりと白鷺千聖は呟く。
「あら?千聖がそんなこと言うなんて珍しいわね?」
その呟きを聞いていたらしい彼女の母、白鷺美優。芸能界で子役として活躍する千聖は仕事上、様々な人と関わる。人気俳優や女優はもちろん、同年代の子もだ。そんな中、千聖は「また会いたい」と一度たりとも言ったことがなかった。話すことは演技のことばかりだ。
しかし、だ。
そんな千聖が
「確か、戸山……こうや君だったかしら?」
「うん、お兄さん!」
「ふふっ、いつかまたお兄さんと会えるといいわね」
「うんっ!」
「そのためにはお仕事、頑張らなくっちゃね?お兄さんにカッコいいところ·······千聖の場合はカワイイところかしら?」
「うん!がんばる!」
そんな最中、千聖の妹、白鷺
何処と無く香澄と同類の匂いがするのは気のせいだろうか?
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
その日の夜、山吹家では。
「そういや今日、沙綾が男の子をじーと見つめていてなぁ……」
山吹ベーカリーの店主、山吹亘史が口を開く。
「お、おとーさん〜!?」
それに顔を真っ赤にして声を上げる少女、山吹沙綾。
「あらあら、沙綾が?」
頰に手を当て、おっとりした口調で話す沙綾の母、山吹千紘。
「ああ、最初はレジの方で何やってんだろうと思ったら……」
「思ったら?」
「男の子を見ていてなぁ……」
恥ずかしいのか沙綾の真っ赤な顔から湯気が出ている。
「それでどんな男の子だったの?」
「ああ、カッコいい男の子でな、軽く言葉を交わしたが礼儀正しい子だったぞ」
「まあ、沙綾ったらおませさんなのね」
「また会えるといいな沙綾」
「う、うん」
恥ずかしながらも返事をする沙綾。
「中学1年生ぐらいか?んー、今度来たときに聞いてみるわ」
「えっ!またくるの!いつ?ねえ、おとーさん!いつくるの!」
「おー、すごい食いつきようだな」
「なら、沙綾。お手伝いしてみたら?」
「お手伝い?」
「ええ、お父さんのお手伝いも出来て、沙綾の会いたい人……年上のカッコイイ男の子だからお兄さん?に会える。一石二鳥よ」
「いっせきにちょう?」
「1つで2回お得できるってことよ」
「じゃあ、さーや。いっせきにちょうするー!」
「おう、頼むぞ沙綾」
その後、また来た光夜とまともに話せず。恥ずかしくて逃げたり隠れたりしたせいで話せるまで時間がかかったそうな。
下の話でどれが好き? ※参考にさせていただきます。
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明日香の本音(6話)
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はじめてのおつかい(7話)
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始まりのキラキラドキドキ(8話)
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戸山家の海水浴(9話)
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はじめてのカラオケ(10話)