EDF日本支部召喚   作:クローサー

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前回の後書きより

クローサー「パーパルディア戦どうすっかなー」
読者の方々「そもそもパ皇がEDF市民殺せる訳無いだろ」(感想欄より要約)
クローサー(大爆笑)

いや、ホント笑わせて頂きました。一部のご意見は大変参考になりましたので、パーパルディア戦も色々と考えていきます。


第4話 ロデニウス海戦

クワ・トイネ公国 政治部会は重苦しい空気に包まれていた。ロウリア王国の宣戦布告と同時に始まったロウリア軍の侵攻。国境20kmの町ギムは半日と持たずに陥落し、ギムの殺戮が起こってしまった。

 

「…現状を報告せよ」

「はっ…」

 

首相カナタの命令に、冷や汗を流す軍務卿が応えた。

 

「現在ギム以西は、完全にロウリア王国の勢力圏に墜ちました。先遣隊だけで3万を超え、更に諜報部の報告も加えると、作戦戦力は…ご、50万に達する模様です。また、パーパルディア皇国がロウリア王国に軍事支援を行なっているという未確認情報もあります。現に、今回ロウリア王国は500騎ものワイバーンを投入してきています。また先程…4000隻以上の大艦隊が、港より出航したとの事です」

 

その報告に全員が絶句する他なかった。

敵は我が方の全戦力の10倍。兵士の数だけでも絶望的であるのに、これに加えて500騎のワイバーンと4000隻以上の大艦隊がいる。余りにも、膨大な敵戦力。この戦力に対して侵攻を防ぐ手段は、皆無だ。

 

絶望によって静寂に包まれた会議室。その時、外務局の幹部が飛び込んできた。

 

「首相、EDF日本支部連絡館より連絡が入りました!!」

「内容は?」

 

既に諦めの境地へと至ってしまっていたカナタが、飛び込んできた幹部の発言を促す。

 

「は、これより全文を読み上げます!『EDF日本支部は、クワ・トイネ公国の都市ギムで発生したロウリア王国軍による非人道的行為を許す事は出来ない。EDF日本支部はクワ・トイネ公国の民間人をロウリア王国軍の虐殺から守るべく、ロウリア王国に宣戦を布告した。現在クワ・トイネ公国への援軍を編成中であり、クワ・トイネ政府の軍通行許可が降り次第、直ちにEDF日本支部軍を派遣する用意を行う』との事です!!」

「おお…!!」

 

絶望的だった状況に、確かな希望が舞い降りた。

政治部会の全員の目に光が灯り、覇気を取り戻す。

 

「よし、すぐにEDF日本支部に軍通行許可を出してくれ!援軍の食料も此方で準備する!ロウリア王国との戦争が終結するまでの間、領土、領空、領海の往来を認める事も伝えるように!軍務卿!全騎士団及び全飛竜部隊に、EDF日本支部に全面協力するように伝えろ!」

「はっ!」

 

 

 

 

 

 

数時間後のマイハーク港。

ロウリア王国が4000隻以上の大艦隊を出航させたという情報が入り、クワ・トイネ公国第2艦隊は艦隊を集結させた。各艦は帆を畳み、来たる決戦に備え、敵船に撃ち込む火矢や点火用の油を次々と船に積み込んでいる。

その艦隊の数は、50隻。

 

第2艦隊提督 パンカーレは、ずらりと己が率いる軍艦が並ぶ海を眺めていた。

 

「壮観な光景だな。…しかし、敵は4000隻を超える大艦隊。対して我等は僅かに50隻…一体、彼等の中で何人が生き残る事が出来るだろうか…」

 

思わず本音が漏れる。敵の物量は圧倒的であり、その現実にどうしようもない気持ちが込み上がる。その時、若き側近幹部であるブルーアイがパンカーレに声を掛けた。

 

「提督、海軍本部より伝令が来ています」

「来たか、読め」

「はっ。『本日夕刻、EDF日本支部の第7主力艦隊5隻が、援軍としてマイハーク沖に到着する。彼らは我が軍より先にロウリア艦隊に攻撃を開始する為、観戦武官1名を旗艦に搭乗させるように指令する』…との事です」

「何…?5隻、たったの5隻だと!?50隻、5000隻の間違いではないのか!?」

「間違いではありません」

「奴等、やる気はあるのか…!?しかも観戦武官だと?5隻しか来ないなら、観戦武官に死ねと言ってるのも同意義ではないか!!明らかな死地と分かっていながら、部下を送るような真似が出来るかぁ!!」

 

EDF日本支部と国交を結んだとはいえ、現時点ではEDF日本支部の本当の力を知らぬ者も決して少なくはない。それに加えて、パンカーレはEDF日本支部の艦を見たことが無いから、この反応はまだ当たり前の反応であった。

 

「…私が行きます」

「しかし…」

「私は、剣術においては海軍首席です。白兵戦になれば私が一番生存率が高い。それに、あの鉄竜(ホエール)を飛ばしてきたEDF日本支部の事です。もしかしたら勝算があるのかもしれません」

「海を渡ってきた、羽ばたかぬ鉄竜の事か…見た事はないが、相当な戦力と見ていいのか?…すまぬが…頼んだ」

「はっ!」

 

こうして、ブルーアイが観戦武官としてEDF第7艦隊に乗り込む事が決定された。

 

 

 

 

 

 

同日の夕刻。

マイハーク港は蜂の巣を突いたような大騒ぎとなっていた。マイハークに住まう全ての者達が、海の方向を眺めている。

口々に声が上がる中、観戦武官となったブルーアイも己の目を疑う光景が浮かんでいた。

 

沖合に、信じられない程に巨大な艦が4隻。その4隻がまるで小型艦に見える程に、超巨大な艦が1隻浮かんでいる。

4隻だけでも、長さは300m以上もあると思えるくらいには大きいが、超巨大艦に至っては1000mを余裕で超えているではないか。

軍艦ピーマがEDF日本支部と接触した際、300mもの大型船を臨検したという話は聞いていたが、彼等は自分達の仕事の成果を大きく見せる為、嘘を付いてたのだろうと考えていた。

 

しかし現実は違った。「300m級の大型船さえも小型に見える程の超大型艦」を、EDF日本支部は保有していたのだ。

 

やがて超巨大艦から、何かが飛んできた。ブルーアイはその物体の中に人が見えた為、それは乗り物の一種であろうと推測した。事前に迎えが来るという連絡は受けていたのだが、ワイバーン以外に空を飛ぶ手段を実際に見たブルーアイは言葉を失う。それが近付くにつれ、キーンという甲高い音とバタバタという音が合わさった合成音が辺りに響き始め、やがて猛烈な風が吹き荒れ、近くにいると吹き飛ばされそうな風圧となる。

広場に駐機したその物体は、風と轟音を弱めていく。その最中に胴体横の扉が開き、中から男が現れて人だかりに向かって、しっかりとした足取りで歩き出した。ブルーアイが人だかりの前に歩み出ると、その男は彼の前に立ち、敬礼する。

 

「こんにちは、私はEDF日本支部のクワ・トイネ公国派遣部隊の塚崎と申します。この度、クワ・トイネ公国の観戦武官殿を1名、迎え上がるよう指示を受けて参りました」

「初めまして、私はクワ・トイネ公国海軍第2艦隊の作戦参謀をしております、ブルーアイと申します。この度のEDF日本支部の救援、感謝します」

「事前連絡をしていたかと存じますが、乗船準備は整っていますか?」

「はい、よろしくお願いします」

 

ブルーアイは荷物を抱え、EDF日本支部が保有するヘリコプター「HU04ブルート」に乗り込んだ。

塚崎がドアを閉めると、再びヘリのエンジンの回転数が上がっていき、やがて奇妙な浮遊感と共にHU04ブルートは飛行を開始する。

数分の飛行を経て、沖合に停泊している母船に近付くと、遠目で見ていた時とはとても比べ物にならない程の大きさに圧倒されていく。

 

(なんなんだ、この大きさは…!?)

 

ブルーアイの理解の範疇を超えるそれに、最早どう言った運用方法で造られたのか。彼には一切の検討が付かなかった。

 

彼がこれから乗る艦。

それはEDF日本支部所属第7艦隊旗艦、「要塞空母デスピナ」。

全長1400mもの超巨大空母であり、決戦要塞X5としてEDFの総力を持って建造された、対フォーリナー決戦兵器である。

特徴としては、やはりその戦闘力だろう。空母としての機能は勿論として、マザーシップの攻撃にも耐え得る強靭な装甲を持つ。更に汎用主砲として4基8門の51cmレールガン連装砲、対空兵装として360基の巡行ミサイルVLS、420基の35mmCIWS、対地支援用として4基の超大型巡行ミサイルVLSを搭載。機関は核融合炉であり、その恩恵を受けて最大速力は何と30ktである。デスピナ内部に簡易的な兵器製造機構、食料生産機構を備える等、無補給でも暫くは継続戦闘が可能となっており、正に「要塞空母」と言わしめるに相応しい性能を持つ。

 

そして要塞空母デスピナの四方に布陣するように停泊している艦。

それは「セントエルモ級イージス戦艦」の4隻である。

EDFが誇るイージス戦艦であり、ベースはイージス艦であるものの、あらゆる状況に対応するように様々な改造が施されている為、原型はあまり残っていない。船体は三胴船型と波浪貫通タンブルホーム船型を掛け合わせたような形状になっている。その全長は全長310.1m、武装は38cmレールガン連装砲7基14門、連装型35mmCIWS24基48門、8連装水平ミサイル発射機9基、ミサイルVLS72基、組み立て式小型テンペストA0ミサイルVLS1基を搭載。装甲はマザーシップの主砲を除く攻撃に有効的に耐える事が可能。

最大速力は40ktと、かなり高速。更にヘリやVTOL機を離発着させる小型飛行甲板まで装備しており、EDF海軍の主力艦として採用されている。

 

 

要塞空母デスピナとセントエルモ級イージス戦艦4隻、計5隻で構成された艦隊。それこそが今回、クワ・トイネ公国を護る為、ロウリア王国軍を撃滅する為に派遣されたEDF日本支部第7主力艦隊である。

 

 

ブルーアイは要塞空母デスピナの甲板に降り立った後、塚崎の案内で艦内を歩き、艦橋に入る。

艦橋に入ると、ブルーアイは要塞空母デスピナの艦長と対面する。今度はブルーアイが先に敬礼を行った。

 

「クワ・トイネ公国海軍観戦武官のブルーアイです。この度の援軍、感謝いたします」

「初めまして。私が艦長の山本です。早速ですが、我々はロウリア艦隊の位置を既に把握しています。現在地より西500kmの位置、およそ5ktの速力で接近中です。我々第7主力艦隊は明日の朝に出航し、ロウリア海軍に警告を発します。従うならばそれで良し、従わなければ第7主力艦隊の火力で以ってロウリア艦隊を殲滅する予定です。明日までは艦内でごゆっくり、おくつろぎください」

「全て、排除……ですか?」

 

ブルーアイは山本艦長の言葉に思わず聞き直した。彼からすればクワ・トイネ公国海軍の50隻、EDF日本支部の5隻、計55隻で4400隻もの大艦隊がを相手にするには、如何に巨大なEDF日本支部の艦であろうとも極めて厳しいと考えていたのだ。

 

「ああ、勿論ロウリア海軍が我々の警告に従って引き返すならば、攻撃は致しません」

「そう言った意味ではなく…確かに我が軍の艦隊50隻は準備を完了しておりますが、たったの55隻で作戦を行うのですか?失礼ながら、敵艦隊の総数はご存知ですか?」

「ええ。ロウリア海軍の艦隊総数は4400隻と把握しています。それとクワ・トイネ公国海軍の随伴は必要ないと伝えております。ブルーアイ殿の安全は我々第7主力艦隊が保証しますので、ご安心して仕事をなさって下さい」

 

 

 

 

 

 

翌日、早朝。

第7主力艦隊は予定通りに出発し、デスピナの最高速力の30ktに合わせ、洋上に巨大な白い航跡を引いていく。

 

「なんという速度だ…!!我が軍の帆船最大速力を遥かに凌駕している!!しかし…他の艦の距離が其々離れ過ぎているな。密集する必要が無いのか?」

 

ブルーアイが呟いた言葉には、少々語弊がある。艦隊の密集をする必要は確かにないのだが、根本的な問題として「密集する事が出来ない」のだ。要塞空母デスピナは先に説明した通り、全長1400mの超巨大空母である。当然、排水量も其れ相応の規模となっており、詳しくは軍事機密で非公開となっているが、それでも最低200万トンは下らないだろう。そんな超巨大艦が30ktで航行するとなれば、当然周辺の海面の影響は測り知れない。三胴式船体のセントエルモ級イージス戦艦さえもデスピナが発生させる波浪には舵を取られてしまうのだ。

 

閑話休題(それはさておき)

 

第7主力艦隊は変わらず30ktで西に航行を続ける。

出発から約7時間後。遂に平たい地平線の向こう側に、ロウリア王国海軍が姿を現わす。

 

後に「ロデニウス大海戦」と呼ばれる事となる、歴史を動かす戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

「いい景色だ、美しい…」

 

目の前の光景を見て、ロウリア王国東方征伐艦隊海将 シャークンは呟いた。

4400隻もの大艦隊が帆を張り、風を目一杯に受けて大海原を進むロウリア海軍。その船内には大量の水夫と揚陸部隊を乗せ、マイハーク港に向かっている。余りにも多い大船団故に、最早海が見えないと言わんばかりに、360度にひたすら船が映る。

ロウリア王国が6年の準備期間を掛け、更にパーパルディア皇国からの軍事援助を受け、漸く完成したこの大艦隊。4400隻もの大艦隊を防ぐ手立ては、ロデニウス大陸に存在しない。いやそれどころか、列強国パーパルディア皇国さえも制圧する事が出来るのではないかと、シャークンは一瞬思った。

 

(いや…パーパルディア皇国には「砲艦」と呼ばれる、船ごと破壊出来る兵器があるらしいな…)

 

今のロウリア王国では、パーパルディア皇国に挑むにはまだ危険が大きすぎる。頭をよぎったその考えを打ち消し、改めてこれから征服する、東の海をみた。

 

(…何かが、此方に飛んでくる?)

 

シャークンの視界に虫のような形をした無機物な物体が、バタバタと音を立ててロウリア艦隊上空に飛来する。見たこともない物体かつ、異様な飛行形態に、ロウリア艦隊に僅かな混乱が生まれる。

弓矢が届かない上空を飛び、人間の発する事はとても出来ない大音量で、飛行物体はロウリア艦隊に呼びかけを始めた。

 

『此方はEDF日本支部第7主力艦隊だ、ロウリア軍に警告する!ここから先はクワ・トイネ公国領海だ!直ちに回頭し、ロウリア領海へ引き返せ!警告に従わない場合、我々は貴艦隊に対して殲滅を開始する!繰り返す──』

 

どうやらあの飛行物体には人が乗っているようだ。そしてEDF日本支部という言葉に、シャークンは聞き覚えがあった。1ヶ月程前に外交官がロウリア王国に接触したらしいが、宰相が門前払いしたと聞いている。しかしあの飛行物体を見る限りでは、政治部が言っていたような蛮族の国とはとても思えなかった。

飛行物体に対して弓を引くものもいたが、当然当たる訳も無く。飛行物体は同じ事を繰り返し、しばらく上空を旋回していたが。

 

『…貴艦隊に回頭の意思無しと判断し、EDF日本支部第7主力艦隊は殲滅を開始する!!』

 

ふと飛行物体が今までの警告とは違う言葉を放ったと思うと、東の空へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

同時刻、EDF日本支部第7主力艦隊。ロウリア艦隊への警告を終了し、艦長の号令を待っていた。

 

「艦長。HU04ブルートの退避が完了しました」

「うむ…では、これより攻撃を開始する!全艦に通達、主砲発射用意!!目標、ロウリア艦隊!!」

「了解!前部51cmレールガン連装砲、発射用意!目標、ロウリア艦隊!照準開始!」

「電圧異常無し!通常徹甲弾、装填完了!」

「最適弾道角計算完了、照準終了!安全装置解除!いつでも撃てます!」

「全艦、主砲発射用意完了!」

 

「撃て!!」

 

その号令を合図に、要塞空母デスピナの前部砲塔である2基4門の51cmレールガン連装砲と、4隻のセントエルモ級イージス戦艦の前部砲塔の12基24門の38cmレールガン連装砲から、バキュゥン!!という甲高い音と共に超音速で砲弾が射ち出された。

 

これから始まるのは、「戦闘」ではない。「蹂躙」だ。

 

 

 

 

 

 

突如、ロウリア艦隊の数百隻が「消滅」した。

 

「…は?」

 

大艦隊を抉るように出来た空白の空間。一瞬前まではそこに数百隻の艦隊がいたのだ。

周囲に響き渡る大轟音、吹き渡る衝撃波、撒き散らされる木片、肉片、血液、海水。

一瞬にして、ロウリア艦隊はパニックに包まれる。

 

「な、何が……一体、何が起こったのだ!!?」

 

シャークンは瞬時に攻撃を受けたと判断は出来たのだが、まさか「数百隻が刹那で消滅する」なんていうのは余りにも想定外。

その時、周囲を見渡したシャークンの視界に、異物が見えた。水平線に僅かに浮かぶ物体。直感的にそれが攻撃の正体だと分かった。

 

「アレか…!通信士、司令部に至急の航空支援を要請しろ!「敵主力艦隊の攻撃により、我が艦隊壊滅の危機あり」とな!!急げ!!」

 

 

 

 

 

 

東方征伐艦隊からの通信要請を受けた王都防衛騎士団総司令部は騒然としていた。

4400隻もの大艦隊故に隠密行動など出来る訳がなく、必ず海戦は起こると判断していた。しかしそれでも高々数十隻程度の艦隊。物量の前に容易に消し飛ぶのは目に見えていた。しかし東方征伐艦隊からの通信は、全く真逆のものだった。

 

『現在、敵主力艦隊と思われる艦を捕捉。現在我が艦隊は超遠距離から攻撃を受けており、壊滅の危機。至急航空支援を要請する』

 

この想定外の事態に、総司令部は直ちに総司令部に待機していた250騎のワイバーンを緊急出撃。東方征伐艦隊を救うべく、飛竜の大編隊は東の海へと飛び立っていった。

 

 

 

 

 

 

東方征伐艦隊救援に向かっているロウリア王国竜騎士団。王国史上最大の250騎による作戦行動の勇姿は、地上から見る者を圧倒する。

それを率いる竜騎士団長 アグラメウスは、内心に不安を抱えていた。

東方征伐艦隊から敵主力艦隊発見の連絡が入り出撃したが、クワ・トイネ公国の海軍主力はせいぜい50隻、多くても100隻程度が関の山。対して東方征伐艦隊は44倍の4400隻。まず海軍だけでも容易く殲滅出来る筈なのに、何が起こって東方征伐艦隊が大打撃を受けるというのだ。

それはアグラメウスだけでなく、竜騎士団の全員がそう思っていた。

 

 

その時、目のいい者は視界の違和感に気付いた。

 

「ん?」

 

突如現れた多数の黒い点。それが何かを考えている間に、黒い点は刹那に距離を詰め、隊列を組んでいたワイバーン隊前方及び中央部が轟音と爆発に飲み込まれる。

一瞬で250騎の内、120騎が肉片と化した。その中には竜騎士団長 アグラメウスも含まれていた。

 

『な…なんだ今のは!?』

『う、うそだ、半数が一瞬で…』

『散開しろ、急げ!!』

 

混乱する魔力通信。すると今度は竜騎士団を貫くように5本の衝撃波が連続で数派に渡って走り、その衝撃波に巻き込まれたワイバーンと人間は即死し、海へと落ちていく。これによって更に竜騎士団の数が減り、僅かに80騎となる。

 

『前方に何かが見えるぞ!なんだアレは!?』

 

僅か80騎となったロウリア王国竜騎士団の前に立ち塞がった5つの飛行物体。

それはまるで矢尻の様な形をしていて、竜騎士団からすれば、それは全く未知の存在。

 

それは、EDF日本支部が保有する戦闘機「ファイター」。

フォーリナー大戦後に生まれた第6世代戦闘機であり、フォーリナーのテクノロジーをふんだんに使用したEDF最強かつ唯一無二の制空機だ。

カナード付きデルタ翼機であり、推進力となる双発エンジンには3枚パドル式左右独立三次元推力偏向ノズルを採用。更に各所に補助用の小型ブースターを取り付けており、低速時には小型ブースターを使用して戦闘機とは思えぬ超機動を行う事が出来る。

搭載兵器は30mmレーザー砲2門、最大24の目標を同時に撃破可能な全方位多目的ミサイル誘導システム「ADMM」、汎用レールガンユニット「EML」の3種。

最高速度はマッハ4に達し、巡航速度もスーパークルーズとなるマッハ2を発揮する。

 

彼等は第7主力艦隊旗艦 要塞空母デスピナの艦載機である。レーダーでロウリア竜騎士団の接近を察知した為、山本艦長はアルファ隊、ファイター5機を発艦させた。

要塞空母デスピナから発艦した彼等はまず、ADMMによるミサイル攻撃を開始。これにより120騎を撃破し、続いてEMLによる狙撃を開始したのだ。レールガンと飛行速度が合わさり、マッハ10もの速さで飛来したその砲弾は、衝撃波のみで生物を即死させる。これによって更に50騎を撃破したのだ。

そして今から、アルファ隊はドッグファイトへと突入する。5対80、数だけ見れば16倍の戦力差だ。

だが、80騎のロウリア竜騎士団は最高速度はせいぜい235km/h。攻撃手段も低速な導力火炎弾のみ。対して戦闘機ファイターは、最高速度マッハ5に加え、攻撃手段は30mmレーザー砲、ADMM、EML。

そしてファイターのパイロットは、対フォーリナーの訓練を何百何千時間も積み上げてきた。そんな彼らからすれば、ワイバーンの大群程度はイージーモードも良いところである。

 

結論から言えば、ロウリア竜騎士団が勝利できる確率は、「絶無」だ。

 

ドッグファイトに突入したファイター5機。その速さに竜騎士団の誰もが追い付ける筈が無く、1秒毎に1騎、また1騎と墜ちていく。

 

『なんだこのはや』

『やめてぇ!!助けてぇ!!』

『みんな逃げろ!!こんなの、こんなの勝てるわげぇ゛』

『畜生、畜生、畜生!!』

 

5分。

それは、戦闘開始よりロウリア竜騎士団250騎が、ファイター5機に殲滅されるまでの時間である。

 

 

 

 

 

 

「艦長、敵航空部隊の殲滅が完了しました。アルファ隊より着艦要請が届いています」

「許可する。アルファ隊によくやったと伝えておいてくれ」

「了解です」

 

第7主力艦隊は、ファイターが交戦を開始する前に既に攻撃を終えていた。何故か?それは「攻撃する目標が存在しない」からだ。

ブルーアイは、目の前に広がる光景に言葉を失っていた。

 

紅く染まり上がった死の海。

 

それは見え得る範囲の海面を赤が埋め尽くし、外に出れば死の匂いが充満しているだろう。4400隻の大艦隊がいた痕跡は、海に浮かぶ木片と肉片、そして海を紅く染め上げる血のみだ。第7艦隊は一応生存者の救助活動を開始しているが、果たしてこの惨劇を生き残った者はいるのだろうか。

海戦は、圧倒的勝利に終わった。しかしその勝利が生み出したその光景は、ブルーアイの心に恐怖を植え付けたのだ。

 

後にEDF日本支部に提出される第7主力艦隊戦闘報告には、こう記されている。

 

 

EDF第7主力艦隊

損害:皆無

 

ロウリア海軍

損害:海軍船4400、ワイバーン250

死者:計測不能

捕虜:0




用語解説&状況説明

東方征伐艦隊
ロウリア王国より出撃した4400隻からなる大艦隊。マイハーク港を制圧する予定が、その前に立ち塞がったEDF日本支部第7主力艦隊に一隻残らず殲滅された。
生存者は0、パーパルディア皇国の観戦武官も乗っていたが諸共木っ端微塵に。

ロウリア王国竜騎士団
東方征伐艦隊の救援要請を受け、総司令部に待機していた250騎全騎で出撃。
結果、要塞空母デスピナから発艦したファイター5機に5分で殲滅された。

EDF日本支部第7主力艦隊
第7艦隊から要塞空母デスピナ、セントエルモ級イージス戦艦4隻を抽出して編成された艦隊。超遠距離からレールガン連装砲による砲撃で東方征伐艦隊を殲滅。ロウリア軍総司令部より飛来した250騎のワイバーンは要塞空母デスピナの艦載機であるファイター5機が発艦。戦闘時間5分で殲滅させた。
これでも主砲とファイターしか使ってない。

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