二天一流《さいきょう》を破る。
それを目的に本来は存在しなかった役者が舞台に上がる。

手に持つは備前長船長光。
流派は巌流。

破れたり……その一言を返すべく。

空ろな刀の継承者は構え立つ───。

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続くかどうか知らん。
私はね、エタ作者なんだ……。




プロローグ

 古より人々に災いを齎す異形の存在──「荒魂」

 その討伐を使命とし、霊験あらたかぬ「御刀」の所持を国から公認されたもの「神薙ぎの巫女」たち。

 

 

 人は彼女らを「刀使」と呼んだ────

 

 

 

 折神家御前試合決勝戦──

 

 五月のその日。神奈川県は鎌倉では国から「荒魂」を倒すための御刀、その一括管理を任される由緒ある家、折神家が主催する剣術大会が行なわれていた。

 

 全国にそれぞれ5校ある刀使の育成機関から選び抜かれた、それぞれの学校を代表する剣術に優れた者達。その選りすぐりの彼女らの中でも最も優れた者が今まさに決められようとしていた。

 

 惜しくも破れていった刀使たち。

 学校から応援に駆けつけた刀使たち。

 衆人環視の中で、遂に決勝戦に挑むべく二人の刀使が舞台に上がる。

 

 口元に笑みを浮かべ、如何にも楽しげに、快活に微笑む少女。

 美濃関学院代表──衛藤可奈美

 

 呼吸を整え、凍るような緊張と真剣な表情で構える少女。

 平城学館代表──十条姫和

 

「──これより折神家御前試合決勝戦を行ないます」

 

 試合の審判を務める刀使の言葉。

 同時に、会場である折神家屋敷、その置くより一人の女性が供を連れて歩み出る。

 

「見て! 御当主様よ!」

「あれが折神紫様……」

「なんて……神々しい」

 

 観客席に響くざわめきは現れた女性に対する憧れに濡れている。

 折神家現当主、折神紫。

 御刀を手にすれば今も最強、力も名声もあらゆる刀使たちの頂点に立つ女傑である。

 腰に帯刀する二刀は、かの宮本武蔵が流派、二天一流である証明。

 

 折神家が主催する試合だからだろう。

 二人の代表刀使を眼下に折神紫もまた観戦するようにして屋敷を背にした専用の席に着席する。

 それでようやく、準備完了。審判は小さく頷き、

 

「礼──双方備え……写シ!」

 

 審判の言葉とともに両代表が白いオーラのようなものを身に纏う。

 これこそ写シ。刀使の特殊能力で、一時的に身体を霊体へと変質させる術。

 

 この状態であれば、運動能力は飛躍的に上昇し、またダメージを受けても僅かな痛みを代償に実際のダメージを肩代わりすることができる。しかし、精神への負担が大きく上級者であっても一戦闘で二、三度が精々だ。

 

 まだ未熟な学生、その中でも特に優秀な二人であってもこの試合中に一度破られた写シを再度、即座に張り直すことは困難……つまるところ、先に一度破られるほどの致命傷を受けた方がこの戦いの敗者となるといっていい。

 

 ──緊張が場を満たす。

 声援を送っていた生徒たちすら静まり返る。

 

 両者構えは正眼。現代では剣道にて最も基本的な教えとして、古くは五行の構えは中段の構えとして教えられてきたポピュラーなものだ。交錯する二人の視線……どう来るのか、どう出るのか、或いは待つか。

 取った構えを皮切りに無言の読み合いが起こる。そして……。

 

「──始め!」

 

 審判の合図──同時に、動いたのは姫和だった。

 スッと静かな動作で刀を構えた両手が肩の高さまで上がる。

 可奈美の頬に緊張で一筋の汗が流れ──

 

 ──ズドンと会場の床が踏み抜かれる。

 写シにより身体能力が上昇しているが故の壮絶な踏み込み。

 

 “来る……!”

 

 腰を僅かに落とし、可奈美は次の瞬間の一手を見逃さぬべく相手の瞳に意思を読む。

 だが……次の瞬間の一手は、しかし可奈美に向けた一手ではなかった。

 

 “え────?”

 

 交錯する視線が逸れる。理由は姫和。

 読み合いを放棄するように、相対する姿勢構えのままに視線が横へとズレる。

 

「…………!」

 

 ズドンと踏み抜かれる石の床。

 身体能力が向上している故の踏み抜きは壮絶な瞬発力を発揮し、一瞬の内に姫和の姿を掻き消す。恐ろしい速度での速攻は……可奈美ではなく、会場を眼下に見下ろす紫へ向けたものだった。

 

 その速度、音速域へと達していた。

 無言のままただ座していた紫は勿論、背後の護衛すら追いつかぬ反応。

 乾坤一擲、俊足速攻の突きは確実に紫の心臓を貫く──。

 他ならぬ姫和は確信した。

 

 ────その予想とは裏腹に紫もまた動いていた。

 席から音も無く立ち上がり、手に掛かる得物。

 恐ろしい反応速度だ。不意討ちの速攻、それも銃弾もかくやという勢いを正確に見て取る。

 

 しかし、姫和の確信を凌駕する紫の冴え。

 それは見せられることなく、両者にとって予想外の結末に帰結した。

 

「引け、それはボクの獲物だ」

 

「なっ……!?」

 

 境界の如く、詰めた間合いに差し込まれる銀の一閃。

 それは完全に姫和の不意討ちに合わされる形で煌めき、即座に姫和の手から刀を払い去っていた。

 

 驚愕に歪む姫和。紫すら眉を動かし僅かに驚いている。

 

 ────不意討ちの襲撃に対する介入者。それは護衛ではなく……一生徒だった。

 

 腰まで流れる紺碧の長髪に静謐な瞳。美人と言う言葉がこの上なく似合う少女だ。

 綾小路武芸学舎の白い制服に身を纏って所を見るにその所属だろう。

 しかし、容姿端麗というべき第三者には容姿以上に目を引かれるものがあった。

 

 刀──少女の手に持つ御刀は太刀と見紛う程の長さだった。

 

 その銘を備前長船長光という。

 二尺八寸、と太刀よりも数十センチさらに長い刀である。

 

 刀使として向上する身体能力を考えても、普通に振るうにしても相当難しいだろうその刀を、あろうことか音速域に迫る姫和の不意討ち速攻に合わせて振るう……。

 

 まず彼女の速攻に気付いたこと。

 それを正確に見極めたこと。

 圧倒的速度の突きに後出しで反応したこと。

 即座に対象が折神紫であることを見抜いたこと。

 

 そして何より……両者がこの少女の介入にされるまで気付かなかったこと。

 

 それらが示す事実こそ、彼女が尋常ならざる使い手である証明だった。

 

「お前は……!」

 

「引いてと言った」

 

 横一文字、奔った剣閃が姫和の胴体を別つ。

 まともに致命傷を受けたために姫和の写シが一斬にて破られた。

 

「貴女がどういう人で、何のために、折神を襲ったかは知らないけれど……」

 

 膝を突く姫和を見下ろして、静かに、だが確かな激情を込めて少女……佐々木空(ささきうつろ)は言う。

 

二天一流(コレ)はボクの獲物だ。邪魔はさせない」

 

 言うと同時にあろうことか振り向き様に長刀を紫の首筋に当てながら宣言した。

 思わず、紫を襲った襲撃者の姫和ですら唖然と固まる。

 度重なる状況変化に静まり返る会場。

 が、次の瞬間、正気に戻った護衛の言葉で世界は時間を取り戻したように動き出す。

 

「ッ……紫様!!」

 

 護衛……親衛隊の一人が声を上げると会場も触発されたように混乱する。

 

「きゃあああ!」

「なに!? 何が起こったの……!?」

「紫様が襲われている!?」

 

 阿鼻叫喚、正しく会場はそれだった。

 だが、それを傍目に騒ぎの爆心地で空は静かに、あらゆる人の反応を掻い潜って呆気なく次の行動を起こす。

 

「……あげる」

 

「なにを……く、なぁ!?」

 

 小猫でも掴みあげるように膝を突く姫和の首根っこを掴むとそのまま豪快にぶん投げた。

 砂埃を立てながら放り投げられた先は、弾き飛ばされた己の獲物の下。

 

「どういうつもりだ……!?」

 

「好きにして、逃げるも戦うもそっちの自由。だけど、二天一流(コレ)はボクの獲物だから、邪魔するなら次は写シじゃなくて……」

 

 空の視線が姫和の首元へ向く。

 視線に一切の遊びが無いことから紛れも無く本気の最終警告。

 次は首を落すと、この上なく物騒な意思を空の瞳は訴えていた。

 

「…………クソッ!!」

 

 僅かに紫と空との間に視線を彷徨わせたが、姫和は逃亡を選ぶ。

 今のままでは紫を仕留めきれないのと、仕留めきれずに此処で捕まるリスクを考えての選択だった。

 その後を、何故か蚊帳の外だった可奈美が追っていく。

 

 逃亡する二人の刀使。

 しかし、この大事にあって、他ならぬ紫の護衛は黙っていなかった。

 

 真っ先に動いたのは親衛隊第一席、獅童真希。

 

「逃がさないよ……!」

 

 怒り交じりの言葉は反応できなかった己に対するものと無礼な襲撃者に対するもの。

 背を向けた姫和を追撃するように己の刀に手を掛けて踏み出す。

 しかし……。

 

「そっちも、引け」

 

 ──長刀がその気勢を削いだ。

 長さに反して恐ろしく早い速度で奔る刀は首筋に向けて。

 流石は親衛隊とだけあって、その不意討ちに対応しきる。

 

「君は……!!」

 

「………」

 

「あは、面白いことになってきたねぇ!!」

 

 追撃を空に食い止められ、空の意味の分からない真意に歯噛みする真希。

 意味不明な介入者に、混乱極まる騒ぎの中、さも愉快気に親衛隊が一人……。

 燕結芽が動く。

 

「私も混ぜてよぉ!」

 

 可愛げな言葉とは真逆に背が凍るような鋭い一閃。

 まるで意趣返しと挑発、空の剣閃を真似た一撃が空の首元に迫る。

 

「面倒くさい」

 

 ため息が聞こえてきそうな言葉とともに一撃は受け止められる。

 長刀を器用に操り、首元近くで結芽の一閃を捕らえきる。

 

「あはっ、いいねお姉さん!」

 

「……ボクも逃げたいんだけど?」

 

「逃がさないよッ!!」

 

 やる気なさげな声音のまま空の提案。対して結芽は元気に提案を拒む。

 首一閃からの振り下ろし。空の足元を狙って刀が奔る。

 空はそれを一歩足を引き下げることで呆気なく避ける。

 

 お返しとばかりに斜め下へ胴を払う横一線。

 されど、結芽は軽快なステップで即座にその勢力圏から脱する。

 

 それを見送った空は、回避しきった結芽を追撃することなく、結芽に伝えた提案を自ら実行する。

 

「セイッ」

 

 軽い一声とともに綺麗に砂利が敷かれた地面を刀で無造作に払う。

 大きな音を立てて土煙を立てる地面。空の姿が煙に消えた。

 

「あーッ!!」

 

 結芽が不満げに声を張り上げる。

 煙が晴れた頃……そこには空の姿が一切無かった。

 姿を断ち、気配も断つ。この上なく完璧に追撃を振り切って逃走した。

 

 

 

 

 

 ──折神紫襲撃事件。

 

 各校代表として、決勝の舞台に立った一人の生徒によって起こされた事件は大々的に報道され、世間にその名前こそ公表されなかったものの、逃亡した三名の生徒は反逆者として指名手配された────。




続くかエタるか、神のみぞ知る。

何なら誰か続き、書いて……。
私アニメ十三話までしか見てねえし。後ゲーム。

山城由依が好きな人生だったぜ……。

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