「プリキュア版深夜の文字書き1時間一本勝負」に参加した作品を文字数の関係でまとめて投稿しています。

◆おひさまの光は万物を照らすから…
(第37回・ドキドキ!プリキュア・菱川六花・2016年3月26日、Pixivさまにて初公開)
 笑顔はおひさまの光のよう
 それは明るく優しいものだったはずなのに…

◆桜の日の想い出
(第38回・ドキドキ!プリキュア・相田マナ・菱川六花・マナりつ・2016年4月2日、Pixivさまにて初公開)
 桜の季節がめぐり来るたび、想い出すこと
 初めてのお花見、そして、ひとつの出来事
 それは、今も大切な想い出で…

◆桜の花びら、舞う頃
(第39回・ドキドキ!プリキュア・相田マナ・菱川六花・マナりつ・2016年4月9日、Pixivさまにて初公開)
 桜の花びら、舞う頃
 それは悩ましい季節
 心配は花びらのようにつもるけど、
 笑顔と甘い物で解かれて

◆もっとあたしを…
(第40回・Go!プリンセスプリキュア・天ノ川きらら・紅城トワ・きらトワ・2016年4月16日、Pixivさまにて初公開)
 隠し事?
 気づくと広がる心のざわめき
 それが我慢の限界に来た時
 思わず大きな声が出てしまって…

◆私の知らない、青
(第41回・フレッシュプリキュア!・桃園ラブ・東せつな・ラブせつ・2016年4月23日、Pixivさまにて初公開)
 今まで知らなかった
 こんな綺麗な色があるなんて
 胸に染み込んでゆくような、色…
 そして、声…

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「プリキュア版深夜の文字書き1時間一本勝負」参加作品(1)

◆おひさまの光は万物を照らすから…

 

 私の心に残る一番古い思い出は、初めて逢った時のマナの笑顔だった。

 しっかりと、刻まれているその笑顔は今でも一番大切な思い出。

 そんなこと、誰に言っても笑われるに決まっているから心にしまっている、しっかりと。

 

 その、マナの笑顔には不思議な力がある、って思ったのは小学生の頃。

 少し落ち込んだりした時、マナの笑顔がいつの間にか心に浮かぶ。マナの笑顔と一緒に優しい声を思い出す。

 すると、いつの間にか私の心は晴れていて、マナはすごいって思った。

 

 そして、出会って10年。今でもマナの笑顔は私を元気にしてくれていた。

 ちょっと体調が悪くても、マナの笑顔を見ると少しだけ調子が戻っているように感じた。

 プリキュアとして戦って、本当に辛くて、ともすれば諦めてしまいそうになっても、マナの笑顔があると頑張れる気がした。

 

 そんな、マナの笑顔はおひさまの光みたいだと幼いころから思っていた。

 誰にでも優しくて、困っている人誰にでも手を差し伸べて、お願いをされたらすぐに助けてしまうマナは、あらゆる生物に命を与えるおひさまの光のよう。

 でも、おひさまだから私だけを照らすことはなくて…

 いつからか生まれたこの気持ち、マナのおひさまの光でも癒すことができない。

 とても苦しく感じることもある。とても寂しく感じることがある。

 でも、いつかは晴れて欲しい、そう思いながらマナのことを思い出すけど…

 思い出すと余計に私の心は痛くなってしまうのだった。

 

 

 

◆桜の日の想い出

 

 今年も桜の季節が巡ってきた。

 あふれる薄桃色、舞い散る花びら、ゆるやかな優しい風。

 この、桜色にあふれる日を迎える時、想い出すことがある。

 色褪せた、ちぎれた写真に刻まれた、昔の出来事。

 

 初めて出会って最初の春、私たちはお互いの両親と共にお花見をした。

 お花見といってもどこかに出かけたというわけではなくてマナの家でだった。

 ぶたのしっぽ亭の窓際の席は、庭に植えられた桜を見ることができて、お花見には最適な場所だった。

 マナのパパとママ、そして、おばあちゃんとおじいちゃんで沢山のご馳走を用意してくれて、私とマナはニコニコ顔でお店の中から桜を眺めていた。

 

 お腹がいっぱいになったころ、パパはこの日のためにと用意した新しいカメラで私たちふたりを撮ってくれた。

 私はマナの手しっかり握る。すると、マナも私の手をしっかり握ってくれる。

 マナを見る、と、私のことを見つめ返してくれるマナ。

 お互い微笑みあって、一緒にレンズに顔を向ける。

 桜の木の前、青空の下、桜色が優しく漂う中、私たちはシャッター音と共にカメラに収められた。

 

 その2日後、パパが出来上がった写真を見せてくれた。

 それは、とても嬉しそうな顔で、青空のやわらかい陽の光の中、桜の花びらが舞う中、収まる私たち。

 私はとても嬉しくなって思わずその写真を手にとって部屋を出てしまう。

 慌てて声をかけるパパの声もその時は耳に入らずに玄関で靴を慌てて履いて外に飛び出していた。マナちゃんの家に行ってくる、という一言だけ残して。

 

 ぶたのしっぽ亭は既に午後のお休みの時間で、マナはお店の中で桜の花を見ていた。

 私はそのそばによると、じゃ~ん、って感じで写真を見せる。

 マナは目を見開いてとても嬉しそうな顔。私も自分で撮った写真というわけではないのに少しだけ自慢気に、いいでしょう~? なんて言ってみたり。

 その時だった。マナは興奮気味に、この写真が欲しい、と言い出した。

 私は困ってしまった。ただ見せるためだけに持ってきたのだから。

 でも、マナはどうしても欲しい欲しいって言い出して、私も、無理無理って言い出して、

 その内、写真の取り合いみたいになってしまって…その時だった。写真がふたつに破れてしまった。

 私たちの握られた手を境にして。

 

 慌てて飛んでくるマナのパパとママ。

 破れてしまった写真を見て大泣きした私たちの声はそれほどに大きかったんだと思う。

 私は、破れちゃったことでパパに怒られることではなくて、ふたり一緒の写真がバラバラになったことで、泣くことを止められなかった。

 その時のマナの気持ちはわからなかったけど…同じかな、とその時はぼんやり思っていた。

 やがて、うちからパパも慌てて飛んできて、マナのパパとママ、そして、マナに謝りながら、優しい声で言ってくれた。ふたり分用意しようと思っていたんだよ、と。

 私たちはその言葉を聞いた途端に涙が止まった。

 そして、私はあまりに恥ずかしくて顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。

 マナに写真を慌てて持ってきて、それがこんなことになっちゃって…慌てなくて大丈夫だったのに、そう思うと。

 

 パパはその後新たに2枚の写真を用意して私たちに渡してくれた。

 もう、私たちに涙はない。笑顔で新しい写真を手にした。

 

 破れてしまった写真は最初捨てるかどうか、パパに言われたけど、私たちはお互いの写真を交換した。私はマナの写真を、マナは私の写真を持つことに。

 パパたちは不思議な顔をしていたけど、私たちは最初からこうしようと思っていた。私たちはお互いの写真をそれまでもらったことがなかったから。

 

 今年も桜の季節がやってきた。

 満開の桜、漂う香り、やがて聞こえる足音。

「迎えに来たよ、六花」

 あの時と同じ笑顔で、お花見に迎えにくるマナ。

 私も同じ笑顔で返事をするのだった。

 

 

 

◆桜の花びら、舞う頃

 

 今年も桜の満開の季節は終わって、桜の花びらが街中に舞う頃になった。

 日に日に上がる気温、かと思えば急に涼しい日もあったりして。

 そうかと思えば、夕方に不意に起こる雷鳴、激しい雨。それはさらに地面を桜色に染める。

 学校の池もはなびらに埋もれて、まるで桜色の池のよう。

 そのころになると私は毎年同じことに悩まされる。

 それは、マナのこと…いつもマナのことで悩んでいる気がするけど、この時期は特に。

 色々な部活から勧誘されてはとりあえずお試し参加して、ひどい時には1日5つくらいの部活にお試し参加していたりして…どちらかといえば宣伝に使われているようだった、

 運動部ばっかりの時もあったりして、さすがにその時は私は怒った。

「体壊すから、少しは断らないとダメでしょ!」

 でも、そんな私の心配をよそにマナは頼まれるがままに毎日部活のお試しに参加するのだった。

 

 今日も夜になって風が少し出てきた。

 桜の散る頃のこういう日は、不意に桜の花びらが部屋の中に舞い込んでくる。

 それは、マナの家の桜の花。

 窓からのぞくとマナの家の桜は夜にもかかわらず仄かに輝いているように、そして、風に舞う1枚1枚も同じように輝いているように見える。

 また1枚、輝く花びらが私の部屋にたどり着く。

 そんな時、さらにもう1枚、花びらが私の家に届く。

「にゃーっ!」

 玄関から聞こえる声、かわいいマナの声。

 私は窓から顔を出してマナのことを確認する。

 マナは私に手を振る。私も手を振り返す。

 そして、玄関に迎えに行くと、マナは申し訳なさそうな顔をしている。

「いらっしゃい、風大変だったでしょう? あがって」

 でも、私はそれに気づかないふりをして優しく声をかける。

 マナは嬉しそうな声をして「おじゃまします」って靴を脱ぐ。

 

 テーブルにつくマナ、私はお茶の用意をする。

 マナはまた申し訳なさそうな顔をして持ってきた袋をもてあそんだりして。

 私は我慢できずに声をかける。

「気にしなくて、いいよ」

 って。

 すると、マナはすぐに明るい顔を向ける。

 私はひとつだけため息をつく。

「どうせ止めても、またするんでしょ?」

 その私の言葉に、また申し訳なさそうな顔をしながらも頷く。

 私は仕方ないなって思いながらも、

「体にだけは気をつけてね?」

 そう伝えながらマナの前にお茶を出す。

 マナは嬉しそうな顔をしてもう一度頷いた。

 

 マナの差し入れ、この時期はいつも桜餅。薄皮もちもちの長命寺。

 甘くて美味しいマナお手製の桜餅を食べると、頬が落ちそうになると同時にどうしても許してしまうのだった。

 

 

 

◆もっとあたしを…

 

 それは数日前から気づいた。トワっちの様子がちょっとおかしい。

 でも、普段はいつも通りに見える。

 朝、起きた時はいつもどおり。学校までの道もいつもどおり。授業中も休み時間もいつもどおり。

 でも、ふとした時にトワっちに違和感を感じる。

 慌てて何かをして、あたしの視線に気づくと慌てて取り繕うように作り笑顔。

「トワっち、なにか隠してる?」

 あたしの言葉にトワっちは首を振って答える。

「いいえ、なんでもありませんわ、きらら」

 その表情は少しだけ慌ててるけど、あたしはそれ以上追求しなかった。

 

 でも、気になって気になってしょうがない。

 だけど、追求しても何も教えてくれなさそう。

 こっそり調べようかと思ったけど、それはトワっちのことを裏切るみたいで嫌だった。

 

 3日くらい経って、相変わらず怪しい動きのトワっちに詰め寄った。

 もう我慢の限界だった。

「トワっち! 何をこそこそしてるの!?」

 はるはるの部屋に響くあたしの声。その剣幕にびっくりしたのか、大きな目をさらに見開いてる。

 そばにいたはるはるもみなみんも驚いた表情。

 そんな中、一足先に正気に戻ったみなみんがたしなめるように言う。

「どうしたというの…?」

 心配そうな表情、少しだけとがめるような口調。

 あたしはそのみなみんの口調を聞いたら何も言えなくなって、そのまま部屋から出て行ってしまった。

「あ、きらら…」

 後ろから聞こえるトワっちの声。

「ついてこないで!」

 あたしはそのまま自分の部屋に戻った。

 

「あ…」

 気づいた時、もう部屋の中は真っ暗だった。

 そのままあたしは部屋に戻って、そのままベッドで寝てしまったみたいだった。

 寂しくて、悲しくて、そんな自分を認めたくなくて。

 横に視線を移すと、窓際で椅子に座ってあたしのことを心配そうに見つめるトワっち。

 月影でおぼろげな表情は心配そうでいて、それでいて、優しくて。

「ごめんなさい、きらら」

 小さな声が届く。あたしはなにも言わない。

 トワっちは少し困ったような顔。

 あたしも複雑な顔をしていると思う。

「実は…その…」

 トワっちの声は小さくなって、困ったようで…

「こっそり、メモを取っていたのです」

 その告白に、あたしはおもわず目を見開いてしまう。

 どうしてそんなことを?

 思ったけど声に出ない。

「私はまだこの世界のことはわからないことだらけです。だからと言ってきららたちに迷惑をかけるわけにはいきませんから…」

 あたしはその言葉を聞いてまた大声を出してしまった。

「バカッ! なんでそんなことを気にするのよ!」

「きらら…!?」

「なんでも聞いて! なんでも尋ねて! あたしたち、友達でしょう!」

 あたしの思ったことがそのままあふれる。

 あたしは半分涙声で伝える。

 きららは驚いた表情であたしを見つめる。

「だから、メモに頼らないで、あたしを頼って!」

 肩で息をしながら言い切る。

 おどろいた表情をしていたトワっちだけど、やがて、柔らかく微笑んだ。

 あたしは自分の言葉が伝わったと思って嬉しかった。

 と、トワっちはゆっくり椅子を立った。

 あたしはただその様子を見つめる。

「それでは、きらら…」

 やさしい声、あたしの目の前にしゃがみ込む。

「その涙はどうしたら止まります?」

 殊更やさしい声で尋ねるトワっち。

 その声にあたしはどうしても涙が止まらなくて、

「し、知らないっ!」

 それよりも恥ずかしくて、また大きな声をあげてしまうのだった。

 

 

 

◆私の知らない、青

 

 青…青…青……

 視界に広がる青いっぱいの世界。

 私はこんな世界を今まで知らなかった。

 なんて綺麗なのだろう。

 この青、今まで見たことがない青、目にしみる。

 自然に私の瞳から涙が溢れてくる。

 この青も、この涙も、今まで知らなかった。

 ついこの間まで。

 

 それはいつもと同じように突然のことだった。

「散歩! 散歩行こうよ! 散歩!」

「はぁっ!?」

 思わず大きな声で答えてしまう。

 こういう唐突な子だって知っていたけどあまりに唐突すぎたから。

 

 この世界では今は夏休みというらしい。

 毎日家にいて勉強したり遊んだり。学校という場所に行かなくていい期間らしい。

 でも、毎日午前は宿題にあてると宣言していたはずで昨日もそうしていた。なのに朝ごはんが終わった途端にこんなことを言うから、私の驚きも仕方ない。

「今日は少し涼しいから、お散歩!」

「ちょ、ちょっとラブ…背中押さないで!」

 私のお願いはそのまま無視されて麦わら帽子も被らされてそのまま玄関まで連れられる。

 そのまま靴を履かされて外へ。

「どこまで行くのよ…」

 私は少しだけ困った声をにじませて伝えるけど、ニコニコしたまま先を歩く。

 ため息ひとつ。そのまま後をついていった。

 

 まだ閉じたまま、あるいは、半分だけ開いた、シャッターの並んだお店たち。

 いつもと違う景色のクローバータウンストリート。

 半分開いたお店からはラブに対して挨拶が飛ぶ。

 嬉しそうな声でラブも応える。

 私に対する挨拶も混じる。私はそれがくすぐったくてきちんと挨拶できたりできなかったり。

 私はくすぐったさをずっと感じながらクローバータウンストリートを歩いていた。

 

 やがてその終わり、入口と同じゲートが立つ。

 するとラブは私の手をとっていきなり走りだす。

「ラブ!?」

 私の驚きの声を気にするもなく、ラブは私の手握りしめたまま走り続ける。

 私は仕方なくただ走り続けた。ラブの手の熱さをしっかり感じたまま、その汗ばむ手のひらにラブの気持ちを考えながら。

 

「ついたよ!」

 そういうが早いか、ラブは私の手を離すと草むらに寝っ転がる。

 私はそんなラブの様子をただ見ていた。どうしたらいいかわからなくて。

「どうしたの?」

 不思議そうな顔をしてラブが私を見つめる。

「ほら、ここにおいでよ」

 ラブの寝っ転がる横の草むらを叩くラブ。

 私は仕方なくラブの横に寝っ転がることにした。

 髪が乱れることが気になる。

 服が汚れてしまうのではないかと気になる。

 でも、ラブも同じようにしている。

 だから、私も気にしないことにした。

 

「ほら、見て?」

 ラブは私の方を見てその言葉を私に伝えると、ゆっくりと顔を上を見上げる。

 同じように見上げると、一面の青い世界。

「綺麗でしょ?」

 同じ空を見上げてラブは言う。

 私は何も言えずにうなずくこともできずに。

「見せたかったんだ」

 ラブの言葉は私の胸に染み込んでゆくように。

 ラビリンスにいた頃には決して見ることができなかった色。

 ラビリンスに入る頃には決して見ようとしなかった色。

「今いる世界はこんなに綺麗なんだよって」

 ゆっくりとした口調が胸にゆっくりとしみてゆく。

 私はその青が眩しくて、ゆっくりと瞳を閉じる。

「一緒の世界にいることができるようになって嬉しいよ、せつな」

 その言葉は胸に響く。胸の奥をやさしく抱きとめるように。

 その優しさに、私の瞳はいつの間にか潤んでいた。

 自然と、私の口は開いて囁くように伝える。

「私も嬉しいわ、ラブ…」

 それは音として響かなかったけど、ラブには届いたみたい。

 ラブの声が青い空に響く。

「うんっ!」

 今までで一番嬉しそうな声で。



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