戸山家長男?   作:0やK

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この話は前作とそこまで変わってないです。
設定はオリジナル。気になる方は前作を。
もうすぐ原作かな。


決意

 文化祭、振り替え休日の夜。

 

 

「父さん、母さん。俺、決めたよ」

「「………」」

「俺、芸能界に行きたい」

 

 

 

 香澄と明日香が寝静まった頃。俺は折を見て、話を切り出した。

 

☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆

 

 高校に入学して1週間ほど経った頃だ。帰宅途中に自販機で珈琲でも買おうとしたら突然、声を掛けられたのだ。

 

「君、芸能界に興味ない?」と。

 

 スカウトは詐欺が多いと思って始めは警戒していたのだが、名刺を貰い、○△プロダクションと書かれた名刺を見てから警戒は杞憂に終わった。○△プロダクションといえば大手芸能事務所であり、人気子役、白鷺千聖の所属している事務所である。名刺を貰って○△プロダクションと書かれたのを見て、よく叫ばずにいられたと思うよ。俺の中のスカウトマンのイメージはスーツを着ていていかにもプロデューサーって感じだったが、普通に私服だった。よくよく考えてみればスーツ着てスカウトしてる方が逆にダメだな。目立つし、声を掛けづらい。でも、この時は興味がなかったから軽い気持ちで考えておきますと言い、その場を去った。

 

 思えば、この名刺を貰った時から俺は考え始めてたんだ……未来を、自分はどうすればいいのかを。胸にモヤモヤした気持ちを抱えたまま、そんなこんなと過ごしているうちにひと月が過ぎ、文化祭のステージに立つまでに至る。

 

 

 

 結局、自分自身に問いかけるだけでよかったのだ。

 

 

 

 

 大切なのは『自分はどうすべきか』ではなく、

 

 

 

 

 『自分がどうしたいのか(・・・・・・・・・・)

 

 

 

 

 ということに……。

 

 

 

 

 自分の気持ちに気付いたとはいえ、俺はまだスタート地点にすら立っていない。芸能界に行くべきか行くべきでないか。入れたとしても芸能界は狭き門、売れなきゃ生き残れない世界だ。所属はしていてもデビューできない人はごまんといる。ただ、やる(やりきる)やらない(やりきらない)のかこれが大切だった。やらない後悔よりやる後悔とはよく言ったものだ。自分にその可能性があるなら、少しでも信じてみたい。

 

 

 

 だから、俺は芸能界に行くと決めた。

 

 

 

 

☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆

 

 

 

 SPACEから出た俺はとある番号に電話を掛けた。

 

 

『はい、もしもし。こちら○△○芸能事務所です』

「もしもし、先月○○でスカウトをしていただいた戸山光夜と申します。芸能界のお仕事に興味があったのでお電話させていただきました」

『はい、スカウトなされた担当の方は分かりますか?』

「はい、○○さんという方です」

『少々お待ちください』

 

 

 

 貰った名刺の名前を告げる。

 

 

 

 

 〜〜〜〜〜♪

 

 

 

 

 保留音が流れる。2分後、保留音が切れ、相手と電話が繋がった。

 

 

 

『もしもし、○○です』

「4月に○○で声を掛けていただいた戸山光夜と申します。芸能界のお仕事に興味があったのでお電話させていただきました。」

『○○?ん?4月、4月。あ〜、うん、間違ってなければ制服着てて、君が自販機で飲み物を買おうとしてた時に声を掛けた子であってる?』

「はい、そうです」

『いやぁ〜。嬉しいね。君の他にも数人、声を掛けたんだけど、断られてしまってね。おまけに名刺すら受け取ってくれないときた。』

「は、はあ」

『もう2ヶ月も経ってるからダメかぁと思ってたところだよ』

 

 

 なんか軽いな……。まあ、反対に堅い人の方はイヤだけどね。

 

 

『おっと、すまない。そういうのは直接会ってから話そうか。いきなりだけど、今日の午後は空いてる?』

「はい、大丈夫です」

『では、羽沢珈琲店ってところで午後2時に』

 

 

 ………えっ?羽沢珈琲店ッ!?

 

 

『おっと、名前だけじゃ分からないよな。「いえ、分かります」え?』

「早○田駅から降りて、地蔵通り商店街にある羽沢珈琲店ですよね?」

『あ、ああ。詳しいね。なら、話は早い。そこに今から5時間後の午後2時にそこで待ち合わせしよう』

「はい」

『じゃ、また午後に』プツッツーツー 

 

 

「……ふう」

 

 

 羽沢珈琲店と聞いて、少し興奮してしまった。なにせ小6時に入ろうとしてから、今の今まで行かなかったからな。知ってるとこでよかった。

 

 

 さて、羽沢珈琲店、初入店と行こうじゃないか。

 

 

 

 

 午後2時前、少し待つとスーツで綺麗な身なりをした男がやって来た。改めてみるとスカウトされた時とは違う印象を受ける。何というかダンディだ。

 

「やあ、君だってすぐに分かったよ。話をする前に入ろうか?」

 

 

 入店。

 

 

 ああ、珈琲のいい匂いだ。

 

 

「いらっしゃいませ。空いてるお席へどうぞ」

 

 

 バイトと(おぼ)しきウェイトレスさんが言う。これがあと5年もすれば、イヴとつぐみがウェイトレスをするのか……。

 

 イヴの「へいラッシェーイ!!なに握りやしょーか!」を見てみたいわ。

 

 ウェイトレスか、香澄と明日香が着ているとこ見てみたいな。メイド服でもよし。メイド服?あっ、メイド服なら明日香着るやん。

 

 

 未来で絶対、文化祭行こ(使命)

 

 

「ご注文はお決まりですか?」

「私はカプチーノで」

「カフェラテを……」

 

 メニューを決めて話を始める。

 

「さて、話を始めようか……」

 

 

 

 ………ん?

 

 

 桃色、赤色、黒色、灰色、茶色……。

 

 

 

 視線は目の前にいる○○さんだが、視界の隅にぼんやりと5人の少女たちが入る。

 

 

 

 

 ………え。

 

 

 

 ひまり、巴、蘭、モカ、つぐみ。未来のAfterglowだった。

 

 なんかこっち見てない?こっち見んな。気になっちゃうだろ。あこちゃんいなくてある意味助かった。いたら、「闇のお兄ちゃん」待ったなしですわ。

 

 

 

「………という事なんだ」

 

 

 

 やばい。話、全然聞いてない。

 

 

「はい」

「スカウトといっても名ばかりだから、オーディションを受けてもらうことになる」

 

 

 

 1時間後

 

 

「………他に質問とかある?」

「大丈夫です」

 

 

 最初は彼女たちの視線が気になったが、途中から話を真剣に聞いた。

 

 話によるとオーディションは一次審査の書類審査、二次審査の会場面接。所属オーディションという事で一番重要なのが場面接なのだと言う。スカウトされた人も一般の人も同じオーディションらしい。スカウト組は書類審査がほぼパスされるようなものだが、落とされることもあり。

 

 

「君が芸能界に興味持ってもらえて嬉しいよ。これからどうするかは君次第だ」

「まずは両親と話し合って決めたいと思います」

「……そうか。オーディションで待ってる」

 

 

 

 店を出た後、彼はそう言って去って行った。

 

 

 

 

 

 

☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆

 

 

 

 

 

「父さん、母さん。俺、決めたよ」

 

 父さんと母さんにスカウトされたこと、オーディションのこと……そして、今日、話を聞いて来たことを打ち明けた。

 

 

「俺、芸能界に行きたい」

「「………」」

 

 

 こちらを静かにじっと見つめて来る二人。

 

 

「………本気なんだな?」

 

 

 まず口を開いたのは父さんだった。

 

 

「……ああ」

「……そうか、なら俺からは何も言わない。ちゃんとした話は受かって所属するとなってからだ。そうじゃないと話にもならないからな」

「分かった」

 

 母さんは……

 

 

「光夜が決めたことなら何も言わないわ。ただ、光夜が決めた道を親として、母親としてその背中を押すだけよ。応援してるわ」

 

 

 

「父さん、母さん……ありがとう」

 

 

 

 香澄と明日香には言わないつもりだ。所属できるかどうか分からないし、反対しそうだ。

 

 

 

 

 

 

☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆

 

 

 

 

 

 羽沢珈琲店

 

 

「なあ、あの人って前に……。」

 

 入店して来た男2人組を見て、巴が指をさして言う。それにつられるかのように蘭、モカ、ひまり、つぐみが見る。

 

「あっ、あの人って……」

「うん、あこちゃんが迷子になった時の……」

 

 光夜にひたすら頭を上下させて謝っていた少女、つぐみが気づく。少し遅れてひまりが言う。

 

「……ッ!?」

「あ〜、これはアレを思い出してますなぁ〜」

 

 何かを思い出したかのように顔を真っ赤にする蘭。その理由が分かったモカ。全員、光夜のことは覚えているようだ。

 

「蘭ちゃん?大丈夫?」

「……ぅう」

「これはダメですなぁ〜♪」

 

 つぐみが声をかけるも蘭は依然として顔を真っ赤にしたままだ。モカはモカでこんな状態の蘭を見て、楽しんでいる。

 

「おい、今の聞こえたか?」

「え、なになに!何だって?」

 

 聞き耳を立てていた巴が他のみんなに聞く。ひまりは勿体ぶるなよと言わんばかりに巴に近寄る。

 

「ひ、ひまり、近い」

「ご、ごめん。それで?早く!」

「あ、ああ。あの人·······戸山さん、なんか芸能界に誘われてるっぽいぞ」

 

 

「「「「………えっ!?」」」」

 

 

 そんな感じで巴たちの会話は続いていった。その中で蘭だけは、光夜が羽沢珈琲店から出た後も顔が真っ赤だったそうな。

 

 

 

☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆

 

 

 

 

 芸能界へ行くと決めてから2カ月後。

 

 

 オーディションに合格して、○△○芸能事務所に所属が決まった。

 

 

 

 所属オーディションの開催日は思っていたより早くて、自己紹介なるモノの自己ピアールを書くのに悩んだ。とはいえ、所属オーディションまでにこれといった事は何もしていない。一次審査は本当に難なく通過した。これはある意味、他にも通過した人が多いという事だろう。二次審査は面接で、一次審査の時に書いた自己紹介アピールなるモノを5人の面接官たちが見て、質問をする。最初はグループ4〜5人で面接するのかな?と思っていたら十数人ぐらいしかいなくて驚いた。どうやら一次審査の書類選考で多くの人が落とされているらしい。

 

 そして、まさかの1人ずつの面接である。ふぇぇ、5対1なんて圧迫面接だよぉ。

 

 「君は芸能界で何がしたいのかね?」と聞かれた時、「キラキラドキドキしたいです!」って頭に思い浮かんだのはなんでだろ?言ったらヤベェやつだ。

 

 当然言うはずもなく「ステージに立って歌いたい(やりきりたい)です!」って答えたよ。下手な言葉(建前)をつらつらと述べるより正直に思っていることを話した。それはつまり歌手になりたいと目の前の面接官たちに言っているようなもので、その後は圧迫面接というに相応しい嫌みな質問をされた。

 

 最後に「自己PRを3分間して下さい」と言われた時は本気で焦った。えっ、自己PR!?3分もなんて聞いてないんですけど!一次審査で書いた自己PRの内容だと1分どころか10秒も待たない。焦っていろいろと頭がこんがらがった結果、俺は歌うことにことにした。席から立ち、アカペラで歌い始める。歌い終わると軽く拍手を送られた。間奏なしでも3分は軽くすぎてしまったが、特に問題はなかったようでそこで面接は終了した。

 

 帰宅してから、俺はふと気になりスマホで「オーディション面接 自己PR」と検索してみたら。出てくる出て来る。自己PR話す内容は自分の短所を入れつつ、長所をたくさん語れ?書類の方にも自己PRめちゃ書く?いやいや、そんな書くことないから!ということは俺の他に面接した人は有る事無い事を話していたのか。「私の長所は○○です」の受け答えしろと?そんな模範的回答で受かるほど芸能界甘くないと思う。

 

 次に「自己PR 歌う」で検索する。自己PRで歌ったり、演技するのは定番なのだそうだ。あ、定番みたいでめちゃくちゃほっとした。それもそうか、何が悲しくて自分の長所と短所を淡々と語らねばならんのだ。なんか納得。他の人も歌うか演技してたのね。

 

 二次審査の面接から1週間後、俺の携帯に合格という知らせが舞い込んで来るのだった。その日の夜に父さんと母さんに合格したと告げたら、二人は物凄く喜んでくれた。それから両親と共に事務所に行き、事務所登録を済ます。それと同時に契約の話をされ、高校卒業までにどうなるか分からないということで3年の契約を結んだ。

 

「やっとスタート地点ね」

「ここからが本当の勝負だぞ」

 

 

 本当にここからが勝負だと思う。なぜなら、この大手芸能事務所と言われる○△プロダクションは少し特殊なのだ。

 

 

 事務所登録の時に聞いた話だと・・・

 

 

 

 一般的な芸能事務所の所属するまでは

 

 

 一次審査(書類選考)

   ↓

 二次審査(面接)

   ↓

 三次審査(演技など)

   ↓

   所属

 

 

 

 一次審査は多くの者が通過するものの二次審査の面接で落ちる。あまりにもオーディションを受ける人が多いため、三次審査までやってふるい落とすのが普通だ。モデルならモデルのオーディション、歌手なら歌手のオーディション。各分野のオーディションが別々なのだ。

 

 

 

 それが○△プロダクションでは・・・

 

 

 一次審査(書類選考)

   ↓

 二次審査(面接)

   ↓

   所属

 

 

 であるのだ。

 

 

 

 ○△プロダクションでは一次審査で多くの人を落とす。それはもう容赦なく。そして、二次審査でも審査員の求む基準に達していなかったら落とす。厳しめではあるが、ある程度の最低基準を満たさないとダメということだろう。モデルや歌手、俳優のオーディションとかの分野に分けず、ただの所属をかけたオーディション。このことから少しでも芸能人の卵を確保したいことが分かる。

 

 しかし、あくまでこれは所属オーディションであり、芸能人の仲間入りとなるわけではない。芸能人となるチャンスが与えられるだけであり、それを掴み取るのは己の運と実力だ。○△プロダクションでは、所属してから本人の希望するところに割り振りされる。モデルならモデルの勉強とレッスン、歌手なら歌とダンスのレッスン。所属後にすぐに仕事が舞い込んで来ることはないので、チャンスが来るまでは養成所などで自分のスキルを磨くという。

 

 

 こうして無事に所属し、俺の芸能界デビューに向けた日々が始まるのだった。

 

 

 

 

 

☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆

 

 

 

 

 

 

 所属してから1ヶ月、歌とダンスのレッスンをしている。歌はビブラートを自然な感じで出すことを目標にして頑張っているところだ。特にダンスは悪戦苦闘中、難しいよぉ〜。レッスンがある日は、香澄には部活や習い事があると嘘を言っている。所属してるのバレたら大変だ。明日香はどうしたって?

 

 

 

 

 明日香に………バレました!うん、それはいろいろとね(白目)。結局、すべて話すことになったし。

 夏休み最後の週の日曜日。事務所の方から話があるということで、俺は事務所に来ていた。エントランスで担当の人を待っていると、プラチナブロンドの髪を靡かせた少女がこちらに近寄って来る。

 

 

 

 

 

 ああ、彼女だ。

 

 

 

 

 

 

「お、お兄さん!?」

 

 

 

 

 

 実に4年ぶりの再会かな?再会を喜ぶ前にまずは……

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶり、ちーちゃん」

 

 




芸能事務所の名前

原作直前又は開始後に光夜と関わりのあるキャラの回想を入れる?

  • 入れて下さいお願いしますなんでもし(ry
  • 入れて
  • あったりめぇだ
  • 作者が決めて
  • いらない

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