「プリキュア版深夜の文字書き1時間一本勝負」に参加した作品を文字数の関係でまとめて投稿しています。

◆鋭さと、あたたかさと、
(第74回・ドキドキ!プリキュア・菱川六花・剣崎真琴・りっこと・2016年12月10日、Pixivさまにて初公開)
 厳しさだけではない、あたたかさも
 そんな冬の夜のような彼女
 思っていると足は勝手にすすんでしまって…

◆聖夜のすごしかた?
(第76回・フレッシュプリキュア!・桃園ラブ・東せつな・2016年12月24日、Pixivさまにて初公開)
 聖夜、聞いていたのは聖堂へいくこと
 でも、そんなことなく過ごす夜
 理由がわからなくて不思議に思っていると…

◆振り返りたくない一年の終わりに
(第77回・ハートキャッチプリキュア!・花咲つぼみ・月影ゆり・2016年12月31日、Pixivさまにて初公開)
 あまりに酷い現実、
 いつまでも心の中は受け入れられなくて、
 でも、それを心から心配してくれる子がいて…

◆初雪の日の偶然
(第78回・ドキドキ!プリキュア・相田マナ・菱川六花・2017年1月7日、Pixivさまにて初公開)
 寒い、雪の日
 町を覆う雪を見ていると
 偶然に起こる出来事、
 それは、凍った心を溶かすような

◆雪の夜、あたたかくすごすために
(第79回・魔法つかいプリキュア!・朝日奈みらい・十六夜リコ・花海ことは・モフルン ・2017年1月14日、Pixivさまにて初公開)
 雪が舞う日
 夜もとても寒そうで
 そう思いながら歩いているとき
 ふいに思いついたとても素敵なことは

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「プリキュア版深夜の文字書き1時間一本勝負」参加作品(6)

◆鋭さと、あたたかさと、

 

 買い忘れを思い出して、夜遅くだけど玄関を開いて外に出る。

 すると一瞬、全身が驚く。

 それは、徐々にではない突然のこと、気温が突然ぐっと下がる夜。

 そう、今年も冬がやってきた。

 慌てて冬のコートにかえて再び外へ。

 見上げれば、澄み渡る夜の空、瞬く沢山の星、オリオン座。

 冷たい風は頬を切るような鋭さで痛みを軽く感じる。

 でも、この新しい季節に少しだけ心が躍る。

 冬はたくさんのイベントが待っているから。

 クリスマス・お正月…今から楽しみになってしまう。

 また、風が頬を鋭くなぞっていく。

 その鋭さに、私は思い出す、彼女のことを。

 この、冬の鋭さのように、厳しいところがある彼女を。

 

 初めて逢った時の印象は最悪だった。

 とにかく色々とイメージは最悪。

 厳しい言葉、厳しい視線、そして、マナが気に入っているところ。

 私の大切な幼馴染が奪われてしまうような感覚にも襲われた。

 仲良くしようとも思ったけど、でも…

 私自身が頑固だっていうのもわかっていたけど、でも、それでも…

 

 でも、やがて知る彼女の事情。

 そして、厳しさの理由がマナだけではない、私やありすのことを心配していたこと。

 そして、本当は人のことを思いやれる優しい子だってこと。

 私は彼女の厳しさも優しさもどれも素敵だと思うようになっていった。

 冷たく吹く風のような鋭い厳しさ、

 そして、たどり着いてほっと落ち着く家のようなあたたかさ、

 そんな、冬の夜のような彼女が。

 

 考え事をしていたからか、目的地を大きく外れたところを歩いていた。

 それに気づいたのは、

「どうしたの? 六花。こんな夜遅くに」

 まこぴーにそう声をかけられて。

 そこは、まこぴーの家の近く。

 車を降りたまこぴーがダビィと家に向かうところ。

「あ、え、えっと…買い物…」

 怪訝な顔をするまこぴーに私は取り繕うように言葉を紡ぐ。

 ほんの少しだけ息が白くなる。

 まこぴーはその鋭い瞳で私が本当は嘘をついていることを見抜いているかもしれない。

「あ、明日の朝ご飯にジャムを切らして…」

 本当は明日の朝はご飯にしようと思っていたのにそんなことを言ってしまう。

 やがて、まこぴーの怪訝な顔は柔らかくなって。

「お茶、飲んでいく?」

 優しい声、私は黙ってうなずいた。

 

「六花って時々奇行に走るわよね」

「さすがにそこまではいかないわよ」

 ふたり並んでベッドの中。

 お茶を飲みながら、私が今日家でひとり、という話をしたらこんなことに。

 ぼんやりと仄暗い天井、じんわりとあたたかくなっていくお布団の中、

 まこぴーはいつものはっきりした口調を抑えて少しだけ眠そうに言葉を紡ぐ。

 私はいつもと同じように彼女に話しかける。

 彼女の話は私が普通に生きていたら知らなかったであろう話もあったりしてとても面白い。

 でも、それも、やがて途絶えて部屋の中はしんと静まり返る。

 冬の夜、静かな部屋、やがて聞こえるまこぴーの寝息…そう思ったけど寝息はいつまでも聞こえてこない。

 寝ていない? なら何をしているのか、顔を向けたらいつの間にかこちらを向いているまこぴーと視線が合う。

 びっくりして視線を外そうとするけど、外せない。じっと私を見つめるから。

 少しずつ胸がドキドキしてくる。何かを言おうと思ったけど言葉が出てこない。

 その時、まこぴーはゆっくり手を伸ばして私をしっかりと抱きしめる。

「ま、まこぴー!?」

 思わず声を出してしまうけど、まこぴーはもっと私に近づくと。

「真琴…ふたりっきりの時はそう呼んでって」

 そんなことを言う。

「ま…真琴…」

 まだどうしても慣れないこの呼び方、口にするだけで余計にドキドキしてしまう。

 真琴は私に密着すると胸に顔を寄せる。

「これって、冬の夜の醍醐味ね。誰かを抱きしめて暖かくなって寝るのってこの時季にしかできないものね」

 大きい吐息とともに口にするとそのまま寝息を立て始めてしまった。

 確かにそうね、私もそう思いながら真琴にもう少しくっついて寝ることにした。

 鋭さも、暖かさも、真琴の素敵な魅力。

 今晩は、そのあたたかさをゆっくり楽しもう、そう思いながら。

 

 

 

◆聖夜のすごしかた?

 

「メリークリスマス!」

 ラブの声が大きく響き渡る部屋の中。

「メリークリスマス!」

 嬉しそうな笑顔のおとうさんとおかあさん。

 そしてわたしは…どうしたらいいかわからない顔をしていた。

 クリスマスというものは本で学んだけど、それとは全然ちがうから。

 神の子が生まれた日、聖堂で祈りをささげる日、そう聞いていた。

 でも、食卓に並べられるいつも以上においしそうなごちそう。

 ラブの手からグラスに注がれる桃色の飲み物は泡を浮かべるブドウジュース。

 聖堂に行く様子はみじんも感じられない。

「せつな、どうしたの?」

 そんなことを考えていたら不思議そうな顔をするラブ。

 わたしはなんでもないと伝えていつも以上においしそうな鳥の料理に手を付ける。

 いつもおいしいおかあさんの料理、それ以上においしそうに感じられるのはラブもおとうさんもおかあさんも笑顔だからかもしれない。

 部屋の隅に飾られているクリスマスツリーを見ながらわたしは不思議な気持ちで箸を動かしていた。

 

「ふぅ~、食べた食べた! おいしかった!」

 わたしたちは食事を終えてわたしの部屋に戻った。

 ベッドの上に寝っ転がるラブにだらしないわよって伝えて椅子に座る。

 幸せそうなラブの顔。わたしもたぶん同じような顔をしていると思う。

 おかあさんのごはんはいつもおいしいけど、それ以上においしかったから。

「そういえばせつな、変な顔していたよね」

「どうせわたしはいつも変な顔よ」

「ごめんごめん、そうじゃないよ。どちらかというと不思議な顔?」

 ラブは言葉通りに不思議そうな顔をする。

「何か考えてた?」

 背だけ起こしてわたしをじっと見つめるラブにわたしは少しドキッとする。

 その通りだったから。

「えっと…」

「あ、わかった」

 わたしが答えるよりも先にラブは口を開く。

「せつなのことだから、勉強したことと違うって思ってるでしょう?

 ズバリ当てられてわたしはそれ以上口を開くことができない。

 それよりも少しだけくやしい気持ち。簡単にわかってしまうなんて。

「確かに本来の意味とはかけ離れちゃうけど、でも、楽しいでしょ?」

 ラブの言葉にわたしはただうなずくだけ。

 確かに、お料理もおいしかった。みんなの笑顔が見られてうれしかった。

 とても幸せな気持ち。こんな気持ちになれる素敵な日、知ることができて嬉しい。

「明日は美希たんやブッキーと教会に行く予定だから、一応ちゃんとしたクリスマスができるよ」

「そっちも楽しみね」

 わたしは笑顔を返す。

 ラブは嬉しそうな真っ赤な顔をしてベッドを立つとわたしの背中に抱き着いてくる。

「ちょっと、ラブ!?」

 でも、ラブは離れずに耳元でささやく。

「たのしみだねぇ…」

 甘えるような声、耳にかかる息がくすぐったい。その甘ったるい息は少しだけお酒の匂い…お酒!?

「ちょっとラブ!? 何を飲んだの?」

 ラブの肩に手を乗せるとそのままベッドにふわりと倒れてしまった。

「ちょっとラブ!? ラブったら! 大丈夫!? ラブ!!」

 わたしの大きな声におとうさんとおかあさんが部屋まで来て、慌てて下へ戻って、そして…

 

「間違えちゃったのね…」

「気を付けていたんだけどな…」

 リビング、おかあさんとおとうさんは少しだけ困った顔。

 ラブは間違えてシャンメリーではなくてシャンパンを飲んでいたみたい。

 つまり、アルコール入り。量は少なかったけどそれだけであんなになってしまったみたい。

「ごめんね。今日はラブのベッドで寝てもらえるかしら?」

 おかあさんの言葉に首をふって答える。

 ただでさえ寝相の悪いラブ。ひとりで寝かせておくのは少し怖い。

「ありがとう。迷惑をかけるわね」

 その言葉にわたしは笑顔で大丈夫なことを伝える。

「先にお風呂に入ってきます」

 準備のために部屋に戻ろうとする。

 椅子を立った時、ふいにふらっとする。

 まさか風邪…そう思った時にはもう意識が薄れかかっていた。

 驚くようなふたりの声。

 その時、わたしは気づいた。

 ラブと同じものを飲んでいたことに…恨むわよ、ラブ…そう思う間もなく…

 

 

 

◆振り返りたくない一年の終わりに

 

 こんな気持ちで今日という日を迎えるのは初めてだった。

 大晦日…私はその日についての古い思いを灰色に閉じ込めた。あの、戦いの最後の日に。

 以前、ささやかな暮らしながら私たち家族は幸せだった。

 母がいて、そして…父がいて。

 一緒にそばをすすりながら紅白を見る。

 私はそれほど歌には興味はなかったけど、父と母は古い歌をとても楽しそうに見ていた。

 私はそんなふたりを見て過ごす大晦日がとても好きだった。

 そんな幸せな日が再び色づく今日、私はずっとふさぎこんでいた。

 

「どうしたんですか? ゆりさん」

 つぼみが心配そうな顔を私に見せる。

 私はなんでもない風を装って横を向く。

 そして、なんでもないの、そう、努めて優しい声で呟く。

 つぼみ、えりか、いつき、そして、ももか。誘われて仕方なく部屋を出た。

 新年を前にした神社の行列はとても長く、そして、そわそわしている。

 その空気に私は気分が悪くなりそうだった。

 希望を夢を願いを胸に抱いて、幸せそうに並ぶ人たち。

 それを見ていると自分がとてもみじめに思えてきて、

 ああ、こんなことなら母とともに過ごせばよかった。

 皆に誘われても何か理由を付けて断ればよかった。

 でも、皆が迎えに来た時に母にも背中を押されて、仕方なかったけど…

 ふ、っと心の中でため息をつく。

 人混みは変わらず、幸せそうな笑顔が並んでいる。

 幸せそうな声、笑い声、私の胸はとても重くなってくる。

 増やされた灯り、照らされる笑顔、増える笑い声、私は思わずしゃがみ込みたくなる。

 

「え…」

「大丈夫ですか、ゆりさん」

 いつの間にか、優しく抱きしめられていた、つぼみに。

「え、えっと…」

 あまりに突拍子のないことで私はどうなっているのかわからなかった、抱きしめられているということ以外。

「大丈夫だから…それに恥ずかしいわ」

「大丈夫ですよ」

 つぼみは私の前に立っていて、ほかの皆はさらにその前に立っていたから確かに見えていないけど…

「暗いから誰にも見えないです」

 つぼみは私を抱きしめたまま。やさしい声が耳に届く。

「そんな悲しい顔をするのなら、私にぶつけてください。私では受け止めきれないかもしれないですけど、でも、それでも…」

 ゆっくりと指が伸びてきて、私の頬をなぞる。いつの間にか涙が出ていたみたいで恥ずかしい。

 だけど、その指はとても暖かくて、優しくて、私はつぼみのことを優しく抱きしめる。

 つぼみは少しだけ恥ずかしそうな顔、でも、嬉しそうな顔。

 こんなに、私の家族以外で私のことを思ってくれる人がいることに気づかない自分がとても情けなかった。

 思えばあの時からつぼみは私のことを心配してくれて、それで、つとめて普通な日々をくれたのに。

「つぼみだけじゃないんだなぁ~」

 いつの間にか私たちをじっと見つめるえりか。いつきも、ももかも。

 皆が私のことを抱きしめてくれる。優しく、暖かく。

 私は抱きしめられて苦しかった。

「本当に恥ずかしいから、もう、やめなさい」

 いつもの調子で伝えてしまうけど、でも、私の心の中は…

 

「あけましておめでとうございます、ゆりさん」

 みんなが離れて、でも、つぼみだけは私を抱きしめたままささやく。

 その言葉に、新しい年になったことを知る。

 時計を見る、12時に30秒。新しい年に変わったことを知る。

「今年は素敵な年になるように…私が少しでも力になれれば…」

 だんだんと声が小さくなる。でも、その手は、私の背中を抱きしめる力は強くて、心強い。

 私はその手を取って笑顔を見せる。

「ええ…つぼみが一緒だと心強いわ」

 その言葉につぼみは嬉しそうな顔を向けてくれる。

 私はその笑顔に、つないだ手の暖かさに、今年は少しはいい年になるかもしれない、

 そう思いながら動き出した列に従って足を進めた。

 つぼみの手を握る力を少しだけ強めて。

 

 

 

◆初雪の日の偶然

 

 ふいに感じる寒さに、私は上にはおるものを出すために椅子を立った。

 受験まであと少し、毎日の勉強は大変だけど、夢のためならって頑張れる。

 小さく音がする椅子、ほかに音が聞こえない。

 遠くから聞こえるはずの車の音も、町の喧噪も。

 まるで町全体が眠ってしまったかのように。

 時計を慌てて確かめると夜の11時。まだそんなに遅くはないはず。

 私はある予感がしてカーテンを開けると、部屋の明かりに照らされて窓の外では雪が舞っていた。

 今年最初の雪、大きな大きなぼたん雪、ひらひらと、空から舞い降りていた。

 町中の音を吸い取りながら、それはそれはとても綺麗に。

 手を伸ばすと、優しく舞い降りる雪、それはゆっくりと溶けていって。

 またひとつ、またひとつ、私の手の上でやさしくゆっくりと溶けていく。

 雪が降る町並み、それを眺めているとどうしても視線に入ってしまう、マナの家。

 私の心がとくんとひとつ打って、そして、申し訳ない気持ちが広がっていく。

 

 あれは、年末のこと。

「六花のバカっ! どうしてわかってくれないの!?」

「そんなこと言っている場合じゃないでしょう! あと2か月しかないのよ!」

 珍しく私たちは衝突した。

 年末年始くらい夜更かしして遊ぼう、そう言うマナ。

 受験生なんだし、そんなこと言っていられないでしょう、それが私の主張。

 ありすはだまって聞いているだけ。

 まこぴーはちょうどいなかった。

 亜久里ちゃんはため息をひとつ。

「ぷいっ」

 私はマナから逃げるようにぶたのしっぽ亭を出た。

 それからもう1週間以上、マナとは顔を合わせていない。

 

 雪に包まれそうなマナの家。

 もう少しマナの言うことを聞いてあげればよかった、そんな気持ちが胸に広がる。

 来年からはもっと忙しくなるかもしれない。

 そうしたら、もうみんなで同じようにお正月を過ごすことができないかもしれない。

 だから、今年のうちにみんなで一緒に過ごしたい。

 その気持ちはよくわかる。

 でも、私はとても焦っていた。

 受験まであと2か月。模試の結果は大丈夫って書いてあるけど、でも、それでも、言いしれない不安が私をずっと包み込んでいた。

 これが受験なんだって、こういうものだよって、わかっているけど、でも、心は焦るばかりで…

 

 ずっと窓を開けていたからか、だんだんと体が冷えてきて風邪をひいてしまいそう。

 窓を閉めようと思ったその時、マナの部屋の灯りがともる。

 1週間以上逢っていないから、もし、マナが同じように顔を出したらどうしたらいいのか、こんなところを見つかったら、マナになんて思われるか…私は慌てて扉を閉めようとした、けど、それよりも早くマナの部屋の窓が開く。

 私はもう何もできず、ただ、じっと、マナの様子を見つめるだけ。

「うわー! すごい雪…こんなに降っているなんて思わなかったよ」

 その声は聞こえないけど、見ているだけでマナが何を言っているのかわかってしまう。

「どおりで寒いわけだね…でも綺麗…」

 窓の外に手を伸ばす、そして、当然のようにマナは私の家に視線を上げる。

 そうすると、当然、私と目が合う。

 マナは私がいるとは思っていなかったようで驚いた顔をして、そして、すぐに笑顔になって手を振ってくれる。

 思ってもみない行動に私はどうしたらいいかわからなくなる。

 すると、はっと気づいたようにマナは窓を閉めて部屋に戻ってしまった。

 これも想定外の行動…でも、よく考えたら、私とマナは喧嘩していたんだから、当然なのかもしれない。私も仕方がないって思って、窓を閉めて勉強に戻ろうとした。

「にゃ~っ!」

 そんなとき、ふいに聞こえる猫…マナの声。

 私はおどろいて今度は道路側の窓を開ける。

「寒いからいれてにゃ~!」

 六花は普段着にマフラーだけして玄関前に立っていた。

 私は慌てて下に降りるとマナを迎い入れた。

「ありがとう、寒かったよ…」

 普段通りのマナ、私はよくわからないまま、いつものようにマナをリビングに迎い入れた。 あたたかいお茶を出すと、幸せそうに飲み始めて、本当に外が寒かったんだって思う。

 

「どうしたっていうの…?」

 それは、色々な気持ちが混ざって、やっと出てきた言葉。

 確か、私たちは年末に喧嘩して、いままでずっと逢わずにいて…

「逢いたくなったから」

 そんな沢山の疑問もマナの言葉は一言で解決しようとしてしまう。

 そして、私はそれをいつもと同じように納得して受け入れてしまう。

「ごめんね、六花。六花の気持ち、よく考えなかった」

 頭を下げるマナ。私は向かいに座る。

「確かに受験生だから、お正月もなにもないはずだよね」

 少しだけ残念そうな声。

「でも、どうしても、みんなとお正月を過ごしたくて…」

 その気持ちもよくわかる。今という時は今しかないから。

「私のほうこそ…マナの気持ちをよく考えないで、ごめんなさい」

 私も頑固すぎたって思う。少しぐらい息抜きしたほうがいいのは知っているのに、焦ってしまってマナにやつあたりみたいになって。

「うん、それじゃ、仲直りだね」

「うん、仲直り」

 ぎゅっと握る手、マナは外から来たからまだ冷たい手、少しだけ、雪でぬれていた。

「明日、みんなで集まろう。せっかくの雪だから雪遊びしたり」

「風邪をひかない程度にしないとね」

「うぅ、わかってますよ、六花さまぁ…」

 それは、いつもと変わらない私たち、おもわず吹き出してしまう、お互いに。

 こんな、些細なことがとても幸せに感じる。

 それなのに、こんな、大事なこと、些細なことで失くしていた日々は、今思うととてももったいないって、そればかり思っていた。お茶をおいしそうに飲む、マナの前で。

 

 

 

◆雪の夜、あたたかくすごすために

 

 休み時間、ちらちらと校庭にいたらおりてきた雪。

 みんなが慌てて玄関へ向かうから一緒になって走る。

「急がないと風邪ひいちゃうよ!」

 みらいもリコも一緒に。

 

「びっくりしたね」

 そう言ってるけど楽しそうな声のみらい。

 リコも雪を見ながらなんだか嬉しそうな顔。

 帰り道、3つの傘が並んでモフルンはわたしの肩の上。

「夜はとても寒くなりそうモフ」

 でも、モフルンはそんな心配そうな声を出して少し震えてる。

「それなら、わたしと一緒に寝るのはどう?」

「それはとてもいいアイデアモフ!」

 わたしの言葉にモフルンが嬉しそうな声。

「わ、わたしもモフルンと一緒に寝たい!」

 そこにみらいの声も入ってくる。

 いつもモフルンはみらいと一緒に寝ているから、みらいからとっちゃったらダメかな? そう思ってるとリコも少しだけ頬を赤くしてこっちを見て、

「わ、私だって…」

 そのあとはちいさな声で「一緒に寝たい」って聞こえてきて、わたしたち4人、道の真ん中で足が止まっちゃった。

 みんなモフルンと一緒に寝たい…どうしたら…考えてすぐに答えが出た。

「わたしにいいアイデアがあるよ!」

「え? なになに?」

「いいアイデア?」

「モフ?」

 わたしの言葉に期待の瞳のみらいとモフルン、少しだけ心配そうなリコ。

「おうちかえってからのおたのしみ~!」

「え~!?」

 みらいの声はすぐに教えてって言っているみたいだったけど、内緒。

 だって、夜のお楽しみだもん。

 

「寒いわね…」

「うん、暖房付けないとだめだよ?」

「ううん、大丈夫!」

 わたしのお部屋、パジャマのふたりが震えてる。

 暖房を付けていないからだけど、これからあたたかくなるからいいよね。

「それじゃ、わたしのアイデア大公開!」

 魔法のペンを取り出して、空中にちょちょいっとすると、大きな布団が出てきた。

「うん、大成功!」

 みんなで入れるくらいの大きな布団、みらいもリコもモフルンも最初は驚いた顔をしたけどすぐに嬉しそうな顔に。

「確かにこれならみんなでモフルンと一緒に寝られるね!」

 声が本当に嬉しそうなみらい。

「確かに…でも、どうやってしまえば…」

 少し心配そうなリコの顔。

「お先にモフ」

 もうお布団の真ん中に入り込むモフルン。

 私もお布団を広げてモフルンの横に入り込んじゃう。

「あ~っ! わたしも入る!」

「わ、私も!」

 慌てて続いてくるみらいとリコ。

「あたたか~い! しあわせもんだぁ!」

 ぎゅっとモフルンごとわたしに抱きつくみらい。

「冬はあたたかいお布団が一番ね」

 背中からわたしとモフルンを抱きしめるリコ。

「く、くるしいモフ…モフ…」

 でも、おしくらまんじゅうみたいになってモフルンが苦しそう。

「あ、ごめんごめん」

「ごめんなさい…」

 みらいもリコも慌てて少し離れるけど、

「これはこれで寒いわね…」

 すぐにリコがわたしの真横に戻ってくる。

「うん、離れると寒いね…」

 みらいも、モフルンの横に戻ってくる。

 みんなで横一列、そうするとまたあたたかくなって。

「これが一番だね」

 みんなのあたたかさを感じるとなんだか嬉しくて。

 そのあと、ちいさな声で沢山おしゃべりして、いつの間にか寝ちゃってて…

 

「すごい雪…」

 朝、外を見たら街はまっしろな雪。

 窓際はとても寒くて思わず布団に戻っちゃった。

 お布団はみんな一緒だからあたたかくて…とても幸せな気持ち…そのままもう一度寝ることにしちゃった。



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