EDF日本支部召喚   作:クローサー

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本当はもっと長くなる予定だったけど、ダラダラ原作に似た内容をやるのもね?


第2話 接触

EDF日本支部(日本列島)転移から一日。

日本列島より西南西980km地点の上空に、空気を裂く物体が飛行していた。

 

「…まさか、転移なんてものが現実になるなんてな…」

 

第七艦隊旗艦 要塞空母デスピナより発艦した大型攻撃機ホエールのコックピットで操縦桿を握る機長が、小さく呟いた。

大型攻撃機ホエールは、大型輸送機を改修して対地攻撃機へと転用した空中要塞である。機体左側面に40mmガトリング砲、105mm砲、120mm砲、150mm砲を各1門ずつ、ハードポイントに巡航ミサイル発射機を搭載し、地上部隊の支援に特化している。速度こそ遅いが、それでも最高速度マッハ1.5、巡航速度マッハ1を発揮する恐ろしい怪物機だ。(しかしEDF製の兵器の中では、これでも大人しい方なのだ)

 

そんな機体が何故そんな地点を飛行しているのかというと、正に今機長が呟いた「転移」が原因だ。

 

第一会議室で行われた会議の後、EDF日本支部は転移を発表。シェルターでその発表を聞いた市民達は混乱や不安に包まれる事となったが、フォーリナーの姿は確認出来ないという事もあり、EDF日本支部が想定していた暴動などは幸運にも起こることは無かった。

しかし、突然の出来事故にEDF日本支部の物資は限られている。食料は化学的に生産される化学食料を中心としていた為に、配給制とすれば日本列島の生産施設で十分に賄う事が出来るが、燃料弾薬となるとそうは行かない。日本列島は無資源地域だった為に、燃料弾薬は日本列島外からの補給に頼り切っていた。

補給が途切れ続ければ、EDF日本支部は1年で燃料が尽き、戦わずして自滅する。この緊急事態に、第1、第3、第7、第9飛行中隊、第7艦隊は日本列島外の調査任務に出動していた。

 

「果たして、どうなるのやら…」

「機長、レーダー反応アリ!」

 

機長の呟きを遮って、計器類を覗いていた副機長が叫んだ。

 

「数1、速度120km/h!IFF反応無しです!同高度で接近中!」

「此方ホエール!デスピナ、応答求む!」

『此方デスピナ、ホエールどうした?』

「レーダーにアンノウン1捕捉!これより接近及び捕捉、アンノウンが飛行してきた地点の地域調査を試みる!」

『了解した、直ちに日本支部に報告する。通信はそのまま開いて置いてくれ、デスピナを経由させて日本支部に中継する』

「了解!」

 

自然と操縦桿を握る手に力が入る。ここから先は未知の領域、何が起こるか分からない。

 

「皆、覚悟はいいか?」

『応!』

「よし…全兵装安全装置解除。まだ引き金に指は掛けるなよ。此方からの攻撃は厳禁だ」

 

ホエールは僅かにエンジン出力を上げ、アンノウンへ接近する。

数分後、コックピットの機長と副機長の視界に、アンノウンを目視する。しかしそれは、ある意味想定内で、しかしある意味想定外の物だった。

 

 

「………竜………?」

 

 

 

 

 

 

晴天の空の中、1匹の竜が1人の人間を乗せて羽ばたいている。

クワ・トイネ公国の竜騎士マールパティマは、「ワイバーン」と呼ばれる飛竜に乗り、公国の北東部の沿岸哨戒の任に就いていた。

クワ・トイネ公国の北東方向には何もない。青い海が広がっているだけだ。しかし現在、クワ・トイネ公国は隣国のロウリア王国と緊張状態が続いており、何もない北東方向からのロウリア王国軍の奇襲も十分に考えられた為、こうした哨戒任務も発生している。

今日も何もないまま哨戒任務が終わる、そう思っていたマールパティマの視界に、異物を目視する。

 

「ん…?」

 

よく目を凝らし、それを見る。双方が真っ直ぐ近づいている為、接近は速い。

 

「なん、だ…?羽ばたいていない?」

 

彼がよく知る飛竜は、羽ばたかなければ空を飛ぶことは出来ない。しかし真正面から向かってくるそれは、一切羽ばたいていない。彼はすぐに通信用魔法具を懐から取り出して司令部に報告する。

 

「我、未確認騎を発見。これより要撃を開始し、確認を行う」

 

高度差は殆どない。マールパティマは一度未確認騎とすれ違い、後方より距離を詰める事を選択する。

そして、未確認騎とすれ違った。

 

(大きい…)

 

マールパティマの認識からすれば、未確認騎はとてつもなく巨大だった。羽ばたいておらず、翼に付いた何かが2つから大きい音が響いている。茶色の胴体に蒼色で書かれた知らない模様が3つ描かれており、翼の先端から光を放ち、点滅していた。

彼はワイバーンを羽ばたかせて反転、未確認騎の追跡を開始する。大きな風圧を受けつつも、一気に距離を詰めれる。その筈だった。しかし追いつくどころか逆にあっという間に距離を離され始める。

慌ててワイバーン最高速度の235km/hで追跡を試みるが、それでさえも未確認騎は速く、段々と視界から小さくなっていく。

 

「なんなんだ、アレは…っ!?」

「司令部!!司令部!!我、未確認騎の確認、追跡を試みるも速度が違いすぎて追い付けない!未確認騎は本土マイハーク方向へ進行!繰り返す、未確認騎はマイハーク方向へ進行した!」

 

 

 

 

 

 

マールパティマからの報告を聞いた司令部は、大慌てとなっていた。

第三文明圏最強の兵器であるワイバーンでさえも追い付けない未確認騎が、よりにもよってクワ・トイネ公国の中枢都市マイハークに接近していると言うのだ。未確認騎は速度からして、既に本土領空へ侵入している可能性が非常に高い。

マイハーク付近に駐屯していた第6飛竜隊に魔法通信が掛かり、緊急指令が流れる。

 

『第6飛竜隊、全騎発進。未確認騎がマイハークに接近中、領空侵入の可能性極めて大。発見次第直ちに撃墜せよ。繰り返す、発見次第直ちに撃墜せよ』

 

緊急指令を受け、第6飛竜隊が次々と滑走路より空に舞い上がった。全力出撃、12騎全騎。

そして直ちにマイハーク北東方面に飛行し、運良く未確認騎との真正面の正対に成功した。最初は点ほどに小さく見えた未確認騎は、あっという間に大きくなっていく。

その姿に、第6飛竜隊隊員は各々の感想を持つ。

 

「速いな…全員、聞け!導力火炎弾の一斉射撃で未確認騎を撃墜する!未確認騎は我が方の速度を凌駕しているとの事だ、攻撃のチャンスはすれ違う一瞬のみ!各人、日頃の訓練の成果を見せろ!」

 

第6飛竜隊隊長の指示を受けてワイバーン12騎は横並びとなり、口を開けて火球を形成していく。これこそがワイバーンが第三文明圏で最強と言われる所以、導力火炎弾。12発の導力火炎弾を受けて無事だった物体は、少なくとも彼等は知らない。

そうして攻撃のタイミングを伺っていたら、未確認騎は突如として高度を上げ始めた。

 

「なぁっ!?」

 

ワイバーンの最高高度4000mを飛行していた第6飛竜隊にとって、未確認騎の更なる高度上昇は想定の外も外。彼等からしたら4000m以上の高空を飛ぶなどあり得ない事なのだ。

それ故に、ワイバーンの最高高度4000mしか飛行出来ない第6飛竜隊は未確認騎が真上を飛んでいくのを見守る他に無く、唯々己の無力を嘆くしかなかった。

 

 

 

 

 

 

クワ・トイネ公国政治部会。

公国を代表する者達が集う会議の中、首相のカナタは内心で頭を抱えていた。

前日、軍事卿から正体不明の飛行体がマイハーク上空に侵入、同都市を偵察するように旋回飛行した後に去っていったという報告が上げられた。その飛行体は飛竜ワイバーンが追いつかぬ程高速、かつ辿り着けない程に高空を飛行していた。

所属は不明、機体に国旗と確認できる物も見つかっていない。

 

「この報告について、皆はどう思い、どう解釈する?どんな意見でも構わない」

 

カナタの言葉に、真っ先に情報分析部長が発言する。

 

「当部分析担当班によると、西方の第二文明圏列強国「ムー」が開発している飛行機械に酷似しているとの事です。しかしムーの飛行機械と、今回の飛行物体の速度が余りにも違いすぎる上に、何よりも距離が広大過ぎます。我が国から2万kmも離れているのです、幾ら何でも、この距離を飛行するのは非現実的であると思われます」

 

結局は振り出しに戻り、場が膠着する。その時、外交部の幹部がドアを破らんばかりの勢いで場に飛び込んでくる。

 

「報告します!!」

 

その幹部から上げられた報告は、大きく纏めると以下の点になる。

 

本日朝、公国の北側海上に長さ300mにも及ぶ超巨大船が出現。海軍が臨検を行ったところ、EDF日本支部という統治機構の外交官と接触、敵対の意思が無いという旨を伝えてきた。他にも複数事項が判明。

1.EDF日本支部は、突如としてこの世界に転移した。

2.元の世界と断絶した為、哨戒騎にて付近の捜索を行っていた。その際にロデニウス大陸を発見。捜索活動中に公国の領空侵犯をしてしまった事は深く謝罪する。

3.クワ・トイネ公国と直ちに会談を行いたい。

 

余りにも突拍子も無い、普通なら考えられない内容に政治部会は荒れた。

しかしEDF日本支部という統治機構は礼節を弁え、尚且つ謝罪や会談の申し入れは一応の筋は通っている。

この事から、まず外交官を官邸に招待する事が決定された。

 

 

その後の会談及びEDF日本支部視察を経て、EDF日本支部とクワ・トイネ公国は正式に国交を締結することに成功した。

主な内容は以下の通りである。

 

1.クワ・トイネ公国はEDF日本支部に必要量の食料を輸出する。

2.クワ・トイネ公国のマイハーク港の拡充、マイハーク港から穀倉地帯へのインフラを整備する。

3.為替レートの早急整備を行う。

4..EDF日本支部は食料一括購入の見返りとして、1年間はクワ・トイネ公国内のインフラ整備を行う。その後は為替レートによる食料額に応じた対応を行う。

5..EDF日本支部、クワ・トイネ公国両国の不可侵条約締結に向けた話し合いを継続する。

 

こうして、EDF日本支部はクワ・トイネ公国と友好な関係を結び、クワ・トイネ公国は強大な軍事力を誇る国家との友好関係の獲得に、EDF日本支部は必要資源の補給に成功した。以後EDF日本支部とクワ・トイネ公国は運命共同体となり、後に起こる動乱に挑むこととなる。




用語解説
クワ・トイネ公国
原作(日本国召喚)でも最初に接触する国家。
大地の神の祝福によって領土全域が放っておいても農作物が生えてくる不思議な大地によって、食料自給率が100%を遥かに超えている。水と食糧はタダ、家畜でさえもうまい餌を食べられるとか。地球農業の苦労とは一体。
EDF日本支部も超貴重な天然食料が市民達にも腹一杯食べさせる事が出来ると聞いて、全員が目の色を変えたらしい。

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