戸山家長男?   作:0やK

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展開は「バンドリに転生したって?」の通りなんだけど、予定としてはそれに加筆修正したりして話を1.5倍くらいにするつもり。


戸山家の海水浴

 

 夏といえば何を思い浮かべるだろうか?

 

 海?山?花火?七夕?それとも祭り?

 

 夏は行事やイベントが盛りだくさんで思い浮かぶのは一つだけではないはずだ。俺、戸山光夜が真っ先に思い浮かぶのは海だ。ギラギラと照りつける太陽にまぶしい白い砂浜、どこまでも続く青い海。思い浮かべるだけで夏だと感じる。

 

 さて、どうして俺が海について語っているかというと──今現在、砂浜に立っているからだ。もちろん、俺だけではなく戸山家全員で海に来ている。

 

 なぜ海にいるのか?

 

 それは遡ること一週間。キャンプから帰ってきて2日後、「キャンプ行ったから今度は海に行くぞ」と父さんは言った。キャンプの時みたいに突然告げられたもんだから母さんにO・HA・NA・SHIされると思っていたのだが、されなかった。

 

 どうやら海に行くことは、前々から決まっていたらしいのだ。キャンプの時もちゃんと母さんに話をつけとけば良かったのにな。

 

 

 

 〜今朝〜

 

 

 

 夏休みで8月中旬ということもあり、交通機関が混む前に家を出なればならない為、朝5時に起床して6時には出発した。

 

 朝5時起きは香澄と明日香にはキツかったらしく、起こしてもなかなか起きてくれなかった。両腕を香澄と明日香にホールドされたまま起こすのは、なかなかシュールだと思う。香澄が起きたと思ったら、朝開口一番に「おにいちゃん抱っこ!」である。この調子で行くと母さんの「早く!」という怒鳴り声が聞こえそうだったから、香澄に「顔洗ってきて、着替えたらな」と告げた。

 

 すると、香澄はパッと目を大きく見開いてベッドから飛び降り、満面の笑みで部屋を走り去って行った。

 

 うん、今日も元気一杯だな。

 

 俺も準備する必要があったから、まだ寝ている明日香は抱っこして下へと降りることにした。

 

「おはよう光夜と……あら?」

「母さん、明日香頼んだ。起こしてもなかなか起きん」

「明日香、朝に弱いものね。分かったわ。準備が終わったら、そのまま車に乗っていいわよ」

「了解」

 

 明日香を母さんに任せ、俺は着替えて荷物を持ち、準備を済ます。

 

「おにいちゃん!」

「おっと」

 

 着替えて準備ができた香澄が突撃してきたが、それを難なく受け止める。そのまま抱き上げて車に乗り込んだ。

 

「あれ?あっちゃんは?」

「起こしてもなかなか起きてくれなくて、母さんに任せた」

「そっか……」

「ちょっ!?」

 

 香澄が俺に頬ずりをする。ちょっと、そんなにほっぺすりすりしないでもらえます?マーキングかよ!?

 

 この頃、香澄は抱っこすると俺に頬ずりをするのだ。頬ずりって愛情や親愛の気持ちを表すからいいんだけど……いいんだけどさ。何回もされると肌がカサカサになるでしょ!?

 

「つかれた」

「……」

 

 疲れたのか5分間に及ぶ頬ずりは終了した。た、助かった。こういうのが香澄だけかと思いきや明日香もなんだよ。

 

 香澄は抱っこで、明日香にはおんぶをよくせがまれる。明日香も明日香で、俺の背中で「すぅはぁー」や「くんかくんか」と擬音がつくような勢いでにおいを嗅ぎ、嗅いだ後はムフゥというなぞの満足感を得ている。

 

 

 ヤダァ、ウチの姉妹コワイ。

 

 

 しかし、俺のにおいはどうなんだろうな?この前、母さんに聞いたら「あんたのにおいはキリッとしたフルーティーよ」と言われた。キリッとしたフルーティーってどんなにおいだよ。俺のにおいがいい匂いなのは分かったけど、そこまでか?いいボディーソープ使ってるぐらいで他は何もケアしてないぞ?

 

 そういや、母さん、香澄も明日香もいい匂いしてるな。父さんは……知らん。まあ、自分の匂いなんて分からないから、この件に関しては諦めてる。

 

 車に乗り込み10分後、母さんが明日香を抱っこしてきた。後部座席に明日香を下ろすと「じゃ、よろしくね」と一言告げて助手席へ座り、目を閉じた。気づけばもう寝息をたてている。

 

 あなたはの○太くんですか?てか、寝るなよ!父さんがかわいそうだろ!?

 

 家の戸締りをしていた父さんが車に乗り込み、助手席で爆睡してる母さんを見ると苦笑いした。

 

「じゃ、行くか」

「出発!」

「しゅっぱつしんこー!」

 

 香澄を右に下ろし、シートベルトをつけさせる。俺の左で眠っている明日香にもシートベルトをつける。

 

「おにいちゃん。かすみ、ねむい」

「ああ、寝ていいんだぞ?」

「ひざまくらして!」

「はいよ」

「わーい!」

 

 それがして貰いたかったのね。

 

 

 ……ん?

 

 右膝だけではなく、左膝にも重さを感じて明日香の方を見ると、明日香も俺の膝に頭を預けていた。

 

「あ、明日香?」

「すぅ、すぅ」

 

 呼吸が嘘っぽいから絶対に起きてるだろ。まったくカワイイヤツめ。

 

「お、光夜。両手に花だな」

 

 俺たちの様子をバックミラーで見ていた父さんが口を開く。両手に花というより──両手に妹。いや、そのまんま両膝に妹だな。両手に花と呼べるまであと10年くらいは必要かな。ホントに成長が楽しみだよ。

 

 

 

☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆

 

 

 

 現在、俺は逆ナンされている。

 

 

 

 うん、どうしてこうなった!?

 

 

 

 

 海に着いた俺たちは全員水着に着替えて、海へ向かっていたところ、女性陣がお手洗いに行きたいというので海の家前の砂浜に集合することになった。父さんもトイレでちょっとお花摘みに行くと言って、一目散に走っていった。

 

 我慢してたのか・・・。

 

 いい歳した男がお花摘みって言うなよ!気持ち悪いわ!せめてキジ撃ちとか用を足すって言えよ。というか、お花摘みとキジ撃ちは登山用語だし、ここ山じゃなくて海だけど……。我慢の限界と暑さでちょっとおかしくなっちゃったのかもしれん。

 

 ポツンと一人残された俺は海を前にして待つことが出来ず、海の家近くの砂浜に移動することにした。時刻は11時半。お昼時のせいか海の家付近は、人でごった返している。

 

「ねぇ、きみ?ねぇ、きみったら!」

 

 俺を呼んでたらしく、後ろを振り返るとそこには大学生くらいのお姉さんたちがいた。顔つきからして高校生ではないだろう、なんというか色気がすごい。

 

「はい?俺ですか?」

「そう!きみよ」

 

 よく見るとそのお姉さんの後ろには、同じ大学生と(おぼ)しきお姉さんが5人いた。

 

「ねぇ、きみ。見るからに暇でしょ?お姉さんたちといい事して遊ばない?」

「いい事ですか?」

 

 いい事とはなんだろうか?実は分かってはいるもののとぼけてみる。

 

「うん、いい事よ。きみ、お姉さんの好みなのよね」

 

 え?この人、ショタコンなの?あかんやろ。俺、小学6年生だぞ?あ、でもお姉さんたちから見たら俺が中学1、2年生ぐらいに見えたのかも。とりあえず、助けてと叫べばいいのか?

 

 どうするべきかと思いをめぐらせていると

 

「おにいちゃん!」

 

 香澄が後ろから抱きついてきた。そんな香澄を見て、お姉さんたちはオドオドしている。

 

 スク水だと!?学校の水着を着るなんて……ナイスだ!

 

「おにいちゃん、さがしたんだよ」

「す、すまん」

「ねぇ、おにいちゃん。うしろのおばちゃんたちはダレなの?」

「ブッ!?」

 

 危ない、危なかった。脳内がスク水で埋め尽くされていたから、香澄の不意打ち発言に笑ってしまうところだった。

 

「お、おばちゃ……」

「まだお姉さんなんですけど!?」

「これでも21よ!」

「そっかぁ、私もうお姉さんじゃなくておばちゃんかぁ」

「この子、将来やらかすわぁ」

「………え?」

 

 後半の3人大丈夫か?なんか納得してる人が1人。なぜか香澄の将来を予言してるが1人。最後の人はありえないって顔してる。特に納得してる人、認めちゃダメだろ!諦めんなよ!

 

「ねぇ、おにいちゃん?」

 

 香澄の声が感情のない低いトーンになる。

 

 ヒッ!?声、ひっく!どこから出してんだその声。この()怖いよぉ。

 

 その時、

 

「おにいちゃん!」

 

 もう一人の我が妹、明日香が香澄と同様に抱きついてきた。ピンク色の子ども用の水着だ。

 

「あれ?うしろのおばちゃんたち、だれ?」

 

 ブルータス、お前もか。やはりこの姉妹、相通ずるものがある。

 

「っ!?もういい、もう私かえるぅぅぅうう!」

 

 おばちゃn……じゃなかった、俺に話しかけてきたお姉さんが走り去ると、それを追うように他のお姉さんたちも走り去って行く。

 

「はぁ」

 

 俺が安心してため息を吐くと、

 

「ねぇ、おにいちゃん?さっきのおばちゃんたちはだれなの?」

 

 香澄が再び問いかけてくる。低いトーンとともに香澄の瞳から光沢、ハイライトが徐々に消えて焦点が合わなくなる。

 

 え、待って。なんでこんなに目が据わっているの?ふぇぇ、怖いよぉ。

 

 ちなみに明日香は、この光景をほぇ?と首をかしげて俺と香澄を見ている。 あぁ、明日香カワイイよ。

 

 

「おにいちゃん?そこにすわって」

「……はい」

 

 

 ヤバいぞ、ヤバい。

 

 香澄の剣幕に気圧されて、俺は言われるがままに正座してしまう。お願いだからハイライトさん仕事して!俺が何をしたってんだ。

 

 ここは海の家の近く。当然、他の人から注目を浴びないはずがないわけで……。

 

「ねぇ、ママ。あのおにいちゃんなんでせいざしてるの?ぼくとおなじくらいのおんなのこのまえに?」

「見ちゃいけません!」

 

「パパ!あれ、わたし知ってるよ!あれってO・HA・NA・SHIってやつでしょ?」

「おお、よく知ってるな。偉いぞ」

 

「ねぇ、あなた。あの子たち何してるのかしら?」

「さあ?何してるかわからないがあの光景を見て言えるのはただ1つ。将来、絶対に光夜は尻に敷かれる。」

「あなたみたいに?」

「そうそう。……って何言わせんだ!?」

 

 特に親子から注目を浴びている俺たち。

 

 O・HA・NA・SHIって言った子、よく知ってるな。最近だと肉体言語の方での意味だとか?とりあえず、その子のお父さん?偉い偉いじゃないよ。

 最後のうちの両親だよな?声がそうだし。どこにいるんだとキョロキョロ辺りを見回すと……いた!

 

 視線が合うと、両親はこちらに近づいて来た。

 

「香澄と光夜は何してたんだ?」

「おにいちゃんがおばちゃんたちをひっかけていたの」

 

 父の質問に対してそう答える香澄。

 

 引っ掛けていたとは人聞きが悪い。しかも、おばちゃん。これでは俺が熟女好きに聞こえるじゃないか。

 

「え?おばちゃん?光夜が正座する少し前からみてたけどお姉さんたちだろ?」

「ううん、おばちゃん。においがいやな臭いする」

 

 ああ、なるほど。香澄と明日香がおばちゃんと言ったのは彼女たちの臭いもとい香水のにおいがキツかったからか。そこに悪気はなく、ただ単純にキツイにおいだったから。香澄と明日香の中でお姉さんとおばちゃんの基準は何なんだろうか?におい?外見?

 

「え、でも、おばちゃんっていうのは香織みたいな……」

「あ・な・た?」

「ひっ!?ち、違うんだ!べ、別に母さんのことじゃ……」

「今、私の名前を言ったわよね?確かにそう言っていたの聞いたわよ」

「はい……言いました」

 

 あ、父さん死んだ。諦めて認めてるし。

 

「じゃ、光夜、香澄、明日香。私はこれからO・HA・NA・SHIしてくるから海の家付近にいてね。泳いでもいいけど、香澄と明日香は絶対に光夜から離れないでね」

 

 顔は笑っているのに目が笑っていない母さんは、父さんの頭を掴むとそのままどこかへ行ってしまった。どこへ行くのさ……。きっと父さんの心の中はドナドナだろう。

 

「じゃあ、香澄!明日香!海に入ろうか?」

「……うん」

 

 どうやら香澄は見逃してくれるらしい。はぁ、助かった。でもさ俺、何もやましいことしてないのになんで安心してんだろ?

 

 え?明日香はどうしたって?明日香ならずっと俺たちの様子を不思議そうに見てたぞ。何回も首を左右に傾げてな!明日香カワイイ!君はそのまま育っておくれ。

 

 連行された父さんがいつ戻ってくるか分からないないし、人はそこまで多くないビーチなので海に入ることにした。このままじゃ待ちぼうけだしな。海に入る前に準備運動をする。準備運動が終わった瞬間、香澄は海へ一直線に走って行った。

 

 おいおいおいおい、マジか。見失ったら大変じゃねぇか。

 

 視線を香澄から離さず、はぐれないように明日香と手を繋ぐ。

 

 

 明日香確保!

 

 

 いきなり手を握っても驚いた様子を見せない明日香は俺を上目遣いで見てくる。カワエエ〜。最近、明日香が可愛いすぎる件について。あ、もちろん、香澄も可愛いよ?でもね、香澄はなんか怖いんだ。目とか目とか目とか?……あれ?

 

 明日香と手を繋いだまま香澄の方へ行く。香澄は膝くらいまでの浅瀬にいて、波とたわむれている。

 

 絵になるなぁ。何よりカワイイ(語彙力)

 

 クッ、これが俗に言う筆舌に尽くし難いか……。

 

 香澄に近寄ろうとしたその刹那、俺の顔に海水がかかった。

 

 

 

ア''ア''ッ〜〜!?イイッ↑タイッ↓メガァァァァァァア↑

 

 

 

 思わず明日香と繋いでいた手を離して、両手で目を押さえる。

 

 

 

 イッタイ!?メガァァァメガァァァ↑

 

 

 

 そんな俺の様子を見て、明日香は「だいじょーぶ?」と心配してくれた。ああ、俺を労わってくれるのはお前だけだよ明日香。香澄はもうご覧の通りだろ?両親は……まあ、うん。とりあえず、大丈夫と言っておいた。全然これぽっちも大丈夫じゃないけど。海水で目がしみる。

 

 そんな最中、香澄は

 

「おにいちゃん?どう?きもちいいでしょ?」

 

 と満面の笑みで言うのだ。

 

 

 お前は鬼か!?

 

 

 香澄は何事もなかったかのようにニカッと笑いかけてくる。ずるいわぁ、その笑顔。お兄ちゃん何でも許せちゃう!

 

 

 浅瀬で十数分、波とたわむれていたら香澄が深いところにいくと言い出した。お兄ちゃん、まだ目が痛いよ。まあ、ここは浅瀬だし、人が周りにたくさんいるから大丈夫だろうと高を括って水深の深いところへ移動する。

 

 香澄大丈夫か?と思っていたら案の定、香澄は溺れた。

 

 騒ぎになる前に助けにいかないと。俺が近寄ると香澄は右腕にガシッとしがみついた。158cmである俺は問題ないが香澄は112cm。体全部が沈んでしまう。海水を飲み込んでしまったのか香澄がケホッゲホッと咳をする。その咳が俺の顔へと向けられる。

 

「けほっけほっ、げほっ」

「……」

 

 ありがとうございます!我々の業界ではご褒美です!ハッ!イカンイカン、新たな世界を開くところだった。って、明日香は!?

 

 

 香澄にばかり気を取られて、明日香を忘れていた俺は浅瀬の方に目をやると──なんと!こちらに向かって明日香が泳いでくるではないか!?

 

 

 

 犬かきして。

 

 

 

 やるわね。

 

 

 疲れてしまったのか溺れそうになる明日香。今のところから少し深水が浅いところで明日香を小脇に抱き抱える。

 

 明日香回収。

 

 抱き抱えた明日香がさっきから右腕にくっついてる香澄を見て、同じように俺の左腕にガシッとくっつく。なんだこれ?これが本当の両手に花?ん〜まだ花って年ごろじゃないから両手に妹と言っておこう。

 

 少し疲れたから海から出ようとすると、姉妹揃って「イヤッ」と駄々を捏ねるように腕の力を強くする。仕方ないので海から出るのを諦め、両腕にくっついたまま歩く。これでは腕が振れないから歩きづらいったらありゃしない。それでも動けと言わんばかりに腕の力を込めるウチのワガママなお姫様が二人。

 

 

 結局、30分間、両腕にくっついた状態で歩かされるのだった。

 

 

 二人ともご満悦そうで何よりだ。

 

 

 母さんたちがそろそろ来ると思い、海から上がって浜辺で遊ぶ。

 

「ほら、あっちゃん!あっちゃん!カニさんだよカニさん!」

「い、いやっ!やめてよ、おねえちゃん!」

 

 香澄が取っ捕まえて来た小さなカニを明日香に近づける。ん?スナガニか。よく捕まえられたな香澄。スナガニってすぐ逃げるから捕まえるの難しいんだぜ?なんでも触る香澄に対し明日香は虫とか触るのダメだもんな……。

 

「おにいちゃん、カニさん」

「ああ、カニさんだな。カニさんも必死で生きているんだから離してあげて」

「うん!」

 

 

 

 数分後

 

 

「あっちゃん!」

  

 香澄がどこからか海藻を持ってきた。

 

 ンンッ!?それワカメじゃねーか。やっぱり砂浜に漂流してるのね。すると、そのワカメを明日香の背中にピチャリとくっつけた。

 

「い、イヤァァァァァァッ!?」

 

 ものすごい勢いで俺の胸に飛び込んで来る明日香。って俺かよ!?てっきり海の方かどこかへ走り去るのかと思っていた。でも、どこかに行かれたら行かれたで困る。よっぽど生ワカメのヌメッとした感触が恐ろしくて嫌だったのだろう。泣いてはいないが涙目である。

 

 よしよし、大丈夫だぞ。

 

「こら!香澄!」

「ご、ごめんなさい」

「俺じゃなくて明日香にだよ」

 

 このやり取りも何回目ぐらいだろうか?これが初めてというわけではない。香澄が明日香にちょっかいかけたり、ちょっとしたイタズラをしたりするのだ。本人に悪気はなく、ただ構って欲しかっただけなのだ。まあ、香澄は明日香のことが大好きだし、明日香も香澄が大好きだ。

 

 だから、すぐには姉妹喧嘩にならない。

 

「あっちゃん、ごめんなさい」

「おねえちゃんなんてだいっきらいっ!!」

 

 香澄と明日香に大っ嫌いなんて言われたら、想像するだけで……。

 

「ところで明日香、そろそろ離れないか?」

「やっ」

 

 なんか似たようなやり取りを香澄としたような気がする。

 

「海はいいのか?」

「うん」

「じゃあ、まず俺から離れようか?」

「やっ」

「」

 

 ちなみに先ほどまで俺の胸の中にいて、今は右腕にひしっとくっついている。しかし、このままでは動けないな。

 

「そろそろ、腕から離れてくれ」

「じゃあ、おんぶ」

 

 腕を離し、両手を広げておんぶをねだる明日香。今日は珍しく明日香が甘えん坊だ。前より積極的に甘えてくれるのは兄として嬉しい。

 

「はいよっと」

 

 明日香をおんぶすると、

 

「あっー!あっちゃん、ずるい!おにいちゃん、かすみも!」

「香澄は我慢。あっちゃんのお姉ちゃんだろ?」

「うん、かすみ。あっちゃんのおねえちゃんだもん」

 

 聞き分けがよくて助かる。今までだと駄々をこねていたはずだから。まあ、駄々をこねてもかわいいんだけどね。

 

 その後、母さんたちと合流し、家族で海水浴を楽しんだ。それより父さん、今回も目が死んでたけど大丈夫か?

 

 

 それと海水浴から数日間、俺の目が充血して赤かったことは言うまでもないだろう。

話の内容と展開速度

  • とても良い
  • 良い
  • まあまあ
  • 何とも言えない、分からん

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