【書籍化&コミカライズ決定】この日、『偽りの勇者』である俺は『真の勇者』である彼をパーティから追放した   作:髭男爵

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コッソリと戻ってきました。
この小説は「小説家になろう」でも掲載しております。
こちらの方が先行掲載しておりますので興味のございます方はご覧下さい。

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暗闇の中の激闘

「!? ごぼっ」

「エドアルド!!」

 

 エドアルドの胸に手を当て、何やら衝撃波らしきものを放つと同時に彼が吐血し、膝をつく。それを起こした男は何の感慨を抱くこと無く拳を構えた。

 

「悪いが、死んでくれや」

 

 直ぐに必殺の拳が振り上げられようとした。

 

 

 

 直ぐに俺が割って剣を振るうも相手は直ぐに俊敏な動きでその場から退避した。

 俺はすぐさまエドアルドを庇うように前に立つ。

 

「エドアルドッ! ()()()()()ッ!! 無事か!?」

「ご……ふ、ふぅ……何とか……」

 

 息を整えようとしているが、荒い。

 それに口から出血が酷い。もしかしなくても内蔵を損傷した可能性が高い。

 何が起きた、奴は単に胸鎧に手を置いただけだろう!?

 不味い、すぐにでもアイリスちゃんに癒して貰わなければ命に関わる……!

 

 男性は驚いたように目を見開く。

 

「あらら、心臓を壊したつもりだったのだけど、堅いね。あんた」

「来たか! さっさとその二人をぶっ殺せ!!」

「あ〜、はいはいわかったよって。ったぁく、人使い荒いねぇ。つーわけでアンタら、俺ぁを恨まないでくれよ。こっちにも事情があるんだからな」

 

 残った最後の盗賊一人が叫ぶ。

 その言葉に目の前の男性はコキコキと首を鳴らしながらこちらを向いた。

 

 青みがかったり黒い髪。切り裂くような鋭い目に、鍛えあげられた肉体。数多の傷跡から百戦錬磨の雰囲気を漂わせている。言動こそ飄々(ひょうひょう)としているが、身に纏う気配はそんな生易しいものじゃない。

 

 ……危険だ。一見隙だらけに見えるがそんな事はない。全身から漂う剥き出しの剣みたいな気配が、この男の危険さを表している。

 

「エドアルド、下がるんだ。場所といい、相手の職業(ジョブ)といい相性が悪い。それに傷が心配だ」

「……申し訳ございません」

「謝らないでくれ」

 

 エドアルドを背後に下がらせながら俺は警戒を怠らず目の前の男を見る。

 

 さて、どうするか。まず相手の正体は十中八九『武闘家』の職業(ジョブ)だ。

 

 『武闘家』は自身の体が武器そのものだから動きそのものに注意しなければならない。いきなり現れたあの動きも『武術家』の技能(スキル)だ。

 

 エドアルドの武装は盾槍だから動きそのものは鈍重だ。確かにその点では向こうに利点がある。だが防御力に関してはかなり逸脱していると言って良いほどだ。元の職業(ジョブ)もだし、何より『呪術師(アメリア)』の護符によって防御面は更に強化されている。

 

 それを易々と突破できるほどの腕に技能(スキル)

 やはりどう考えても相手はかなりの手練れだ。

 

「当たれば骨ごと……いや、無くなるのも覚悟した方が良いか」

 

 身体中を鎧で着込んだエドアルドすら一発食らってあれなのだ。

 鎖帷子(くさりかたびら)だけで、防御で劣る俺が食らえばどうなるか想像に難くない。参ったな、アイリスちゃんの言う通り装備を新調すべきだったか。

 

 全くもって嫌になる。

 

 技能(スキル)がない俺は全てを技術で補うしかない。

 だが接近戦は向こうの十八番だ。相手の土俵で戦わざるを得ない。

 

 しかし、だからと言って諦める訳にはいかない。俺は剣を構えた。

 

「さて、準備は良いか? いくぞ、【無双乱舞拳(むそうらんぶけん)】」

「"沙水雨《さみだれ》"」

 

 凄まじい速度の拳の嵐が襲ってくる。

 俺は"沙水雨(さみだれ)"で迎撃するも拳とぶつかってその重さに驚いた。

 

(この拳、一発一発が重いッ!?)

 

 鈍器で殴られるような感覚。どう考えてもただの拳とは思えない。

 それに速さも桁違いだ。一瞬でも気を抜けば剣を飛ばされてしまう。

 

「ハァッ! ついてこられるのか、ならこれはどうだ!【竜蛇拳(りゅうだけん)】」

 

 途中、一発の拳が正に蛇のような挙動で俺の横っ腹を狙って来た。それを俺はもう片方の剣"刺斬剣イザイア"を抜いて防いだ。男は微かに目を見開いた。

 

「すごいな、若造。反射神経も動きも悪くない。俺ぁの動きについてこれる奴なんてそうそういねぇぞ」

「褒めてもらって嬉しいよッ!」

 

 俺は隙を突いて相手の視覚を奪おうと剣を振るった。この時点で俺は目の前の男を生け捕るとかは考えなかった。油断すればこっちがやられる。だが剣は男の目の寸前で止まる。

 

「俺ぁの動きに付いて来れそうにないと思ったらすぐに視覚を奪おうとする判断、なるほど良い腕してるね」

「!? まさか、掴んだのか!?」

 

 男は指だけで俺の剣を抑え込んでいた。

 

「御名答。だが掴むだけじゃないんだな」

 

 ニィと男が笑う。

 

「【重砕牙(じゅうさいが)】」

 

 バキィンと。

 掴まれていた剣が砕かれた。

 

 刀身が砕ける様を俺は感傷に浸りながら見ていた。

 ファッブロに貰った、キキョウの【動く氷巨像(ヨトゥム)】との攻防でも壊れなかった剣が意図も簡単に。

 ファッブロとの約束も、存分に果たせずにこの剣は果ててしまった。

 

「残念だね、腕に自信にある若造さんよ。ま、これが経験の差ッ……!?」

 

 誇る相手に向かって、俺は刀身のなくなった剣の柄で顔を殴りつけた。

 そのまま残った"刺斬剣イザイア"で突くも、男はすぐさま俺から離れて躱す。そして頭部から血が流れているのを手で確認していた。

 

「刀身が折れたからって油断しただろ? 柄だって人に対しては立派な武器なんだよ」

「……くくっ、あーはっはっはー!!!」

 

 当然だけど柄は金属で出来ている。人の体よりも硬い。男は、殴られた跡を触ると急に高笑いし始めた。その声は愉快さに満ちた笑いだった。

 

「ははっ、まいった。これは一杯取られたねぇ。はーやだやだ、昔みたいに動く事もままならん。おじさんも、にいちゃん(・・・・・)くらいに若かったらもっと機敏に動けたんだけど」

「これ以上強くなられても困るよ。こっちも手一杯なのに」

「そんな事ないだろ? にいちゃん。アンタは俺の動きについてこれてるし、此処が洞窟じゃなきゃもっと色々な手段を取れたはずだ。こんな暗闇だらけの場所じゃ、俺ぁに有利だからな」

 

 先ほどまでと違って砕けた口調に少しばかり気が抜ける。まるで友人にでも話しかけるようだ。

 だが直ぐに気を引き締める。

 相手は口調こそ軽くなったが、その構えからは全く油断が感じられない。

 

「敵同士でなけりゃ、酒を飲み交わす未来もあったんだがなぁ」

「そうかもしれない。だけど、それは叶わなさそうな」

「そうだなぁ。だが俺もねぇ、負ける訳にはいかねぇんだわ、にいちゃん」

「俺もだ。仲間を守る為に負けるわけにいかない……!」

 

 互いに拳と剣を構える。

 これだけの手練れを相手に手加減も油断も出来ない。

 

(だからこそ、勝つ為には相手の意表を突くしかないッ!)

 

 呼吸を整え、睨む。狙いはあそこ(・・・)だ!

 俺は残った柄を投げつける。

 

「あん? そんなの当たる訳ねぇだろ」

 

 案の定、簡単に避けられる。

 

「良いや、これで良いんだッ!」

「何?」

 

 男の背後、壁に立てかけた松明に当たり落ちる。明かりを失い、一瞬だが洞窟全体が真っ暗になる。

 

 俺はその隙に跳躍して、頭上の壁に着地し、彼の背後に着地した。相手の位置は把握している。

 真正面からではなく、背後から完全なる奇襲だ。

 その隙に相手の行動を封じる為に足の筋を斬る!!

 

「まぁ、悪くないわな。()()()()()()()()()

 

 悪寒が走った。

 それは何度も味わった死の気配。

 俺はすぐに攻撃を止めようとするよりも早く相手が動く気配を感じた。

 

「【嵐龍脚《らんりゅうきゃく》】」

 

 次の瞬間、俺の横っ腹に尋常で無いほどの衝撃が走った。




帰ってきて早々になんですが、本作品『HJ2021小説大賞』に選ばれ、書籍化決定致しました!
詳しい発売日は未定ですが、これも皆様のおかげです!本当にありがとうございます!!
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