「プリキュア版深夜の文字書き1時間一本勝負」に参加した作品を文字数の関係でまとめて投稿しています。

◆ウェディングのお相手は?
(第50回・ドキドキ!プリキュア・相田マナ・菱川六花・2016年6月25日、Pixivさまにて初公開)
 あの、大変だった日からしばらく
 お茶会で語られる花嫁衣装のお話
 未来のお話はちょっと気になって…

◆わたしのお母さんは…
(第53回・魔法つかいプリキュア!・十六夜リコ・花海ことは・2016年7月16日、Pixivさまにて初公開)
 お母さんという存在
 それがどういうものか迷う時
 優しい存在が教えてくれて…

◆私がホタルを嫌いな理由
(第54回・ドキドキ!プリキュア・剣崎真琴・2016年7月23日、Pixivさまにて初公開)
 ホタルは大嫌い
 あの仄かなあかり
 人々をとらえて離さないひかりが…

◆アイドルという存在
(第55回・ドキドキ!プリキュア・相田マナ・菱川六花・2016年7月30日、Pixivさまにて初公開)
 唐突にクラスの様子が変わる
 それは、ひとりの転校生から
 心まで、大きく変わって…

◆花言葉に想いをのせて
(第56回・魔法つかいプリキュア!・朝日奈みらい・十六夜リコ・花海ことは・2016年8月6日、Pixivさまにて初公開)
 たくさんのお花が広がる景色
 そこで知る、お花が持つ素敵な言葉たち
 その言葉に想いをのせてみたらもっと素敵、そう思って

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「プリキュア版深夜の文字書き1時間一本勝負」参加作品(3)

◆ウェディングのお相手は?

 

「ずるい! あたし見てないけど!?」

 マナの大きな声が四葉邸の庭に響き渡る。

 ガタッと音をさせて椅子を立つマナは本当に悔しそうな顔。

 今日は、あの、本当に大変だと思った出来事から最初の「正式な」お茶会の日。

 それはその時の思い出話から始まった。

 街じゅう混乱に陥ったあの夜、失われていく私たちの思い出。

 でも、私があの時のことで一番覚えているのは、マナの結婚式、ウエディングドレス。

 ありすもその時の印象が深かったみたいで、最初に話題に上ったのがマナの花嫁衣装だった。

「4人ともずるい! あたしも見たかったのに!」

 まだプンプンしているマナ。本当にくやしいみたい。

「大切な未来ですから、今見てしまったらつまらないですよ?」

 そんなマナをたしなめるありす。マナはその言葉で少しは落ち着いたのか椅子にすとんと座る。

 そんな中、私はマナのウエディングドレスを思い浮かべる。

 おばあさんからママ、そして、マナへと引き継がれた大切なウェディングドレス。

 それは所々古くなっているけど、それこそが歴史を表す素敵なしるし。

 マナは落ち着いたようだけど、ちょっとだけ頬が膨らんでいた。

 

「うぅ、ずるい、ずるすぎだよ!」

 帰り道、思い出したようにマナはプンプンしていた。

 それは、見ることができた私たちに対して怒っているのではなく、

「あたしも見たかった、見たかったよ!」

 どうも見ることができなかった自分に怒っているみたいで…

 私はたしなめながら道を歩いていた。

 ブツブツ言っていたマナ。

 まこぴーや亜久里ちゃんと別れて、私の家の前までついてもまだブツブツ。

「もう、マナ、ブツブツ言ってもどうもならないでしょ?」

 私は諦めさせるために伝えるけど、マナは突然パッと私を見る。

「だって、相手もいたんでしょう? 相手が誰か気になるもの!」

 その言葉に私の体の力がちょっと抜ける。

 自分のウエディングドレス姿が見えないことかと思ったら、相手がわからないことが気になっていたなんて…私は驚くとともに、心の中が少しだけ闇に包まれる。

 マナは…やっぱり男の人と幸せな結婚をすることが嬉しいのだろうか…

 私の想いは…やっぱり幻のようなもので…

 想うほどに私の心は沈んでいく。

 マナとはずっと一緒にいられないのかなって、そう思い始めていると、マナは私の顔をじっと覗き込む。

「どうしたの? 六花」

 私はハッとしてマナの顔を見て伝える。

「な、なんでもないわ」

 少しどもってしまったのはご愛嬌、と思ってもらえると嬉しいけど…

 これ以上、自分の心が嫌になっていくのを抑えたくて、玄関の扉を開ける。

「ね、もしわかったら教えて欲しいけど…」

 マナが恐る恐るといった感じで私に声をかける。

 私は振り返る。本当にちょっとだけ心配そうな顔。

「相手は、六花だった?」

 本当に心配といった顔。真っ赤な顔。

 私はあの時は列席者としていたわけだから違う。

 けど…私はそのことがちょっと悔しくて思わず言う。

「さぁ? もう覚えていないわよ!」

 それだけを伝えて私は家の中に入る。

 マナの残念そうな声が届く。私は鍵を閉める。

 でも…その、鍵を回す手まで風邪をひいたように熱くなっていた。

 

 

 

◆わたしのお母さんは…

 

 わたしのお母さん!

 みらい・リコ・モフルン!

 わたしのことを大切にしてくれるお母さん!

 みんな大好き!

 でも、みらいにはお母さんがいて、リコにもいるって聞いていて…あれれ?

 ふたりともお母さんはひとり。モフルンもお母さんはみらいひとり。

 でも、わたしは3人…あれれ? あれれ?

 わたしはわからなくておもわずモフルンに聞いちゃった。

「モフルンはわたしのお母さんだよね?」

「そうモフ! モフルンははーちゃんのお母さんモフ」

 嬉しそうな顔、わたしも嬉しくなっちゃう。

 でも聞きたいことちゃんと聞かないと。

「でも、モフルンはお母さんがひとりだよね?」

「そうモフ。みらいがお母さんモフ」

「わたしは3人いるけどどうして?」

「モ、モフ…」

 モフルン、困った顔になっちゃった。

 かわいいけど、答え出ないみたい…

 わたしはモフルンにお礼を言ってお部屋に戻った。

 

 夜のお部屋は暗くてちょっと怖い。

 ベランダに出ると空はお月様。まん丸がちょっとなくなって十六夜。リコの名前と一緒。

 そのお月様を見ていたら窓が開く音。

 ゆっくり振り返るとリコがいてドキっとした。

「はーちゃんはかぐや姫だったかしら?」

「かぐや姫?」

 どこのお姫様? わからなくて首をかしげる。

 リコは小さく笑うとわたしの横に並んで月を見つめる。

 横顔がとても綺麗なわたしのお母さん…だよね?

「それで、はーちゃんは何がお悩みなのかしら」

 わたしはその言葉にドッキーンとしちゃう。

 本人から尋ねられたら言えなくなっちゃうよ…

 わたしは何も言えなくて、リコから視線を外してお月様を見つめる。

 リコも月を見ながら、小さな声でささやく。

「わたしははーちゃんのお母さんだから、はーちゃんの悩み、聞いてあげたいの」

 その囁きにわたしは思わずその横顔をみつめて、言葉をかける。

「そう、お母さん! リコはお母さん! でも、みらいもモフルンもお母さん…でもみんなのお母さんはひとり…わたしの本当のお母さんは誰?」

 一気にあふれる言葉。リコは最初はすごい困ったような顔をしていたけど、だんだんと優しくなって…

「私たちみんながお母さんよ?」

 本当に優しい顔、わたしはじっと見つめる。わたしはわからなくてリコの顔をじっと見つめる。

「はーちゃんは私たち3人が見つけた大切な子。だから3人がお母さん」

 その言葉を聞いてなんだか少し納得が出来た気がする。

 3人が見つけてくれたから今のわたしが、プリキュアになれたわたしがいる。

 そう思うと、3人がお母さんでいてくれて、お母さんが3人いれくれて本当によかったって思う。

「という答えでいいかしら?」

「うんっ!」

 わたしはリコに抱きつく。

 リコはびっくりしたように、でも、わたしのことを抱きしめてくれる。

 わたしはそのままリコに抱きついて甘えちゃう。

 リコはあたたかくて、とても落ち着く。

「あ~っ! リコずるい! 私もはーちゃんともふもふする!」

「モフルンもモフモフするモフ!」

 ふたりのお母さんが現れて、とっても幸せ、感じて。

 

 

 

◆私がホタルを嫌いな理由

 

 私はホタルという生き物が嫌い。

 その虫が発する黄色の光は暗い夜を照らすこともできないくらい仄かなのに、ただの自己主張なのに、人々の心をとらえて離さない。

 未だに現れない王女様。私の歌はホタルの光ほど仄かにも王女様の心をとらえることができないのかも…そう考えると、ただの嫉妬とはわかっているけど、相手はただの虫だってわかっているけど、でも、でも…私はホタルのことを嫌いにしかなれなかった。

 

「まこぴー!」

「今日もかわいいー!」

「こっちみてー!」

 MCが終わり、ライブ会場には私への声が響き渡る。

 笑顔で応えると、一層その声は大きくなる。笑顔も大きくなる。

 手を振り応えて、次の曲、今日の最後の曲をコールする。

「最後の歌です。聴いてください…『星空の帰り道』…」

 静かに照明が落とされる。

 ゆっくり響く前奏、光り始めるサイリウム。

 その色は様々だけど、まるでホタルを思わせる。

 夜を照らすほどの明るさはないけど、自分はここにいるんだっていう自己主張のあかり。

 私と一緒。王女様、私はここにいます。聞いていますか…? そう、自己主張するだけに思える私の歌。でも、仕事という首輪が私ののどを震わせる。会場に歌声を響かせる。

 いつも決まっている、この歌はライブの時の最後の歌。

 私はこの歌を最後には本当はしたくなかった。

 あまりに悲しすぎるから。

 そして、あのサイリウムのあかりがあまりにホタルを思わせるから。

 でも、大人の事情でこれと決まっているとダビィに聞いた。

 私は逆らうこともできずにいつものように歌を空間に解いていく。

 涙があふれそうになるのをこらえて、王女様へのメッセージをたっぷりと乗せて、私の想いをすべての言葉に織り交ぜて、歌う。

 ただの自己主張かも、そんな想いを頭のすみになんとか押しのけて。

 

「おつかれさま、真琴」

 全てが終わったあと、、ダビィが私をねぎらってくれる。

 私は受け取ったタオルで顔を拭く。

 この時に少しだけあふれる涙も染み込ませる。

「今日もとてもよかったわ」

 私は顔からタオルを離して「ありがとう」とただ一言。

 インカムを外してそのまま洗面台へ向かう。

 何か言いたそうなダビィの視線を無視して、タオルを顔に再度押し付けながら。

 

「はぁ…」

 大きなため息、ダビィに聞かれないようにそっと。

 王女様への想いがあふれる。涙があふれる。

 それをそのまま冷たい水で押し流す。

 でも、頭の中では回り出す。

 いつになったら現れるの…王女様…アン…

 そっと、心の中で囁くお名前。

 私の胸は恥ずかしさと申し訳なさであふれるけど、でも…後に心に浮かぶのはいつまでも終わらない日々の予感。

 私はいつまで大量のホタルを見ながら王女様を想う歌を歌えばいいのだろう…

 そう思うとまたもう一度、ため息が出てしまう。

 熱い、涙とともに…

 

 

 

◆アイドルという存在

 

 アイドルという存在、その存在は今までマナを通してしか知らなかった。

 歌って、踊って、笑顔を振りまいて、光の洪水の中に立つその姿は幻みたいで、本当に存在しているような気がしなくて…私はどうしてもその存在を認める気にはならなかった。

 マナが、可愛いアイドルにご執心になっているのも相まって。

 

 今まで何人ものアイドルが出てきては消えていって、マナはその度に新しいアイドルを好きになって、そんな気持ちになるマナのこともよくわからなかった。

 

 でも、ただ憧れるだけだった存在だったアイドル。

 それが、こんなに近くになるなんて、全く思っていなかった。

 私たちの仲間として、プリキュアとして…

 

 転校してきたまこぴーの人気はとんでもないものだった。

 立っているだけで華やかに、笑顔を振りまけばみんなの顔はデレデレに。

 それは隣のマナも。デレデレっとした顔で頬をつねたくなる。

 

 でも、それ以上に、私は私が感じている感情がわからなかった。

 胸が締め付けられるような、鼓動が激しくなるような。

 

「まこぴーって本当にかわいいよね」

 ふいに口をつくマナの言葉。

 私は「そうね」と感情のない言葉をつぶやく。

 それだけでお話が終わればいいのに。

 それでも続く、マナの言葉。私は感情を止める。

 そして、耳も止める。マナの言葉を聞かないように。

 ただ、返事だけできるようにわずかばかり耳を開いて。

 

 マナの言葉は続く。

 いつもの通学路は徐々に灰色に染まったように感じていく。

 いつまでも続くマナの賞賛の言葉。

 私の心は耐えられなくなる。

 耐えられなくなって…

 …

 

「え?」

 それは、思いがけないマナのすっとんきょうな声。

「え?」

 私も同じような口調で声を返す。

 マナは立ち止まって不思議そうな顔を向ける。

「そんな必要はないよ?」

 マナはわけのわからない言葉を返す。

 私も不思議そうな顔でマナを見つめる。

 どうしていきなりそんな顔に? どうしていきなりそんなことを言うの?

 私の不思議はマナの言葉で解決する。

「六花はアイドルになったらだめだよ?」

 それで、私が何を言ったか、わかった。

『私もアイドルになろうかな』

 思わず出てしまった言葉。恥ずかしすぎて顔が真っ赤になる。

「六花がアイドルになったら人気が出ちゃってあたし寂しいよ」

 ふざけていない、真剣な顔。

 私はもっと顔が赤くなってどうしようもなくなる。

 まこぴーに嫉妬していた自分に、マナにそこまで愛されている自分に、そして…

『そうしたら、マナのこと、ひとりじめできるのかな…』

 そのあとにつぶやいたその言葉に…

 

 

 

◆花言葉に想いをのせて

 

「はー…」

 思わず出ちゃう声。

 とーっても綺麗な黄色の花畑。

 お花の黄色と葉っぱの緑と空の青と雲の白だけしか見えない場所。

「はー…」

 わたしの左と右に立つみらいとリコも同じ声を出してる。

「すごいひまわり畑でしょう?」

 おばあさまはにこにこして言うから思わずうんってうなずいちゃう。

 こんなに素敵な場所は初めて見たよ。

 わたしの頭の中に時々浮かぶピンク色の花畑と同じくらい、とーってもとーっても素敵!

 でも…

「これ、なんて名前のお花?」

 そのわたしの言葉にみんな「あらら」って顔してる。

 おかしいこと言ったかな?

 

「このお花はね、ひまわり、って言うの」

 教えてくれたのはリコ。

「夏を代表するお花だよ」

 みらいも説明をしてくれる。

 夏を代表する黄色いお花はおひさまみたいな形、おひさまみたいな色。

 わたしは風に揺れているひまわり畑をずっとながめる。

 いつまで見ていても見飽きない。とっても素敵な景色。

「はー…」

 何度もため息が出ちゃう。

 

「はーちゃーん! お弁当にしようよー!」

「はーい!」

 屋根のあるところから届くみらいの声にモフルンを抱っこ。

「はーちゃん、嬉しそうモフ」

「うんっ! こんなきれいなお花畑が見られるなんてワクワクもんだし!」

 モフルンのお目々もキラキラ。

 わたしもとても嬉しくてキラキラの気持ち。

 走って向かうと、たくさんのお弁当が並んでいてとってもおいしそう!

「あ~んっ!」

 おにぎりも、からあげも、黄色いお花に囲まれているともっとおいしく感じちゃう。

「そう言えばはーちゃんは花言葉って知っているかしら?」

 おばあさまの言葉にわたしは「はー…」って言いながら首をかしげる。

「どんなお花にも言葉がいくつか与えられているの。それが花言葉。例えばひまわりは『崇拝』とか『あなただけを見つめている』とかあるの」

「はー…」

 もう一度、思わず声に出しちゃう。お花にはひとつひとつ言葉もついているなんて知らなかった。

「その言葉に合わせてお花を贈る習慣もあるの。深紅のバラの花を贈るのはその代表みたいなものね」

「どうして?」

「それは『あなたを愛しています』という意味があるからよ」

 それを聞いてわたしはもっと沢山の花言葉を覚えてみたいって思った。お花のこと、もっと沢山好きになれそうだから。

 その時、わたしはいいことを思いついちゃった。

 

「ただいま」

 次の日、わたしは早速お花屋さんに行ってひまわりのお花を買ってきた。

「おかえり、はーちゃん。どこにお出かけしてたの?」

 みらいとリコとモフルンがお出迎えしてくれる。

「実は…はいっ!」

 3人に買ってきたひまわりのお花をプレゼント。

「まぁ…これを私に?」

 リコがびっくりした顔。みらいもモフルンも。

「うんっ。いつもわたしのことを見守ってくれる3人に『好き』って気持ちをこめて」

 ひまわりに『好き』って花言葉はなかったけど、熱愛とか愛情とかって言葉は好きって言葉に近いって、花言葉辞典と国語辞典で調べてわかったから。昨日のひまわり畑のことも大切な思い出として3人にも残って欲しいから、だからひまわりの花。

「ありがとう! 嬉しいよ、はーちゃん!」

 みらいは大きな笑顔で本当に嬉しそう。リコもモフルンも。

 わたしも本当に嬉しくて、もう一度大きな笑顔になっちゃった。

 また、お花をプレゼントして、みんなに喜んでほしいなって思いながら。



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