いつでも誕生日はとても嬉しい
お祝いの言葉、そして、プレゼント
でも、今年はどうしてもほしいプレゼントがあって…
(2014年8月、Pixivさまにて初公開)
1年のうちにある沢山の特別な日の中で、一番好きなのはやっぱり自分の誕生日!
なんてったって自分が生まれた日だもん。
ママやパパは、お誕生日にお祝いを言っても「もういい年なんだから恥ずかしい」なんて言うけど、もったいないと思うな。
あたしは、大人になっても、おばあちゃんになっても、毎年、お誕生日おめでとうって言われたい!
そんなことを思っていると、六花に頬をつつかれた。
「マナ? 顔がデレデレしているわよ。何考えていたの?」
あたしは頬をつつく指をそのままに笑顔を向けて「内緒」って答えた。
今日は六花のおうちでお勉強。
今年は受験だから、夏休みの間は毎日どちらかの家でお勉強する約束をしてた。
朝から、お互いわからないところを教えあいながら続けていたけど、長い時間勉強し続けていたからかな? ちょっと疲れちゃって頭が勝手に別のことを考えちゃった。
「一度休憩しよっか」
「うんっ!」
六花の提案にあたしは大きくうなずくと、六花もちょっと疲れていたみたい。大きく息をついて、腕をぐーって前に突き出すとそのまま机の上につっぷす。
それは、普段きっちりしている六花からは想像できないくらいの気の抜けた様子。だから、とってもかわいい。
でも、それは一瞬で終わり。
「そう言えば」
顔だけ上げてあたしを見る。
「なぁに?」
あたしはさっきのお返しとばかりに六花の頭をなでながら返事をする。
「お誕生日、何欲しい?」
でも、六花はぜんぜん気にならなかったみたい。何事もなかったかのように尋ねてきた。
それは、毎年夏休みに入ると約束しているかのように尋ねられること。
だけど、あたしはすぐには欲しいものが浮かばなくて「六花におまかせ」って伝えてきた。
その時、六花はいつも悲しそうな顔をするけど、誕生日にはあたしがその時一番欲しいものを贈ってくれた。
でも、今年は違う。
「今年も、六花に任せる?」
六花はちょっといたずらっぽい瞳で、ちょっと悲しそうな声で言う。
「六花!」
あたしの頭の中に浮かんでいる欲しいものをはっきりと伝える。
六花は驚いたみたいで目をまんまるにしてあたしを見る。
あたしは笑顔を向けて、
「六花だよ」
もう一度、はっきりと口にする。
六花は顔をだんだんと赤くして、少しだけ困った表情をして、何かを言おうとしてお口がふるえて…でも、それは声にならなくて、とってもかわいい。
「な…」
「な?」
「な、なに言っているのよ!」
でも、六花はそれだけを言うと、ぷいって横を向いてひとりでお勉強を再開しちゃった。
あたしは耳まで真っ赤にする六花がとてもかわいいって想いながら、同じようにお勉強を再開した。
今年も、あたしの誕生日パーティはぶたのしっぽ亭で。
去年はプリキュアで忙しくてできなかったけど、今年は六花にありすにまこぴー、そして、亜久里ちゃんにレジーナにエルちゃん。今までよりも沢山の友達に囲まれて、みんなたくさんのお祝いをしてくれて、とっても嬉しかった。
パーティが終わってみんなが帰って、そして、お片づけの時間。今年も六花が残ってお手伝いをしてくれる。
今は肩を並べてお皿洗い。
お皿が重なる音、水の流れる音。あたしはお皿を拭いていたけど、水の中、お皿の上をすべる六花の指から目が離せない。
「…マナ?」
六花の手が止まる。
心配そうな声が聞こえる。
いつの間にか止まってたあたしの手。笑ってごまかして再びお皿を拭き始める。
六花も水の中、お皿の上で指を動かし始める。
あたしの視線は六花の指にまたくぎづけに。
「そういえば、誕生日プレゼントだけど…」
お皿を洗いながらぽつりと、ちょっとだけ悲しそうな声。
その言葉にあたしはドキっとする。この間伝えたお願いを思い出して
「マナの本当に欲しいものがわからなかった」
それだけをぽつりと言う。それは本当に悲しそう。
あたしはお皿を持ったまま六花に顔を近づける。お互いの吐息がふれあうくらい。
六花は驚いた顔をする。
「六花…」
「え…」
「六花」
「な、なに…?」
「だから、六花」
「え…っと…」
「六花が欲しい!」
「……」
六花の顔が赤くなる。
あたしもその言葉を口にしてだんだんと頬が熱くなってくる。
でも、ちゃんと伝えたいから。
ずっとそばにいてくれて、
誰よりもあたしのことを大切に思ってくれて、
ずっとずっと、あたしを見続けてくれた、
誰よりも大切で、
ずっとそばにいたい、
ずっと見守り続けたい、六花に。
「この前のあれは冗談じゃないよ。六花が欲しい。本当だよ?」
六花の顔を、瞳を、しっかり見つめて、伝える。
六花は真っ赤な顔に驚いた表情が加わるけど、でも、徐々に優しい笑顔に戻ってくる。
「もう、マナは…」
それは、あたしの大好きな表情。
「もう、私の心はマナのものよ。小さいときから王子様に捕らわれているのだから…」
最後の方はだんだんと声が小さくなって…そのまま下を向いちゃった。
そんな様子がかわいくてあたしは思わず抱きしめた。
六花は小さな声を上げるけど、あたしは気にせずに抱きしめたまま、赤くなっている耳にくちびるを近づける。
「ありがとう、六花」
あたしの言葉に少しくすぐったそうな表情を向ける六花。
その顔は真っ赤で、瞳が潤んでいて、胸がキュンキュンしちゃう表情で…
……
思わずあたしは六花にキスをしていた。
小さな声が六花の口からこぼれる。
六花があたしの背中を強く抱きしめる。
あたしも六花の背中を強く抱きしめる。
六花のため息があたしの口の中にこぼれてくる。
そして、離れるあたしたちの唇。
お互いの視線が絡み合う。
すると、ぱっと、恥ずかしそうに視線をよける六花。
あたしはその頬に手をあてて、もう一度、六花にキスをする。
ゆっくり閉じられる瞳、柔らかく熱を伝えてくれる唇。
あたしも、ゆっくりと瞳を閉じると、もっと強く感じる六花の唇の柔らかさ、熱さ。
あたしはお礼を伝えるかわりに、もう少しだけ強く六花を抱きしめた。
永遠のように思える長さ、ずっとあたしたちの唇は重なっていた。
出しっぱなしの水の音と、外から響く、セミの鳴き声の中で。