鬼滅世界に喰種を突っ込んだお話(一発ネタ)   作:こしあんあんこ

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童磨さんばかり書いてたので久しぶりに上げます


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 女の背を追いかけるのはこれで三度目だ。一度目は幼少の頃家出を始めた時。二度目はエト。どちらも強引に手を引っぱられて歩まされていたが今回の少女は俺の手を引くことはなかった。小さな身体だ、と思う。俺よりも一回りも二回りも小さいそれは誰かに似ていた。髪を一纏めにして、蝶の髪飾りを付けている少女は似ても似つかない筈なのに、見おろしたその光景は何処かで見た気がしてならなかった。記憶の奥底で、ため息が聞こえてくる。

 

――全く、君ときたら。……また伸びたのかね

 

 見上げるのは首がとても疲れるよ、ふてぶてしく笑う少女と目の前の少女が重なって見える。ああ、そうか。エトと背丈が似ているんだ。パキリ、枝を踏む感触とそれが折れる音がする。暗く生い茂る森の中、光も入らぬ人気のない森の中で少女が立ち止まった。それに従って向かい合った。

 

「……此処で、いいのか?」

 

「ええ、此処なら誰も来ることはないでしょう」

 

 穏やかに笑ってはいるが有無を言わさぬ空気を感じ取る。カチリ、同時に刀の唾を動かす音が聞こえた。すらりと引き抜かれる刀身は細く、僅かばかりに面積の多い部分には【悪鬼】と刻まれた文字が剥き出しになって現れた。翻すように刀を構えればその裏側には【滅殺】の文字が見える。今にも殺し合いが行われる時だった。待て、呼び止めたのは低い男の声だった。どうかしましたか、どうやら話は聞く気はあるようだ。

 

「話をするのに、そんなもの必要ないだろう?」

 

 此処には話すために来た、違うか?問いかければそうですねと少女はあっさりと刀を鞘に納めて頷いた。

 

「私と仲良くするつもりがあるんですね?良かった!」

 

 だけど、仲良くするにはいくつか聞くことがあります。そう続けて少女は笑った。

 

「貴方は、何人殺しましたか?」

 

「……それは、」

 

 ……その問いに答えることは出来なかった。食事の為、命令に従って、自分を守るため。理由はどうであれその時に殺した数は数えきれなかった。

 

――ああ、私は怒っているのではないのですよ?確認をしているだけ。正確な数を

 

「……数を、知ってどうする?」

 

「貴方は、正しく罰を受けて生まれ変わるのです」

 

 人を殺した分だけ、私が貴方を拷問します。言い慣れた口上を告げるように少女は更に言葉を続ける。

 

「目玉をほじくり出し、お腹を切って内臓を引きずり出したり」

 

 少女は身振り手振りで自身の瞼を触れて、腹を撫で上げる少女の動きはまるで此方を触れているようだった。

 

「その痛み苦しみを耐え抜いた時あなたの罪は許される」

 

 一緒に頑張りましょう、そう続けて少女はまた微笑んだ。それ以外に道はないのだと言わんばかりだ。……CCG(ハト)もそんな目で喰種が居なくなれば幸福なのだと言っていた。喰種さえいなければ平和になることを信じて疑わない様子は何処までも純粋で奉仕の心に満ち足りていた、……きっと、俺たちが生まれ間違えたのは正しいのだろう。俺の様子を案じた様子で目の前の少女が肩を優しく叩いた。

 

「大丈夫、鬼ですから死んだりしませんし後遺症も残りません!」

 

 一緒に頑張りましょう、満面の笑みを浮かべる姿は彼らとダブって見えた。

 

「そうか。……それが、君なりの救い方。なんだろうな」

 

「ええ、そうです!だから「だけど俺は、今更そんなことで許されるなんて思わないよ」」

 

 遮って、言葉を発する。何も知らないで食べていたあの頃だって、あの子も両親も喰らった時だって、きっと罪を犯して生きていた。自覚しても死ぬことを選ばないで殺しを繰り返す臆病者に、贖罪などいらなかった。

 

「……仲良くするのは無理なようですね、残念残念」

 

 あっという間に姿が消える。ガチン、刀の切っ先が発現させた甲赫にぶつかり、火花を散らしながら擦って離れていった。……速い、がまだ見えない訳ではなかった。赤い赫眼が少女を見つめた。

 

「……随分な、挨拶だ」

 

「ふふッ、そちらこそ。……それが、貴方の血鬼術ですか?」

 

 お互い穏やかに話し合いながら動きを牽制しあい、出方を窺った。

 

「手の内は明かさないモノだが、生まれつきとだけ言っておこう」

 

「まあ、生まれつきなんて……怖いですね」

 

 突きを繰り出す少女の斬撃をいなし、受け止める。反撃に出ることは、かなわなかった。自在に動く尾赫では貫いて傷つけてしまう、命令でもない限り殺すなど毛頭にもなかったから武器を壊そうと動くも、目の前の少女の素早い体捌きに対し、甲赫の重さのある自身では難しかった。決定的な一撃を繰り出せないのは少女も同様だ。力がないのは先程から突き出される斬撃で分かりきっている。速さで勢いをつけてはいるが、これでは甲赫ではない部分の喰種の硬い皮膚を突き刺すことは出来ないだろう。クインケでなければ刺さることのない身体。今少女の持つ刀がそれに似た材質ならばその刃は届きうるかもしれないが、被虐の趣味は残念ながらなかった。……避ける、いなす、受け止めて。時間ばかりが過ぎていく。その間に夕暮れの日は既に落ちてしまった。夜の気配が色濃くなっている。森の薄暗さは増し、夜露の冷たさが皮膚を震わせる。互いに吐く息は白く染まり、冷たさを如実に表している。

 

「……埒が明かないな」

 

 いい加減、疲れないか?問いかけに答えるように、少女は刀を構える。木の根元を踏み砕き、少女は走り出した。一歩一歩が砕けるような足跡が残るも、今度は目で追うことが出来ない。右目が真っ暗になって、左目の見える視界に蝶を模した少女の羽織が見える。

 

――眼球を貫かれたようだった

 

 灼熱の痛みに襲われる。なるほど、粘膜か。激痛に襲われながら何処かで冷え切った思考は他人事のように感心する。引き抜かれると少女の持つ刀身には赤黒い血がこびりつく。だが、追撃は来ない。

 

「……どうした、追撃はしないのか?」

 

 問いかけに少女は答えない。治る右目で視界が広がれば少女は僅かに目を見開いているのが見える。何を驚いているのか、首を傾げ少女を見れば暗い森の森の隙間から掻い潜るように一羽の鴉が飛び出した。カアカアと鳴きながら、言葉を発する生き物は少年の飼っている鴉を彷彿とさせる。少女の肩に止まった鴉は言葉を何かを発し飛び去った。カチン、刀の鍔と鞘がかち合う音がする。刀を納めたようだ。少女は目の前に立っている。ひしひしと圧を与えた殺意は四散し、もう何もする気配はなかった。不本意な様子で、少女は言葉を紡ぐ。

 

「……お館様からの命令です。私と一緒に来なさい」

 

 パン、と手を叩けば何処からか現れた黒い服の人間たちが視界を覆い隠す、衝撃と共に何かに持ち上げられる感触がする。あの娘は一緒に来いと言っていた。何処かへ連れ出されるのだろう。揺れる感触を感じながら、それに身を委ねて従った。

 




知ってましたかしのぶさんの身長はエトと同じ身長なのです(プロフィールで気づいた)
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