6月になり、ランク戦のシーズンになった。以前までは自分には関係ないイベントだと思っていたランク戦だが、今はそうもいかない。
いろんな部隊のデータを頭に叩き込み、どの部隊に配属されても良いようにしておかなければならない。
そのため、基本的に観戦席で見学しておくことにしている海斗だが、今日はまだいなかった。何故なら、双葉との修行中だからだ。
場所は加古隊の作戦室、今日はランク戦を見に行かなければならないため、炒飯を食べている暇はないため、作戦室の訓練室を借り受けることにした。
双葉の攻撃を、海斗は平然と回避し続ける。レイガストのスラスターパンチと韋駄天を織り交ぜた攻撃は日に日に鋭くなっていっているが、今日の様子は何かおかしかった。
「スラスター!」
ブレードモードのレイガストの投擲を回避しながら接近する。それに対して、拡張したブレードを振るって来るが、それも回避し、拳を引いた。
が、後ろからガギンと音がする。直感的に危険だと判断し、しゃがむと、レイガストが自分の頭上を通過した。スラスターで投擲したレイガストを旋空で弾いたようだ。器用な真似をするものだ。
戻ってきたレイガストをキャッチしながら、孤月で斬り上げ、反対側の拳でスラスターパンチを同時に放って来る。
だが。
「!」
海斗の両腕が消えた。スラスターと孤月の挟み撃ちを遥かに上回る速さでスコーピオンの拳を振るい、双葉の両腕を落とした。
カラン、と渇いた音を立てて落ちる二刀を見て、海斗は双葉に言った。
「はい、終わり」
「うぐっ……また……」
「てか、お前どうした? なんか調子悪い? いつもより動きが固かったけど」
「そ、そうですか……?」
「孤月とレイガストのアレは面白かったけどな。てか、よくあんな真似出来るな」
「余裕で対処してた人に褒められても嬉しくありません」
「余裕じゃねえよ。勘が当たっただけだ」
で、なんで動きが固かったの? と言わんばかりに片眉を上げた。
「……別に固くなかったと思いますけど」
「界王様にまで隠し事か?」
「……いえ、大した事ではないので」
「初めてのランク戦のシーズンで緊張してるのよね?」
後ろから弾んだ声が聞こえた。加古隊の隊長さんが微笑みながら図星を言うため、双葉の表情はほんのりと赤くなった。
「……加古さん」
「大丈夫よ、双葉。たとえA級でも、陰山くんに正面から1対1で勝てる隊員は少ないわ。だから自信を持ちなさい」
「そうだぞ」
「戦略をしっかりと練れば勝ち目はあるけど。バカだし」
「表出ろコラ」
そんな話をしてもらえたものの、双葉の中では不安は拭えなかった。チーム戦は個人ランク戦とは違う。加古やチームメイトの喜多川真衣との連携がうまく行くか、実戦で試したのはトリオン兵相手の時だけだ。
「大体、A級のランク戦はまだ先だろ。今から不安になってどうすんだ」
「そう言われましても……」
双葉の緊張は表情から隠し切れていない。その時だった。ノックの音が響いた。
訓練室の扉ではない。作戦室の扉だ。
「私が出てくるわね」
逃げるように加古が応対しに行った。本当に自由な隊長さんである。
しかし、加古は別にいなくても良いかもしれない。ここは師匠として何か言ってやるべき所だからだ。
腕を組んで考えた後、とりあえず言ってみた。
「双葉、良いか?」
「っ、は、はいっ」
「練習や訓練は何のためにやるものだ?」
「実戦です」
「そう、実戦だ。でも、ランク戦はある意味では訓練と一緒だ」
「? は、はい。そうですね?」
「つまり、訓練だ。実戦訓練でも訓練みたいなものだからー……えーっと」
自分でも何言ってるのか分からなくなってきたが、悪い意味でここまで来れば押し通すしかない。
「訓練だから。負けても死なないし失う物はポイントと順位だけだから。給料に影響出るわけでもないし……えーっとー……うん。だから、なんだ。気楽にやれ」
「……」
実際、双葉は何を言われているのか全然分からなかった。一つだけわかったのは、自分を励まそうとしてくれているって事だ。
まったく、不器用でバカな先輩である。言い方なんていくらでもあるだろうに、それを文に出来ない語彙力の拙さ。この前の試験はそれなりに点数を取れたみたいだけど、それも風間と三上のスパルタ教育の賜物のようなものだ。
クスッと微笑んだ双葉は、微笑みながら頭を下げた。
「ありがとうございます、界王様」
「……なんか声震えてない?」
こんなバカな人の弟子であることを思い出し、連携以前に自身の戦力に不安を覚えた。
小南や風間とそれなりに渡り合う師匠は確かにすごい人だけど、自分はどうなのだろうか。ランク戦では勝ったり負けたりだし、成果が出ているのか分からない。
再び早鐘の如く鳴り出した自分の胸に手を当ててると、訓練室に加古が戻ってきた。
「陰山くん。お客さんよ」
「陰山、やっぱここにいたか」
「あ、村上」
現れたのは村上鋼だった。現在、アタッカーランク10位のB級隊員だ。そう、B級隊員で自分とほとんど同時期のこの人は攻撃手10位なのだ。所詮、最初からA級だった自分に勝ち目はあるのだろうか。
「俺に用があんの?」
「ああ。B級ランク戦が始まるから、その前にお前と1本、戦っときたかったんだ」
「何それ。ドユコト?」
「同期だからだ」
言わんとしてることは何となく分かった。一応、同期であり、同じくらいの戦力を持つ攻撃手、いわばライバルと決戦前に手合わせしておきたいってとこだろう。
そういう気持ちは海斗にも分からなくはない。漫画のライバルみたいなことしてんなよ、と思うかもしれないが、今の三門市は漫画よりもファンタジーじみた世界だ。実際に漫画みたいな想いが生まれてもおかしくない。
「良いよ。やろうか。加古さん。訓練室借りても良い?」
「良いわよ」
許可を取ると、二人は模擬戦を始めた。
×××
二人の模擬戦見ていて、双葉の不安はなおさら大きくなった。とてもB級同士の戦いとは思えないほど、バカみたいにハイレベルな戦闘が展開されている。この人達、なんでB級にいるの? と疑いたくなるレベルだ。
「……はぁ」
まだ自分はこのレベルに追い付いていない。そんな双葉の頭に、加古がポンッと手を置いた。
「大丈夫よ、双葉」
「は、はい」
「ほんとに。あの二人の戦闘だって、結局は個々の力でしょ? 部隊戦は全く別物なんだから」
「で、ですが……特に、風間隊はみんながみんな、ハイレベルです。いくら加古さんに援護していただいても、他の方と渡り合うのは……」
「……うーん、そうねぇ……」
あからさまに自信をなくしてしまった双葉を見て、加古は顎に手を当てた。
どうしたものか、と悩んでいると、またノックの音が響いた。今日はよく来客が来る日だ。二人で応対すると、立っていたのは武富桜子だった。
「お疲れ様です! 加古さん! 双葉ちゃん!」
「桜子ちゃん。お疲れ様」
「お疲れ様です」
「早速ですが、今日のランク戦、解説席に座っていただけませんか?」
「あら、私が?」
「はい。お願い出来ますか?」
「良いわよ」
「ありがとうございます!」
桜子がやってきた時点で要件は大体、察していたので話はスムーズに進んだ。
その隣で「解説席のオファーが来るなんてすごい……」的な視線を加古に送る双葉と、加古は目が合った。
が、そこで加古はニヤリと微笑んだ。これは良い機会かもしれない。
「ね、桜子ちゃん。他の解説と実況の人は決まってるの?」
「まだですよ?」
ランク戦の実況と解説はすべて、桜子が暇そうな隊員を見つけて声を掛けている。聞けば、今日の人が誰かすぐにわかる。
「なら、今日は私がもう一人、実況する人を指名しても良いかしら?」
「はい、勿論ですよ!」
「……え、まさか」
頬を引きつらせた双葉の視線の先には、訓練室があった。
×××
『こんばんは。B級ランク戦夜の部、実況担当の三上です』
実況席に座るのは三上歌歩、風間隊オペレーターだ。しかし、その表情は決して芳しくない。
『本日の解説は加古隊加古隊長とー……B級フリーの陰山隊員です』
『どうぞよろしく』
『すっげー、解説とかマジであるんだ。飲み物とか支給されないわけ?』
『陰山さん、黙ってて下さい』
そう言うが、海斗が人の言うことを聞くタマではない。三上は不安で胃に穴があきそうだった。
ちなみに、海斗と加古の間には双葉がいる。憧れの隊長と尊敬する界王様に挟まれ、そういう意味でも特等席だった。
『今回の試合は柿崎隊、諏訪隊、鈴鳴第一の試合。加古隊長はどう見ますか?』
『そうねえ。やっぱり、村上くんかしら? 確か、まだ入隊から1年も経過してないのに、もう攻撃手十番以内にいるのよね?』
『え、そうなの?』
『でも、村上くんのことは陰山くんの方が詳しいんじゃない?』
『あの、加古さん。今、陰山さん「え、そうなの?」って、言ったんですが……』
微妙に噛み合っていないが、会場のメンバーの視線は当の本人に向く。
海斗の脇腹を双葉が突いた。何か言え、との事だ。
『解説ってお茶出ないの? 双葉が飲みたいって』
「違います! 村上先輩について何か言って下さい!」
『え? ああ、そういう事』
怒られたので、顎に手を当てて語る言葉を考えた。
『村上なぁ……良い奴だよ。たまに飯行くときとかラーメン奢ってくれるし、たまに風間のバカのしごきから匿ってくれるし』
『そうじゃなくて……陰山さん。村上隊員の戦闘面について語って下さい』
『ああ、村上についてってそういう事』
『あとこの会場に風間さんいますから。私知りませんから』
『ごめん、お腹の調子が……』
『いいから早くして下さい』
両サイドに座る小さな後輩二人に脇腹をキュッと摘まれたので、そろそろ真面目に話すことにした。
『村上は強いよ。レイガストと孤月のシンプルな盾と剣で見事な攻防一体で非常に面倒臭いから。あとサイドエフェクトが……』
『あ、そういうサイドエフェクトの情報とかは言わないで下さい。次回からの戦闘で不利になってしまいますから』
『えー、じゃあ何言えば良いの?』
『……もう黙ってて下さい』
黙らされてしまった。観客席からはクスクスと笑い声が聞こえるが、小型高性能の21歳の額には青筋が浮かんでいる。
すると、ステージが選択されたため、解説はそっちに映った。
『鈴鳴第一が選択されたステージは、市街地Bです。高い建物が多く、射線の通りやすいステージです』
『別役くんの射線を通しつつ、地上戦は村上くんに任せるつもりかもね。他の部隊に狙撃手がいないところを上手くついたのかも』
『あーダメだ。喉乾いた。双葉、加古さん、三上、なんか飲む? 買ってくるよ俺』
「界王様……」
『私は紅茶で』
『加古さんも頼まないで下さい』
そんな時だ。コトッと海斗の前にペットボトルのお茶が置かれた。何事? 霊? とパニックになることはなかった。
何故なら、海斗の前には風間の形をした赤いオーラが見えるからだ。カメレオンを使っているのだ。
『陰山、後で作戦室に来い』
「……」
『全部隊転送開始! ランク戦スタートです!』
何事もなかったように、ランク戦はスタートした。
×××
『柿崎隊長、村上隊員が相討ちで緊急脱出! ここで決着、柿崎隊には照屋隊員の生存点が入りまして、スコア4対3対3で柿崎隊の勝利です!』
三上のそのセリフと共に決着はついた。ラスト、柿崎と照屋の二人掛かりで村上に挑み、柿崎のメテオラを、村上がスラスターレイガストパンチで破壊しながらカウンターの旋空を放とうとした時、柿崎もメテオラを弾かれる前提で放っていたためか、同じように旋空を放ち、一緒に真っ二つになった。
『うおー、すっげぇなランク戦って。マジでちゃんと戦術とかあんのな』
『今更、何言ってるのよ。そういうもんよ、ランク戦』
完全に舐めた態度を取っていた海斗は、感動してしまって目をキラキラと輝かせている。
『だってお前、村上が倒されたよ。あのようわからん人に自爆されて』
『だからそういうものよ。どんなに強くても、戦術がハマれば倒せるわ』
『では、試合を振り返ってみましょう』
三上が話を軌道修正した。
『まずは序盤の動きですが、諏訪隊の堤隊員と鈴鳴第一の来馬隊長が一人ずつ落ちましたね』
『ああ、それな。諏訪隊の銃のー……なんだっけ、集中砲火? が決まって来馬が落ちて、村上も片腕やられたからね』
『でも、お陰で村上くんは助かった、と言えるわね。別役くんのライトニングの狙撃で集中砲火のバランスが崩れて、村上くんが反撃出来て堤くんを落とせたわ』
しかし、狙撃場所が割れた太一は笹森に取られてしまった。まぁ仕事は出来たし、良かったと言えば良かったかもしれないが。
『その後、驚いたわ。レイガストの取っ手の部分を斬られた腕に刺して、無理矢理盾にするんだもの。……ああいう発想、陰山くんから学んだんじゃない?』
『バカ言うな、あんなのやったことないわ。俺ぁ、スコーピオンで義手作るだけだっつの』
『そうね。レイガストは柄があれば割と自由にブレードや盾を出し入れ出来るから、そういうとこを応用したのかもね』
しかし、逆に言えばレイガストの方の左腕はレイガスト以外使えない。引っ込めれば使えるが、盾にもブレードにも応用できるレイガストの方が便利だった。
『その後は、諏訪さんと村上くんだけ残った所に柿崎隊がぶつかったわね。それで1対1対3になったわ。笹森くんが奇襲を仕掛けたけど、あれで巴くんを落としに掛かったのに、村上くんにまとめて斬られたのが痛かったわね』
『早い段階での戦闘を全く無視し、部隊の合流を優先した柿崎隊が有利だった、ということでしょうか?』
『場合によりけりだと思うけど、今回はその通りね。村上くんはいくらトップクラスのアタッカーでも、まだランク戦初めてだから動きが固かった感じもしたし、これからだと思うわ』
と、加古と三上が総評を進める中(海斗はついていけなくてお茶飲んでる)、双葉は加古の意図を知ることができた。
化け物じみた実力を持つ村上でも、こうしてチームの試合になれば実力が発揮出来るとは限らない。
諏訪隊も柿崎隊も、おそらく一番、村上を警戒し、村上の対策を立てたのだろう。
「……確かに、これなら……」
自分と加古が組めば、格上も食える。そう確信した。
何より、チーム戦には個人戦にはない魅力がある。敵に対して作戦や戦略が決まれば、これ以上なく気持ち良さそうだ。
自分達の作戦が相手に通用するか分からない。だが、それまでに準備はしてきたのだ。考えても分からないことで悩んでも仕方ない。
自分は、本番に全力を出すだけだ。
「……界王様」
「何?」
「この後、もう一戦お付き合いしてもらえませんか?」
「! お、おう! 良いなそれ、そうしよう!」
「勿論、風間さんのお説教の後で」
「……」
界王様の胸を借りたい。でも、界王様に甘くするつもりはこれっぽっちも無かった。
×××
「……相変わらず口うるせーチビとチビだぜ……」
ボヤきながら海斗は風間隊の作戦室を出た。コッテリと絞られた後だ、イライラは余計に増していた。
風間は先に作戦室を出て行ったため、いつものように作戦室の扉に中指を立てたりはしない。でもムカつくので「あっかんべー」をしてやった時だ。
ウィーン、と扉が開いた。
「陰山くん、まだ居……何してるの?」
「……」
「いつもそれやってるの?」
「やってません」
「やってるんだ」
「……」
「まぁ良いよ、入って」
「風間には言わないでね」
「話の内容次第」
慎重に言葉を選ぼう、と心に決めて作戦室に入った。
「座って。コーヒー入れるね」
「いや、俺がやるよ」
「私が引き止めたんだから」
「バーカ、本来そういう雑用は男がやるもんなんだよ。お前が座ってろ」
「……大丈夫? 入れ方分かる?」
「ナメ過ぎじゃね? 俺、一応一人暮らししてんだけど」
そう言いつつ、海斗はそれなりに手慣れた手付きでコーヒーを入れ始めた。
「ブラック?」
「今日はカフェオレで。何処かの『か』から始まる名前の誰かさんの所為で疲れちゃったから」
「風間の奴め……歳下の女の子に面倒を掛けさせるなんて」
「違った。『ば』だった」
「ば? そんな奴いたか?」
「バ陰山バ海斗」
「……」
割と口の減らない女だった。海斗が言い返す言葉を無くすほどだから尚更だ。
カフェオレを三上の前に置き、自分のコーヒーを持って三上の向かいの席に座った。
「で、何の用?」
「……あ、美味しい」
「どうも」
コーヒーの感想を聞きつつ、三上は要件を言った。
「ん、用件は二つ」
「二つ?」
「そう。まず一つ目なんだけど……あんまり風間さんを困らせないであげてね」
「え?」
割と真面目な話だった。三上の表情は、苦笑いこそ浮かべているものの、真剣そのものだ。
「風間さんにとって、陰山くんは生意気でバカだけど可愛い後輩なの」
「え、それ可愛いの?」
「バカな子ほど可愛いって言うでしょ?」
「やっべ、スゲェ嬉しくねえ」
「とにかく、あんまり世話を焼かせないこと。風間さん、上層部の人からの信頼も厚くて、割と忙しいんだから」
同い年の女の子に怒られ、海斗は目をそらす。別に怖かったとかではなく、素直に頷けないだけだ。
「……別に、面倒見てくれなんて頼んだ覚えねーし」
「またすぐそうやって捻くれたこと言う……」
そう返しつつも、三上も海斗がもう少し大人しくする、と言ったことは理解したようだ。まぁ、このバカの場合は理解したところで行動に移せるのかは疑問だが。
「それで、二つ目のお話なんだけど」
「何?」
表情がひときわ真剣になる。おそらく、今の話は前座、二つ目が本題なのだろう。
しかし、それ以上に大事な話となるとなんだろうか。ここ最近では、海斗にとって一番大事だったのは試験だ。それはもう終わったし、もしかして部隊配属について何か……なんて事は海斗は思っていない。
「小南さんと付き合ってるの⁉︎」
サイドエフェクトによって、くだらない事を言おうとしてるのが一発で分かった。
なので、三上のそのセリフにも何一つ反応したりしない。代わりに、毒を一滴ぶちまけた。
「バカなの?」
「違うの?」
「違うに決まってんだろバーカ」
「だって、とても仲良しだったから」
「え、どの辺が? いつも喧嘩してんじゃん」
「あ、アレ喧嘩だったんだ……」
「どう見えてたんだよ」
「……じゃれ合い?」
間違っていなかった。戦闘を行なっている、的な意味では。
しかし、否定されてしまい、三上はつまらなさそうにため息をついた。
「なーんだ、違うんだ」
「話は終わりか?」
「うん。ごめんね、付き合わせて」
「ホントだよ。お前これから俺、双葉と修行なんだぞコラ」
「うちに来たら、いつでもコーヒー出してあげるから」
「風間がいない時にな」
それだけ話して、コーヒーを飲み干して風間隊の作戦室を出た。
扉の前では双葉が待っていた。
「あれ、双葉? 何してんの?」
「遅いので迎えにきました」
「悪かったな。三上に捕まってた」
「三上先輩と? 風間先輩とではなかったんですか?」
「それが終わった後」
「何のお話をしてたんですか?」
「色々だよ」
テキトーにはぐらかしつつ、二人で加古隊の作戦室に向かった。この後、ランク戦の見学の予定が済んでいることを忘れて。