10年という言葉で想い出すのはいつも同じこと
その長い間にいろいろあったけど
とても大切な10年間

(2014年、Pixivさまにて初公開)

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10年間、ありがとう。

「10周年記念のメッセージを」

 そんなお願いを聞いて思い出すのは、やはりマナのことだった。

 

 私とマナ、出逢ってから同じ10年。

 いくつもの季節を重ね、沢山の言葉を交わし、数え切れないほどの思い出を紡いできた私たち。

 ゆっくりと瞳を閉じると、そんな思い出たちが頭の中に浮かんでくる。

 

 幼い頃、保育園でのおゆうぎ会。マナは主人公の王子様。

 お姫様役だった私は、お話の中だけど、マナと結ばれてとても幸せだった。

 小学校の入学式の日。桜の花びらが舞う校門前でふたりの記念撮影。

 桜の花びらを捕まえようとぴょんぴょん跳ねていたマナ。結ったひと房の髪も一緒に揺れていた。

 夏、ふたりで見に行った流星群。

 丘の上から見る町の灯りが、空をたくさん流れる星が、とても綺麗で、それよりも、そんな素敵な町や星たちをいつもと違って静かな様子で眺めているマナの横顔がとても綺麗で、私はずっとその横顔を見つめていた。

 林間学校。ふたり、消灯後にこっそり内緒話。窓からのぞき込む満月。それを宿したマナの瞳が幻想的で、この時間そのものが幻なのではないか、そんな気持ちでマナを見つめていた。

 秋風に吹かれながら、一緒に大玉ころがしをした運動会。

 マナの足は速くて、ついていくのが大変だったけど、そんな私を見て足の速さをゆるめたマナ。その優しさは今も変わらない。

 雪に覆われた大貝町を笑顔で駆け抜け、転んで、それでも、楽しそうに鼻の頭に雪を乗せたマナ。

 私がその雪を取ってあげると、マナは鼻の頭を真っ赤にしたまま、またもや笑顔で駆けだしてしまった。

 

 そうした楽しい日々をすぎ、中学校にあがると、マナの行動はだんだんと変わっていった。

 

 中学校の入学式は小学校の時と同じ桜の舞う中。

 でも、もうマナはぴょんぴょん跳ねたりしなかった。

 入学してすぐの臨海学校。

 マナは学級委員としてみんなの範となるように、夜は消灯と同時に布団に入り、そのまま寝てしまった。

 雪の日、マナは外に出て雪かきをして、雪の道に困っているお年寄りの手を引いていた。

 

 変わっていったマナの行動。

 私はそれを見るたびに、寂しさを感じていた。

 いつか、変わり続けて、今までのように一緒にいてくれないのではないか、そんなことまで思っていた。

 そのうち、マナは私から離れていってしまうのではないか、そんなことまで考えてしまうようになっていた。

 そして、大人になったら、もう一緒の時を過ごすことができなくなって、お互いのことを忘れてしまうのではないか、そんなことばかり考えるようになっていた。

 やがて、私はいつからか「マナといつまでも一緒にいられる」そう思い続ける自分を押さえて「いつかはマナとすら離れてしまうことになる」と心に言い聞かせるようになっていた。

 本当の、別れの時が来ても、心が耐えられるように。

 

 そんなことを考えているうちに1年がすぎて、2年にあがると大きな変化が訪れた。

 それは、マナがプリキュアになったこと。

 マナがプリキュアになったと知ったとき、これこそがマナとの別れの始まりだと思った。

 プリキュアになるなんて常識では考えられない出来事に、私はマナが知らない世界に行ってしまったように思えた。私には、決してたどり着けない世界へ。

 

 でも、それでも、マナは一緒にいてくれた。

 私のことを本当に信じているから。そう言って私の目の前でプリキュアに変身した。

 私にもプリキュアをしてほしいと言ってくれた。

 私にこそ、是非してほしいとも言ってくれた。

 私は迷ったけど…

 マナのことが心配だから…いえ、何時までも一緒にいたいから…ううん、マナのことが本当に大好きだから、マナと同じプリキュアになった。

 

 同じ世界に戻ったマナと私。

 プリキュアになった後でも、マナはいつでも私を気にかけてくれる。私のことを守ってくれる。そして、いつでも、私のことを必要としてくれる。

 私も、そんなマナに応えてあげたい。マナのために何でもしてあげたい。そして、大好きなマナのためなら、この命すら惜しくない、大げさではなくそう思っていた。

 

 やがて、私は気がついた。

 私たちふたりの未来がどんな形でも…たとえお互い違う国にいたり全く関係のない仕事をしていて同じ時間を持つことができなくなってしまっても…お互いを大事に想い続けていれば、いつまでもふたりの関係は決して変わらないって。

 

 

 

「おつかれさま、六花」

「ありがとう、マナ」

 出迎えてくれたみんな、最初に言葉をかけてくれたマナ。

 こうやって、いつも私を気にかけてくれるマナ。

 私はマナに笑顔を向け、そして、そっと、抱きしめた。

「ちょ、っと、六花!?」

 腕の中で身じろぎするマナ。その暖かさは、緊張でドキドキしていた私を落ち着かせてくれる。

 マナが胸の中でかすかに動くのもかまわず、私は抱きしめ続けていた。

 

「六花…?」

 しばらくして、マナは再び、静かに声をかけてくれる。

「もう少し…」

 そんな私のつぶやきに、マナはちいさく「いいよ」って言ってくれた。

 私は少し強めに背中を抱くと、小さく息を吸ってマナの耳元でささやいた。

 さっきと同じ言葉。でも今度はマナにだけ、マナへの想いと感謝を込めて。

 

「10年間、ありがとう。これからもよろしくね」


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