ジリリリリリとアラームが鳴る。今日も今日とて、俺の両腕は香澄と明日香に
「香澄、朝だよ」
「……」
……あれ?
「香澄、朝だよ?」
「……」
香澄をゆさゆさと揺らして起こすも返事は返って来ず。……あれぇ?
「香澄ちゃ〜ん?朝ですよー?」
「…っこ」
「え?」
香澄が何か言っているが、声が小さくて分からない。
「…っこ」
「こ?」
「だっこ!」
なるほど、なるほど。分かったぞ!
ジリリリリリリ
「光夜!アラーム!」
母さんの怒鳴り声が響く。おっと、アラーム止めないとな。俺は香澄から腕を離してもらい、アラームを止める。現在時刻は6時33分。いつもアラームは6時半にセットとしており、7時に起きて、8時前に家を出る。なぜこの時間なのかというと、うちの妹たちが駄々捏ねたりするからだ。
「それで抱っこしろって?」
「うん!」
抱っこして下に降りるのはいいんだけど、その前に明日香を起こさないとな。
「明日香、起きて。朝だよ」
「やっ!」
「」
起きてたのかわ。今の会話聞いてたな?
「あっちゃん、おきて!」
「やっ!」
「明日香、そろそろ起きないと時間が……」
「やっ!」
「あっちゃんはきのう、おにいちゃんにだっこしてもらったでしょ。きょうはかすみのばん!」
「やっ!」
何、この可愛いやり取り。最近、香澄と明日香の姉妹喧嘩というか言い争い(?)が増えた気がする。主に俺に関してだけど。
「明日香ちゃん、そろそろ腕を離してもらいたいな」
「やっ!」
仕方がない。
「じゃあ、明日香はおんぶね」
「…っ!?うん」
「だっこ!」
「おんぶ!」
俺の左腕を離した明日香は俺の背中に飛びつき、首に両手を回す。俺は明日香をおんぶし、ベッドから降りた。
「かすみも!かすみも!」
「はいよ」
右腕で香澄を持ち上げ、左腕で明日香を支える。まだ2人とも軽いから余裕だけど、あと3年したら2人同時は無理だろうなあ。そして、左手を使って壁を支えにして降りて行く。その間、明日香は落ちないようにしっかりホールドしてた。
「おはよう……って朝から何してんのよ」
うん、俺もそう思う(棒)
「朝から大変ねぇ、お兄ちゃんは」パシャッ
母さんはそう言いながら何処からが取り出したガラケーで写真を撮った。おい。
「父さんは?」
「もう行ったわよ、それより早く着替えて来なさい」
「「「は〜い」」」
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
ランドセルを背負い、学年帽を被る。
「それじゃ、行こっか?」
「うん!」
班長旗を持って、香澄と共に登校班の集合場所に行く。集合場所に行くと、学年帽を被った小学生が十数人。学年帽の色は6つあり、1年生は赤色、2年生は橙色、3年生は黄色、4年生は青色、5年生は緑色、6年生は紫色だ。
当然、俺は6年生だから紫色である。香澄が昨日、俺に赤の学年帽を被せてきて「1年生!」と言われた。その際、香澄は俺の紫色の学年帽を被り「わたし、6年生!」と、ない胸を張って満足そうにしていた。香澄が6年生になるまであと5年もある。小学校6年間が長く感じるだけで中学・高校の6年間なんてあっという間に過ぎて行く。特に高校生活は本当にあっという間だ。香澄が小学校で何を知って何を学んで、どう成長していくのか楽しみだ。もちろん香澄だけでなく、明日香もな。
「おはよう」
「おはよー」
「おはようございます」
保護者の人たちに挨拶し、並んでいる班の先頭に香澄を連れて移動する。うちの地区には登校班が2つあり、そのうちの1つが俺の班である。
「香澄は俺の後ろな」
「うん」
香澄は俺の班で、1年生は班長の後ろに並ぶことになっているので自動的に香澄は俺の後ろとなる。
「行くよー」
班員が揃っているのを確認すると俺の班は移動を開始して、登校する。登校中、後ろがついてきているか確認がてら香澄を見た。トコトコと俺の後ろをついてきて可愛い。
「香澄、ここからは自分で教室に行くんだぞ?1年3組の教室分かるよね?」
「うん!きのうのばしょ!」
「うん、それじゃあお兄ちゃんあっちだから」
1年生の昇降口に香澄を見送り、俺は自分の昇降口を目指した。
「おっすー、おはよ光夜。見てたぞ、今のは妹ちゃん?」
「ああ」
クラス発表される今日、元クラスメイトとなる竹内、通称タケチーと話しながら新クラスが掲示されている昇降口前に行く。そこは新5、6年生の学年帽を被った人でごった返していた。
「うわぁ、人多いな」
「自分のクラスだけじゃなくて、友達が何組になったか見てるからこんなに混んでるじゃないのか?」
そうでなければ、こんなに人がいるのはあり得ない。1学年約100人くらいで5、6年生が同じ昇降口なのも理由ではあるが、全く人が減らない理由にはならない。
「とりあえず、クラス見るか。俺は1組の方から見るからタケチーは3組頼むわ」
「了解」
さてと、あ、あった。案外あっけなく見つかった。6年1組のところには12番 戸山光夜、その上の11番にはタケチーの名もあった。
「タケチー、あったぞ」
「はやっ!?」
3分も経たずに見つけた俺は、6年3組のクラス掲示板前で未だ探しているタケチーに話しかけた。
「それで何組?」
「俺もタケチーも同じ1組」
「マジか、やったぜ」
そうして俺とタケチーは6年1組の教室に向かう。
教室に入るとクラスメイトとなると思われる女の子がこちらに駆け寄ってきた。
「戸山くん、このクラス?」
「あ、ああ。6年1組だ」
「「「「「キャァァァァ!!」」」」」
なんだ、なんだ!?この黄色い声は!?というか俺に話しかけて来た
「小学校最後に戸山くんと同じクラス、やったわ!」
「初めて同じクラスになったね」
「今年もよろしく」
「戸山くん、来たる!」
女子からの反応は様々でみな、なぜか喜んでいる。
「おう、光夜。小学校最後のクラスでもよろしく」
「4年間、今年で5年目。同じクラスだな光夜!」
「俺は6年目だぞ?「ナニィ」」
「よろしく〜」
男子からの反応も良好だ。半分以上は小学校5年間の中で同じクラスになったことがある顔ぶれであり、あとは見かけたことはあるが話したことない人だ。
「な、なあ。男子は分かるんだが、女子なんでこんなにキャッキャッ騒いでんの?」
女子の反応が全く理解できない俺はタケチーに小声で聞いてみた。
「そりゃおまえ、去年、運動会で休んだ人に代わって応援団長やったろ?」
「やったな」
運が悪く、高熱を出して小学校最後の運動会を休んだらしい青組の応援団長に代わって応援副団長の俺がその日、応援団長を務めた。
台に立ち「フレーフレーあ・お・ぐ・み」ってやっただけだぞ?そのあと香澄と明日香から「かっこよかった」と言われた記憶しかない。
「あとは……やっぱ止めとく」
「はあ?なんだよ、気になるだろ」
「とりあえず、光夜。鏡見たことあるか?いや、見てこい」
そういや、自分の顔をまともに見たことないな。香澄と明日香の顔なら毎日見てるけど……。
「……?」
俺の顔を見て、タケチーは憮然とした顔をする。
「……もういいや」
あ、そういや自分の顔ってイケてるんだっけ?すっかり忘れてたわ。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
始業式で校長先生から
「香澄、友達100人できた?」
「できなかった」
……でしょうね。
1日で100人は無理である。そもそもなぜ100人なのかと言うと童謡の『一年生になったら』の歌が原因だ。香澄が幼稚園の時にこの曲を聴いてから
「ともだちひゃくにん、つくるー!」
と日々、豪語していた。それを聞いた明日香がボソッと「むり」と呟いたのを俺は一生忘れないだろう。明日香コッワ。
「じゃあ、友達何人できた?」
「……ひとり」
「……フッ」
コラ!明日香ちゃん、鼻で笑っちゃいけません!そんなことしてると来年、香澄に仕返しされちゃうよ?
「そっか、でも大丈夫。もっと友達できるから」
友達というのは、一朝一夕でたくさんできるものでない。少しずつ少しずつ増えて行くものだ。浅く広くや深く狭くといった交友関係があるが結局のところ、人は千差万別だということだ。香澄は香澄のペースで友達を作ればいい。焦る必要はないのだ。
「ホント!?」
「ああ、本当だ」
「……フッ」
コラ!明日香ちゃん!今、お兄ちゃん、大事なお話中なの。鼻で笑うのやめよ?明日 香が鼻で笑うのは父さんのせいだ。小さい頃、子どもはよく親の真似をする。父さんはよく「フッ」と鼻で笑うことが多い。それを、明日香が真似し出してしまった。しかし、よくよく記憶を振り返ってみると明日香が鼻で笑うのは香澄に対してのみなような気がする。
あれ?これって……いや、気がするだけだ。あまり深く考えるのはやめた。明日香がこれを意図的にやっているとしたら?お兄ちゃん、ちょっと明日香が怖くなってきたよ。
「ふにゃあ〜」
いつの間にか俺は香澄の頭を手を置いて撫でていたらしく、香澄は心底気持ちよさそうに目を細めている。
「……」
香澄を見て、自分も撫でて欲しいのか明日香は頭をそっと差し出した。
「…でて」
「……ん?」
「なでて!」
よしよしよしよ〜し。
「んっ」
明日香も気持ちよさそうに目を細める。今日はなんだか明日香が甘えん坊だな。猫みたいだなぁ。香澄と明日香、2人の反応を見ているとそう思ってしまう。
この後めちゃくちゃナデナデした。
オリキャラ:竹内(タケチー)