EDF日本支部召喚   作:クローサー

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第16話 前哨戦(改)

アルタラス王国 首都ル・ブリアス。

そこに住まう全員が、空を見上げていた。

 

「なんて、光景だ…」

 

ターラ14世も、王女ルミエスと共に王城の一室から見上げている。ターラ14世はなんとか言葉を紡いだが、ルミエスに至っては開いた口が塞がっていない。

その姿を横目で見る、EDF日本支部より派遣された、アルタラス王国連絡館代表の情報局員。彼は、思わず苦笑しそうになりながら、再び空を…否、空に浮かぶヤマトを見上げた。

アルタラス王国防衛に派遣されたヤマトは400ノットの高速で航行した結果、予定より大幅に速くアルタラス王国に到着してしまい、折角だと言うことでアルタラス王国に対し、少しだけ軍事的なデモンストレーションを行う事を決定した。ただ単に空中に浮いているだけだが、1800mの戦艦が空を飛んでいる光景は、人々の目を奪うには余りにも十分なインパクトを持っていた。

 

「如何でしょうか?我がEDFの要塞戦艦ヤマトは」

「…言葉を失うとは、正にこの事を指すのですな。まさかあのような物が、空を飛んでいるとは…」

「EDFの最新技術を結集させ、3ヶ月前に建造されたばかりの最新鋭兵器です。本来の予定ならば、対パーパルディア皇国に向けて投入される予定でしたが…貴国の危機を知り、急遽作戦開始まで貴国の防衛に投入される事となりました。100cmの巨大主砲や無数の38cm、12cm砲の砲火力は、貴国に侵攻するパーパルディア艦隊を貴国に被害を出す前に容易に粉砕するでしょう」

「…何故、我が国に此処まで?」

 

ターラ14世は思わず、純粋な疑問を情報局員にぶつけた。

 

「世界のニュースの内容から察するに、貴国はパーパルディア皇国に宣戦布告する理由を求めていたように思える。だからこそ、その目標を達成すれば…我が国の事を切り捨てる事は出来た筈。なのに…」

「それは、とても単純な事ですよ」

 

ターラ14世の言葉を、情報局員は無理矢理遮った。

 

「確かに其方の言う通りの事を、我々は行う事が出来ました。しかし、侵略者に蹂躙されようとしている「友好国」を見捨てる程、我々は冷酷ではありません」

 

 

「断言いたしましょう。我がEDFの名と誇りに賭けて、アルタラス王国をパーパルディア皇国より守り抜くと。彼の国の人間には誰一人として、この地に一歩たりとも踏ませない事を」

 

 

 

 

 

アルタラス王国より、北東130kmの海域。

そこは抜けるような晴れた空が広がり、風もほとんど吹かない穏やかな海。そこをパーパルディア皇国第4艦隊は、アルタラス王国に向けて進んでいた。

100門級戦列艦を含んだ砲艦211隻、竜母12隻、地竜、馬、陸軍を運んでいる揚陸艦101隻、計324隻。更に航空戦力として竜母一隻につき、ワイバーンロードを20騎ずつ配備している。その戦力は第三文明圏内に於いて、間違いなく他の追随を許さぬ圧倒的戦力だ。

第4艦隊が何故、此処にいるのか。それはEDF日本支部の宣戦布告理由を捏造した叛逆国 アルタラス王国を滅する為、そして愚かにも皇国に宣戦布告を宣言した蛮国への見せしめの為だ。

その中でも、第4艦隊の旗艦を務める「シラント」の船尾楼の上に居る将軍 シウスは「冷血」かつ「無慈悲」な戦術家という評価に違わぬ凄然たる表情で、揺らめく海を眺めている。

そこに、航海士より報告が上がる。

 

「まもなく、アルタラス王国軍のワイバーン飛行圏内に入ります」

「まだ来ぬか…対空魔振感知器に反応が出たら、すぐに竜母から飛竜隊100騎を発進。艦隊上空で警戒態勢に入れ。作戦行動中は防衛を主とし、艦隊に敵を近付けさせるな。各小隊は飛竜隊大隊長の指示に従え。決して深追いはするな」

 

ワイバーンなどの竜種は、「魔素」と呼ばれるエネルギーを使って飛行している。その為にワイバーンを視覚外から発見する為に開発された対空レーダー「対空魔振感知器」に反応があり次第、ワイバーンロード隊を艦隊上空で警戒任務にあてるように指示する。

アルタラス王国海軍はまだ見えない。シウスはここら辺りでアルタラス王国海軍の船が見えて来るだろうと予想していたのだが、その影すら見えていない事に僅かながらの不信感を持っていた。しかしここでそれを考えても何も始まらない。アルタラス王国海軍に竜母が無いことは分かっている、恐らく、いや十中八九本国から直接洋上の此処へとワイバーンを飛ばしてくるだろう。もしかしたらワイバーンによる攻撃に気を取られた隙に此方にこっそりと近付こうとしているのかもしれない。が、そんな小手先の策などこの艦隊の力の前では容易に引き裂ける。

最小の被害で最大の戦果を。シウスは決して敵を侮る事は無く、水平線の先を睨み

 

 

轟ッッッ!!!!!

 

 

前方からマッハ21で飛来した巨大な衝撃波に、パーパルディア艦隊は打ち付けられた。瞬間的にあらゆる物体が打ち付けられ、衝撃波が持つその膨大なエネルギーに刹那と耐え切れる物は一つも存在しなかった。木材は粉々となり、人の肉は弾け、その中の骨は肉が弾けると同時にバキバキと嫌な音を立てて悲鳴を上げる。そして今艦隊が存在していた(・・・・)場所に2つの巨大な、全周約2〜3kmにも及ぶ海面のクレーターが形成された。そのクレーターからアルタラス王国の方向に、数キロに渡って海面が割れ、数百メートルの海面の谷が出来る。

そして艦隊の残骸であった其れ等は巻き上げられるように、その力や存在が無意味であったと言わんばかりに混ざり合い、打ち上げられ、吹き飛んだ。海面のクレーターが残骸の一部を巻き込みながら、開いた空間を再び海水が埋め尽くす。

僅か5秒の出来事。324隻のパーパルディア第4艦隊は、消滅した。

 

 

 

 

 

 

「グラインドバスター、着弾。敵艦隊消滅しました」

「…出力100%で撃つと、これ程の衝撃と反動が生まれるのか…」

 

パーパルディア第4艦隊が存在していた地点からおよそ100km南の海域。

其処にはアルタラス王国より出撃し、海面にその巨体を浮かばせている要塞戦艦ヤマトが2基のストーンヘンジを起動し、砲塔を約90度旋回して僅かな仰角を付け、砲口を水平線に睨ませていた。その砲身からは未だに煙が吐き出されており、膨大な熱量が発生した事を伺わせる。

ヤマトはつい先程、100km先に存在していたパーパルディア第4艦隊に対し、ストーンヘンジ2基による砲撃を行った。約10秒の砲弾装填、約20秒の旋回及び照準、約1分の砲身内充電、第1第2第3の安全装置解除、艦長が持つ特殊キーによる最終安全装置解除というプロセスを経て限界ギリギリまで引き絞られたそれは、砲手が発射ボタンを押しただけであっさりと解き放たれた。装填されていた特殊貫通弾 グラインドバスターは、装薬の初期加速と電磁加速による終末加速を経て、僅か500mの砲身内でマッハ21の超音速を獲得。砲身より飛び出した2発の100cmグラインドバスターは、およそ14秒間に及ぶ飛翔の後、パーパルディア第4艦隊中心部に着弾。全運動エネルギーを全方位に解放し、パーパルディア皇国第4艦隊を消滅させた。

その威力と引き換えに、ストーンヘンジ2基では今も膨大な熱量を冷却しており、発射の瞬間に至ってはヤマトの船体が大きな悲鳴を上げた。マザーシップを撃退し得る威力を持つのは確信出来るし、あの(・・)兵器開発部が直々に設計図を引いたという事もあって信頼はしているのだが、実際に乗る者からしたら反動に耐え切れずにヤマトが真っ二つに割れて沈んでしまうのではないかと冷や汗が流れてしまう。

 

「…やはり試射はして正解だったな。ストーンヘンジの対地実射砲撃は転移前でも行われた事は無い。ライカがしっかりと砲撃の様子を記録してくれてるだろうしな」

「我々も、問題点を洗い出せた上に敵艦隊を殲滅出来て一石三鳥、ですか」

「ああ。…ストーンヘンジの冷却率は?」

「現在20%、砲身に亀裂等の問題無し」

「作戦の開始時間はどうだ?」

「変更はありません。およそ24時間後に発動されます」

「分かった。機関全速、進路2-7-0。我々も向かうとしよう」

 

 

 

 

 

 

こうして、EDF日本支部とパーパルディア皇国の前哨戦は幕を閉じた。

この戦いによってパーパルディア皇国は主力艦隊の一つを失う。対してEDF日本支部は友好国であるアルタラス王国の防衛に成功する。

パーパルディア皇国は第4艦隊の通信途絶に暫く気付く事なく、それを把握したのは翌日の事だった。

しかし途絶の原因を魔力通信機の故障であると判断し、調査は極めておざなりなものであった。それでは気付ける物も気付かない。

その間にも、EDF第7艦隊、第1第2師団、要塞戦艦ヤマトはパーパルディア皇国へと近付いていった。

 

そして時計が中央歴1639年11月14日を指すと同時に、EDF日本支部より全出撃部隊に対してオペレーション・パルヴァライゼーションの開始を通達。

史上最大のパワーゲームによる電撃戦が、幕を上げる。




用語解説&状況説明
パーパルディア皇国第4艦隊
アルタラス王国へ侵攻していたが、要塞戦艦ヤマトのストーンヘンジによる砲撃(試射)によって殲滅。これにムーの観戦武官も載っていたが…(マイラスではない)

EDF日本支部
オペレーション・パルヴァライゼーションを発動。

パーパルディア皇国
第4艦隊の通信途絶に気づくが、通信機の故障と片付けてしまった。

アルタラス王国
パーパルディア皇国第4艦隊の攻撃を受けかけたが、EDF日本支部が派遣した要塞戦艦ヤマトよって危機を回避。
原作(日本国召喚)の亡国ルートを回避する事になった。やったねルミエス。

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