(旧版) 【急募】TSっ娘の俺が、自分に擬態し続けなければいけないんだが…俺はもうダメかもしれない。   作:白あんがァァア"↑ すきなの…

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 待 た せ た な !


 …いや、すみません。リアルの方で色々ゴチャゴチャしてたのもあるんですが、普通にスランプ気味で、この話書くために原作のモデルに使われた河川敷に行ってイメージ固めたりしてきました。 
(正直、めっちゃ楽しかったです。ハイ)

 ナナがトラックに轢かれそうになってた場所とか、ララが落ち込んでた場所とか、実際に見れてかなり興奮してました。
 帰ってから調べてみると、Google mapでいい感じに無印3話の最初のコマのシーンが再現できたりして楽しかったっす(小並感)


それではどうぞ。


第8話 ミカン!ミカン!ミカン!ミカンんんぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!ミカンミカンんんんぅううぁ(ry

第8話『初戦

 

空に浮かんでいるのは満月ではなく、欠けた月だった。

先程眺めていた時とは打って変わって暗く、しかしまだ何処か青が抜けきっていない。そんな夜空だった。

 

「………」

 

赤毛の女の子と別れ、帰路につく。

その些細な合間になんとなく、寄り道をしていた。

 

無意識に来ていたこの場所は、昔──前世でよく遊んでいた場所に似ていた。

 

遊ぶ、と言っても辺りには何もなく。あるとすれば僅かに背を伸ばす草たちと、川に架かる橋を支える柱が、斜面に隠れるように立っているだけ。 それでも、十分走り回れる広さは有るのだから、前世の幼き自分はそれで満足していたのだ。

 

彩南町の中にあるこの河川敷(かせんしき)は、ツグミの家からは少しばかり離れていた。それでもツグミにとって、無意識のうちに何度も来てしまう程度には思い入れのある場所だった。

 

外の空気は、…夜だからだろうか。ひんやりとしている。今、自分が身につけている白いミニドレスのようなこの服は肩や膝辺りが露出していて、寒さをいつもより感じてしまうようだ。

 

さっきまであまり意識していなかったが… ツグミはこの格好が気になり出していた。

 

視界の端に映っていた静かに流れる川に体を近づける。

 

「……これだもんなァ」

 

夜だったが、まだ完全に暗くなっていないせいか、橋の真下でなければ川はギリギリ、鏡の役割を果たしてくれていた。

 

水面に揺れているのは、ふたつ()いにした白い髪の少女。

 

白、といっても、その髪質は色素が抜け落ちたそれでは無く、あまり見慣れない髪の色であるというのに……純粋に、生まれたままの自然な髪色のように感じてしまう。 その白い絹糸は時折、夜風に吹かれることで、橋の上から漏れた、車たちを照らす人口の光を浴びて僅かに淡く、薄い金色(きんいろ)が混ざっているかのような、前世も含めてツグミが初めて見るような美しい髪色を見せていた。

 

「なんだろうな、なんかこれ…」

 

服に目を向けると───何か、引っかかるものがあった。

 

ミニドレスのようなそれは、その髪と同じくほとんど白一色で、例外としては胸の手裏剣のような型を含め、全ての金具(かなぐ)が金色をしていた。

 

 …いや、これは引っかかるというより()()()()()()()()()

 

 ツグミはこの自分の突然の認識のチグハグさに漸く気付き、困惑した。

 

 違和感。引っかかっている、という認識が有るのに引っかかっていないと訴えてくる認識。 それは全てこの衣装をあの時、鏡の向こうに映る否定すべき姿を観てからだった。 だからきっとこの認識のチグハグさの起点は、あの時鏡に映ったモノ───この「衣装」に有るはずだ。

 そこまで考え、ツグミは再度目の前に映る「衣装」に注意を集中させた。

 

───違和感はなかった。むしろ、この少女の身体の為だけに作られた、と言われたとしても何となく納得してしまう、そんな衣装だった。

 これといって他人が警戒するような危ない装飾も、痴女が着るような露出が激しい服でもなかった。故にツグミにこの衣装を()て、このように何か否定の念を抱くような点はない筈である。しかし───

 

 

「おい」

 

背後から声が刺さる。聞き慣れない声は若干平坦ながらも、あまりこの街には似つかわしくない、どこか重苦しい怒りと薄い興奮を感じた。

 

 必然的にツグミの思考は強制的に遮られ、視線は声の主が居るであろう背後の方へ向かう。

 

「───ッ」

 

 ツグミは寸のところで喉まで出掛かっていた声を留めた。

しかし、悲鳴こそ上げなかったが…同時にその存在はツグミに少なくない衝撃を(もた)らした。

 

 ツグミが振り返った場所に居たのは自分を遥かに上回る、軽く見ても2mを越えた背丈と、体表を(つつ)む機械のような独特な光沢。そして───

 

「(宇宙人……っ!?)」

 

───地球人にはとても見えない形容し(がた)い顔付き。 ()えて例を出すなら魚のような、のっぺりとした顔立ちをしたその存在は……いつの間にこの土地に着陸したのか、離れた場所に小型の宇宙船のような乗り物が置かれてあることにもツグミは気が付いた。

 

「ちょっとこの星に()んでいる原住民の方に、少しばかり聞きてえことがあるんだが───」

 

 

 

「かはッ───」

 

 

 

「───教えてもらっても……いいよなァ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 口から無理矢理追い出された空気。腹部に衝撃が走ったと自覚できたのは、先ほど立っていた場所───突然現れた、凡そ穏やかでは無い雰囲気を持つ、宇宙人と思わしき存在が立っている場所から歩幅十数歩程離れた人気の無い橋の下に飛ばされながらも、徐々に減速し、無様にも身体が降って沸いた痛みに驚きながら、その痛みをどうにかやり過ごすために(うずくま)っていた時だった。

 

「……くっ」

 

 ツグミが立とうとするが、久方(ひさかた)ぶりに味わった痛みは、随分と鈍っていた精神と身体の自由を奪う。 やっとのことで腹部を抑えながら立ち上がれたのは───目の前に、相手の(あし)が飛んできたのを確認してからだった。

 

 

「ッ!」

 

 二度目の攻撃。咄嗟に腕を交差させることが出来たのは…恐らく、奇跡に等しい。

 

 一時期、過酷な環境下で生き延びたとはいえ、対人戦は初めてであり、ましてや自分は10年近く平穏なこの街で、ぬくぬくとぬるま湯に()かってきた側の人間だ。 とてもとてもドラゴンボールのような軽快な動き方なぞ出来そうも無い。

 

そして衝撃を防ぐ為の行為も、素人がやれば殆ど意味を成さない。

身体はそのまま吹っ飛び、ツグミは受け身も取れずに草の上を転がる。

 

 

「はぁ、はっ、はっ、……くっ」

 

荒くなった息を整えようとするが、上手くできない。顔を上げれば、ヤツが見下すように……しかし、口の端に喜色を浮かべながら、(たの)しげに話し出した。

 

「───おれはよぉ〜、ある宇宙人を探してんだ」

「う、ちゅう…じん?」

 

 

 宇宙人。地球の外から来た異星人たちは他の星より文明が未発達なこの惑星(ほし)を何らかの理由で隠れ(みの)代わりに使ったり、単純にこの星を気に入って移り住んでいる奴らはかなりいるそうで、この彩南町もその例外ではなかった。こいつが探しているのはその隠れ住んでいる宇宙人のうちの1人なのだろう。まったくもってはた迷惑な話だった。

 

 

「そうだ。ソイツはよォ〜、銀髪で剣を使う、いけ好かないヒドイ奴でなァ? 銀河大戦中に一緒に居たおれの仲間達を全員切りやがった上に、おれを捕まえて銀河警察に引き渡しやがった!」

 

 

 銀髪の、剣を使う…宇宙人?

 

 ツグミは提示された情報に該当する人物を脳内で探す。

 少し考えた先に、最近は剣を抜かなくなって久しい人物を一人、思い出した。

 

 銀髪の、剣を使う…つまり剣士の宇宙人なんてキャラがやけに立っているであろうその人物は───しかし、ツグミの脳内では目の前の存在が言うような剣を持つような人物ではなく───代わりにペンを持ち、締め切り間近の原稿を、本来の自分の仕事以上に超真剣な顔で捌いていた。

 

 

 ……んん? あの、ザスティンさん? ギャップ酷すぎません?

 

 

 ザスティンさんが普段、リトの親父さんの仕事を手伝ってる時に差し入れの料理(という名目で一時期作り過ぎてたパスタ類を押し付けてました)を持って行った時に見た彼の勇姿を思い出す。

 

 ギャップもそうだけど、いつもクソダサTシャツ着ながら漫画を必死に描いてる姿からはそんなバトル漫画の主役的な姿なんて想像でき……あー、でもそういえばザスティンさんって一応、宇宙を統べるデビルーク王の娘の親衛隊隊長が本職なんだっけ…。

 

 あー…、思い出してきた。漫画でもなんか一番最初の方でそんなこと言いながらリトを追いかけてたんだっけ?

 原作開始の日とか知らないから普通に寝てたりして、何やかんやで僕がザスティンさんに初めて会ったのって、町の中でザスティンさんがララさんを探してた時だし、最近はあの、町で注目を無駄に集める鎧も着てなかったみたいだしで全然思い出せなかった。

 

 そっか、ザスティンさん…漫画家志望の人ってだけじゃなかったんだな。

 

 

 つーかそれならザスティンさんの拠点に直接行けよ… あの人今頃多分、部下と一緒に男三人で(さび)れたアパートの中でコンビニ弁当食ってると思うよ? 僕実際に見たから知ってるし。

 

 最近、「ララ様を危機から守るために活躍する親衛隊らしいことができていないんです…」とか言いながら暇そうにしてた……いや、あれは暇そうと言うより、どっちかというと見せ場が欲しいとか親衛隊長としての矜恃としてそれらしい事がしたい、みたいな感じな気がするけど。

 

 あれ、ってことはザスティンさんに押し付ければwin-winじゃね?

 僕は怪我せずに済むし、ザスティンさんはなんかプライド的なものが満たされるし、この宇宙人は溜め込んだ感情をザスティンさんにぶつけられる。 やだ、完璧。ぱーふぇくとじゃん!

 

 

 なら早速こいつにザスティンさんの住所を教えよう。

 

「なぁ、それってもし──」

 

「まったくッ! ヒドイ話だと思わねェか?」

 

 いや聞けよ。

 

 

 

 ヒドイかどうかなんて…いや、まあ、確かに仲間を斬られたってのはひどいって気もするけど、ザスティンさん、何も悪いことしてなかったらそんなことしないんじゃないかな。普段アレだけど、理不尽な理由で誰かを傷つける人じゃ…あ、ごめんザスティンさん。リトに切り掛かった前例あるから擁護できねぇわ、これ。

 

 

 などと考えている内に、目の前宇宙人が再び動き出した。

 

「お陰様で──」

 

 対人戦の素人でも理解できる殺意。

 理性的な枷は無く、獣の威圧は───だからこそ僕にでも危機が理解出来た。

 

 

「───ずっと殺しが出来なかったじゃねぇかッ!!!」

「──────ッ!!!」

 

 風が唸る。

 突風が吹き抜け、獲物の肉を削ぎ落とす為に加速する。

 破壊力を秘めたその前足は、しかし牙として迫る。

 

 片手で地面を叩くように押して、身体を勢いよく横に回し、地面に叩きつけられた(こぶし)をギリギリ回避する。そのまま立ち上がり、距離を出来るだけ取るために足を必死に動かす。

 

 十数メートル。距離を確保し、思考を再開する。

 

 

 ってそれ完全にこいつが悪い事してたパターンじゃねえか!?

 え、いや、怖っ! 今、地面が抉れてた気がするんですけど!?

 

 

 

 ちらりと後ろを見るが、相手は拳を叩きつけた状態のままだ。

 それがかえって不気味だった。 恐怖心に()られ、足をさらに速くする。

 

 既に二十メートルは離れている。しかしまだ嵐は去っていない。

 そう、嵐。単なる身体能力で相手の攻撃を避けることが出来たとして、其れを止める為の逆風───攻撃手段を持たなければ何れ自分は嵐に喰われる。

 

 

 ……………

 

 静寂な暗闇の中、風と己の荒い吐息が周りを支配している。

 この荒い呼吸の音がこの場から消え去る前に打開策を考えねばならない。 しかし、下手に逃げようにも坂に登った瞬間に追いつかれるのは目に見えている。先の攻防で確認した相手のスピードを見るに、この平場で戦うしかない。

 

 しかし、しかしだ。

 そもそも話、「戦う」という選択肢は皆等しく「牙」が有ってこそ成立するもの。

 

 今の自分には───。

 

「くそっ、こんなことなら武術の一つでも覚えておくんだった…っ!」

 

 今更何を言おうと奇跡なぞ起きやしない。

 怠慢にも「ギャグとラブコメの世界(平和な世界)」だからと言って牙を持たなかったのが間違いだ。その考えを持った時点でこの結末は既に定まっていたのかもしれない。

 

「───っ!」

 

 背後から感じた。殺気が70メートル先から動く。

 獰猛(どうもう)な肉食獣が草原を走り抜けるかのように距離を殺してくるのが理解出来る。

 

 

 

 ———何か、無いのか。頭は焦りで、それ一つに絞られてしまっていた。

 

 

 もう、なんでも良い!

 使えるもんなら何でも───!

 

 

 

 

 ──それでも。

 

 

 

 ──何も無い、と理解するのもその声を聞いた、すぐ後だった。

 

 

 遅れて()る、死神の気配。

 

 

「それにしても、きみィ……どっかで見た気がするンだよなァ〜」

 

「がッ───」

 

 今度は背後からの衝撃。(かわ)す前に、考えるワンテンポ前に視界は勢いよく変化し、頭を踏みつけられた。

 

「ぁ──ッ」

 

立とうとするが、動かせない。…やばい、痛い。

 

 己の頭を踏みつけている脚を手で掴んで退()かそうとするが、己の下手したら小学生と言われても通じそうなくらいの小さな手では、…体勢が悪いと言うのもあるが退かすことも、動かすことも出来なかった。

 

「ン〜…どこだっけなァ〜?」

 

 

 頭の上で雑音(こえ)が聞こえる。しかし理解出来ない。

 

 

───何か、無いのか。

 

 

 踏みつけられた頭に痛みが走るのを涙を浮かべながら耐える。

 

 

 

───何かない、…のか。

 

 頭は踏み(にじ)られ、踏まれていた方の髪の毛が(ほど)けるのが理解(わか)る。

 

 

 

 

 

 

…?

 

 

 

 

 

 

 

()()()…?

 

 

 

 

「───────────────がッ」

 

 

 

 脳髄が、スパークする。

 

 

 抵抗なんてする暇も無く、視界が焼失する。

 

 

「─────────────────────────────────────────────ぎッ」

 

 

 内側から燃える。何故燃えるのか、何が燃えているのかさえ判らないのに燃え尽きる。

 

 

「───────────────────────────────────────────────────────」

 

 

 声を出すことさえ許さない程の黒い炎に喉をそのまま焼かれた。

 脳が溶け、ぐずぐずの身体だったモノは地面に崩れ落ち─────

 

 

 

 

 

 『じゃあ私も■■の■■■■■なの?』

 

 『───…そうね。■■は…■■の■■■■■ね』

 

 

 

 

 

「─────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────ぁ」

 

 

 

 

 瞬間、白い視界が何かを捉えた。

 身体の中に存在する何かが、己を構成する材料に手を加える。

 

 

 

再構築。

 

 

 肉体の形態が、変化した。

 

 

 

 ───バキっ。

 

 

 

「ブベッ!?!?」

 

 

 

 何かを折る音が、暗い河川敷に響く。

 

 

 

 イメージした妄想(げんそう)は、当然現実になり。

 

 

───誰が何をしたのかわからない。

 

 

 さっきまで己の頭部を踏み躙っていた宇宙人が勢いよく、形作られた白い、巨大な拳に吹き飛ばされて行く。

 

───何でそうなったのか理解出来ない。

 

 

 朦朧(もうろう)とした視界に収めながら、ゆっくりと、なんとか立ち上がる。

 

 

───なんで自分は立ってるんだろう?

 

 

 

 なんで気が付かなかったんだろう。()()()()()()()()のは、「これ」だったんだ。

 

 

───気づく? 何に?

 

 

 手で触れて、わかった。

 この髪は二つに結ってあったが、何処にも無かったのだ。

 

 

───最初から、そんなものは…無かったじゃないか。

 

 

 

 

 

 ───根元を縛っているはずの、髪留めが。

 

 

───己を縛る(オモイデ)なんて。

 

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