【書籍化&コミカライズ決定】この日、『偽りの勇者』である俺は『真の勇者』である彼をパーティから追放した   作:髭男爵

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鉄壁の騎士

 

 突如現れた男に兵士達は恐れ震え出す。

 それが誰だか、この国で知らぬ者はいなかった。

 

「『鉄壁』のエドワードだ!」

「そんな、なんでこんな所にっ」

「奴を動かすなんて王は本気か!!?」

「ひぃっ、そんな。勝てる訳がない!」

 

 現れた男に騒めき、浮き足立つ兵士達。

 

 その隙を男は……エドワードは見逃さなかった。馬で駆け、瞬く間に接近し防御陣を敷いた兵士を薙ぎ払う。大の大人が宙を舞う様は演劇か何かのように現実味のない光景だ。

 

 単純に片腕で槍を振り回し、身体を覆い隠せるほどの盾をも持てる膂力も凄まじいが、それ以上に技量が卓越されていた。

 エドワードは的確に、戦闘能力のみを削いでいく。武器を槍で弾き、戦意をなくさせているのだ。

 

「エドワード団長!」

「総員、堅牢包囲陣の構え。敵は『兵士』のみ。我ら『騎士』の相手ではありません。防御を固めつつ、確実に各個撃破しなさい」

「了解!」

 

 騎士の動きが変わる。さながら水を得た魚のように円滑に包囲し、兵士達を押していく。

 

「押し返せ!! ここであの方が捕らえられたら……今度こそ、この国は終わりだぞ!」

 

 『騎士』を二人相手取る青い髪の兵士が懸命に声を張り上げる。

 だがどの兵士も騎士に敵う様子はない。

 もはや彼らが負けるのは時間の問題であった。

 

 

 

 

 

 

「見つけた。だが」

 

 戦闘を見て呟く。

 既に三時間経過していて、俺はやっと見つけることが出来た。皮肉な事だが、追っ手側が松明を持っているおかげで遠目から火の光で発見する事ができたのだ。

 

「これは……彼らじゃ勝ち目がないな」

 

 相手側の職業は恐らく『騎士』、それもかなりの技量の持ち主だ。それに対して追われている側は装備と動きを見るに『兵士』で構成されている。

 『騎士』と『兵士』では職業(ジョブ)でもかなり差があった。

 

「特に、アイツがやばい」

 

 暗闇で、遠目にも分かる全身を鎧で覆った男。エドワードと言われていた騎士の強さは卓越していた。

 その技術も他の囲む騎士と比べて突出している。『騎士(ナイト)』を越える職業(ジョブ)、『上位騎士(ガーディアン)』である可能性が高い。

 

 更には称号もあるかもしれない。

 

 称号は時には、その人のみの固有技能が与えられることがある。俺が『勇者』だった頃の【加速(アクセル)】とかが良い例だ。

 

 だがそれよりも俺は解せない事があった。

 

「何故人同士で争っている? 盗賊とかならまだしもあの装備、恐らくはこの国の騎士だ。それが何故、彼らを襲う?」

「アヤメ、不味いわ。彼ら、押されているわよ」

 

 エドワードが現れてから動きが変わった騎士達に、兵士達は瞬く間に戦闘能力が削がれていった。

 

 これ以上、見ていたら取り返しがつかなくなる。

 

 だが、俺には懸念があった。もしこれが騎士側に大義があった時俺がする事は犯罪となる。

 そうなれば俺はアイリスちゃんとキキョウを巻き込む事になる。

 

 けど、そうじゃない可能性もある。

 手紙を渡した彼の事がある。彼は希望と言った。あの倒れた馬車の中にいるであろう人物が希望なのだろう。

 

 もしあの騎士達が、何らかの口封じ、或いは自らの私欲の為に消そうとしているのなら助けないことは俺の意義に反する。

 

「キキョウ、君は」

「アヤメ。言っておくけど此方(こなた)は絶対着いていくから。自分一人でやろうだなんて言わないで」

 

 俺は覚悟を決めてあの戦闘に突っ込む事にした。

 考えてもどっちが正解だなんてわからないんだ。ならば俺は俺の信じた方に着く。この世に万全の正義などないのだから。

 

 だけど、キキョウを巻き込むのは後ろめたくて遠ざけようとしたが彼女はまっすぐと俺を見ていた。

 ……本当に良い女だよ、君は。

 

「俺が先に行く。キキョウは全体を見渡せる位置で戦況を見ていてくれ。何かあったら頼む」

「わかったわ。……怪我、しないでね」

「あぁ」

 

 俺は闇夜に紛れて接近する。

 騎士達は包囲を狭め、外部からの攻撃を予期していない。

 

「ソルベ、突出し過ぎです。下がりなさい。バーバラスト、ゴルール、貴方達は前面に出て左右を分断しなさい。そうすれば、相手は分断され連携を取る事が出来なくなります」

 

 エドワードもだが、向こうは指揮に集中していて此方に気付いていない。ならいける。

 

 古来から混乱を生むには、頭から倒すのが有効だ。

 

 俺は懐からアイリスちゃん特製の煙玉を投げつけた。

 

 暗闇に乗じたものだが、エドワードは正確に投擲された物に気付き、槍で貫いた。瞬間、広がる粉状の煙。エドワードの視界が塞がれる。

 

「ぬっ、これは煙玉……?」

<ヒヒィンッ!>

「マネラ!?」

 

 その隙に彼らが争っていた最中に落ちていた槍を拾い、投げたことによって馬は喉を貫かれ倒れた。

 馬を殺されたエドワードは馬が倒れる前にも飛び降りる。

 

「エドワード様!」

「問題ありません。貴方達は確保に集中しなさい」

「は、はっ!」

 

 駆け寄ろうとする騎士に命令を下し、エドワードは俺の隠れていた木を槍で示す。

 

「そこにいるのは分かっています。出て来てもらいましょうか」

「なんだ、やっぱりバレていたか」

「当然です。……私の馬を良くも殺してくれましたね」

「機動力から奪うのは戦いの基本じゃないか?」

「成る程、確かに道理です。……貴方は何者ですか、明らかに他の反乱に加わった者とは違います」

 

 エドワードもまた構える。その目には警戒があった。

 同時に俺も彼の言葉を反芻していた。

 反乱……彼らは何か騎士たちに反乱しているのか? なら彼らはそれを鎮圧しようとしている? だったら大義は向こうもあるのか?

 

 だが、そもそも何の反乱だ?

 本当は大義なんてないんじゃないのか?

 

 くそっ、情報が足りない。

 だが、こうして出てきた以上後戻りも出来ない。

 

 ならば突き進むだけだ。

 

「さてね。俺が何者か言ったら君は退いてくれるのか?」

「そのような訳はないでしょう。邪魔をするというのならば、貴方も反乱軍の一員と見なします」

 

 エドワードは盾を前面に押し出し此方に接近する。

 このまま盾でぶつかるつもりか? だったら避けるだけだ。

 そう思った俺だが突如盾が斜めに変わり、空いた下の隙間から槍が飛び出す。

 

「【突撃槍(ストレートホーク)】」

「下か!?」

 

 身体を逸らして躱す。

 

 …………危ない、危うく串刺しになるとこだった。

 逸らした身体の勢いで剣をエドワードの胴体へ振るう。

 

「【盾撃(バッシュ)】」

 

 俺の剣戟に合わせ盾を動かし、容易く弾かれる俺の剣。

 再度突こうとする槍を躱す為、俺は大きく後退した。

 

 離れた俺をエドワードは追ってこない。

 確かに移動速度は遅い。だがそのかわり佇《たたず》まいを見ても堅牢な守りを誇っていて全く隙がない。

 

「エドワード様! 彼らに動きが! この隙に逃げ出そうとしています!」

「第2騎兵隊はビルドを中心に彼らの道を塞ぐ隊列に移行しなさい。アーラスはギルバードとジャルメルの班を率いてあの青い髪の兵士を倒しなさい。彼を倒せば戦局は傾きます。向こうの(アヤメ)の相手は私がします」

「了解!」

 

 更には戦況を的確に読む冷静さ。

 奴だけでも厄介なのに、戦闘能力の高い『騎士』が更に厄介になる。

 不味い。俺は大丈夫でも他の兵士が防ぎきれない。てっきり俺を倒すのを優先すると思ったが思ったより目の前の男は冷静だった。

 

「一人で大丈夫なのか? 何なら複数でも構わないよ」

「挑発ですか。その手には乗りません。先程の動きを見るに貴方は強いようですが、他はそうでもないようです。私が貴方を抑えれば後は時間の問題。もはや天秤は此方に傾《かたむ》きましーー」

「【氷の槍(アイス・スピア)】」

 

 突然エドワードの横の間合いから【氷の槍(アイス・スピア)】が穿たれる。

 だが俺に集中していたエドワードは防ぐ事も出来ず、他の騎士と同様にキキョウの魔法をモロに受けた。

 

「大丈夫?」

「キキョウ。援護は嬉しいけど流石にあそこまでする必要は」

「問題ないわ。【突き穿つ氷の槍(ピアス・アイス・スピア)】よりも威力の低いのを使って加減したもの。でも…………相手も相当やるらしいわね」

「なっ」

 

 【氷の槍(アイス・スピア)】が割れて、白い霧の中から現れたのは、何の痛痒も感じていなさそうなエドワードだった。

 

 まさかあれを受けて無傷だって!? 手加減したとは言えキキョウちゃんは八戦将の一人で、その魔法の威力だぞ!? 

 

 他の騎士が食らって戦闘不能になったのに、一人平然としているとかどんな出鱈目だ!?

 

「驚きました。まさか向こうに『魔法使い』がいるとは。私の部下もやられたようですね。しかし、それでも私の防御を貫くことは出来ません」

 

 尚も健在のエドワードが頭鎧の下から、凍てつくような目で此方を見据える。

 

 不味い。じりじりと他の騎士たちも包囲を狭めている。俺は大丈夫でも、他の皆が耐えきれない。

 キキョウもこんなに目撃者がいる場所では全力を出したら正体がバレる可能性がある。

 

 先程の槍の鋭さもだが、ここまでの『騎士』は俺も会った事がない。太陽国ソレイユのルヴィンさんに匹敵する…………いや、槍術と防御力に関しては越えているか? 

 

 単純に技能(スキル)の差ではルヴィンさんに分があるけど技術だったら匹敵する。

 

 何故こんな所にこんなに強い人がいるんだと愚痴りたくなる。

 

「アヤメ、どうするの?」

「一点を狙って突破する……って言いたいところだけどそれも無理そうだッ!」

 

 こっちに魔法使いがいると分かったのかエドワードは近付かず、部下に弓を構えるよう指示した。俺はキキョウに向かって放たれた矢を剣で撃ち落とす。

 

 目標はここからの離脱だが、包囲下の状態では厳しかった。

 

「撃ち落とされましたか。だが牽制にはなる。続けなさい、周囲を包囲し彼らを釘付けにするのです。マルセイ、ガリア、ラーヴィス。貴方方は弓の前に立ち盾となりなさい。あの氷の槍を防ぐのです」

「「「はっ」」」

 

 更には盾持ちの騎士を前面に押し出し、此方に攻勢を仕掛けることがなくなった。

 

「このまま手をこまねいていたらラチが明かないかッ」

「アヤメ、何なら此方(こなた)が」

「駄目だ。確かにそれをすれば容易く状況を打破出来る。だがそれは君の正体の露呈してしまう!」

「大丈夫よ。別に自分のしてきたことは分かってるから。だから、例えバレても貴方達には迷惑はかけない。報いなら此方(こなた)一人で受けるから」

 

 今この場でキキョウが本気を出せば周りの騎士達も全員倒す事は容易いだろう。

 

 けど、それは彼女の正体が露呈する可能性が高くなる。ただでさえ、氷の魔法使いは数が少ないのに一瞬で多数の騎士を倒せる存在など『氷霧』しかいないとバレるだろう。

 

 だが、正体がバレるのを恐れて本気を出さなければ、それこそ愚か者のする事だ。

 

 重要人物だけ連れて逃げるか? だめだ、恐らくあの馬車の中にいる。救出するだけの時間がない。

 

 どちらを選ぶ?

 いや、そもそも俺のワガママにキキョウを巻き込んだんだ。

 だが、彼女の力がなければ今この状況を打破できない。

 

 全ては俺のせいだ。

 俺が弱いから。俺に力がないから。

 

「俺は……」

「うおぉぉおぉぉ! 突撃ぃぃ!!」

 

 突然鳴り響く、雄叫び。

 それは包囲の外部からだった。

 

「援軍? 馬に乗って来たのか。そして先頭にいるのは……アイリスちゃんか! 手紙は届けられたのか。だけどあれは……」

 

 見れば奥の森から多数の馬に乗った人が此方に向かって武器を構えて迫ってくる。

 

 先頭に乗る人の後ろに乗ってアイリスちゃんが手を振ってるのが見えた。

 

 援軍に、包囲されていた兵士達の戦意があがる。だが俺は一目でそれは間違いだとわかった。

 

 俺は馬に跨る人の多くが、戦闘に慣れていない人だとわかった。

 

 確かにそれなりの装備……『兵士』であろう人もいるが殆どは武装も体も貧相で見るからに戦闘職でない人ばかりだ。

 

 無理だ。あれでは勝てない。

 鍛え抜かれた騎士を倒す事が出来ない。

 

 後に起きるのは戦闘ではない一方的な虐殺だ。

 

 これは本気(殺す気)で戦うしかないかと覚悟を決めるとエドワードは急に構えを解き、背を向けた。

 

「引きましょう、これ以上は数も負けています」

 

 エドワードは端的にそれだけを言って退却の指示を出す。他の騎士たちも少し驚いた顔をしながらも指示に従い引いていった。

 

「退いた……? 何故」

 

 確かに数は向こうが負けているがそれは決定打とはならない。特に向こうは騎士の集団なのだからこちらを容易く蹴散らす事が出来るはずなのに。

 

 何が理由なんだ。

 一体何が彼を引かせた?

 

 その事を疑問に思っているとワッとその場にいた兵士達が喝采をあげた。

 

「退いた! あのユサール騎士団が退いたぞ!」

「あのエドワードを追い返すなんてあんた何者だ!?」

「すげぇ! もうダメかと思った!」

 

 歓喜に叫ぶ兵士達。

 その様子に一先ずは俺も安堵する。

 

「アヤメ、なんとかなったみたいね」

「キキョウ。だが、余りに妙だ。あれだけの強さを誇る騎士なのに、戦いもせずに退却するだなんて」

「アヤメが苦戦するなんてそれだけアイツは強かったの?」

「強いよ。あの動き相当な手練れだ。技能(スキル)抜きにして相当の鍛錬を積んできたんだろうね。悔しいけど今の俺じゃあの盾槍を突破する方法が思いつかない」

 

 武具の性能差があるだなんて言い訳にもならない。

 あの守りを突破するのには、相当な努力が必要だろう。

 

「それに……」

「それに?」

「向こうも本気(・・)じゃなかった」

 

 理由は分からないが、殺意が無かった。

 

 悔しいがそれに救われた。向こうも本気なら俺とキキョウはともかく他は守りきれなかっただろう。

 

 そして俺と彼が殺す気でぶつかれば…………どっちかが死ぬ。その確証もあった。

 

 悔しさに握り拳を作る中、馬から降りたアイリスちゃんが近寄ってきた。

 

「アヤメさん! それとついでにぼっちも無事でしたか?」

「ついでって……。まぁ、良いわ。無事よ。当たり前じゃない」

「アイリスちゃん。ありがとう助かったよ。随分と早く来れたね」

「手紙を渡すと直ぐに出立し始めましたから。それにジャママのおかげで二人の後を追いかけるのは簡単でした」

<ガゥッ>

 

 抱えられたジャママが吠える。

 危機を脱したのか、周囲には弛緩(しかん)した空気が広がる。アイリスちゃんと一緒に来た人々も、兵士達と話している。

 するとそこへ

 

「ピエール様!」

 

 焦燥に駆られた声があがる。

 見れば馬車から血塗れの老人が、胸に矢が刺さった状態で出されていた。

 

「しまった、これは肺が傷ついてしまっている。そのせいで血が入り込み呼吸がっ……!」

「矢は抜けないのか!?」

「ダメだ、抜いたら更に大出血が起きる。そうなればもう助からない!」

「だがっ、このままでは」

「ちょっと良いですか?」

 

 アイリスちゃんが矢の刺さった老人の様子を見る。

 

「何だ! 子どもが何を」

「すまない。少しで良い。彼女に診察させてやってくれ」

「ぐっ」

 

 エドワードを撃退した俺に強く言えないのか、兵士が黙る。その間にアイリスちゃんが触診している。

 

「……まだ大丈夫です。弱々しいけど生きようとする鼓動が聞こえます。血も、これくらいなら」

 

 アイリスちゃんはパッと顔を上げた。

 

「矢を抜いて貰えますか?」

「なんだと!? そんな事をすればっ」

「大丈夫です。わたしはエルフです。人にはない、治療方法もあります。だから信じてください」

「ほ、本当に助かるのか?」

()()()()

 

 力強い言葉に青い髪の兵士は何も言わずに引いた。他の兵士も此方を見守っている。

 俺はアイリスちゃんを見る。彼女は頷いた。俺は、老人に刺さった矢を抜いた。

 

「……あの人は助けられませんでした。ならせめてこの人だけでも……!」

 

 アイリスちゃんの掌が淡く光る。するとみるみると矢で貫かれた傷が塞がっていった。

 

 その後もテキパキと調合した薬草を塗って、包帯を巻く。老人は呼吸も安定していた。

 その様子に兵士達は唖然としていた。

 

「あ、貴方は何者なんですか……?」

「えっと、わたしは『治癒師』なのでこういったことは得意なのです。この方は普通の人より魔力が多かったみたいで治せました。後はエルフの秘伝の薬を使いました」

 

 さらっと嘘をつくアイリスちゃん。だがここで『聖女』と露呈したら面倒ごとになりかねないのでその判断は正しいだろう。

 

 老人が目を覚ます。

 

「おぉ、ピエール様!」

「立ち上がられては……!」

「問題ない。痛みもほとんど無いし、傷も塞がっている。少し頭がボヤけとるがこの程度ならば大丈夫じゃ。どうやら余程の腕の『治癒師』か『薬剤師』に治してもらったようじゃの」

「はっ、この方が治して下さいました。更にはこちらの二人にもユサール騎士団に追われている所を助けてもらいました」

「ユサール騎士団をだと!? なんと……」

 

 老人は此方を向く。

 

「命を救って貰って、かたじけない。こんな姿で無作法だが、許してくだされ」

「いえ、気にしないでください。俺はアヤメと言います。此方はアイリスにキキョウ、そして狼のジャママです。失礼ですが、周りの兵士と呼称…………貴方は何者なんでしょうか」

 

 俺は問いかける。

 周り様子と、騎士が追ってきた事から位の高い人物なのは間違いないと思うんだが……。

 

「そうですのう、名乗らねば失礼と言うもの。……儂の名はピエール。この国、ヴァルドニアの大臣であったものです」

 

 思ったより大物に俺は若干頰を引きつらせた。


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