ボーダーにカゲさんが増えた。   作:バナハロ

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戦地は何処でも激しく燃える。

 夜の街を駆け抜ける影は、一人減って七人になった。奈良坂も残ろうと声を掛けたが、迅の介入が予測される今、バカに必要以上に戦力を割く必要はないし、あのバカをわざわざ倒す必要もない。

 目標地点まで残り1000、と各オペレーターの声が耳元で聞こえたときだ。再び七人は足を止めた。

 灯りのない街のマンション付近、横断歩道の中心に立っているのは、今度は太刀川の良く知る人物だった。

 

「なるほど、そう来るか。迅」

「久しぶり、太刀川さん。みんなお揃いでどちらまで?」

 

 尋ねられたものの、答えるはずがない。そもそも、答えなくても分かっているから。そういうサイドエフェクトの持ち主なのだ、あのS級は。

 

「分かってるだろ。悪いけど、問答はもう飽きてんだ」

「へぇ、海斗と何か話した?」

「邪魔するなら、お前も切り捨てていくぞ」

「お前も、ねぇ?」

 

 薄く迅は微笑み、風刃を抜いた。今のが、海斗を倒したと言って自分を動揺させよう、なんて手でないことは迅にも分かっていた。

 おそらく、太刀川は三輪が海斗に勝利し、追ってくると思っているのだろう。その未来は迅にも見えているが、海斗が勝つ可能性だって残っている。

 結果的に、一人とはいえ敵の戦力を分散してくれたし、後は自分の用件を済ませてくれれば良い。

 

「……さあ、やろうか」

 

 強力な増援である嵐山隊が来るまで時間が掛かるから、しばらくは自分が相手をするしかない。

 風刃を構え、一斉に襲い掛かってくる敵に備えた。

 

 ×××

 

 本部の外の戦闘で、タイマンの勝負になるのは中々あることではない。必ず、どちらかの援軍や無断で警戒区域に入ってくる民間人の救助などが入るし、そもそも最初から一対一であることが無い。

 その不自然な状況にも関わらず、二人の動きはいつも以上の動きを発揮していた。

 三輪のアステロイドをスコーピオンで打ち払っている間に、三輪は一気に距離を詰めて孤月を振るう。

 バックステップで回避するが、三輪は逃さない。孤月を消してハンドガンを出し、近距離から鉛弾を連射するが、それも回避され、目標はT字路を曲がって建物を壁にして移動する。

 

「……」

 

 それを逃す三輪ではない。カウンターを警戒し、変化弾を先に追わせてから、自分もT字路の後を追う。

 しかし、海斗の姿は無い。レーダーを見ると、二階建て民家の屋根の上に立っていた。容赦なく、三輪はハンドガンを向ける。足場を崩すため、屋根を貫通させてアステロイドを放つが、海斗はそれを体操選手のような身のこなしで回転しながら回避する。

 

「チッ……!」

 

 奥歯を噛みながら、ハンドガンの弾を切り替えた。

 直後、下からせり上がってくる弾は急に屋根を避け、海斗本人に直接襲い掛かる。

 それを振り身で回避するが、その隙に同じように三輪が屋根の上にジャンプし、さらにハンドガンを向けた。

 ドンドンドンッと放たれた弾は黒い鉛弾。飛んで来る黒い弾丸は直線ではなく、海斗を取り囲むように進んで行く。

 

「……変化弾……!」

 

 さらに正面からは三輪本人が孤月を持って突撃する。左右に逃げればレッドバレット、正面は三輪本人。

 その危機的情報に対し海斗は、足元の屋根を削り、民家の中に落下して避けた。

 

「チッ……! 逃すか!」

 

 落ちた先に容赦なくハンドガンを五発、ぶっ放す。家の中の海斗はその辺にあった机を放り投げ、黒い弾丸を防ぐ。

 しかし、ここはアホな海斗たる所以である。鉛弾が五つもくっ付けば、その物体の重さは何倍にも跳ね上がる。

 

「うぶぉ!」

 

 まるで跳ね返ったかのように自分に向かって落ちてくる机の下敷きになり、床を突き抜けて一階に落ちた。

 何だかよくわからんが好機と悟った三輪は、机に向かって孤月を突き立てて飛び降りた。

 直後、机に薄っすらと直線が入ってるのが見えた。ズルリと机にズレが生じ、下からスコーピオンを出した海斗が自分の方を向いている。

 

「しまっ……!」

 

 カウンターは海斗の得意技だ。その上、空中では身動きが取れない。風間とも張り合える近接戦闘では勝ち目がないため、三輪は落下しながらシールドのタイミングに全神経を注いだ。

 しかし、予想外にも海斗は真下から退き、三輪から距離を取った。真下の空間はリビングで、ソファーを挟むようにして三輪と向き合っている。

 孤月をしまった三輪は、ハンドガンを抜いてゆっくりと海斗の方に向き直る。

 

「……何のつもりだ? 海斗」

「何が」

「何故反撃しない? 俺を舐めているのか?」

「あー……」

 

 気まずそうに目を逸らす海斗。それが三輪は気に入らなかった。自分から話があると言い、クビを覚悟で喧嘩を売ってきたくせに、未だに自分に負い目があって手を出さないとでも言うつもりだろうか? 自分の友人に、こんなヘタレはいない。

 目を逸らしていた海斗は、頬をぽりぽりと掻きながら答えた。

 

「や、実はまだお前に何を話せば良いのか決まってなくて」

「……は?」

 

 こいつ、何言ってんの? と思ったが、海斗は難しい顔をしながら答えた。

 

「色々と話したいことはあったんだが、いざこうなると言葉選びが難しくて……特にほら、俺ってデリカシーないらしいし。まずは謝るべきなんだろうけど、それもなぁんか良い感じの言葉浮かばなくて」

「……まさか、そんな事を考えながらずっと戦っていたのか?」

「そんな事ってなんだよ。お前、俺はお前と仲直りするためにだな……」

「反撃しなかったのは?」

「考え事に夢中だ」

「……」

 

 あ、と海斗は冷や汗を流す。なんかまた言葉選びを間違えたようで、三輪の殺気が高まる。

 

「ナメるな‼︎」

 

 ハンドガンを勢い良く向け、二〜三発のアステロイドが放たれる。それをしゃがみながら回避し、足元のソファーを蹴って三輪に叩き付け、その隙に窓に飛び込んで家から出た。

 真剣にぶつかり合ってる最中、やたらと反撃して来ないと思ったら他の事を考えていました、なんてふざけている。

 

「ええ……何で怒ってんの……?」

 

 まだ惚けたことを抜かしているアホに、三輪は尚更、殺意が芽生えた。

 正直、このまま抑えられれば良いと思っていた。これは消極的な考えではない。目の前のバカを殺す必要があるのなら、全員で囲んで叩けば良いだけの話だ。

 しかし、太刀川も風間もそうしなかったということは、それ以上に海斗との戦闘中に迅と合流される事を危惧したのだろう。

 一度、分散した以上はさっさと蹴散らそうとするより抑えた方が良い。というより、海斗はトップクラスのアタッカーである上にカウンタータイプのため、下手な攻撃はむしろ自分が殺されるリスクの方が高い。

 そうは分かっていても、ナメプされて怒らないほど、三輪の人間は出来ていなかった。

 

「……はぁ、氷見。これなんでこいつキレてんの?」

 

 今まで、三輪はカウンターを警戒して攻撃用のトリガーは銃か孤月のどちらかしか出さなかった。即座にシールドで対応するために。しかし、今は両手に武器を持っている。殺す気満々である。

 ハンドガンと孤月の猛攻を、凌ぎながら自分のオペレーターに相談し始め、三輪の機嫌は余計に悪くなった。

 

 ×××

 

「なんでって……」

 

 そりゃ怒るでしょ、と氷見は心の中で毒づいた。自分から用があると言っておいて、戦闘になったら他の事を考えるなんてナメている。いや、厳密には他の事ではないのだが、その事情を理解していない三輪に直接言っちゃうのは絶対ダメである。

 

「どうかしたか? 氷見」

 

 二宮隊の作戦室のオペレータールームの後方では、二宮がジンジャーエールを飲みながら声を掛けてきた。

 

「……あの、二宮さん。支援なら私一人でも……」

「黙れ。何かあったのか? あのバカに」

「……」

 

 本当なら、氷見一人でオペレートするつもりだったのだが、二宮が「俺も一緒にいてやる」と聞かなかったため、何故か二人で画面を見ていた。

 その癖、後ろの方で興味なさそうにソワソワしているのだから、割と自分の隊長は面倒臭い。

 

(素直に心配だから俺も指示を出す、って言えば良いのに……)

 

 犬飼曰く「二宮さんはなんだかんだバカには甘いよね」との事。

 辻曰く「俺にはよく分からないけど、何処か鳩原さんに似てるんじゃない?」との事。

 つまり、なんだかんだ目の前のバカにいなくなって欲しくないのだろう。だから、それなりに気をかけるし、偶に飯も奢ってあげている。

 まぁ、生身でトリオン兵と戦っちゃう人だし、心配になる気持ちは氷見にも理解出来るため、下手な事は言わないが。

 

「自分から売った喧嘩中に『どうやって謝ったら良いかな』と考え事してた事を本人に言って怒らせちゃったみたいですよ」

「……チッ」

 

 せっかく、二宮も今回の戦闘の件について、忍田にクビにならないよう話を通しておいたのに、随分とナメた戦闘をしているようだ。

 本来なら、自分で考えさせるところだが、これでやられてしまったら何もかも無駄だ。氷見からマイクを取り、声を掛けた。

 

「おい、バカ。聞こえるか?」

『二宮さん? なんかこいつ超怒ったんだけど。なんでですか?』

『戦闘中にお喋りとは……余裕だな!』

『まぁね』

『まぁね……貴様⁉︎』

「頼むから内部通信に切り替えてくれ」

 

 もはや、挑発する作戦なのか、と思ってしまうほどだった。実際、ブチギレている三輪の攻めは単調になって来ているので、余裕でいなしているようなのだが。

 まぁ、余裕なのならこっちの話に耳を傾けられるだろう。

 

「お前は何のためにそこにいる?」

『そりゃ、三輪と話をつけるためだけど……でも、もうこいつ話聞きそうにないですよ』

「なら、さっさと三輪を倒して迅の援護に向かえ」

『ええ……でも』

「どうせお前のことだ。反撃しない理由に『結果的に裏切ってしまった三輪を倒すのは気がひける』というのも含まれているだろう」

『……』

 

 黙り込む、ということはどうやら図星のようだ。隣の氷見はつくづく不器用なバカだなぁ、と呆れてしまう。

 

「お前がここで負ければ三輪は迅達の戦闘に加わり、空閑遊真が死ぬ可能性は高まる。逆に、お前が三輪を倒せば迅の援護に向かい、空閑遊真の生存率は上がる」

『そりゃそうですけど……』

「最初から話し合いに持って行けなかった時点で倒すしかないだろう。話し合いの席が必要なら後で設けてやる。だから今は戦闘に集中しろ」

『っ……』

 

 また声が止んだ。しばらく考え込んでいるのだろう。

 が、やがてか細い声が届いた。

 

『……了解です』

 

 そこで通信は途切れた。自分の席に戻った二宮は、実に面倒臭そうにどっかりと座り込み、ため息をついた。

 

「……まったく、本当に世話の焼けるバカめ……」

(……この人、本当にツンデレだな……)

 

 氷見は必死に言葉を飲み込んだ。

 

 ×××

 

 海斗への猛攻を止めない三輪は、ハンドガンと孤月を上手く切り替えて使っていた。ハンドガンで牽制し、避けた方向を先読みしてブレードで斬りかかる、というシンプルかつ巧妙な乱撃を繰り返していた。

 

(海斗から借りた銀魂が役に立った……!)

 

 この戦法を使っていたのは、見廻組局長佐々木異三郎だ。あの鬼の副長、土方十四郎を追い詰めただけあって、相手に反撃をさせていない。

 流石にあそこまでの練度とはいかないため、まだ攻撃を当てられてはいないが、それはそもそも海斗が受けに徹しているからであり、反撃をするつもりが無いからだ。

 

(過去の行動が仇となったな、海斗。緊急脱出しながら俺にジャンプをハマらせた事を後悔しろ……!)

 

 そう言って、ハンドガンを回避した先の海斗に孤月の突きを放った時だ。こちらを向いている海斗が薄く微笑んでいるのが見えた。あの顔は知っている。カウンターを仕掛ける時に「ブァ〜カ!」とほくそ笑みながらトドメを狙っている時の顔だ。

 

「ッ……‼︎」

 

 腕を引っ込めようとしたが、もう遅い。半径3メートル以内からの攻撃は、すべて海斗のカウンターの間合いだ。

 最低でも腕を取られる、と覚悟し、拳銃で同時に少しでもダメージを与えてやろうと逆側の手を海斗に向けたときだ。不可解な行動に出られ、思わず迷ってしまった。孤月を握る手を掴まれると共に鳩尾に掌底を喰らわされた。

 

「……っ!」

 

 さらに、背中を向けられ、腕をグイッと引っ張られる。腰で腰を支えられると感じた時には視点はグルリと回転し、気が付けば背中を地面に強打していた。

 

「グッ……‼︎」

 

 さらに、ボディにつま先がめり込む感触が走る。後方に蹴り飛ばされ、壁に叩きつけられた。

 生身なら吐血してるであろう衝撃だったが、片膝をついてなんとか大きな隙を見せまいとした。

 

「はっ……! なんだ? 急にやる気出して……!」

「ん、いや何。まぁ本当は戦う前に色々と話したいことがあったんだけど……」

「その割に、トリオンを使わない攻撃か。つくづくナメた奴だな」

「いやいや、フェアじゃないからだよ、それは」

 

 そう言うと、海斗は首をコキコキと鳴らすように左右にひねり、手首と足首をプラプラと振るった。

 

「ただ、ゴチャゴチャ考えんのはやめにしただけだ。今は、俺は空閑を守りたい、お前は空閑を殺したい。それだけ分かってりゃ十分だろ」

「……ふん、ようやくお前らしくなったか」

 

 そう言うと、三輪は立ち上がり、孤月を腰に戻した。その代わり、手に持っているのはハンドガン。銃口を海斗に向けることはない。殺気で反応される。

 

「よし、やろうか」

「上等」

 

 お互いに殴り合いを始めた。

 

 ×××

 

 黒トリガーとは、ノーマルトリガーをかなり超越した性能を持つ。まるでライトノベルに出てくるキャラのような能力を持つわけだ。

 迅の持つ風刃の性能は、目に見える範囲に斬撃を飛ばせることだ。つまり、ブレードでありながら遠距離戦もこなせるわけだ。

 だから、間違っても包囲されないように後方へ下がっていくのは当然の判断に見えるのだが……。

 

「……消極的すぎるな。攻め気が無さすぎる」

 

 違和感に太刀川は言葉を漏らす。その隣で、頬からうっすらとトリオンを漏らす歌川が聞いた。

 

「このままじゃ、警戒区域外まで出ちゃうんじゃ……」

「いや、それはない。迅は市民を危険に晒さない」

 

 そう否定しつつも、たしかに消極的過ぎると違和感を抱く。

 

「ずいぶんと大人しいな、迅。昔の方がまだプレッシャーあったぞ」

「……」

 

 軽口を叩かれても返事をしない。ただずっとにやけているだけだ。

 

「いいや、迅は予知を使って守りに徹しながらも、確実にこちらのトリオンを削っている」

 

 しかし、風間がそのセリフを口にしたことでその表情には余裕が消えた。

 

「こいつの狙いは、俺たちをトリオン切れで撤退させることだ」

「……⁉︎」

「あらら……」

 

 見事に当てられ、頬に汗を流した。その方が、本部との摩擦が少なくて済むから。

 しかし、そんな狙いは太刀川や風間からしたら不愉快でしかない。特に、ライバルと戦えると思っていた太刀川にとっては、随分とナメられたものだとカチンと来るものがあった。

 

「風間さん、やっぱりぼくたちだけで玉狛に向かいましょうよ」

 

 そう口を挟んだのは、菊地原だった。

 

「この人を追い回したって時間の無駄ですよ。元々、狙いは黒トリガーなわけですし」

「……そうだな。玉狛へ向かおう」

 

 部下の迅の逃げを封じる手を読んだ風間が頷いて肯定する。

 やっぱこうなったか、と観念した迅は、頭の中でプランを切り替えた。直後、振るったブレードが11本の尾を帯びる。

 民家の壁を沿って斬撃が走った。

 

「! 全員退がれ‼︎」

 

 風間隊の全員は後方に大きく飛び退き、太刀川は反射的に急所を庇うようにブレードでガードするように構える。

 間一髪、狙われた菊地原は回避に成功したが、左腕を持っていかれた。

 

「うわー……あのバカ先輩より全然、鋭い……」

「当たり前だ、菊地原。そもそも、あのバカと迅では風刃を使っている年季が違う」

 

 回避しつつ、距離をとった菊地原は珍しく冷や汗を流す。あの時の模擬戦で風刃の性能を把握する機会がなければ危なかったかもしれない。

 

『どうします? 風間さん』

『歌川、菊地原は太刀川を援護しろ。狙撃手も同様に援護だ』

『風間さんはどうする?』

『迅が風刃を抜いた以上、太刀川。お前には俺達の新戦術に参加してもらう。良いな?』

『了解了解』

『仕込みが終わるまで、奴を惹きつけろ』

 

 そう指示を飛ばし、風間はカメレオンを起動した。

 

 ×××

 

 別の場所では、激しい銃撃戦が行われていた。米屋、古寺と合流した出水は、嵐山隊と戦闘を繰り広げていた。

 佐鳥を取りに行った米屋に対し、木虎がカバーに回ったため、これで二対二。太刀川達が迅を仕留めるまでの足止めで良いと考えている以上、出水に攻め気はなかった。

 嵐山隊からの攻撃を持ち前のトリオン量に比例したシールドの硬さで凌ぎつつ、敵の気を引く。

 その隙に、高めのビルがパッと光った。

 

「! 充!」

「はい」

 

 嵐山と時枝がシールドを張り、狙撃を防いだ。射撃地点は遠過ぎるため、嵐山と時枝は手が出せない。佐鳥は移動中のため、狙撃手の頭は狙撃手が抑えるという定石は使えなくなっていた。

 そのほんの少しの隙を突いて、出水は反撃した。変化弾と追尾弾を織り交ぜた攻撃により二人を怯ませる。

 上空に高く上げたハウンドが嵐山の斜め上から突き刺さる直前、パッと嵐山の姿は消えた。

 テレポーターによる十字砲火を狙い、出水を挟み撃ちにしたが、射撃は放てなかった。さっきとは別の箇所からの狙撃により、間一髪シールドで防ぎ、引き退る。

 

『綾辻、弾道解析は?』

『はい。先程とは別の方向から来ていました。明らかなワープです』

『やっぱり、冬島さんもきてますね』

『船酔いでダウンしてると思ってたんだけどな。太刀川さんが無理矢理引っ張ってきたのかな?』

 

 時枝が冷静に分析する。探そうにも何処にいるかは分からないし、狙撃手を抑えに行ってもワープで逃げられるだけだ。

 

『綾辻、ワープのポイントにマーカーを付けておいてくれ』

『はい』

『よし、迎え撃つぞ』

 

 嵐山はそう言うと、再び出水に銃口を向けた。

 

 


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