戸山家長男?   作:0やK

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予期せぬ邂逅

 うん、どうしてこうなった?

 

 現在、俺の心の中はその疑問で埋め尽くされている。何度、その疑問を抱こうともこの事実が変わることはなく、ただ目の前の光景を受け入れるしかない。

 

 それは……うちに白鷺千聖こと、ちーちゃんがいることだ。

 

「「ず、するい!」」

「ふふ、ほんとにお兄さんのことが大好きなのね」

「「大好きっ!!」」

「ふふふ」

 

 先ほどまで「お兄さんってどういうこと!?」「お兄さんはお兄さんよ」と互いに譲らない言い争いだったのに、いつの間にか俺について話して盛り上がってるし……。それにしても香澄とちーちゃん、2人が出会うのがあまりにも早すぎる。

 

 

 確か原作で香澄とちーちゃんが出会うのは、メインストーリーでライブハウス『CiRCLE』のイベントを成功させるためにバンドの出演者を探すところで各バンドのメンバーと出会う話だったはずだ。でも、メインストーリーで他のメンバーと初対面なのは矛盾が生じる。矛盾なのはメインストーリーとイベントストーリーの時系列だ。花見や天体観測イベントなど天体観測は何月なのかははっきりしないが、会話内容からまだ初めの方。花見イベントに限っては4月。それも入学してまもなくだと思われる。花見イベントCiRCLE以外で云々みたいな会話があり、そう考えると完全に時系列がおかしいことが分かる。ポピパが初めて5人として結成するのは文化祭であり、その前にいろいろと結成するまでに話がある。

 

 

 それがポピパ0章であり、アニメ(原作)の内容だ。

 

 

 メインストーリーの方で香澄がRoseliaを思い出す時に、グリグリのこともちゃんと言っていたからライブハウス『SPACE』が閉まった後の話であることは間違いなさそうなのだが、イベントストーリーの時系列のせいでごちゃごちゃである。時系列どうなってんだよって話だ。

 

 結局、そのあたりはいくら考えても解決する術がないので、ゲームのイベントだったということで無理矢理理解した。だって、わかんないんだもん。というか以外に覚えているものだな。話とその会話の内容はある程度覚えているのに、曲の方はもうほとんどうろ覚えだ。

 

 それにしても明日香にちーちゃんを呼ばれるとは思いもよらなかった。まさに青天の霹靂というやつだ。いや、俺が携帯をそのまま放置したのが悪いんだけどさ。まあ、戸山光夜という存在が影響を及ぼすことは分かってはいても香澄たちとちーちゃんの邂逅はこう、斜め上というか変化球というか……つまり、予測不可能だったわけですよ。俺が芸能界に行く、ちーちゃんと同じ事務所という時点でその可能性を視野に入れておくべきだったのかもしれないな。いや、元々その考えですら至っていないから視野に入れるも何もないな……。

 

 何より一番驚いたのは、明日香にバレて芸能界やその他諸々話すことになっただけではなく、まだ話すつもりもなかった香澄にまでバレたのだ。そりゃあバレるよね、明日香に話したんだから。釘も刺していないし。きっと俺がちーちゃんと電話している間、香澄に話したに違いない。遅かれ早かれ香澄には話す必要があったし、話す機会を得たと思えばいい。

 

 

「はぁ……」

 

 

俺はため息を吐きつつ数日前のことを振り返る。

 

 

 

 

  ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆

 

 

 

 俺は明日香に事情を話した。

 

 

「うん、わたしは応えんするよ!」

「ありがとう、明日香」

 

 

 てっきり俺は「ダメ!」と頑固反対されると思っていたのが、それは杞憂だったようだ。明日香は俺の芸能界入り、夢を応援してくれた。話を終えると明日香はリビングから出ていった。パタパタと階段の音がするから、2階へ行ったのだろう。

 

「さてと……」

 

 俺は携帯を手にし、ちーちゃんに電話をかける。ちーちゃんは後でかけると言っていたが、メッセージより直接話した方が手っ取り早い。ワンコールでちーちゃんは出た。

 

「はい、もしもし」

「もしもし、ちーちゃん?今、大丈夫かな?」

「あ、お兄さん!大丈夫ですよ」

「さっきはごめんね、電話に明日香が出ちゃって……」

「いえ、わたしもお兄さんから香澄ちゃんと明日香ちゃんの話を聞いてから一度、話してみたいと思ってたんですよ!」

「Oh……」

「……?大丈夫ですか?」

「あ、うん。大丈夫だよ」

「それで今度、ちゃんとお話したいので香澄ちゃんと明日香ちゃんに会わせてくれませんか?」

「え?うん、いいけど……」

 

 

 軽く雑談した後、会話は終了した。特に断る理由もなく、会わせる約束をした。元は俺が携帯を放置したことが原因だし、明日香がちーちゃんと話をしてる時点である意味詰んでいるようなものだ。ただ、これを香澄にどう説明したものか……。

 

 すると、バンっとドアから大きい衝撃音が鳴り、ぐいぐいと香澄が詰め寄ってきた。鬼気迫る勢いだ。

 

「お兄ちゃんっ!?」

「うぇ!?」

「どういうこと!?」

「あ〜」

「お兄ちゃん、芸能界行くの?ちーちゃんって誰?どうして家に来るの?」

「あ〜」

「お兄ちゃんっ!!!」

「わかった!わかったから落ち着いてくれ。ちゃんと説明するから」

 

 俺は香澄には芸能界入りやちーちゃんのことについては何も話していない。数ヶ月前までは香澄が反抗期とも呼べる態度だったからさ。反抗期の理由は聞いても「教えない」の一点張りであった。前ほどベタベタはしなくなったが、またお兄ちゃんお兄ちゃんと呼んで慕ってくれるのは嬉しい。最近は明日香の反抗期がいつ来るかビビりながら過ごしてるのは内緒である。

 

「それでどうしてお兄ちゃんは芸能界行きたいの?」

「それは……」

 

 俺は香澄に、端折らずにきちんと説明した。きっかけから現在に至るまでを。

 

「そっかー、そうなんだ」

「………」

「お兄ちゃん。別にわたし、怒ってるわけじゃないんだよ?でもね、何も言ってくれないことが悲しいの」

「はい、すみません」

「お兄ちゃんがお姉ちゃんに説教されてる」

 

 2階から降りてきたらしい、明日香が口を挟む。

 

「お兄ちゃんはあっちゃんがわたしに教えてくれなくても、話してくれた?」

「ははは……」

「お兄ちゃん?」

 

 香澄の声音が低くなる。

 

「うん、話すつもりはなかったよ」

「なんで?」

「反対されると思ったから」

「お兄ちゃんの夢だよ?応えんしないわけがないよ!」

「それってつまり……」

「うん、わたしも応えんするよ!当たり前だよ!」

「ありがとう」

「ま、わたしはお姉ちゃんはそう言うと思ってたけどね」

 

 俺は安堵した。明日香同様、本当に杞憂に過ぎなかった。

 

「でもね、白さぎちさとさんのことはダメだよ」と香澄が言う。話が終わるかと思いきや終わらない。デスヨネー。

 

「うん、お兄ちゃんの芸能界のことも大切だけど。その人のこと聞くために、直接呼んだの」と明日香。

 

「お兄ちゃんとその白さぎちさとさん?って人とどんな関係なの?」

「お姉ちゃん。その人はね、有名な子役で私たちが小さい頃にはもうテレビに出てた人なんだよ?」

「え、テレビに?すごい!」

 

 香澄より明日香の方がよく知っているな。香澄はどうしても気になること興味があること以外は知らなくていいやって感じだからなぁ。反対に明日香は気になることは当然、知らないことを知ろうと探求する。明日香は最近、アニメではなくドラマを好んでみることからちーちゃんを知ってることにも頷ける。ちーちゃん、結構出てるからね。

 

「はぁ、お姉ちゃん、きょう味ないことはとことんきょう味ないもんね」

「そんなことないよぉ〜」

「ある」

「ないよ!」

「ある!」

「ない!」

「あのぉ〜」

「「お兄ちゃんは黙ってて!!」」

「……はい」

 

 2人とも先程まで俺を問い詰める勢いだったのが、いつのまにか姉妹の口喧嘩になりかけている。

 

「あっちゃんだって、すぐ横になったりすんじゃん!食べてすぐ横になったらブタさんになるんだよ?」

「なっ?!今は関係ないよっ!!」

「ある!」

「ない!」

「あるっ!」

「ないっ!」

 

 完全に空気と化した俺はしめしめと思いながら、この場から立ち去った。後がものすごく怖いが今は退散するのが吉だ。その後、再び問い詰められたのは言うまでもない。

 

 

 

 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆

 

 

 

 それでその次の日に買い物に行ったら偶然、ちーちゃんとちーちゃんの母と会い、うちの姉妹とちーちゃんの睨み合いが始まったんだよな。それとは反対に母たちは会話に花を咲かせて意気投合してるし。幸いにして、ちーちゃんの妹のみーちゃんがいなかった。あの時、彼女がいたら戸山姉妹VS白鷺姉妹による戦いが始まること間違いなしだろう。俺が傍観に徹していたら、この人数でお茶するのも何だからと知らぬ間にうちの家に来ることが決まった。

 

 そして、現在に至る。

 

「それでそれで!」

「ふふふ、この時の写真とか……あっ」

「「おおー」」

 

 ちーちゃんは香澄と明日香の知らない俺の話題をすることで興味を引かせた。そしてらレッスン室で踊ってる俺の写真を香澄と明日香に見せていた。おい、その写真どうしたのかなぁ?

 

「ねぇ、ちーちゃん」

「は、はい」

 

 やばいって顔してももう遅いよ。

 

「その写真どうしたのかなぁ?」

「ち、ちがうんです!」

「うぅん?何が違うんだい?」

 

 優しい声音で聞いてみる。

 

「ひぃ!?お、お兄さん、笑顔がこわいです」

「そうかな?それでその写真どうしたのかなぁ〜?」

「目が笑ってないです……」

「ちーちゃん」

「はい」

「今度、それについてお話しよっか?」

「………はい」

 

 香澄と明日香をよく激写してる俺が言うのもなんだが、盗撮はいかんよ。ちなみに香澄と明日香には承諾を得て撮っている。

 

「だって、お兄さんの雰囲気がすごくて……」

「そうだよ!お兄ちゃん、ちーちゃん先輩はお兄ちゃんの芸能界について教えてくれてるんだから」

「わたしもお姉ちゃんにさんせーい!」

 

 香澄と明日香は、ただ単に練習してる写真が見たいだけでしょう。

 

「ぐっ……」

「そうですよ!」

「「そうだ!そうだ!」」

 

 ぐっ、多勢に無勢か。ちーちゃんは香澄と明日香が味方についたのか開き直ってるし……。

 

 それにしても今のちーちゃんはいい笑顔をしている。数日前まで早すぎる邂逅にどうしたものかと悩んだが、今のちーちゃんの笑顔を見ると、それはいい方に転んだと思える。だが、それでも俺からしたらまだその笑顔はどこか黒く見える。そう見えるのはちーちゃんと再会してから、彼女の行動や言動を見ているとたまに偽っているように見えた時があった。それは一度だけではあったが、彼女が目に見えて落ち込んでいる時だった。どこか陰りのある笑顔で、何かを割り切っているようで割り切れていない。簡単に言えば、分かってはいるんだけど、分かりたくないそんな顔だ。彼女がこれからどう芸能生活を経て、Pastel*Palettes結成するのかは知らないし、分からない。選択するのは彼女自身だ。前にちーちゃんに聞いた女優になった理由「表現の幅が広がれば人生が豊かになるから」という夢を応援して行きたい。

 

 実際、俺は芸能界に片足だけとはいえ入ってから、人生が豊かになったと感じる。知らなかったことできないことがたくさんあって、いろんな人と関わるようになった。今までにない自分も知ることができた。見えなかった先が見えるようになった。これまでの選択を後悔したことはない。もし、デビューできなかったとしても、脚光を浴びなかったとしても俺はきっと後悔することないだろう。だって、やらない後悔よりやる後悔をした方が絶対にいい。もうやらないだけであーだこーだ言って逃げ続ける後悔は前世だけで充分だ。だから、前へ進むんだ。

 

「本当よ〜」

「お姉ちゃんもやろ?」

「えー、いやだー」

「香澄ちゃん、ちょっとこっちへいらっしゃい」

「あっちゃん、ちーちゃんせんぱいがこわいよぉ」

 

 俺は目の前のやり取りにひっそりと笑った。

 

 願わくばこれから彼女たちの人生が幸多からんことを……なんてね。

 

 俺はそう、心の中で祈るのだった。

原作直前又は開始後に光夜と関わりのあるキャラの回想を入れる?

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