新入生の入学を歓迎するかのように咲いた満開の桜は散り始め、桜の花びらが道に舞い落ちる。風と共に空へと乱れ散る桜吹雪は幻想的で儚かった。毎年、桜が散り始める頃に俺はそこでようやく新学期、新学年になったんだなと実感する。
新たな学年、小学校最高学年だと実感した俺のことはさておき、香澄が入学して1週間が過ぎた。
香澄から話を聞く限りでは、特に問題なく小学校生活を送っているそうだ。明日香が鼻で笑っていた友達の人数が1人から6人と、この1週間で5人も増えていた。
まあ、香澄はパワフルで行動的かつポジティブな性格だから自然と友達ができるだろう。この調子で行けば、小学校では無理でも中学・高校の時には香澄が豪語していた「友達100人」できるのではないだろうか?
来年は明日香が小学校に入学する。
ま、明日香も心配無用かな。
来年は明日香が香澄に鼻で笑われるかもな。
明日香は知らないだろうけど、香澄って意外と根に持つんだよ?
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
「おにいちゃん!」
香澄が俺にひしっと抱きつく。
現在、俺は1年3組の教室にいる。なぜ6年生である俺が香澄のクラスにいるのか?それは香澄に会いに来た……というわけではなくて登校班になって下校する防災訓練の一環でまだ学校に慣れていない1年生を6年生が自分の班に迎えに行くことになっている。だから、俺は香澄を迎えに来たというわけだ。
「おにいちゃん!だっこ!」
……え、いま?ここで?
「い、家に帰ってからな」
「やっ」
「」
どうして今なのか?しかも周りに20人近い人がいる中で……。
「えいっ!」
「うおっ!?」
ぴょんぴょんと跳ねて抱っこアピールをしていた香澄は俺に飛びついた。バランスが崩れて転びそうになったが、なんとか香澄を受け止めて渋々と香澄を抱っこする。
「危ないじゃないか」
「えへへ、ごめんなさーい」
悪びれた様子もなく、香澄は笑う。
「かすみちゃんのおにいちゃん?」
「うん、わたしのおにいちゃん!」
青色の髪をしたツインテールの女の子が香澄に話しかける。
香澄の友達かな?
というか抱っこしているせいで周囲の視線がなんか温かいのだが……。特に同級生の視線が。
「その子、戸山くんの妹ちゃん?」
「ん?そうだよ。戸山香澄だ」
いつまでも抱っこしているわけにもいかないので香澄を下ろす。
「とやまかすみ、6さいです!」
下ろすと香澄はぺこりと頭を下げ、ニパァと笑顔で自己紹介をした。
「「「「か、かわいいっ!」」」」
俺と同じく1年生を迎えに来ていた同級生の女子が香澄の愛くるしい笑顔にやられていた。香澄を取り囲み、揉みくちゃにする。てか、早く迎えに行けよ。
まあ、香澄は可愛いしな!もちろん、ここにいない明日香もな!
香澄が女子たちに揉みくちゃにされている間に、俺はわたわたとしている青髪ツインテールの子に話しかけることにした。
「やあ、香澄のお友達かな?」
相手を怯えさせないように優しい口調で話しかける。
「うん。ささきみやです」
「俺は香澄の兄の戸山光夜だ。よろしくね、みやちゃん」
「う、うん」
「これから先、香澄がいろいろと迷惑をかけると思うけど香澄をよろしくね」
「え?」
絶対に香澄はやらかすからな。特に人を振り回すという点では。気づけば香澄のペースに巻き込まれてた…なんてことがよくある。
何となくだけど、みやちゃんと香澄は長い付き合いになりそうだ。
「おにいちゃん?」
「ひっ!?」
背後から香澄が声をかけてきた。えっ、今の声何!?いつもよりトーンが少し低いせいか反射的に声が出てしまった。どうやら香澄はあの揉みくちゃから解放されたらしい。
「みやちゃんと何話してたの?」
「香澄をよろしくってな」
「よろしく?」
「ああ、香澄がいろいろ迷惑かけると思うけどよろしくってね」
「…っ!?かすみ、めいわくかけないもん!」
「本当かなぁ?」
「ほんとうだもん!」
最終的には来年に入学する明日香に面倒を見てもらっていそうだ。
最近、明日香が「おねえちゃん、ねぐせ」と香澄の髪を直したり、「おねえちゃん、はみがきしないとだめだよ?」と姉妹の立場が逆転して香澄の面倒を見ている光景は記憶に新しい。明日香が年長さんなのに既に賢妹と化しているのは驚いた。母さんにその事を話すと、なんと幼稚園でも他の子の面倒を見ていると言うではないか!
……やるわね
それなら来年から安心して香澄を任せられそうだ。学年が違うけど……。
その後の香澄を連れて校庭で並んでいる班の元に香澄を連れ、集団下校をした。家に帰ると先に帰宅していた明日香が玄関で出迎えてくれた。俺はすぐさま明日香にこう言った。
「明日香、香澄を頼んだぞ」
「ほぇ?」
当然、俺が言った事をできない明日香は首を傾げる。そんな明日香に俺は未来の香澄と明日香へと思いを馳せた。
「おにいちゃん!いまのどーいうこと!?」
今のを聞いていた香澄は抗議の声を上げる。だから俺は誤魔化すために香澄の頭を撫でた。
「ふにゃあ〜」
「おねえちゃんばっかりずるい!あすかも!」
はいはい。
「「ふにゃあ〜」」
やはりウチの妹たちは猫みたいだ。
オリキャラ:笹木美夜(ささきみや)
話の内容と展開速度
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とても良い
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良い
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まあまあ
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何とも言えない、分からん