「香澄、明日香、起きて。朝だよ。」
「……んぅ」
香澄は……うん、いつも通りだね。
「明日香は……っていないし」
左腕がなんか軽いなと思い、左を向くと既に明日香はいなかった。香澄と明日香が1人で起きることはまずありえない。起きていたとしても、そのまま俺の腕にくっついたままである。
そんな明日香は昨日からどこか様子がおかしかった。昨日、帰ってきてから話しかけても一言も言葉を発さず、俺の近くにいた。早すぎる反抗期かな?と思ったが、俺にいつも通りくっついていたから明日香の行動が反抗期とは到底思えなかった。
だから、理由を知るために聞いてみた
「今日からお兄ちゃんと寝るのやめる?」と。
その時の明日香はこの世の終わりみたいな顔をしていた。
反抗期ではないと……。明日香、本当にどうしたんだろう?
今は明日香より……
「……んぅ、おにいちゃん」
「ほら、起きて香澄」
「まだねむいよぉ〜」
はぁ、仕方ない。
「お兄ちゃん、寝起きが悪い子は嫌いだな」
「……っ!?おきた!かすみおきました!」
ふっ、相変わらず効果覿面だな。
起きない時にこれをやると、香澄と明日香はすぐ起きる。まあ、俺が香澄と明日香を嫌うことは絶対にありえないがな。
「うん、おはよう香澄」
「おはようおにいちゃん!だっこ!」
まさかおはようのついでに抱っこと言われるとは思わなかったよ。
「うん、だめ」
俺にしては珍しく拒否する。いつもなら全力で朝から可愛がるところだ。
「……え」
拒否されるとは思ってもいなかった香澄が、この世の終わりみたいな顔をする。明日香と同じだ。姉妹揃ってこの世の終わりみたいな顔するなんて、俺と一緒に寝るのがそんなに大事か?……って今は抱っこのことだったな。
「……おにいちゃん、だめ?」
目をうるうるとさせ、祈るように手を組む香澄。その様子にコロッとやられて「いいよ」と言ってしまいそうになる。
口から出そうになった言葉を何とかして喉元で止めた俺は
「だめ」
と言った。
あっぶねー、香澄の可愛さにコロッとやられるところだったわ。
「……おにいちゃん」
「だーめ」
心を鬼にするが。
「……おにいちゃん。おねがいっ!」
はうっ!?
「うん、いいよ」
先ほどより何倍も目をうるうるとさせた香澄に負けた俺。可愛すぎて心を鬼にできなかったよぉ。
「やったー」
飛びついて来る香澄を受け止める。果たして俺はこの先、香澄と明日香の可愛さに負けず、心を鬼にして「NO!」と言える日が来るのだろうか?いや、来ない。
自分で問いかけて、自分で即答している時点で
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
先に起きていた明日香はリビングにいた。
「あ、明日香?」
「……」
声をかけるも返事はない。返事が返ってくるどころかプイッとそっぽを向かれた。
ええ(困惑)
「光夜、明日香と何かあったの?」
「俺が聞きたいんだが?」
「そう、時間がないからさっさと食べちゃいなさい。明日香のことは帰ってからね」
母さんが作った朝食を食べ、歯を磨いて、登校の支度をする。
「香澄、行くよー」
「まってよぉ、おにいちゃん」
靴を履いて帽子を被り、ランドセルを背負う香澄。
「それじゃ、行ってきます」
「いってきます!」
玄関に見送りに来ている母さんと明日香に行ってきますの挨拶をした。
「行ってらっしゃい。香澄、車には気をつけるのよ?」
「わかってるよぉ」
いつも母さんと共に行ってらっしゃいを言うのに、言わなかった明日香を横目に見ると明日香はボソッと何かを呟いた。俺はそれを聞き逃さなかった。
「…いいなぁ」
いいな?
どういう意味で明日香はそう呟いたのだろうか?香澄に対して言ったのか俺に言ったのか、はたまた俺と香澄に言ったのか……。
「おにいちゃん?どしたの?いこ?」
「あ、ああ」
今は学校に行かなきゃな。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
「ただいま……ってあれ?」
学校が終わり帰宅すると、いつも出迎えてくれる香澄と明日香がいない。2階の自室へランドセルを置いて、リビングへ。リビングでまず、目に入ったのは明日香が香澄を睨んでいるかのように目を細め、どこか不機嫌そうな顔をしている様子だった。近くに母さんはおらず、玄関に靴がなかったので買い物に行っているのだろう。
「えっと、香澄?明日香?」
「ん?あっ!おにいちゃん!おかえりなさい!」
「ただいま。明日香と何してたの?」
「うーんとね、かすみが話しかけてもあっちゃんはずぅーとあのままなの」
「そうか、分かった」
慣れた手つきで香澄の頭を撫でる。香澄を撫でていると明日香の小さな口が開いた。
「……ずるい」
「「え?」」
「ずるいっ!ずるいずるいずるいっ!」
「あ、あっちゃん?どうしたの?」
「ずるいずるいずるいずるいずるいっ!」
香澄の呼びかけなど気にせず、ただひたすら「ずるい」を連呼する明日香。
「ずるいずるいずるいずるいずる「ずるくないもん!」…」
何度もずるいと連呼する明日香に業を煮やしたのか、香澄は言葉を被して言い返す。
「ずるいっ!」
「ずるくないっ!」
「ずるい!」
「ずるくないずるくない!」
「ずるいずるいっ!」
「ずるくないずるくない!」
「ずるい!」
「ずるくない!」
同じ言葉を繰り返して言い争う二人。
「……っ…!」
言い争っている時から目に涙が溜まり、涙目となっていた明日香がとうとう泣き出した。
「いっづもおねえぢゃんばっかりっ!!!!」
先ほどまで威勢の良かった香澄は、明日香の突然の叫びに愕然としている。
「あずがだってっ!!おねえぢゃんみだいにっ!!いっぱいいっぱいいっぱいなでなで、だっごじでほじいだもんっ!あずがだってっ!!おにいぢゃんと一緒にしょーがっこういぎたい」
今までずっと溜め込んでいたモノを吐き出すかのように、涙声混じりで
――――嗚呼、そうか。そうだったのか。
「…っ!…っえぐ……っ…」
どうして俺は明日香が泣いて叫ぶまで気づかなかっんだろう?記憶を掘り起こすと思い当たる節が幾つもあった。
「……っ!?」
香澄はどこか放ってはおけないと思い、ついつい何度も頭を撫でたり、遊びに付き合ったりした。そして、一緒に小学校へ行く。
それに対して明日香はどうだ?
香澄とは違い、落ち着いていて大丈夫だろうと勝手に思い込んでいた。今日までずっと香澄と平等に接して来た
けど、違った。
香澄の後に頭を撫で、香澄の後に起こし、香澄ばかり先に構う。明日香は香澄の次、それが明日香にとって堪らなく嫌でずるくて、とても悲しかった。
分かっていたはずだろ?
香澄は明るいけど、ちょっと楽観的で前向きな性格だと。
分かっていたはずだろ?
明日香は幼いながらも賢くしっかり者だが、ちょっと消極的で控えめな性格だと。
分かっていたはずなのに、気がつけば香澄ばかり構っていた。
――――嗚呼、俺は最低だ。
明日香だって、香澄より1年あとに生まれたただけで香澄と変わらない俺の可愛い妹なのに。
「ごめんっ!ごめんな明日香」
目の前で泣きじゃくる明日香を力強く、ギュッと抱きしめる。
どれくらい抱きしめていたのだろうか、気がつくと明日香は泣き止んでおり、呼吸は落ち着いていた。
「お、おにいちゃん。く、くるしい」
「ご、ごめん」
明日香を離し、目を見ると泣き腫らした目は赤かった。
「明日香、ごめんね」
「……いいよ」
「……え?」
「ゆるしてあげる」
泣き腫らした後だと言うのにその笑顔はとても眩しく、目は爛々と輝いている。
「……でも、やくそくして」
「やくそく?」
「うん、おねえちゃんよりももっとあすかをなでて、だっこして?」
「ああ、もt「だめっ!?」…か、香澄!?」
空気と化していた香澄が反応する。
「あっちゃん、それはダメだよ!」
「おねえちゃんはいっぱい、おにいちゃんにナデナデしてもらってるから」
「やっ。かすみ、もっとおにいちゃんにナデナデしてもらうもん!」
「おねえちゃん、なんてしらない!」
「ふーんだ、だめなものだめだもん!」
「だめじゃないもん!」
「だめですー!」
またしても言い争いが始まる。
その様子を見て、俺が決意したことはただ一つ。
もう二度と悲しませて泣かせまい……と。
話の内容と展開速度
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とても良い
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良い
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まあまあ
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何とも言えない、分からん